今日の世界的なSUVブーム、なかでも都会派プレミアムSUVの人気ぶりは衰えるところを知りません。そのマーケットを切り開いたパイオニアのトヨタハリアーがフルモデルチェンジを行いました。プラットフォームを共有するRAV4との住み分けが気になるハリアーですが、いち早くプロトタイプに試乗した岡崎さんのレポートをお届けしましょう。
都会派プレミアムSUVの元祖
乗用車のプラットフォームを使った都会派プレミアムSUV。今でこそ多くのフォロワーが登場しているものの、初代ハリアーがデビューした97年当時、そういうコンセプトのクルマは他になかった。ポルシェ、メルセデス、BMW、アウディにベントレーやロールスロイスまでSUVを出している現在の状況を考えると、ハリアーがいかに先進的だったか、またいかに大きな影響を他メーカーに与えたかがよくわかる。
クルマに限らず、元祖というか開拓者というか、そういうモノや人には最大限の敬意を払うべきだと僕は考えている。何を言いたいかというと、数あるSUVのなかハリアーは特別な存在だということだ。
都会の夜がよく似合う
そんなハリアーがモデルチェンジして4代目となった。コンセプトは「人の心を優雅に満たす」。プラットフォームを共有するRAV4がアウトドアの似合うアクティブなキャラクターをもっているのに対し、ハリアーは都市型SUVらしい上質感や洗練を重視している。ルーフライン後半を緩やかに落とし込んだクーペ的フォルムや、乗員を優しく包み込むインテリアは徹底的に都会的だ。
RAV4がいちばん似合うのは日中のカントリーサイドだが、ハリアーには都会、それも夜がよく似合う。ちょっとドレスアップして洒落たレストランに乗っていくシーンを想像してみる。ハリアーとRAV4ではどちらがしっくりくるか。答えは言うまでもないだろう。スローなジャズを聴きながら、ボディに映り込んでは流れ消えていく街の灯りを楽しむ・・・そんな艶っぽさを備えているのがハリアーの魅力だ。
どこまでも滑らかでしなやかな走り
都会的で艶っぽいキャラクターはドライブフィールにも反映されている。ちょっと乗り心地には粗っぽさがあるものの、軽快で元気な走りっぷりを見せるRAV4に対し、ハリアーはどこまでも滑らかにしなやかに走る。コーナーを攻めるとか、軽快な動きを楽しむといったキャラクターではないが、その分、ボディは常にドッシリと落ち着いているし、ステアリングの効きも穏やかだから山道でもリラックスして運転していられる。
ハイブリッドのドタイブフィールには強い説得力がある
エンジンは2Lガソリンと2.5Lハイブリッドで、それぞれにFFと4WDが用意される。絶対的な動力性能は2Lでも不満はない。発進加速や高速道路の本線への合流を含め、必要にして十分な走りを見せてくれる。エンジンの微振動がアクセルペダルを通して足裏に伝わってくるのがちょっと気になったが、それを除けば目立った弱点はない。CVTにありがちな車速と回転数のズレをきっちり抑え込んでいるのも嬉しい点だ。
とはいえ、ハイブリッドに乗ると、ああやっぱりこっちのほうがいいなと思ってしまうのも事実。エンジン自体の余裕が大きいことに加え、加速時にはモーターアシストが加わるためより気持ちのいい加速を味わえるし、エンジンの回転数が低く保たれるので静粛性も優れている。ひと昔前のハイブリッドは燃費命だったが、新型ヤリスのハイブリッドといいハリアーのハイブリッドといい、最近のトヨタ製ハイブリッドはドライブフィール面にも強い説得力がある。ちなみに、そんな傾向をさらに突き詰めたのがRAV4のPHVだ。
RAV4との違いは大きい
価格は2Lガソリン車が299万円〜で、2.5Lハイブリッドが358万円〜。4WDを選ぶとどちらも20万円強高くなる。理想はハイブリッドの4WDだが、雪道を走る機会がそれほどないのであればFFのハイブリッドという選択肢も大いにあるだろう。RAV4だったら4WDを選びたくなるが、都会派SUVであるハリアーなら4WDは必ずしも必須ではないと思うからだ。
いずれにしても、今回強く感じたのはハリアーとRAV4との違いの大きさだった。同じプラットフォーム、同じパワートレーンを使いながらまったく異なるキャラクターのクルマを作りあげることができるのが現代のプラットフォーム技術なのだ。マークⅡ3兄弟の時代とは隔世の感あり、である。
※記事の内容は2020年7月時点の情報で制作しています。