車の傷消しは初心者でも簡単にできるのでしょうか。また、業者に傷の修理を依頼する場合は、どれくらいの費用がかかるのかも気になるところです。
そこで、セルフ補修と修理に出す場合の費用面の違いと併せて、自分で傷を消す方法や注意点、傷の修理に関する費用負担を減らす方法などについて詳しく解説します。
車の傷の修理は、簡単なものからプロに任せるべき傷まで、さまざまです。傷の見極め方や消し方などについて、自動車整備士の私、若林がご紹介します。
この記事のPOINT
- 表面の浅い傷や小さい傷は、傷消し剤を使ったセルフ補修で隠すことができる
- 傷消し剤はコンパウンド、ワックス、タッチペンなど7タイプあり、適した傷や使い方が異なる
- 下地が見えるほどの傷や板金塗装が必要なへこみは、傷消し剤で
車の傷の消し方とは?修理に出す場合とセルフ補修の違い
車に傷をつけてしまった場合、業者に依頼して修理してもらう方法と、市販の傷消し剤を使ってセルフ補修で目立たなくする方法があります。ここでは、どのような傷でどちらの手段をとるべきか、どの程度の費用がかかるかについて確認しておきましょう。
〈業者に依頼した場合とセルフ補修の比較〉
適した傷の程度 | 費用の目安 | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|---|
業者に依頼 | ・大きな傷やへこみ、事故による損傷など、程度の重いもの ・板金、塗装が必要な場合 | 数千円〜数万円 | ・プロが作業するため仕上がりがきれい ・さまざまなタイプの傷に対応している | ・小さい傷でも場合によっては修理代が高くなる ・大がかりな修理の場合は10万円以上かかることも |
傷消し剤によるセルフ補修 | ・飛んできた石や砂などでできた小さな傷やへこみなど、比較的程度の軽いもの | 500円〜2,000円程度 | ・コストを抑えられる ・業者に依頼する手間が省ける ・比較的簡単にできる | ・板金、塗装技術が必要なものは直せない ・仕上がりはプロに劣る |
傷消しを業者に依頼する場合
車の傷を直したい場合は、ディーラーやカー用品店、ガソリンスタンド、整備工場などに依頼できます。知識と技術を持ったプロの整備士が作業するため、仕上がりの状態がよく、傷やへこみはほとんど目立たなくなります。
多くの業者がボンネットやフレーム、ドア、フェンダーなど、ボディのさまざまな箇所にできた傷やへこみに対応していますが、板金や塗装が必要な大きな傷を消す場合は専門技術が必要なため、ディーラーやガソリンスタンドなどでは取り扱えない場合があります。
費用は、比較的軽い傷やへこみであれば、費用は数千円〜数万円で収まることが多いです。一方、ボンネットやドアなどに大きな傷がついた場合はパーツ交換となり、10万円を超えてしまう可能性もあるでしょう。
なお、部位ごとの修理費用相場は以下のとおりです。
バンパーについた傷の修理費用
バンパーについた傷の修理費用は、15cm×15cmに収まる傷であれば10,000~20,000円程度が相場です。
ただし、バンパーをこすってしまった場合など、広範囲に傷がついているようなケースでは、傷の修理と同時に塗装も必要になります。その場合、30,000~50,000円程度の費用がかかってしまうことも少なくありません。
フェンダーについた傷の修理費用
タイヤの周りを覆っているフェンダーに傷がついた場合の修理費用相場は、すり傷の場合で20,000~40,000円程度です。傷だけでなくへこみもある場合は、50,000円を超えてしまう可能性もあるでしょう。
また、後方のフェンダーは構造がやや複雑なことから、取り外しに手間がかかり、前方のフェンダー修理より費用が高くなる傾向があります。
ドアについた傷の修理費用
ドアについた傷の修理費用相場は、傷のある箇所や傷の程度によって大きく異なります。
少しこすっただけの小さな傷であれば数千円〜数万円程度で済む場合もありますが、へこみやゆがみがひどい場合やドアの素材が板金塗装不可のケースなど、ドア自体の交換が必要な場合は、10万円を超えてしまうこともあるでしょう。
