現在、日本国内の新車市場は、販売台数の約4割が軽自動車となっています。軽自動車というと、ボディサイズやエンジンの排気量に制限があり、車両本体価格や税金などのランニングコストが安い反面、安全性は低いと思われがちです。しかし最近の軽自動車は幅広い年齢層のユーザーに対応して安全装備が充実し安全性も向上しています。そこで、
今回はモータージャーナリストの萩原文博さんに、軽自動車でも小型車に匹敵する安全性を確保したモデルを紹介してもらいました。
強化される軽自動車の安全性、先進安全装備、運転支援装置の導入は早かった
最新のクルマにはさまざまな安全装備が標準で装着されています。例えば、走行中に着用が義務づけられており、装着していないと違反となるシートベルト。ほとんどのクルマが採用している3点式シートベルトは1959年にボルボが初めて採用しました。
その後1990年代になると、安全装備は一気に標準装備化が進みます。まずは万が一衝突した場合に風船が膨らみドライバーを守るエアバッグ。最初は運転席のみでしたが、その後助手席用が登場。そして後席もカバーするカーテンエアバッグなどさまざまなエアバッグが導入されています。
また、滑りやすい路面などでタイヤのロックを防ぎハンドル操作を可能とするABS、そして、1993年の道路運送車両の保安基準が改訂され、1994年4月以降に発売される新型車には前面衝突試験が義務づけられたことを受けて、自動車メーカー各社衝突安全ボディを採用しました。さらに、1990年代後半に入ると、ABSとトラクションコントロール機能を統合制御する横滑り防止装置が登場。各社VSC、ESPなど呼び名はことなりますが、機能面では同じです。
このような安全装備は価格の高い普通車や小型車だけでなく、軽自動車の多くにも普及しています。さらに最新の軽自動車では、最新鋭の運転支援システムを搭載することで、ユーザーをフォローしてくれます。例えば。日産・三菱では高速道路でのアクセル・ブレーキそしてハンドル操作もアシストしてくれるプロパイロット(三菱はマイパイロット)を搭載。センサーによって2台前のクルマの動きを検知して素早い対応をしてくれます。
ホンダは運転支援機能がパッケージ化したホンダセンシングを搭載。軽自動車でいち早く高速道路での追従走行が可能なアダプティブクルーズコントロールを採用しました。スズキ(マツダ)は車種によってセンサーの種類が異なりますが、最も新しいのが単眼カメラとレーダーを使用したデュアルセンサーサポートです。
そしてダイハツ(トヨタ、スバル)は2つのカメラを使用するステレオカメラを採用したスマートアシストを採用し、一部のグレードにオプションでアダプティブクルーズコントロール機能が設定されています。実は競争の激しい軽自動車は先進安全装備に関してコンパクトカーよりも早いタイミングで普及しました。多くの人が使用する軽自動車だからこそ、充実した安全装備が採用されているのです。
車の安全性能を判断する基準とは
自動車メーカーは最近では走行性能や燃費性能よりも安全性能の向上を謳って新車販売に力を入れています。燃費性能は現在の技術力ではやや頭打ちとなっていて、よほどブレークスルーがないと現状を打破できません。しかし安全性能はセンサーの性能向上や情報処理能力の向上によりまさに日進月歩となっています。
その日々進化する安全性能を客観的にテストし評価しているのが、独立行政法人自動車事故対策機構、通称NASVA(ナスバ)です。NASVAは自動車事故対策の専門機関で、ドライバーが納めている自賠責保険や共済といった国の運用益事業によって事業が実施されています。NASVAは「自動車事故被害者を支える」「自動車事故を防ぐ」「自動車事故から守る」の3つの業務を一体的に実施している組織です。そのNASVAがより安全なクルマ・チャイルドシート普及のため、自動車アセスメント事業として一般に販売されている自動車に対して安全の評価を行っています。
JNCAPには「衝突安全性能評価」と「予防安全性能評価」の2つのテストがある
