自動車の安全装備の中でも、最近特に注目を集めているのが「自動ブレーキ」や「ぶつからないブレーキ」などと呼ばれる「被害軽減(自動)ブレーキ」*と、アクセルとブレーキの踏み間違いによる急発進を防止する「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」*に代表される「先進安全技術」です。
ここではそれらの装備を中心にスバルの先進安全性能についてチェックしてみましょう。
*各技術の名称は「サポカー」「JNCAP」など公的機関で使われる一般名称でなるべく統一しています。スバルの名称との対照やスバルの車種別の装備状況は文末の別表をご確認ください。
【概況】今も一歩先をゆく「ぶつからないブレーキ」の元祖
スバルは2010年にレガシィに搭載した第二世代の「EyeSight(アイサイト)」で、国産車として初めて完全停止する衝突被害軽減用自動ブレーキの、国土交通省の認可を受けました(第1は前年のボルボXC-60)。
「アイサイト」は「ぶつからないブレーキ」というキャッチーなCMと、約10万円という、それまでの衝突被害軽減ブレーキに比べ大幅に安くなった価格のおかげで大ヒットとなり、今日の先進安全装備トレンドの礎を築きました。
実はスバルはこの技術の研究を1980年代から開始しており、1999年以降、「ADA」や「Siクルーズ」として前車追従型オートクルーズや車線逸脱警告などの機能を実装していました。ステレオカメラから始まり、赤外線レーザーやミリ波レーダーなども試しつつ、その後、高性能かつ安価なステレオカメラシステムの開発に成功し、2008年に初めて「アイサイト」として世に送り出します。実はこの段階で完全停止は技術的に可能でしたが、国交省の理解を得るまで2年の月日が必要だったのです。
現在の「アイサイト」は2014年のレヴォーグから搭載が開始された3世代目のものがベースとなっています。「被害軽減(自動)ブレーキ」は相変わらずステレオカメラを使用しており、長年の画像認識と解析データ蓄積への自信(とおそらくコスト的な問題)で、悪天候などに強いとされるミリ波レーダーは搭載していません。しかし公的機関の各種テスト結果で「アイサイト」は高い評価を獲得しており、やはり他のメーカーに対してのアドバンテージは今もあります。さらに「ツーリングアシスト」機能を持つ「アイサイト」なら最先端の一つといっていい内容です。
ダイハツからOEM供給を受ける軽自動車とコンパクトカー以外では、スバルが生産する国内向けの乗用車のうち、スポーツカーのBRZとWRX STIを除いた全車種・全グレードに「アイサイト」が搭載されています。
サポカーで最も上位の「サポカーSワイド」認定に必要な機能は
「被害軽減(自動)ブレーキ(対車両、歩行者)」
「ペダル踏み間違い時加速抑制装置(前方)」
「車線逸脱警報装置」
「先進ライト」
の4つですが、「アイサイト」の「アイサイトコアテクノロジー」と呼ぶ機能には「先進ライト」が含まれておらず、一部車種・グレードは「アイサイトセイフティプラス」というメーカーオプションを装着する必要がある(一部グレードは設定なし)ため、全車がサポカーSワイド該当とはなっていません。
ただし全車に標準となる「アイサイトコアテクノロジー」には上記機能のほかに
「ペダル踏み間違い時加速抑制装置(後方)」
「後方ブレーキ」
「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)*全車速追従」
「車線維持支援機能」
「先行車発進お知らせ機能」
といった先進安全装備が含まれているのはさすがです。
一方で「標識認識機能」は画像処理容量の問題で優先順位を下げているとアナウンスをしており、「アイサイト」には用意がありません。
今回は先進安全運転支援装置の中でも特に重要な「被害軽減(自動)ブレーキ」と「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」を中心に「アイサイト」をチェックしてみましょう。
【被害軽減(自動)ブレーキ】進化を続ける独自のステレオカメラ
最近の「被害軽減(自動)ブレーキ」の主流は「ミリ波レーダー+単眼カメラ」の組み合わせです。ミリ波レーダーは天候に左右されにくく、遠くまで検知できるのが特徴ですが、一方で対象物の大きさや種類、道路の白線などを見分けるためにはカメラの搭載が必要となります。
しかしスバルの「アイサイト」はステレオカメラだけで、ミリ波レーダーは現在、搭載をしていません(過去には併用していたこともありました)。前述のように長年の画像データ解析の蓄積があるために、ステレオカメラで十分と判断しているようです。また画像の高解像度化を図ることで、悪天候や逆光などカメラの弱点とされていた部分をカバーし、先行車のブレーキランプも認識対象とすることなども加えて、作動条件をより広げています。
対応するのは、車両と歩行者、そして二輪車、自転車です。
「アイサイト」の「被害軽減(自動)ブレーキ(対車両、歩行者)」の作動条件は「対象物との速度差が50km/h以内(歩行者は35km/h以内)」と表記されており、作動速度域は約1km/h(Nレンジのときは4km/h)から160km/hまでと非常に幅広くなっています。