フレームについた傷の修理費用
フレームは車の骨組みであり、安全に走行するために重要な部位です。修理工程も複雑になることから、ほかの部位に比べて修理費用は高額になる傾向があります。
傷の程度や状態によっても大きく変動しますが、安くても10万円程度はかかると思っておいたほうが無難でしょう。ダメージの大きい傷の場合は、100万円を超えるようなケースもあります。
傷消し剤を使ってセルフ補修する場合
飛んできた石や砂などで走行中についてしまった小さな傷であれば、市販の傷消し剤を使ってセルフ補修が可能です。
最近ではさまざまな種類の傷消し剤が販売されており、500円前後の手頃なものから2,000円を超えるものまで、種類や性能、価格も幅広くそろっているため、傷の状態に適したものを予算内で選ぶことができます。
一方で、使用する傷消し剤や傷の状態によっては、仕上がりが悪くなってしまうことがあります。また、深い傷や大きなへこみの場合はセルフでの補修は難しいでしょう。
車の傷の修理費用は、大きさと深さ、そしてへこみ、歪みがあるかどうかに加え、傷の場所によっても異なります。また、リアフェンダーとリアドアなど、複数のパネルにわたった傷はより高額になる傾向があります。
傷の修理のために知っておきたい塗装の基礎知識
車の傷を自分で修理できるかどうかを判断したり、傷の修理をしたりするには車の塗装の構造を知っておくといいでしょう。
一般的な工程は次のようなものです。
1. 金属部分の錆を防ぐための電着塗装を行う
2. カラー塗料をしっかり密着させ耐久性を高めるとともに、色を引き立てるための中塗り(サーフェイサー)をする
3. その上に車のボディカラーとなる上塗り(カラー塗装)を行う
4. さらにつや出しとカラー塗装の保護のためのクリア塗装を行って完成。パールカラーの場合はカラー塗料の上にパール入りのクリア塗料を施し、さらに仕上げのクリア塗装を重ねる
高級車の中には、中塗りやクリア塗装を何度も重ね、6~8層になっている車もあります。
車にできる傷の種類
車につく傷には種類があり、傷の種類によって適した傷消し剤や修理方法が異なります。ここでは、車にできやすい傷の種類や、傷ができる原因について見ていきましょう。
すり傷
縁石やガードレール、駐車場の壁などに車体をこすってできてしまう傷です。車のサイド部分にできやすい傾向があり、バンパーやフロントなどによく見られます。傷が比較的広範囲になるため目立ちやすく、修理の際にはカラーの色合わせなどに細心の注意を払う必要があります。
線傷
線傷は程度の差はあれ、車を使用していくうえで避けられない傷といえます。洗車時の拭き上げにマイクロファイバーなどのやわらかい素材を使用した専用の洗車用クロスを使用せず、コットンのタオルを使用しただけでも細かい線傷、いわゆる洗車傷ができてしまいます。
また、ドアハンドル付近を爪で引っかいたり、指輪や腕時計、バッグの金具などが当たったりすることでも線傷になります。走行中に木の枝などがふれて傷付くこともあり、「知らないうちに線傷がついていた」というケースも多く見られます。
へこみを伴う傷
へこみを伴う傷は、何かにある程度の強さで接触した際の衝撃によってできます。へこみの程度によっては板金塗装では済まず、パネル交換となることもあるので比較的修理費用が高額になりがちな傷といえます。また、へこみができるほど接触した場合は、塗装面もダメージを受け、すり傷や塗装のはがれなどが起きている場合がほとんどです。
なお、事故などで大きくへこんだ場合はフレームが損傷したり、歪んだりしている場合もあるのでセルフ修理で済ませずプロに修理を依頼し、しっかりとチェックしてもらいましょう。
点状の細かい傷
フェンダーやバンパーなどにつきやすいのが点状の傷です。こうした下回りや足回り周辺につく傷は飛び石によるものがほとんどで、未舗装路を走る機会が多いほどつきやすくなります。
