自動車の安全装備の中でも、最近特に注目を集めているのが「自動ブレーキ」や「ぶつからないブレーキ」などと呼ばれる「被害軽減(自動)ブレーキ」*と、アクセルとブレーキの踏み間違いによる急発進を防止する「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」*に代表される「先進安全技術」です。
ここではそれらの装備を中心にトヨタの先進安全性能についてチェックしてみましょう。
*各技術の名称は「サポカー」「JNCAP」など公的機関で使われる一般名称でなるべく統一しています。トヨタの名称との対照やトヨタの車種別の装備状況は文末の別表をご確認ください。
【概況】3種類ある「Toyota Safety Sense」「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」は含まれない
ダイハツからのOEM供給を受けるコンパクトカーや軽自動車の一部を除いて、トヨタ車の先進安全装備は「Toyota Safety Sense(トヨタ・セーフティ・センス)」と名付けられています。
以前は赤外線レーザーと単眼カメラを組み合わせた「トヨタ・セーフティ・センスC」と、ミリ波レーダーに単眼カメラを組み合わせた「トヨタ・セーフティ・センスP」の2種類でしたが、2017年12月、アルファード/ヴェルファイアのマイナーチェンジを機に搭載された新世代の「トヨタ・セーフティ・センス」(こちらもミリ波レーダーと単眼カメラ)の登場から、従来の「C」も「P」も「トヨタ・セーフティ・センス」と名乗るようになりました。
現在もその3種類が混在したままとなっており、少々わかりづらいのが正直なところ。
もうひとつわかりにくさに拍車をかけているのが、先進安全装備の中でも特に注目度の高い「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」を、「トヨタ・セーフティ・センス」も機能として組み込んでおらず、システムとしては「インテリジェントクリアランスソナー[パーキングサポートブレーキ(静止物)]」という長い名称の別の装置が担当している点です。
サポカーで最も上位の「サポカーSワイド」認定に必要な機能は
「被害軽減(自動)ブレーキ」
「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」
「車線逸脱警報装置」
「先進ライト」
の4つですが、「トヨタ・セーフティ・センス」が付いているクルマでも、肝心の「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」は「インテリジェントクリアランスソナー[パーキングサポートブレーキ(静止物)]」をオプションとして追加しなければならない場合があるのです。
「トヨタ・セーフティ・センス」には
「被害軽減(自動)ブレーキ」
「車線逸脱警報装置」
「先進ライト」
といったサポカーSワイドに必要な機能に加えて
「車線維持支援機能」
「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」
「標識認識機能」
「先行車発進お知らせ機能」
など他社と同様の機能がありますが、前述した3種類ある「トヨタ・セーフティ・センス」によって内容がかなり異なります。
また
「ペダル踏み間違い時加速抑制装置(前方)」
「ペダル踏み間違い時加速抑制装置(後方)」
「後退時ブレーキ」
は「インテリジェントクリアランスソナー[パーキングサポートブレーキ(静止物)]」の受け持ちとなります。
今回は先進安全運転支援装置の中でも特に重要な「被害軽減(自動)ブレーキ」と「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」を中心に、「トヨタ・セーフティ・センス」と「インテリジェントクリアランスソナー[パーキングサポートブレーキ(静止物)]」をチェックしてみましょう。
【被害軽減(自動)ブレーキ】松竹梅がはっきりしているが、大半が歩行者対応まで進んだことは評価
3種類ある「トヨタ・セーフティ・センス」の簡単な見分け方は、別表にある「被害軽減(自動)ブレーキ」の正式名称にあります。
最新の第二世代「トヨタ・セーフティ・センス」(以下:第二世代)はミリ波レーダーと単眼カメラの組み合わせですが、トヨタの「被害軽減(自動)ブレーキ」の正式名称「プリクラッシュセーフティ(対歩行者・対車両〔昼夜〕/自転車運転者〔昼〕)」の名が表すように、夜間の車両と歩行者に加えて昼間の自転車も対象となっています。さすが最新世代だけに夜間も対応するなど業界の標準よりも一歩進んだ内容です。
作動条件は「約10km/h以上(歩行者は80km/hまで)の速度で作動し、速度の差が約50km/h(歩行者は40km/h)以内なら、衝突回避または被害軽減をサポート」とこれも標準レベルより幅広くなっています。