NASVAが行っている自動車アセスメント(JNCAP)には、2つのテストがあります。以前から行われていたのが衝突安全性能評価。これは衝突時の安全性能について、乗員保護性能、歩行者保護性能及び、シートベルトの着用警報装置など、それぞれの評価を行います。この衝突安全性能評価で100点満点中82点以上を獲得すると「ファイブスター賞」が授与されます。
もう一つが平成26年度から実施された衝突被害軽減ブレーキをはじめとした最新鋭の運転支援システムの評価を行う予防安全性能評価です。この予防安全性能評価には最近よく耳にする「サポカー」に適合した装備がテストされています。「サポカー」は装備の有無だけを判定しますが、この予防安全性能評価は装着されている運転支援システムの性能をテストし、最高評価となったクルマにはASV+++(エーエスブイトリプルプラス)と認定されます。
したがって「ファイブスター賞」そして「ASV+++」の両方を獲得したクルマが本当の意味で安全なクルマということになります。
一方で自動車を取り巻く環境や技術の進歩を反映して、JNCAPのテスト条件・項目、評価項目も都度見直しがなされており、結果的に過去のものとの比較がしにくくなっています。
今回のランキングの順番は万が一の衝突時の安全性を示す「衝突安全性能評価」を基準としています。2018年度に改正された衝突安全性能評価の結果をもとにランキングを行いましたので、取り上げるのはそれ以降にテストを受けた車に限ったものとなります。また、「予防安全性能評価」については2019年度に改正が行われ、テスト項目の追加があったため満点が126点から141点へと変わっている点に留意してください。
それでは2018年度以降に衝突安全性能評価テストを受けた軽自動車の中で好成績を収めた5台を紹介しましょう。
安全性の高い軽自動車BEST5(衝突安全性能評価でのランキング)
第1位「ホンダN-WGN」
●129万8000円~182万7100円 ●全長3395mm×全幅1475mm×全高1675mm
衝突安全性能 ★★★★★ 88.7 / 100点 (2019年)
予防安全性能 ASV+++ 123.7 / 141点 (2019年)
88.7点を獲得し、第1位となったホンダN-WGNは衝突安全性能評価でファイブスター賞。そして予防安全性能評価では「ASV+++」の両方を獲得し、現在最も安全性の高い軽自動車となっています。ひと足先に販売開始した現行型N-BOXから採用した新開発のプラットフォームを採用したことで、走行性能だけでなく安全性能も向上したのが特徴で、現在発売されている軽自動車の中で最も安全性能の高いクルマと言えるでしょう。
衝突安全性能評価を細かく見ると歩行者保護性能評価では歩行者頭部保護性能試験がそして歩行者脚部保護性能試験ともにレベル5を獲得し、37点満点中30.37点です。乗員保護性能評価では7項目ですべてレベル5を獲得し、59点満点中55.34点となりました。シートベルトの着用警報装置ではレベル4となり、4点満点中3.00点となっています。
予防安全性能は、衝突安全性能2位の日産デイズ/三菱ekワゴンに比べて、被害軽減ブレーキの対歩行者夜間街灯なしとペダル踏み間違い時加速抑制の点数が低かったものの、ASV+++を獲得しています。ちなみに同社のN-BOXも予防安全性能評価は2019年に行っており、N-WGNを上回る129.2点を獲得しています。いずれにしても最新型の軽自動車の実力の高さを示した結果と言えるでしょう。
第2位「日産デイズ/三菱ekワゴン・ekクロス」
●132万7700円~188万2100円 ●全長3395mm×全幅1475mm×全高1640mm
衝突安全性能 ★★★★★ 86.5 / 100点 (2019年)
予防安全性能 ASV+++ 132.0 / 141点 (2019年)
第2位となったのは86.5点を獲得した日産デイズ/三菱ekワゴン・ekクロスです。2019年3月に登場し2020年8月に早くも一部改良を行い先進安全装備の充実を行っています。今回紹介する評価は一部改良前のものですが、衝突安全性能評価でファイブスター賞。そして予防安全性能評価では「ASV+++」の両方を獲得し、軽自動車ながら、高い安全性が評価されています。