また、先行車や並行して走行する車が跳ね上げた飛び石がボディに当たって傷がつく場合もあります。点状の傷は一つひとつの傷の面積が小さく比較的セルフ修理しやすい傷といえますが、深く傷付いている場合もあるのでよく確認しましょう。
車の傷を修理するには、まずは塗装の構造のしくみを把握しましょう。また、どのような種類の傷がどういった経緯でついたのかを把握しておくと、修理に適した傷消し剤を選びやすくなります。
「傷消し剤」を使った車の傷の消し方
傷消し剤とは、小さな傷やへこみを目立たなくするために開発された商品の総称です。傷消し剤を使えば、比較的簡単に傷を目立たなくすることができます。コンパウンドやパテ、ペンやスプレーなどさまざまなタイプがあり、傷の種類や大きさ、使用する場所によって使い分けることができます。
セルフ補修を行う際は、傷消し剤の特徴や選び方、傷消し剤で補修する場合のメリット・デメリットについて、あらかじめ把握しておきましょう。
傷消し剤を使うメリット・デメリット
傷消し剤を使用したセルフ補修には、次のようなメリットとデメリットがあります。
●メリット
記載された手順のとおりに作業を行うだけで、初めてでも簡単に補修できます。また、手頃な値段で購入できるものが多いので、業者に依頼するよりもコストを抑えられます。傷消し剤の中にはボディの水垢除去や撥水といったプラスアルファの効果を期待できるものもあるため、補修と同時にメンテナンスを行うことも可能です。
●デメリット
傷消し剤は多種多様な商品があり、適した物を選ぶには、傷やへこみの深さ、範囲、傷のある場所、車種やボディカラーなどさまざまな観点から判断する必要があります。
また、数種類の傷消し剤を組み合わせて使う場合、料金がかさんで結果的に業者に依頼するより高くなる場合もあるので注意が必要です。商品によっては使い方にコツがいるものもあり、作業のしやすさや仕上がりが大きく異なるので、事前にしっかり調べておくといいでしょう。
セルフ修理はコストが抑えられることが大きなメリットといえますが、専門知識や経験のあるプロの修理と同じように仕上がるわけではありません。また一見してきれいに仕上がっているようでも、耐久性に問題がある場合もあります。コストよりも仕上がりの美しさや持ちを重視するのであれば、プロに依頼するのがおすすめです。
傷消し剤の種類と特徴
セルフ補修できれいに仕上げるためには、傷に適した傷消し剤を選ぶことが重要になります。市販の傷消し剤には、おもにコンパウンド、ワックス、タッチペン、クロス、スプレー、パテ、シールの7タイプがあり、効果や適した傷、使い方が異なります。
補修方法によっては組み合わせて使用することもあるため、まずはそれぞれの特徴を理解しておきましょう。
傷消し剤のタイプ | 傷消し剤の特徴 |
---|---|
コンパウンド | 傷を研磨して目立たなくする |
ワックス | 表面をコーティングして傷を目立たなくする |
タッチペン | 塗装が剥げた部分を塗って埋める |
クロス | クロスで拭くだけで傷を目立たなくする |
スプレー | ボディカラーと同色の塗料で傷を塗り隠す |
パテ | へこみを埋めて平らにする |
シール | ボディカラーと同色のシールを貼って傷を隠す |
コンパウンド
コンパウンドは、車の表面を削って傷を目立たなくする研磨タイプの傷消し剤です。チューブ状や液体、シートタイプなどがあり、それぞれに粒子の粗さが異なるため、傷の種類や深さ、修復の工程に合わせて使い分けます。
ワックス
ワックスは、成分が傷に入り込んで埋めながら、表面をコーティングして傷を目立たなくするタイプの傷消し剤です。固形タイプと半練りタイプがあるほか、傷の表面を削って滑らかにする効果もある研磨剤入りのものもあります。
タッチペン
タッチペンは、小さいハケやペン先で塗装が剥がれた部分だけをピンポイントに塗ることができる傷消し剤です。錆落としなどの下処理が必要ですが、丁寧に塗り込むとほとんど傷が目立たなくなります。
クロス