一方、「プリクラッシュセーフティ (対歩行者・対車両)」の中には、以前は「トヨタ・セーフティ・センスP」と呼ばれていたミリ波レーダー+単眼カメラ(以下:「ミリ波」)と「トヨタ・セーフティ・センスC」と呼ばれていた赤外線レーザー+単眼カメラ(以下:「レーザー」)のものが混在しています。別表にあるように「レーザー」のものは編集部側で追記をしていますので参考にしてください。一般的にはミリ波レーダーのほうが赤外線レーザーより天候などに左右されにくいとされています。
「ミリ波」と「レーザー」の違いはありますが、一部の車種を除いて今では「レーザー」も歩行者にも対応しており、その部分は平均点をクリアできる内容です。
「ミリ波」の作動条件は車種によって若干異なりますが「自車速約10km/h~(歩行者は80km/hまで)の速度で作動。速度の差が約40km/h以内なら、衝突回避または被害軽減をサポートします」ということで、作動条件は昼間に限られるもののこの手の装置としては標準的なスペックです。
一方「レーザー」の作動条件はこれも車種によって若干異なるものの「対車両の場合は自車速度約10~80km/h、対歩行者(昼間)の場合は自車速度約10~65km/h、速度の差が車両は約30km/h、歩行者は約20km/h」と、やや狭いことがわかります。
作動プロセスは、まず音とディスプレー表示で警告し、その段階でブレーキを踏むと強力なブレーキアシストが行われ、そして衝突のおそれが高まるまでブレーキを踏まなければ自動ブレーキを作動させるというものです。
なお、登場から時間が経ったプレミオ/アリオンやエスティマ、モデルチェンジが近いカローラフィールダーは歩行者に対応しない旧世代の「レーザー」タイプですので注意が必要です。
またスポーツカーの86には先進安全装備は用意されていませんが、最新のスープラには「Toyota Supra Safety(トヨタ・スープラ・セーフティ)」という、ミリ波レーダーと単眼カメラの組み合わせの独自の先進安全装備が用意されます。BMWとの共同開発で生産もトヨタでないことが理由でしょうが、夜間対応はないものの、対車両が5km/hという低速から対応するなど、名前だけでなく性能も他の「トヨタ・セーフティ・センス」とは微妙に異なっています。
「被害軽減(自動)ブレーキ」としてのスペックは「第二世代」は最新だけに高いレベル、「ミリ波」が平均点、「レーザー」は歩行者対応に進化したものが大半とはいえ平均点には及ばない、というところでしょう。
【ペダル踏み間違い時加速抑制装置】標準化してほしい優れモノ
トヨタの「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」は超音波ソナーを使用した「インテリジェントクリアランスソナー[パーキングサポートブレーキ(静止物)]」(以下:「インテリジェントクリアランスソナー」)が該当します。なぜ、ここまでこの長ったらしい名前を省略せずに書いてきたかというと、「インテリジェントクリアランスソナー」には駐車時などに警報を出すだけのものもあるからです。
名前が長いとか、「トヨタ・セーフティ・センス」に含まれないのはややこしい、とか文句ばかりつけてきましたが、この「インテリジェントクリアランスソナー」は「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」としては優れものです。前だけでなく後ろにも対応しますし、出力抑制だけでなくブレーキ制御も入ります。後方への対応が遅れているホンダに差をつける切り札なのです。
ただ、いまだにこれがオプション扱いとなる車種やグレードが多いことは残念です。最新のカローラスポーツが標準でなく全車オプション扱いであることに気付いた時は正直、目を疑いました。しかも「リヤクロストラフィックオートブレーキ[パーキングサポートブレーキ(後方接近車両)]」と「ブラインドスポットモニター[BSM]」とのセットでしか選ぶことができず、オプション総額は税別11万6000円なり。
ちなみにアクアだと単独で選べて税別2万6000円です。標準化をしてほしい機能ですし、百歩譲って単独で「インテリジェントクリアランスソナー」を選べるようにしてほしいものです。
最近、一部の車種で後付けできる「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」をトヨタがデンソーと共同開発しましたが、これも「インテリジェントクリアランスソナー」がもっと早く標準化されていれば、という思いがよぎります(後付け装置には警告と出力抑制だけでブレーキ制御はありません)。
ちなみにトヨタ車には「シフト操作ミスサポート(ドライブスタートコントロール)」という機能が広く採用されています。これはアクセルを踏んだままRからDにシフトした際に出力が抑制される機能です。たしかにそれも踏み間違い事故防止への回答の一つではあります。でもやはり正解は「インテリジェントクリアランスソナー」じゃないでしょうか。
【その他の機能】「サポカーSワイド」対応は進んだが…