作動プロセスは、まず音とディスプレー表示で警告し、弱めの1次ブレーキが作動、その段階でブレーキを踏むと強力なブレーキアシストが行われ、さらに衝突のおそれが高まると強い2次ブレーキを作動させるというものです。
警告から緊急ブレーキまでのあいだに、事前ブレーキとブレーキアシストのどちらか一方を作動させるメーカーが多い中で、スバルは両方とも作動させます。
「ぶつからないブレーキ」として他社に先駆けて「アイサイト」を実装したスバルの「被害軽減(自動)ブレーキ」。その機能は非常に優れており、最先端のものの一つといえるでしょう。
【ペダル踏み間違い時加速抑制装置】「アイサイト」には後方ブレーキ機能も組み込まれている
スバルの「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」は前方はステレオカメラ、後方は超音波ソナーを使用し、前後方向の出力抑制に加えて後方ブレーキ制御も組み込まれています。なお、スバルは「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」に前方ブレーキ制御があるとの表記をしていません。ただし前述のように「被害軽減(自動)ブレーキ」の作動速度域が時速約1km/h(Nレンジのときは4km/h)からとしています。
「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」としては後方へのブレーキ制御まで組み込んでいますので、高いレベルにあります。
【その他の機能】車線維持支援機能やACCの充実ぶりが光る
「被害軽減(自動)ブレーキ(対車両、対歩行者)」「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」「車線逸脱警報」「先進ライト」の「サポカーSワイド」必須条件4項目以外も「アイサイト」の標準機能は非常に充実しています。
「車線維持支援」は逸脱を抑止するだけでなく車線中央を維持する機能も併せ持っています。「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」も全車速追従型です。「標識認識機能」はありませんが「先行車発進お知らせ機能」も装備されます。
さらに「WRX S4」「レヴォーグ」「フォレスター」にはACC作動時に先行車と車線を認識して0~120km/hまでステアリングサポートを行う「ツーリングアシスト」機能が標準となります。これは日産の「プロパイロット」と近い「自動運転レベル2」(部分自動化)に相当する先進的な機能(とはいえ、あくまで主役は人間であり、システムはサポート役)です。
【車種別の採用状況】BRZとWRX STI以外は全車標準、走り屋にはWRX S4がおすすめ
ユーザーが限られるスポーツタイプのBRZとWRX STIを除いたスバルが生産する全車種・全グレードに「アイサイト」が搭載されています。走りが好きな方にはWRX S4には「ツーリングアシスト」も組み込まれたタイプの「アイサイト」が装備されますので、検討してみてはいかがでしょう。
【まとめ】今も「アイサイト」が業界をリードしている
他社に先んじて先進安全装備の開発、実装を行ってきたスバル。現在も「アイサイト」が持つ機能、性能は最も進んでおり、業界をリードする存在です。
*紹介した内容は2019年7月現在の情報です。
*先進安全装備は天候や道路状況などで作動しないことや十分に性能を発揮しないことがあります。装備を過信せず車を操るのはドライバーだということを忘れず運転してください。
「サポカー」「JNCAP」など公的機関で使われる各技術の名称とスバルの名称との対照表
サポカーSワイド | 先進安全装備名称 | スバルの名称 |
---|---|---|
○ | 被害軽減(自動)ブレーキ(対車両・歩行者) | プリクラッシュブレーキ |
○ | ペダル踏み間違い時加速抑制装置(前方) | AT誤発進抑制制御 |
ペダル踏み間違い時加速抑制装置(後方) | AT誤後進抑制制御 | |
○ | 車線逸脱警報 | 車線逸脱警報 |
車線維持支援 | アクティブレーンキープ | |
○ | 先進ライト | ハイビームアシスト、アダプティブドライビングビーム、ステアリング連動ヘッドランプ |
ACC〈アダプティブ・クルーズ・コントロール〉 | 全車速追従機能付クルーズコントロール | |
標識認識機能 | − | |
先行車発進お知らせ機能 | 先行車発進お知らせ機能 | |
後退時ブレーキ | 後退時ブレーキアシスト | |
独自装備 | ツーリングアシスト(ACC+ステアリング制御) |
スバルの車種別の装備状況
△ オプション
※1 一部グレードはオプション
※2 一部グレードは設定なし
※OEM車は供給元のメーカー記事を参照ください(ジャスティ=ダイハツトール、シフォン=ダイハツタント、ステラ=ダイハツムーヴ、プレオ+=ダイハツミライース、ディアスワゴン=ダイハツアトレーワゴン)
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※記事の内容は2019年8月時点の情報で執筆しています。