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【再復活】トヨタ「ランドクルーザー70」忘れかけていたクルマとの接し方を教えてくれる(島崎七生人試乗レポート)

【再復活】トヨタ「ランドクルーザー70」忘れかけていたクルマとの接し方を教えてくれる(島崎七生人試乗レポート)
【再復活】トヨタ「ランドクルーザー70」忘れかけていたクルマとの接し方を教えてくれる(島崎七生人試乗レポート)

2度目の国内マーケット復活を遂げたトヨタランドクルーザー70(480万円)は、1984年のデビューから41年目を迎えた超ロングセラーモデルです。世界中のさまざまな現場で活躍するクロカン4WDの最新版を、島崎七生人さんと愛犬シュンくんが試乗しました。

2度目の復活を遂げたランクル70

2度目の復活を遂げたランクル70

70系ランドクルーザーの初代が登場したのは1984年(ワゴンは1985年)。家電品の調子が悪くなるとつい叩いてしまう昭和世代の筆者など、ついこの間のことのように思ってしまうが(!)、実は今から41年も前のことだ。

2度目の復活を遂げたランクル70

さらに国内販売終了から10年経った2014年には、誕生30周年記念と謳って、期間限定ながら日本市場で1度復活している。コチラはついこの前、11年前のことだった。 そして2023年11月になり再度の復活版として登場したのが、今回のランドクルーザー70だ。

そこだけ時間が止まったような外観デザイン

そこだけ時間が止まったような外観デザイン

本来なら昨年のうちに試乗が叶えば“何と40年ぶりの再復活”とキリよく書けた訳だが、なかなか機会と巡り合えず、2025年に入ってやっと実車と対面することができた。トヨタの広報車貸し出し窓口の駐車場に用意されていた実車は、最新のプリウスやクラウンと並んでいると、奇跡のようというか、そこだけ時間が止まったかのようだった。初代の4ドアとは大枠で言えばカタチは元のままだし、2730mmのホイールベース、黒い樹脂を装着した1870mmの全幅は2014年モデルと変わらない。

そこだけ時間が止まったような外観デザイン

ただし多少イメージが違って見えるのは、ヘッドランプの意匠や、前端部から分厚く盛り上がったエンジンフード(これがとても重く、エンジンルームの撮影時、片手では10秒と支えていられなかった)などが新しいせい。これらの今風のセンスを盛り込むことで、デザイン的に250、300との整合性を取ったのだろう。とはいえ立ったフロントスクリーンや、室内から見渡すと現代のクルマにはない極細のピラーなどは郷愁を呼び起こす。

涙が出るほど懐かしいパワーウインドゥスイッチ

涙が出るほど懐かしいパワーウインドゥスイッチ

涙が出るほど懐かしいパワーウインドゥスイッチ

涙が出るほど懐かしいパワーウインドゥスイッチ

インテリアも同様だ。基本は2014年のモデルが踏襲されていて、ステアリング、メーター、シフトレバー(新型は6速ATのみ)などパーツ単位でリファインされている。メーターパネルに小さな補助メーターが4つ並ぶ風情は昔風で心弾む(反対に速度/回転計の盤面の意匠はやや“?”)。USB-C コネクターが備わるのは現代的。

涙が出るほど懐かしいパワーウインドゥスイッチ

それとX80系マークIIなどで使われていた涙が出るほど懐かしいパワーウインドゥスイッチ(安全性を前提に押せば窓が開き、閉じる際は指先でスイッチを引き上げる方式。同方式を確か赤いファミリアに次いでトヨタが最初に採用した時のスイッチだ)がそのまま備わるのは、小さく感動的ですらある。

乗り込みが大変な後席、足元スペースも最小限

乗り込みが大変な後席、足元スペースも最小限

乗り込みが大変な後席、足元スペースも最小限

室内スペースそのものも、かつてと変わらない。この点にかけては、いかにその後、世の中のクルマのパッケージングが進化したかを実感するところ。ラダーフレームの上にボディが載った形式だからといって、登場した頃にランクル70の室内空間に大きな不満は感じなかった。しかし今乗ると、後席の足元スペースが「この程度だったかな?」と感じる必要最小限の印象をもつ。ちなみに座面までの高さは実測してみるとほぼ1mほどと高めで、乗り込むにはBピラー後部のアシストグリップを掴み、ステップに足をかけ、エイヤッ!と登って乗り込む感覚(運転席も同様)。