「被害軽減(自動)ブレーキ」と「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」以外の装備では、「車線逸脱警報」と「先進ライト」の対応がずいぶん進みました。ソツなく「サポカーSワイド」の規定を強く意識している感があります。
一方で全車速対応の「ACC」や他社では着実に装着比率が上がっている「車線維持支援機能」は特にミニバン系の対応率の低さが気になります。「標識認識機能」に至ってはやる気あるのか?と問いただしたくなるほどです。このあたりは「第二世代」の普及を待つしかなさそうです。
今回は基本的な先進安全装備を中心に取り上げていますが、先ほどは槍玉にあげたカローラスポーツも含めて、「第二世代」の「トヨタ・セーフティ・センス」には、さらに高機能なすばらしい先進安全装備が用意されています。
何が必要装備で何が贅沢装備なのか、そのあたりの選択基準をトヨタとしてはっきり定義しても良いころではないかと思います。
【車種別の採用状況】
気になるのは販売台数が多いヴォクシー/ノア、シエンタといったミニバンや、アクアやヴィッツなどのコンパクトカーに「レーザー」タイプの「トヨタ・セーフティ・センス」が残っていることです。シエンタを除けばモデルライフの末期に近づいているモデルが多いことも理由でしょう。
細かい点をみるとクラウンと同時にモデルチェンジした最高級車のセンチュリーが意外と充実していないことに気付きます。プロが運転するクルマだからでしょうか。
価格を考えるとランドクルーザーあたりは、せめてACCは全車速追従にするなど、もう一段引き上げてほしいと思うユーザーも多いのではないでしょうか。またシニア層のユーザーが多いプレミオ/アリオンの早急なアップデートもお願いしたいところです。
多数の車種を展開するメーカーなので、急ピッチで安全装備の底上げを急いでもなかなか追いつかないということは理解できますが、やや初期の迷い(?)がいまだに影響している印象があります。
【まとめ】レベル統一まで、もうひとがんばりを期待
スバルはもちろん、ホンダやマツダ、そして系列会社のダイハツなど、意欲的なメーカーは車種ごとの先進安全装備のレベルが統一されつつあります。トヨタもだいぶ追いついてきたとはいえ、「ミリ波レーダー+単眼カメラ」レベルへの統一や、「インテリジェントクリアランスソナー」の標準化など、もうひとがんばりを期待したいところです。
*紹介した内容は2019年7月現在の情報です。
*先進安全装備は天候や道路状況などで作動しないことや十分に性能を発揮しないことがあります。装備を過信せずクルマを操るのはドライバーだということを忘れず運転しましょう。
「サポカー」「JNCAP」など公的機関で使われる各技術の名称とトヨタの名称との対照表
サポカーSワイド | 先進安全装備名称 | トヨタの名称 |
---|---|---|
○ | 被害軽減(自動)ブレーキ(対車両・歩行者) | ○1:プリクラッシュセーフティ (対歩行者・対車両〔昼夜〕/自転車運転者〔昼〕) ○2:プリクラッシュセーフティ (対歩行者・対車両) |
被害軽減(自動)ブレーキ(対車両) | プリクラッシュセーフティ 対車両 | |
○ | ペダル踏み間違い時加速抑制装置(前方) | インテリジェントクリアランスソナー[パーキングサポートブレーキ(静止物)] |
ペダル踏み間違い時加速抑制装置(後方) | インテリジェントクリアランスソナー[パーキングサポートブレーキ(静止物)] | |
○ | 車線逸脱警報 | 車線はみ出しアラート |
車線維持支援 | ○1:ハンドル操作サポート(レーントレーシングアシスト) ○2:車線はみ出しアラート(ステアリング制御機能付) |
|
○ | 先進ライト | 自動ハイビーム(アダプティブハイビームシステム、オートマチックハイビーム) |
ACC〈アダプティブ・クルーズ・コントロール〉 | 追従ドライブ支援機能(レーダークルーズコントロール) | |
追従ドライブ支援機能(レーダークルーズコントロール)*全車速追従 | ||
標識認識機能 | 標識読み取りディスプレイ(ロードサインアシスト) | |
先行車発進お知らせ機能 | 先行車発進アラーム(先行車発進告知機能) | |
後退時ブレーキ | インテリジェントクリアランスソナー[パーキングサポートブレーキ(静止物)] | |
独自装備 | シフト操作ミスサポート(ドライブスタートコントロール) |
トヨタの車種別の装備状況
△ オプション
※1 一部グレードはオプション
※2 一部グレードは設定なし
※3 MT車を除く
※レス(非装着)仕様、特別仕様車は含まない
※OEM車は供給元のメーカー記事を参照ください(タンク/ルーミー=ダイハツトール、パッソ=ダイハツブーン、ピクシス エポック=ダイハツミライース、ピクシス ジョイ=ダイハツキャスト、ピクシス メガ=ダイハツウェイク)
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※記事の内容は2019年8月時点の情報で執筆しています。