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最上級モデルの2019年分は完売御礼
約17年ぶりに復活したGRスープラは、BMWとの包括提携により誕生した初のクルマ。オーストリアにある自動車委託生産会社、マグナ・シュタイヤーで製造される正真正銘の「輸入スポーツカー」。直6エンジンを搭載した最上級モデルのRZは、復活を待ちわびたファンの熱狂を呼び2019年分はすでに完売となるなど注目度は抜群です。
今回は伊豆の修善寺周辺でGRスープラの3つの異なるエンジンを搭載したグレードに試乗することができたので、そのインプレッションを紹介しましょう。
異なるのはエンジンだけでない
2019年5月に復活したスープラには3つのグレードがあります。最上級グレードは最高出力340ps、最大トルク500Nmを発生する3L直列6気筒ターボエンジンを搭載するRZ。そして最高出力258ps、最大トルク400Nmを発生する2L直列4気筒ターボを搭載するSZ-R。そして同じ2L直4ターボエンジンながら、最高出力は197ps、最大トルク320Nmとやや控えめなスペックのSZとなります。
搭載するエンジンのほかに、グレードによって異なるのがサスペンションと装着するタイヤです。RZとSZ-Rは「アダプティブバリアブルサスペンションシステム(AVS)」を搭載し、選択した走行モードや路面状況に応じて4輪のショックアブソーバーの減衰力を最適に制御してくれます。
そして装着するタイヤはRZが19インチ、SZ-Rは18インチ、SZは17インチとサイズが1インチずつ異なり、SZのみパンクしても一定距離走行可能なランフラットタイヤを装着しています。
気になる価格はエントリーモデルのSZが490万円、SZ-Rが590万円、そしてRZが690万円とエンジンとサスペンション、タイヤの違いなどにより100万円ずつ高くなっていきます。
340馬力のRZはサーキットなら良いのだろうけれど
そんな新型スープラのベストバイグレードは一体どのグレードなのでしょうか。まず、試乗したのは3L直列6気筒ターボエンジンを搭載した最上級グレードのRZです。先代までのスープラは大柄なボディでしたが、GRスープラは全長4,380mm×全幅1,865mm×1,290mm(2L車は1,295mm)と非常にコンパクトです。ホイールベースも2,470mmと短く、これまでのスープラとは大きく異なる成り立ちです。
走り出してみると違いはさらに鮮明となります。先代まではどちらかというと「直線番長」的なグランドツーリング(GT)カーでしたが、GRスープラは鋭いコーナリング性能を武器としたピュアスポーツカーに仕上がっていました。
しかしスープラ=直列6気筒エンジンということで期待の大きかったRZは、最高出力340psというパワーに対してサスペンションの熟成がまだ足りない印象を受けました。19インチという大径ホイールを装着していることもありますが、AVSがうまく機能しているとは思えず、サーキットのように鏡のような路面ならともかく、一般道では硬めに設定されたサスペンションが路面のアンジュレーション(不整な起伏)に適応してくれません。とにかく乗り心地の悪さが気になりました。
ハンドリングも強烈なパワーへの対応というか煮詰めが甘いかなと思います。ハンドルを切った分クルマが曲がらないアンダーステアもときに出るなど、少々期待を裏切る挙動が出ます。キレイな舗装のサーキットならば340psを活かしたパワフルな走りを楽しめるのかもしれませんが、路面が不規則な一般道ではRZの能力は宝の持ち腐れとなってしまいそうです。
エントリーグレードのSZはダイレクトなクルマ
続いて乗ったのはエントリーグレードのSZ。このグレードは唯一ランフラットタイヤを装着しています。17インチと最も小径のタイヤなのですが、ランフラットタイヤ特有のショルダー部分の硬さが出てしまい、路面からの衝撃がそのまま伝わってきます。良い言い方をすれば路面からのインフォメーションがダイレクトなので、ドライバーとクルマの一体感はRZより断然強いと表現することもできます。
とはいえ、もう少しランフラットタイヤを使いこなすサスペンションの味付けとするか、ほかのグレードと同じ普通のスポーツタイヤを装着したほうが良いと感じました。しかし、RZで感じたフロントの重さもなく、ハンドルを切るとクルマの先端から鋭く切れ込み、操る楽しさは非常に高くなっています。
バランスの良さが光るSZ-R
そして、最後に試乗したのが、SZ-Rです。最高出力258psの2L直列4気筒ターボエンジンを搭載し、サスペンションはRZと同じAVS。そして18インチホイールを装着しています。
SZ-RはSZから乗り換えたのですが、同じ2Lターボエンジンとは思えないほど、加速性能が違うと感じます。
試乗場所はコーナーが多いステージでしたが、SZに比べてAVSを装着したSZ-Rは荒れた路面に対しても寛容ですし、非常に乗り心地も良くなっています。しかもフロントが軽く、重量バランスも良いので、コーナリング時のハンドリングの良さや安定性も3グレードの中では抜群でした。
運転する楽しさと快適性が両立したSZ-Rがおすすめ
エンジン出力、サスペンションの味付け、運転する楽しさということで評価すると個人的にはSZ-Rがベストグレードだと思います。よりクルマとの対話を求める人はSZがおすすめかもしれませんが、どんなシーンでも優れた乗り心地と操縦する楽しさを味わえたのはSZ-Rでした。直6ターボエンジンを搭載したRZを購入したい方は改良が加えられるはずの2020年モデルがおすすめかもしれません。
ピュアスポーツカーとして生まれ変わったGRスープラ。どのグレードであっても、もはや直線番長の面影はありません。先代までのイメージで購入を検討している方は、それを肝に銘じておいたほうが良いでしょう。
※記事の内容は2019年7月時点の情報で執筆しています。