雪道を走る際に必要となるタイヤのチェーンは、冬のドライブの必需品です。しかし、最近はスタッドレスタイヤが主流なこともあり、雪の少ないエリアに住んでいると、チェーンを着ける機会はあまり多くはないでしょう。いざチェーンを装着しようと思っても、難しそうで抵抗がある、つけ方がわからずに困ってしまったという声もよく耳にします。そこで、チェーンの選び方からつけ方までをご説明します。
チェーンを選ぶときのチェック項目
チェーンをつけていると、雪道でのスリップやスピンなどの危険を防いでくれますが、タイヤに合ったものを正しく装着していなければ、効果を発揮することができません。
チェーンを準備する際は、次の点をしっかり確認して選ぶようにしましょう。
・チェーンとタイヤのサイズが合っているか
チェーンのサイズがタイヤより小さいと装着できず、大きすぎると空回りして、かえって危険を伴います。そのため、チェーンを選ぶときは、事前にタイヤのサイズを確認しておくことが大切です。
・タイヤハウスのクリアランス
タイヤのトレッドとフェンダーの隙間や、ショックアブソーバーとタイヤの隙間など、タイヤハウスのクリアランスが十分でないと、チェーンが車体に干渉して、車体を傷付けたり、思わぬ事故を招いたりしてしまいます。チェーンを装着できる隙間があるかを確認し、難しそうなときはカー用品店のスタッフなどに相談してみましょう。
・JASAAの認定マークの有無
JASAA(一般財団法人 日本自動車交通安全用品協会)が定める規格に基づいて製造され、実車走行試験で性能が確認された非金属チェーンには、認定マークと認定票が表示されています。非金属製のチェーンを購入するときは、安全な走行のためにも認定マークと認定票があるチェーンを選ぶことをおすすめします。
・チェーンのつけやすさ
チェーンは寒い野外や雪が降る中で装着する可能性が高く、シチュエーションによっては、道路脇などの狭い場所で取り付けなければならないかもしれません。できるだけ早く、かつ確実に装着できるように、つけやすいタイプのチェーンを選ぶといいでしょう。
チェーンはどのタイヤにつける?
スタッドレスタイヤは4本すべてを交換する必要がありますが、チェーンは2本のタイヤに装着します。
どれでも好きなタイヤにつけていいわけではなく、基本的には駆動輪に装着します。前輪駆動車(FF)は前輪の2本、後輪駆動車(FR)は後輪の2本、四輪駆動車(4WD)はメーカーの指定する2本となります。
駆動輪ではないタイヤにつけてしまうとチェーンの性能を発揮できず、スリップしたり、ブレーキが利きにくくなったりして、事故につながる危険性が高まります。自分の車の駆動輪がわからないときは、車の取扱説明書やメーカーのインターネットサイトなどで調べるか、ディーラーやカー用品店のスタッフに確認しましょう。
なお、4本すべてのタイヤにつけても問題のないことが多いですが、購入に2倍の金額がかかり、装着や取り外しの手間も2倍になるので、特別な事情がない限りは4本ともにつける必要はないと言えるでしょう。
チェーンの種類とつけ方
チェーンには主に4種類あり、それぞれ特徴やつけ方が異なります。
ここでは、タイプごとの特徴と一般的なつけ方をご説明します。
金属製チェーン
金属の輪が鎖状に連なった形状のチェーンです。チェーンが平行に並んだラダーチェーンと、クロスした形状の亀甲チェーンがあり、亀甲型の方が雪道や凍結路に強く、乗り心地も安定しています。凍結路でも滑りにくく、価格も安いというメリットがありますが、走行時の振動と騒音が大きく、雪のない路面を走ると切れやすいのが難点です。
<つけ方>
1. 裏表を確認し、チェーンの中央がタイヤのてっぺんに来るようにしてタイヤにかぶせる
2. タイヤの内側へ手を伸ばし、チェーンの両端にあるフックを留める
3. チェーンが均等になるように調整してから、2と同様に外側のフックも留める
4. 付属のゴムバンドのフックを、3の連結部分を起点にして均等に掛けていく
5. 車を数メートル走行させて微調整する
タイヤを傷つけないように、ゴムバンドのフックは外側に向けて留めましょう。
FF車の場合は、左右にハンドルを切ってタイヤを斜めにしておくとつけやすくなります。
非金属性チェーン
ゴムやウレタンなどの素材でできたチェーンです。金属製チェーンに比べて走行時の振動や騒音が気になりづらく、つけ方も簡単です。一方で、折りたたみにくいため収納に場所を取り、価格も高価になります。フックの形状や固定方法はメーカーによって異なるので、説明書を読んで確認しておきましょう。
タイヤの向きを変えなくてもつけられます。
<つけ方>
1:チェーンをV字に広げ、中央の連結部分をタイヤの奥側に置く
2:チェーンをまっすぐにして、両サイドをタイヤのてっぺんに向かって引き上げる
3:内側のジョイントを結合する
4:チェーンが均等になるように整えてから、外側のフックを上下とも留める
5:外側のフックをしっかり閉めて固定する(タイプによってはゴムバンドで固定する)
布製チェーン
オートソックともいわれる特殊繊維製のチェーンです。コンパクトに折りたためて収納場所を取らず、非常に軽く、装着に力もいらないので、女性や高齢者にも扱いやすいというメリットがあります。ただし、装着したまま雪道や凍結路に停めておくと路面に貼りついて素材を傷めてしまうため、駐車のたびに外す必要があります。なお、多少のズレは走行中に調整され、締め込むなどの必要がなく、力作業を一切必要としません。
<つけ方>
1. タイヤのてっぺんからチェーンをかぶせる
2. タイヤの上半分くらいに奥までしっかりかぶせたら、車を動かしてタイヤを半回転させる
3. 下側だった部分がてっぺんにきたら残りをかぶせる
スプレー式チェーン
樹脂原料などの液体をタイヤに吹きかけてグリップ力を高めるスプレーです。装着の手間がなく手軽ですが、乾燥した路面を走ったり、走行距離が長かったりすると効果が落ちるので、緊急時やチェーンをしていない駆動輪以外のタイヤのスリップ防止として使う程度にとどめておく方が安心です。スプレーのみではチェーン規制の道での通行も認められていません。
<つけ方>
4本すべてのタイヤの表面にむらなく吹きかける
車内が高温になると破裂する恐れがあるため、車内に放置しないなど管理には十分気を付けましょう。
表示された走行可能距離は目安で、達する前に効果が薄れる可能性もあります。
チェーン装着時のポイントと注意点
一般的なつけ方をご紹介しましたが、製品によって異なるケースもあるので、必ず取扱説明書の通りに装着しましょう。また、走行中に外れると事故につながることもあるので、しっかり固定されているかを確認してから乗るようにしてください。表裏があるタイプは、間違えるとパンクなどの原因になる点も注意が必要です。
クリアランスが狭い車や、重たかったり硬かったりするチェーンの場合は、ジャッキで車体を上げた方が早く簡単につけられることもあります。状況に応じてやりやすいつけ方を選びましょう。
つけ方を重視して選ぶとより簡単に
最近は簡単につけられるチェーンも増えているため、心配な時はつけ方を重視して選ぶのもひとつです。突然の大雪予報などがあるとつけやすいものから売れていくので、早めに購入しておくと安心でしょう。また、つけ方が簡単なものでも、慣れていないと手間取ってしまうこともあるので、前もって練習をしておくことをおすすめします。
※記事の内容は2020年4月時点の情報で制作しています。