拭くだけで傷を目立たなくすることができる、クロスタイプの傷消し剤です。クロスに染み込んだ研磨剤や潤滑剤などが細かなすり傷を目立たなくしてくれます。繰り返し使えるので、コストパフォーマンスにも優れています。
スプレー
ボディカラーと同じ色を塗り重ねることで傷を目立たなくする、傷消し剤です。広い範囲の傷を一気に目立たないようにしたい場合に向いています。
傷を研磨したり、埋め込んだりする効果はなく、錆落としなどの下処理も必要になりますが、撥水効果やコーティングの効果が得られるものもあります。
パテ
ボディについた小さなへこみを埋めて平らにする、肉盛り用の傷消し剤です。ペースト状が一般的ですが、曲面にも使いやすい粘土タイプや、マイクロバルーン配合の軽量タイプ、耐熱性のマフラー用など、傷の状態や補修場所に合わせたさまざまなタイプがあります。
シール
貼るだけで傷を隠すことができるシールタイプの傷消し剤です。ボディカラーと同色のシールを傷に貼るだけなので、初めてセルフ補修を行う方にも向いています。やわらかな素材で曲面にもきれいに貼れるタイプもあります。
今はインターネットで修理に関する情報が簡単に得られることもあり、傷消し剤を使用してセルフ修理をする方も増えています。カー用品店ではさまざまな傷消し剤がラインナップされていますが、傷の種類や程度によって適したアイテムは異なります。迷ったら商品知識が豊富なスタッフに相談することをおすすめします。
この傷なら消える!傷消し剤の選び方
車の傷消し剤は、使い分けたり組み合わせたりすることで、傷を目立たなくするだけでなく、ボディをよりきれいに保つこともできます。傷の状態別に効果的な傷消し剤をご紹介します。
細かな傷はワックスで
ボンネットなど平らな面についた細かな傷や浅い傷には、伸びがよく広範囲をカバーできるワックスがおすすめです。研磨剤入りのタイプなら、研磨とつや出しのダブル効果で長期間傷を目立たなくすることができます。
表面を削ることに抵抗がある場合は、研磨剤が入っていないタイプのワックスを使用しましょう。
浅い引っかき傷はコンパウンドで
こすったような浅い引っかき傷を消したいときは、コンパウンドが適しています。はじめは粒子の粗いタイプで表面を削り、段階的に粒子の細かいタイプに変えていくなど、傷の深さに応じて粒子の粗さを選ぶのがポイントです。
広範囲のすり傷にはスプレー
コンパウンドやワックスでカバーできないような範囲の広いすり傷は、スプレータイプが効果を発揮します。
ボディカラーと同色のスプレーを、重ね塗りするように数回に分けて吹き付けることで自然な仕上がりになりますが、塗装下地が見えるほどの深い傷の場合は隠しきるのが困難であることも押さえておきましょう。
ワンポイントの塗装剥がれはタッチペン
高速道路で飛んできた石がぶつかるなどして塗装が一部分だけ剥がれてしまった場合は、ピンポイントで傷消し剤を塗り込めるタッチペンタイプが適しています。
塗装が剥がれた箇所をペン先や刷毛(はけ)で叩くように塗り込むだけなので、扱いも簡単です。錆落としなどの下処理をすると効果が持続しやすくなります。
深い傷には合わせ技で
バンパーなどにえぐったような深い傷ができたときは、複数の傷消し剤を併用しましょう。
錆落としなどの下処理で表面をきれいにしたのち、メインのへこみにはパテ、周辺の細かい傷はタッチペンで補修し、仕上げにコンパウンドで全体を磨き上げると、傷はかなり目立たなくなります。
スプレーやタッチペンを使用する際は、自身の車と同じカラーナンバーのものを選びましょう。カラーナンバーはコーションプレートに記載されています。コーションプレートのある場所は車によって異なりますが、多くの場合エンジンルームや運転席、もしくは助手席側のセンターピラーの下側にあります。
傷消し剤の効果的な使い分け方
傷消し剤は、コンパウンドやパテといったタイプ別で選ぶほか、リキッドやペーストなどのテクスチャーの違いや、粒子の粗さの違い、水性や油性といった液性の違いなどで使い分ける方法もあります。