乗り込みが大変な後席、足元スペースも最小限

また後席の座面の高さは、我が家の乗り心地・NVH評価担当者のシュン(柴犬・オス・この2月で3歳、体重は約15kg)を抱きかかえて乗せるのが、これまで試乗したどのクルマよりも大変だった。それと人の乗車姿勢も、ヒザを曲げその上に手を置いた、卒業式で折り畳み椅子にキチンと座っている感覚といえばいいか。着座位置に対してサイドウインドゥの下端のラインが低いのはクラシック・レンジローバーなどと同じで、視界に関して閉塞感は皆無だ。

ラゲッジは文句なしに実用性が高い

ラゲッジは文句なしに実用性が高い

ラゲッジは文句なしに実用性が高い

それと何といっても箱型のシンプルなボディ形状は室内でも実感でき、スッキリと広さ感のある空間になっている。ラゲッジスペースも5名乗車状態で床面の奥行きは1000mmほど、幅もホイールハウス向かい合う狭いところでも1020mmほど、天井までのクリアランスは水平に引かれたルーフラインのおかげで、どの場所でも1100mm程度(以上、すべて筆者実測値)が確保されている。文句なしの実用性の高さ、使いやすさだ。

スタイル以上に“クラシックなクルマ”

スタイル以上に“クラシックなクルマ”

それでは走りはどうか? 今回はオフロードの試乗を実行していないので、トランスファーレバーには触らず主に日常的な範囲での印象になるが、その限りでいうと、スタイル以上に“クラシックなクルマ”または“登場時からの変わらぬ走りっぷり”、そんな風に感じた。とくに乗り心地については、近年のSUVの乗用車的な洗練されたドライバビリティに慣れていると、理屈抜きで「昔ながらのクロカン4駆だね」と思わせられる。段差を乗り越えた際のボディの揺れ方は鷹揚であったりする点も心得が必要だし、操作性でいうとステアリングが今のクルマに較べ明らかにスローで、切ったら戻す方も自分で意識しながらステアリングをさばく必要がある。

スタイル以上に“クラシックなクルマ”

スタイル以上に“クラシックなクルマ”

久しぶりの試乗だったせいか、筆者も、ちょっとした路地の角で無意識にステアリングを切ったものの、それでは曲がり切れずやり直す……そんな場面に見舞われた。当然オフロードを想定した過敏ではないステアリングに設定されているのだが、今の多くのドライバーはそのことを忘れがちになっているかも知れない。

優等生的なディーゼルエンジンながら音と振動は……

優等生的なディーゼルエンジンながら音と振動は……

搭載エンジンは4気筒の2754ccディーゼルターボの1GD-FTV型で、最高出力150kW(204ps)、最大トルク500N・m(51 kgf ・m)というもの。かつてのKD型に変わるディーゼルエンジンとして2015年に発表され、200系ハイエースを始めとして他車でも搭載する。今回ランクル70で試乗した限りでは、なかなか優等生的なディーゼルエンジンに思え、とくにシーンを問わずコチラのアクセル操作に対して期待どおりに素直にレスポンスしてくれ、とても運転しやすいことを実感。エンジンから発せられる音と振動は、近年のディーゼルエンジンのほうが勝って感じるのは事実で、クルマ側の設計年次の影響も小さくないとは思う。場面によっては振動が少し増大し「おっ」と思わせられることもある。内外各社の最新のEV、PHEVなどに乗り慣れたシュンも初体験の振動に最初のうちは「おっ」と感じたらしかったが、場数を踏んできたおかげで(?)、むしろ新鮮さを楽しんでいるように、試乗中、いつのより背筋を伸ばして外の景色に目をやっていた。

乗るのには心構えが必要で、乗りこなすには時間も必要

乗るのには心構えが必要で、乗りこなすには時間も必要

このランクル70のことをネオクラシックといっていいのかどうかわからない。ただクルマそのものは紛れもなく新車で、予防安全関係の機能も備える。といっても触れてきたように、最新のひたすら快適で上質なSUVとはひと味もふた味も違うし、乗るのには心構えが必要で、乗りこなせるように身体を馴染ませるまでには時間も必要かもしれない。が、そういう忘れかけていたクルマとの接し方を教えてくれる貴重な1台だと思った。

(写真:島崎七生人)

※記事の内容は2025年1月時点の情報で制作しています。

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