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17年ぶりに復活したトヨタスープラ。BMWのZ4とプラットフォームやパワートレインを共用するが、その派手な外観は紛れもなくスープラだ。今年夏頃の発売前に新型スープラのプロトタイプに試乗した岡崎五朗さんのショートインプレッションをお届けしよう。
トヨタといえどもスポーツカービジネスは難しい
その華やかな存在感とは裏腹に、スポーツカービジネスは日増しに厳しさを増している。簡単に言えば儲からない。アウディは次期型TTの、メルセデス・ベンツは次期型SLCの開発を凍結したとの噂もある。付加価値に見合う価格をたんまりとれるポルシェやフェラーリならいざ知らず、普通のメーカーにとって数を見込めないスポーツカーは決して美味しいビジネスではないのだ。
それは巨人トヨタとて同じこと。2兆円レベルの利益を出す企業でも、いやだからこそ道楽でクルマは作れない。従業員に給料を払わなければならないし、株主の利益を損ねるわけにもいかない。それでもスポーツカーが作りたい・・・となれば、しっかりした収益プランの作成が必要不可欠だ。
想像以上に深いトヨタのコミットメント
スープラを復活させるにあたり、トヨタがBMWとタッグを組んだ理由はそこにある。まず、開発費を折半できる。BMWとしてもZ4を存続させるためには願ってもない話である。とはいえ、スポーツカーには他のどのジャンルよりもオリジナリティや作り手の思い入れが求められる。それなくして魅力的なスポーツカーは絶対に作れない。
新型スープラはBMW製のシャシーとエンジンを採用している。生産こそマグナ・シュタイヤーで行う(Z4と混流)が、同社はX3の開発や生産でBMWと濃厚なパートナーシップを築いている。言ってみればBMWのお膝元である。そんな事実から、BMW製トヨタ車とか、Z4の単なるデザイン違いと悪口を言う人もいる。たしかに表面だけ見ればそうなるが、トヨタは想像以上にこのプロジェクトに深くコミットしている。
運動性能第一のサイズ
まず、スポーツカーとしての基本性能を決定づけるディメンション。スープラのホイールベース(2470㎜)はなんと86より100㎜も短く、なおかつ重心高も86より低い。当初、BMWはもっと大きく居住性の高いディメンション案を示していたらしいが、トヨタの主張する「運動性能第一」要求を呑んでこのスペックを弾きだした。そう、トヨタはカネも出すが口も出しているのだ。
もちろん、ハンドリングを中心とした「味付け」は個々のメーカーが別々に行っている。Z4にはまだ乗っていないためあくまで想像だが、これまでの両社のクルマ作りからして、スープラは扱いやすさ、Z4はマニアックさを重視しているのではないか? このあたりは今後実車で確認するのが楽しみだ。
自由自在に走らせるには相応のテクニックが
今回雨の降るサーキットで数ラップほどスープラの3L直6ターボモデルに試乗する機会があった。上で「扱いやすさ」と書いたが、むろんそれは退屈とは無縁のもの。艶やかに、かつパワフルにトップエンドまで回りきるストレート6エンジンは素晴らしいエンターテインメント性を備えていたし、コーナーを攻めていったときには後輪がむずがるような神経質な動きを見せることもあった。
この高性能マシンを自由自在に走らせるにはそれなりのテクニックが必要だし、だからこそ乗りこなす楽しみがある。ほんのわずかな試乗時間だったが、それがスープラに対する僕のファーストインプレッションだ。
(写真:トヨタ自動車)
※記事の内容は2019年2月時点の情報で執筆しています。