ランドクルーザーの中ではライトデューティシリーズに区分されるものの、強靭なフレーム、サスペンション、4WDシステムを持つトヨタランドクルーザー250(520〜735万円)は、世界中の悪路をものともしない走破性を誇るクロカン4WDです。ランドクルーザープラドの後継として2024年4月に発表・発売され、現在も長納期状態が続く人気モデルに、島崎七生人さんと愛犬シュンくんが試乗しました。
FJクルーザーを思い出した
ランクル250を初めて見た時、直感的に頭を過ったのは150系4代目最終型プラドではなく、むしろ“FJクルーザー”だった。2010年に日本市場に投入されたFJクルーザーは、当時のランドクルーザー・プラドやハイラックスサーフをベースに仕立てられたクルマだったが、何といっても60年代のFJ40をオマージュしつつも自由奔放にアレンジされたスタイリングが存在感を放った。とはいえ当時のチーフエンジニアに同乗してもらい試乗した際に「グローブを嵌めた手でもしっかり操作ができるよう大型のヒーコンダイヤルを採用した」等々、決してRetrospective(回顧的)なだけのパイクカーではなく、ランクル直系の開発コンセプトが息づいて仕上げられた、れっきとした4WDだったことを理解した。

左上がFJクルーザー、右上がランクルプラド
もちろんFJクルーザーはキライじゃないクルマだったから、ランクル250に通じる部分を最初は感じた。が、よくよく実車に接してみると、あえてFJクルーザーを遊びグルマだったとすれば、狙いどころがまったく異なる、最新の本気のランクルだということがわかった。
やわらかさ、温かみのあるスタイル
何といってもスタイルがいい。300はフラッグシップという責任上、押し出しの強い外観が特徴だ。それに対してこのランクル250は、力強さはそのままに、いかに人に見られても気持ちいいスタイルになっているかに注力したようなデザインに思える。一見するとフラットなフロントガラスもよく見れば曲面であったり(リアウインドゥはさらに丸い)、台形状の前後フェンダーフレアも線や面が実はやわらかい。

実は柔らかみのあるボディサイドデザイン、VXグレードは丸目に変更可能(写真:トヨタ)
全体が角張って直線的に思えるも、実はボディサイドは前から後ろに大きな“R”がかけられていたりと、決して無機質ではなく仄かにやわらかさ、温かみのあるスタイルという点がいい。系統として最新のディフェンダーに通じるところもある(VXグレードは販売店装着オプションで丸目にもできる)。
上質かつ操作性の良いインテリア
一方で乗車中はずっと過ごすことになる室内も心地いい。上質感が十分なのは上級トヨタ車らしいが、物理スイッチがしっかりと残され、何が何でも12.3インチディスプレイでの操作が強制されない。VXグレード以上では快適温熱シート+シートベンチレーションが備わり、上級のZXならセカンドシートも同様の機能が与えられる。
装備ではほかに試乗車にはJBLプレミアムサウンドシステムが備わっていたが、実は筆者は自宅でもJBLのスピーカーを40年来愛用しており、その自然でスッキリとした音にも癒された。
視界の良さで扱いやすさも上々
また本格SUVらしくAピラーが立っており、フードも見渡せ、かつウエストライン(サイドウインドゥ下端)は、肘をかけた姿勢で車外が見渡せる低さであったり、サイドミラーは固定のままでも天地まで見渡せる視野が確保されていたりと、実は扱いやすさも上々である点も見逃せない。全長4925mm×全幅1980mm×全高1935mm、ホイールベース2850mm、最小回転半径6mのスペックながら、自宅近くの行きつけのスーパーの駐車場で、同等サイズのSUVでもっと手を焼く車種もあるなか、いつものように難なく扱えた……といえば、扱いやすさの度合いがお伝えできるだろうか。
十分なセカンドシート、電動格納できるサードシートも便利
セカンドシートのスペースは十分。サードシートは大人では膝を曲げた着座姿勢にはなるが、スペースは確保されている。セカンドシートの背もたれとトノカバーのカートリッジが干渉しないように準備した上で、電動で格納と展開ができるサードシートは便利。便利といえばラゲッジスペースは文句なしの容量とスペースで、バックドアはガラスハッチが単独での開閉が可能だ。
オンロードでも最新の上級セダンにもヒケをとらない乗り心地
そしてこのランクル250で「ほほぉ!」と感心させられたのが乗り味のよさ。今回のレポートでは本格的なオフロード性能の確認はしていないが、だからこそ、オンロードと日常使いでの快適で上質なドライバビリティにについて実感した次第だ。とくに乗り心地、ステアリングフィールといった部分は最新の上級セダンにもヒケをとらないなめらかでフラットな上等さで、我が家の乗り心地・NVH評価担当者のシュン(柴犬・オス・3歳)が、いかにも落ち着き払ってセカンドシートに乗っていた様子からも(!)、ランクル250の快適性の高さが伺われた。昔(大昔?)、フレーム構造のオフローダーは、こと乗り心地に関してはフレームのシナリやタイヤの分厚さがオンロードで路面からの入力をかわす役割を果たした反面、ともするとデリケートな乗り味、接地感、ハンドリング、騒音の弱点を伴っていたりしたもの。しかし今や、多くの最新SUVがそうであるように、このランクル250も、セダンレベルの剛性感のある上質な乗り味、シュアーなハンドリングを実現していることを改めて実感させられた次第。
同様に試乗車が搭載する2754ccの4気筒ディーゼルターボの1GD-FTV型(150kW/500N・m)も8速ATとの組み合わせで、低速から高速走行まで思い通りの走らせ方を可能にしている。室内で感じる音と振動の小ささも現代のクルマらしいところだ。
想像以上に快適、乗るほどにカラダに馴染む
試乗車はルーフレールがレスオプション(どおりでスッキリとして見えるのはこのためだった)となるなどした状態で、車両本体価格は731万1500円(消費税抜きで664万6818円)。十分に高額車両ではある。が、実際に乗ってみると想像していた以上に快適だし、街中を含めた普段使いの実用性も決して悪くない……となると、試乗車返却時に「もっと乗っていることはまったくやぶさかではない(←素直に言うとずっと乗っていたい、返したくない)」と思った次第。乗るほどにカラダに馴染むクルマである。
(写真:島崎七生人)
※記事の内容は2025年2月時点の情報で制作しています。