リキッドとペーストを使い分ける
同じタイプの傷消し剤でも、リキッドとペーストなどテクスチャーの異なるものがあり、用途に合わせて使い分けることができます。
ボンネットやルーフなど広範囲にわたって均一に傷消し剤を塗りたいときは伸びがいいリキッドタイプ、液垂れが心配な側面や曲面などは固めのテクスチャーのペーストタイプが適しています。
粒子の荒さによって使い分ける
コンパウンドは、粒子が大きい粗目から、中目、細目、極細、超微粒子まで粒子の大きさによって細分化されていて、粒子が粗いほど研磨する力が大きくなり、粒子が細かいほど弱くなります。
塗装補修の下地処理や錆落としをするときは粗目や中目、塗装補修の表面研磨や浅い傷には細目や極細、仕上げのくすみ取りやつや出しには超微粒子といったように、粒子の粗さを使い分けることできれいな仕上がりが期待できます。
水性と油性を使い分ける
コンパウンドやワックスといった傷消し剤の中には、水性と油性を選べるものがあります。
一般的に、油性は摩擦が少ないので表面を傷めにくく、伸びも良いため使いやすい傾向があります。対して水性は、扱いにコツがいりますが研磨力が高く、効率よく傷を目立たなくすることができます。
コンパウンドで車の傷を修理する際には、粒子の大きさが異なる複数のコンパウンドを使い分けるのが基本です。また、コンパウンドの種類を変えるときは、必ずスポンジも新しいものに交換しましょう。
コンパウンドを使った傷の消し方・修理方法
出典:soft99/商品情報
細かな傷の補修に使えるコンパウンドは、代表的な傷消し剤として多くのドライバーに愛用されています。コンバウンドに向いている傷・向いていない傷と併せて、実際に傷を補修する手順を詳しくご紹介します。
コンパウンドに向いている傷・向かない傷
コンパウンドは、水で濡らすと見えなくなるような浅いひっかき傷や、指でなぞってもひっかからない小さな傷を目立たなくするのに向いています。また、表面にこびりついた水垢や水滴の跡、塗装の酸化なども、コンパウンドで削り取ることができます。
一方、下地面にはのりにくいため、塗装の下地が見えているような深い傷を隠すことはできません。また、ピンポイントの傷やへこみにも適しません。
コンパウンドの使い方
コンパウンドを使う場合に必要な物や手順を紹介します。
〈準備する物〉
- コンパウンド(必要に応じて数種類)
- 布
- スポンジ
- マスキングテープ、養生テープ
〈手順〉
1. 車全体を洗う
ボディに砂や砂利がついた状態のままコンパウンドで磨いてしまうと、さらに車を傷つけてしまう可能性があります。まずはシャンプー洗車を行い、車全体の汚れをしっかり落としましょう。
2. 傷部分をコンパウンドで磨く
水で濡らして絞ったスポンジや布にコンパウンドをつけて、傷がある部分を磨いていきます。強くこすって表面を削りすぎてしまうとボディが変色することもあるため、力を入れすぎないように注意しましょう。そっと優しく、傷に沿ってまっすぐ磨いていくのがポイントです。
3. さらに粒子の細かいコンパウンドで磨く
ある程度傷が薄くなってきたら、もっと粒子の細かいコンパウンドで傷部分を磨きます。スポンジや布は、手順2で使ったものをそのまま使うのではなく、新しいものに変えましょう。最後は、液体コンパウンドで磨き上げて仕上げます。
コンパウンドを使うときの注意点
コンパウンドは研磨剤が入ったものが多く、超微粒子でも表面の塗装を削り取る可能性があります。車の塗装は非常にデリケートなので、削り取るリスクも考慮して作業を行いましょう。
また、樹脂やゴムにコンパウンドが付着すると変質してしまうこともあるので、タイヤや樹脂バンパーなどはマスキングテープなどで保護しておくと安心です。
今はボディガラスコーティングをしている車が多くなりました。強固なガラス皮膜をボディの表面に作り、傷や汚れから塗装面を守っているのです。それでも傷がつくことはあります。コンパウンドを使用するとこのコーティングがはがれてしまうおそれがあるので、修理前にコーティングをした店舗に相談してみることをおすすめします。