歩行者保護性能評価では歩行者頭部保護性能試験、歩行者脚部保護性能試験ともにレベル5を獲得し、37点満点中30.50点というハイスコアを記録。乗員保護性能評価では前面・側面衝突試験うちの3項目がレベル4となっていますが、そのほかの4項目ではレベル5を獲得し、59点満点中53.07点です。ボディの小さな軽自動車ですが、後面衝突頸部保護性能試験の2項目ではレベル5を獲得しています。そして、シートベルトの着用警報装置ではレベル4となり、4点満点中3.00点となっています。
また、予防性能評価については軽自動車トップの成績を残しました。特に被害軽減ブレーキの歩行者夜間街灯なしでの高得点が光っています。スバルフォレスターを僅差で上回ったと書けば、その実力の高さが分かってもらえるのではないでしょうか。
第3位「ダイハツミラトコット」
●109万4500円~188万2100円 ●全長3395mm×全幅1475mm×全高1530mm
衝突安全性能 ★★★★☆ 81.5 / 100点 (2018年)
予防安全性能 ASV++ 60.6 / 126点 (2018年)
第2位から5ポイント差の第3位となったのが、2018年6月にデビューした軽自動車のスタンダードモデル、ミラトコットです。ミラトコットは衝突安全性能評価で★4つ、そして予防安全性能ではASV++という評価です。
歩行者保護性能評価では歩行者頭部保護性能試験がレベル4、そして歩行者脚部保護性能試験はレベル5を獲得し、37点満点中28.24点です。乗員保護性能評価では7項目中レベル5が3項目、レベル4が2項目となり、前面・側面衝突試験のうち2項目でレベル3となり59点満点中50.34点となりました。シートベルトの着用警報装置ではレベル4となり、4点満点中3.00点となっています。
予防安全性能は2018年度のテストです。被害軽減ブレーキの対車両は満点ですが夜間の歩行者対応がないこと、車線逸脱での得点が低いのはやや気になる点です。
第4位「スズキジムニー」
●132万7700円~188万2100円 ●全長3395mm×全幅1475mm×全高1640mm
衝突安全性能 ★★★★☆ 81.4 / 100点 (2018年)
予防安全性能 ASV++ 61.3 / 126点 (2018年)
2018年7月にフルモデルチェンジを行ったスズキジムニー。現行型は軽自動車の本格オフローダーとして高い人気を誇り、現在でも新車の納車期間が長期に渡っています。そのジムニーも衝突安全性能評価で★4つ、そして予防安全性能ではASV++という評価で81.4点を獲得しました。
歩行者保護性能評価では歩行者頭部保護性能試験がレベル3、そして歩行者脚部保護性能試験はレベル4、37点満点中23.70点とやや低い結果。乗員保護性能評価では7項目中レベル5が4項目、レベル4が3項目となり、59点満点中53.71点という高得点となっています。注目はシートベルトの着用警報装置です。レベル5を獲得し、4点満点中4.00点と最高評価となっています。
予防安全性能は2018年度のテストです。こちらも被害軽減ブレーキの対車両は満点ですが夜間の歩行者対応がないこと、車線逸脱での点が低いこと、さらに誤発進抑制の点が低いのはやや気になる点です。
これまでのジムニーは山林など道なき道を走るクルマのイメージが強かったのですが、現行モデルは無骨なスタイルが新鮮に写り「カワイイ!」と言って購入する女子も増えているそうです。衝突に対する高い安全性は拡大したユーザー層にとってメリットです。また、予防安全性能も最高性能のものではありませんが、少なくとも対車両に関しては文句なしの結果です。正直にいえばスパルタンなジムニーにこのような装備がついているだけで時代の変化を実感します。
第5位「ダイハツタント/タントカスタム」
●148万5000円~187万5500円 ●全長3395mm×全幅1475mm×全高1725mm
衝突安全性能 ★★★★☆ 80.2 / 100点 (2019年)