タッチペンを使った傷の消し方・修理方法
広範囲な傷に使えるコンパウンドとは対照的に、ワンポイントの小さな傷に効果的なのがタッチペンです。狭い範囲の小さな傷を狙い撃ちして補修できるのが魅力です。
タッチペンに向いている傷・向いていない傷
タッチペンはコンパウンドやワックスでは修復できないような小さな傷に有効です。傷のサイズに合わせてペンの太さを変えたり、割り箸など先端が尖ったものを併用したりすることで、かなり小さなスポット傷までカバーすることが可能です。
逆に、広範囲にできた傷や深い傷などは、タッチペンに向いていません。
タッチペンの使い方
タッチペンを使う場合に必要な物や手順を紹介します。
〈準備する物〉
- タッチペン
- 割り箸(必要に応じて先端を尖らせたもの)
- マスキングテープ、養生テープ
- 液体コンパウンド
- 耐水ペーパー(粗目、細目など数種類)
- 脱脂スプレー(あれば)
〈手順〉
1. 洗車後、マスキングテープなどで保護する
車全体を洗って汚れを落とします。タッチペンの塗料がしっかりと定着するように、ボディについているワックスや油分も脱脂剤などを用いて除去しましょう。その上で、傷以外の箇所に塗料がつかないよう、傷の周囲をマスキングテープなどで保護します。
2. タッチペンで傷部分を塗る
タッチペンで、点を打つように傷部分を埋めていきましょう。傷が小さい場合は、割り箸に塗料を乗せて少しずつ塗っていくと、補修しやすい上に塗りすぎを防げます。
塗り終わったら乾燥するまで待ち、乾いたら塗料を塗り重ねます。傷口から塗料が盛り上がるくらいまで数回繰り返しましょう。
完全に乾燥したらマスキングテープをはがし、そのまま1週間程度、自然乾燥させます。
3. 耐水ペーパーを使って磨く
乾燥したら、耐水ペーパーを濡らして塗料で盛り上がった部分が平らになるように研磨します。粗い目の耐水ペーパーから始め、徐々に細かい目のものへ変えていきながら、ボディと塗料の段差がなくなるまで続けましょう。
最後に、液体コンパウンドでつやが出るまで磨けば完了です。
タッチペンを使うときの注意点
タッチペンで傷をなぞるだけだと、かえって傷を目立たせてしまう可能性があります。
作業前に脱脂剤で油分を落とすなどの下処理を行い、ボディカラーと同色で、傷口に合ったサイズのものを選ぶようにしましょう。
タッチペンは使い方が簡単なうえにそれほど高額なものではないので、自身の車に合ったカラーのタッチペンを応急処置用に車に積んでおくのもおすすめです。なお、特殊なボディカラーなどの場合は、オーダーすることもできます。
パテを使った傷の消し方・修理方法
車体のへこみには、コンパウンドと併せてパテを使用するのがおすすめです。小さいへこみなら素早く補修できます。
パテに向いている傷・向いていない傷
バンパーをぶつけてできた傷など、コンパウンドやタッチペンなどではカバーできない深い傷や大きなへこみは、パテを埋め込むことで表面をなめらかにできます。パテの表面にボディカラーと同色の塗料を塗れば、大きな傷でも自然な仕上がりにできるでしょう。
一方、小さな傷やこすり傷のような浅い傷には向いていません。ただし、深い傷を埋めた後にできた気泡を埋めるための薄づけパテであれば、ごく浅い線傷に使える場合もあります。
パテの使い方
パテを使う場合に必要な物や手順を紹介します。
〈準備する物〉
- パテ
- 耐水ペーパー(粗目、細目など数種類)
- 脱脂スプレー
- マスキングテープ・養生テープ
- 液体コンパウンド
- 塗装用カラースプレー
〈手順〉
1. 下準備を行う
パテがしっかりと定着するように車を洗って汚れを落とします。脱脂スプレーなどで油分もしっかり取り除いておきましょう。
その上で、へこみの周囲が汚れないようにマスキングテープなどで保護し、耐水ペーパーでへこんだ部分をこすって表面を滑らかにします。
2. パテを塗る
パテをへこみ部分に塗り込んでいきましょう。へこみが大きい部分にパテを厚く塗り、へこみがない部分に向かって薄く広げていくときれいに塗れます。
パテを塗り終えたら15〜20分ほど乾燥させましょう。
3. 耐水ペーパーを使って磨く
パテが乾いたら、耐水ペーパーを使ってパテが盛り上がっている部分を研磨します。表面がつるつるになるまで、耐水ペーパーの粒子の粗さを変えながら磨いていきましょう。外側から内側に向かって磨くときれいに仕上がります。
ここまで済んだらパテのカスなどを洗い流し、脱脂スプレーで汚れを除去しましょう。
4. パテ部分を塗装する
カラースプレーでパテ部分を塗装します。なお、塗装箇所にスプレーダスト(塗面がザラザラになる現象)が発生しないように、カラースプレーで塗装する前にボカシ剤をスプレーしておくといいでしょう。
ボカシ剤が乾かないうちにカラースプレーで塗装し、3~5回程度塗り重ねながらつやのあるボディに仕上げます。塗料が完全に乾くまで1週間程度待ち、最後にコンパウンドで磨いて完了です。
パテを使うときの注意点
パテを塗り込む部分に油分などの汚れが残っていると、パテが剥がれやすくなります。パテを塗る前は必ず洗車して、耐水ペーパーで古い塗料を落とす、脱脂スプレーなどで油分を落とすといった下準備を行いましょう。
へこみ傷はほかの傷よりも手順が多く複雑であることに加え、そろえるアイテムが多くコストもかかります。車の傷の修理をしたことがない方には、ハードルが高いかもしれません。かかる時間やコスト、仕上がりなどトータルで考えて、セルフ修理か業者に依頼するかを決めるといいでしょう。
傷消し剤で消せないのはどんな傷?
気になる傷やへこみを手軽に補修できる傷消し剤ですが、中には補修できない傷もあります。傷消し剤が使えない傷と、対処法をご紹介します。
塗装の下地が見えている
車の傷消し剤で補修できるのは、最も表面にあるクリア層と呼ばれている部分です。
水をかけると見えなくなる程度の傷であればクリア層が剥がれたごく浅い傷なので、傷消し剤で目立たなくすることができます。一方、水をかけても見えたり下地が出ていたりするような傷は、傷消し剤でカバーできません。この場合は業者に依頼して修理してもらいましょう。
大きな歪みやへこみがある
塗装技術の向上により、塗装膜が非常に薄い車も増えています。ボディカラーもソリッド色にメタリックを微妙に混ぜるなど複雑な色合いになっているため、浅い傷でも傷消し剤を使うことでかえって目立つ場合もあるでしょう。
仕上がりにこだわるなら、業者に依頼して修理してもらうことをおすすめします。特に大きな歪みやへこみなどは、板金塗装ができる業者に依頼しましょう。料金はかかりますが、衝撃による歪みもきれいに直してもらえます。
フレームについた傷は危険!極力さわらずにプロに任せるべき
先にも少しふれましたが、フレームは車の骨格であり土台となる部分です。フレームが損傷した、またはフレームを修理・交換した車は「修復歴車」、いわゆる事故車扱いになり、リセールバリューはほぼゼロになります。そのくらい重要な部分なのです。
車にへこみや歪みがあれば、修理はプロに任せるべきといえます。
元々は軽度の傷だったのに、専門知識なしで修理して歪みを生じさせてしまい修復歴車になるケースも。フレームが歪んだり損傷したりすると車の安全性が保たれないこともあるので、早急にプロに修理を依頼しましょう。
セルフ補修は正解?車の傷消しをしたことがある方の声
今まで自分で傷の修理を行ったことがない方なら、自分でできるかどうか、そして仕上がりがどうかなどが気になるのではないでしょうか。ここでは、実際に車の傷の修理をした経験がある方の体験談をご紹介します。
●修理することでさらに愛着がわいた
「引っかき傷とすり傷ができたのでコンパウンドを使用して修理しました。塗料は使用しませんでしたが、傷があったとはまったくわからないレベルにまで仕上げられたので満足しています。手間も時間もかかりましたが、その分車に愛着がわきました。