予防安全性能 ASV++ 72.0 / 141点 (2019年)
現在、軽自動車の売れ筋となっているスーパーハイトワゴンでは2019年7月に登場したダイハツタント/タントカスタムが80.2点でランクインしました。助手席側に採用したピラーインドアによるミラクルオープンドアによって人気のタントですが、衝突安全性能評価で★4つ、そして予防安全性能ではASV++という評価です。
歩行者保護性能評価では歩行者頭部保護性能試験がレベル4、そして歩行者脚部保護性能試験はレベル5を獲得し、37点満点中27.56点となりました。そして乗員保護性能評価では7項目中レベル5が4項目、レベル4が1項目、そして前面・側面衝突試験のうち2項目がレベル3にとどまったため、59点満点中49.58点となっています。シートベルトの着用警報装置はレベル4を獲得し、4点満点中3.00点です。
予防安全性能は被害軽減ブレーキの対車両は満点ですが、歩行者の昼間の得点が低い上に夜間の歩行者に対応していないので0点となったことが響いています(人気のライズとロッキーも同じ傾向です)。車線逸脱や誤発進抑制では満点を獲得しているだけに、新世代スマアシの歩行者対応の改善は急務でしょう。
安全性の高い車を選ぶポイント
現在のクルマで日々刻々と進化しているのは安全性能と言っても過言ではありません。特にカメラやセンサーの進化はめざましく、新型車ほど安全性能は高くなっています。したがって新車を購入する場合はそのクルマが「いつ販売開始したのか」を重要視すべきでしょう。また最近はフルモデルチェンジやマイナーチェンジを待たずに安全装備のアップデートが年次で行われることも稀ではありません。展示車両や登録済み未使用車などの購入を検討している方は、そのあたりもチェックすることをおすすめします。
軽自動車の場合はグレードによって搭載されている安全装備に差があることが多いことにも注意が必要です。衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制装置は同じものが多いのですが、特に運転支援系のシステムは搭載するエンジンが自然吸気とターボエンジンで安全装備が異なることが多いので注意したいところ。例えばスズキやダイハツは高速道路などで追従走行が可能なアダプティブクルーズコントロールはターボ車でしか選べません。自分の求める安全装備が装着されているかどうかユーザーはしっかりと予習する必要があります。
最近では衝突軽減ブレーキなどサポカー制度に対応した機能はほとんどのクルマで標準装備となっています。しかしそのシステムによる性能差はあります。その性能評価はNASVAが発表しているデータを参考にしたほうがいいでしょう。大事な人を乗せるクルマですので、デザインや人気ではなく、安全性の高さで選んでみるというのも良いでしょう。
カーリースなら安全性の高い軽自動車に思ったよりも低い金額で乗れるかも(カルモくんからのお知らせ)
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軽自動車の安全性能は年々高まっている
2020年度では日産ルークス/三菱ekスペースなども行われると思いますので、軽自動車の主力モデルであるスーパーハイトワゴンの評価も出揃う可能性が高いです。人気の高いクルマが走行性能や安全性能が高いのかどうか見極めるためにもこのNASVAが公表しているデータを参考にしたほうが良いでしょう。クルマは大切な人を乗せる乗り物です。価格の安い軽自動車でも現在では安全装備は充実していますし、同じ価格帯であればより安全なクルマ選びを行うほうが、カーライフを充実させることができます。
なお、今回の記事のデータ元となった独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)は、ホームページでテストの詳しい結果やテスト風景の動画などを公開しています。気になる車がある方はぜひチェックしてみてはいかがでしょう。
※記事の内容は2021年1月時点の情報で制作しています。