コンパウンド数種類とクロスを3、4枚購入しましたがそれでも店に依頼するよりも安く済んだので、これからも自分で修理すると思います」
●何といっても安いのがいい
「目立つ引っかき傷があったので、カー用品店でスプレーを購入し、チャレンジしてみました。カラーナンバーはちゃんと確認して同じものを選んだのですが、いざボディに吹き付けてみると微妙に色が違いました…。
車の塗装は日焼けによって退色するとは聞いていたのですが、まさかここまでとは思っておらず、ちょっと気になります。板金塗装業者はこの微妙な色合わせもしてくれるみたいなので、任せたほうがよかったかな」
●費用面ではよかったけれど、仕上がりはいまいち
「知らないあいだに引っかき傷がついていました。傷は浅かったのですが、新車で目立って恥ずかしいので自分で修理してみようと思いました。傷の周りをコンパウンドで滑らかにして、その上にスプレーを吹き付けるというやり方です。
目立たなくはなりましたが、やはりいかにも“素人の修理“とわかる状態ですね。費用面のメリットはありますが、仕上がりを考えると業者に依頼すべきだったかなと思います」
傷の修理に関する費用負担を減らすには
車の傷は早めに修理しておきたいものですが、高額な出費になるのはできれば避けたいところです。ここでは傷の修理費用を抑える方法をご紹介します。
車両保険は一般型を選ぶ
車両保険には、補償範囲の広い「一般型」と補償範囲の狭い「エコノミー型」の2種類があります。エコノミー型のほうが当然保険料は安くなりますが、自分でこすったことによる傷などの修理費用は補償されません。
一般型なら、自損事故でついた傷のほか、自転車との接触や当て逃げ(相手車不明)によってできた傷の修理費用なども、幅広くカバーします。万が一のことを考えると、一般型を選んでおいたほうが結果的に負担を抑えられる可能性が高いでしょう。
車に傷がついたらできるだけ早く修理することも、費用を抑えることにつながります。傷は放置すればするほどダメージが広がり、程度によっては塗装面を超えてパネルそのものに影響が及ぶことに。そうなると修理費用はかなり高額になります。
修理するより「乗り換える」
複数の業者から見積もりを取得してみて、どの業者でも高い費用がかかるならば、「乗換えどき」とも考えられます。
車の安全性能や燃費性能は急速に向上していて、新しい車ほど燃費が良く、安全性に優れています。また燃費や環境性能に優れた車を購入すると減税などの対象にもなります。
次の車検はいつか、今の車が自身のライフスタイルに本当にマッチしているか、もっと燃費の良い車に乗り換えたら維持費がいくら変わるか、などさまざまな角度から検討するのがいいでしょう。
初めての傷消し剤は使いやすいものを選びましょう
傷消し剤を利用することで、リーズナブルに傷の補修ができるようになります。傷消し剤にはさまざまな種類がありますが、初めてセルフ補修を行う場合は、使いやすさを重視して選ぶと失敗しにくくなります。
なお、補修方法によってはかえって傷跡が目立ってしまうこともあるので、仕上がりを重視する場合は、業者への依頼や乗り換えも選択肢に入れておきましょう。
よくある質問
Q1:車の傷を消す方法は?
A:車の傷を消すには、ディーラーや修理工場などの業者に依頼する方法と、市販の傷消し剤を使ったセルフ補修の2通りの方法があります。傷の大きさや費用、仕上がりのきれいさなどで選ぶといいでしょう。
Q2:傷消し剤にはどんな種類がある?
A:傷消し剤には、コンパウンド、ワックス、タッチペン、クロス、スプレー、パテ、シールの7タイプがあります。それぞれ適した傷や効果、使い方が異なります。
Q3:傷消し剤のメリットとデメリットを教えて!
A:傷消し剤は初めてでも簡単に補修できるものが多く、価格も手頃でコストを抑えられるのがメリットです。一方、複数の傷消し剤を組み合わせることで業者に依頼するより高くなってしまったり、仕上がりがいまひとつで、かえって傷跡が目立ってしまったりするデメリットがあります。
※この記事は2023年3月時点の情報で制作しています