伝統の殻を打ち破った現行型クラウンシリーズ。クロスオーバー(440万〜670万円)、スポーツ(590万〜765万円)、セダン(730万〜830万円)、そして近日中に追加が見込まれるエステートの4つのボデイタイプを展開する意欲作です。エステート登場前にあらためて既存クラウン3車種の比較試乗を島崎七生人さんのレポートでお届けしましょう。
もうすぐエステートも追加され4兄弟に

(写真:トヨタ)
整理すると、2022年7月に発表された16代目現行クラウンは、これまでにクロスオーバー(’22年10月)、スポーツとセダン(いずれも23年11月)の順で発売された。さらに目下ホームページ上で“COMING SOON”となっているエステートがいよいよ(やっと?)追加となる見込み。

シリーズ4番目のエステートもまもなく登場か(写真:トヨタ)
現時点で公表済みのスペックを見ると、クロスオーバーに対して全長は変わらず4930mm、全幅は+40mmの1880mm、全高は+80mmの1620mm。ホイールベースは2850mmでクロスオーバーと共通だから、クーペ的なクロスオーバーをベースとし、ワゴン+SUVの性格が与えられたクルマと判断できる。HEVとPHEVが用意されいずれも4WD、タイヤサイズは21インチ(クロスオーバーのRS、Z相当)で、乗車定員は5名とのこと。
……と、以上きわめてザックリとだが“クラウン界隈”の現状を再確認しつつ、試乗記へと話を進めたい。今回、相次いで試乗できたのは「スポーツRS」、「クロスオーバーZ」、それとセダンの「Z」の3台。仕様はスポーツが2.5Lプラグインハイブリッド(PHEV)のE-Four(電気式4WD)、クロスオーバーが2.5LハイブリッドのE-Four、そしてセダンは2.5Lハイブリッドの2WD(FR)だった。車両本体価格はオプション込みの試乗車の状態でスポーツが773万3600円、クロスオーバーが643万4000円、セダンが765万9700円。
自在な操縦感覚と割り切った後席〜クラウンスポーツ
まずスポーツからいくと、このモデルの特徴は、やはりそのアグレッシブなスタイルだろう。とくに力感溢れるリアフェンダーまわりは、見るからに存在感があるし、運転中、サイドミラーに映り込むのを見ていると、何か別のスポーツカーを自分は運転しているのでは!?とさえ感じる。サイドビューの凝縮感もひとしおで、クロスオーバーに対してホイールベースが80mm短い2770mm、全長に至っては210mmコンパクトな4720mmと、まさにスポーツの名のとおりのいかにも走り出しそうな姿を印象づけている。
当然走りも、姿に違わぬ俊敏さを見せる。PHEVの“RS”はシステム最高出力は225kW(306ps)の性能を持ち、“Z”より高出力のモーターを搭載する。さらにナビ情報を反映させる電子制御サスペンション(AVS)も備える。こうしたことで、2030kgの車重でありながら、もっとコンパクトなクルマを操っているかのような錯覚を覚えるほど、自在な操縦感覚、身のこなしを味わわせてくれるのが魅力といえる。
実用性に関しては、全長が切り詰められたことで後席スペースに割り切りを感じる。クラウンとすれば着座姿勢は背もたれがやや起こされ、ヒザ前の空間はペン1本分程度といったところ。大昔、友人の初代セリカLBの後席に乗せてもらった時の感覚を思い出した……といったらもちろん大袈裟だが、そういう“若々しい感覚”も味わえるクラウンということになる。なおオプションでアシストグリップも複数が用意されている。
高速で光る今どきなクーペSUV〜クラウンクロスオーバー
次にクロスオーバーだが、このクルマもすでに街中でもよく見かけるようになったが、アダルトなベテランのドライバーが多く乗っている印象だ。スポーツが走りを楽しむためのクルマだとしたら、こちらもクロスオーバーの車名どおり、今どきのクーペSUVの雰囲気を味わえるところがポイントなのだろう。シュッと伸びやかなボディ(筆者はモノトーンのほうがよりスッキリと見えるので好みだが……)と、デザイナーのスケッチ画そのままのような大径タイヤ(RS、Zは21インチを装着する)の組み合わせは、とにかく颯爽としている。
走らせた印象はドライブモードを状況と好みで切り替えて使うなどして、思いどおりのドライブが体感可能。とりわけ高速走行でのスムースで伸びのある加速は印象的。後席はリクライニングの調節が効くこともあり、前後に長いウインドゥが広い視界も確保してくれ、快適に過ごすことができる。トランクはハッチゲートではなくリッド式で、カタログによればラゲッジ容量は450L、積み込み方の工夫で9.5インチゴルフバッグが3個まで収納可能としている。
期待通りのクラウン、快適性はSクラス並み〜クラウンセダン
そしてもう1台がセダン。実は広報車を借り受け「おや!?」と思ったので、手元の写真ライブラリーから過去の取材分を掘り起こしてみたところ、2023年12月の最初の試乗会で乗ったクルマ(横浜の海バックの写真のほう)と、今回借り出したクルマはまったく同一の個体だった。広報部の配慮(?)というよりたまたまのことだったろうが、広報車の運用としては長いほうといえるかも知れない。
が、ともかく久しぶりの試乗となったが、今回、スポーツ、クロスオーバーとともに改めて乗り、改めて「やっぱり、いいわぁ」と思わせられたのがセダン。前出2車とはプラットフォームが異なりFRベースなのがこのセダンだが、“ニューフォーマル”のカタログの謳い文句どおり、こちらが期待しているクラウンらしいクラウンにもっとも仕上がっていると感じられる。
とくに乗り味に関して、センターコンソールのトグルスイッチでドライブモードを“Rr COMF”にしてみると、路面の起伏、凹凸を舐めるようにしながらスムースに走ってくれ、それはメルセデス・ベンツSクラス並の快適性に思える。高速道路ではさすがにピッチングの収束が鷹揚になる(=走行モードはNOMAL、SPORTが適切)が、ともかく、1名乗車時でも、Rr COMFの乗り味だけでセダンを選びたくなる……といっても過言ではない。
もちろん装備類もここでは書き切れないほどの充実ぶり。後席はセンターアームレストに備わるタッチパネルでエアコンなどの各種操作が可能。トランクオープナーのスイッチは今はインパネ(昔は運転席のドアトリムに備わるのがクラウンのしきたりだった)に備わる。後席はスポーツセダンというより、やや高く背筋を伸ばした着座姿勢(相対的にサイドウインドゥ下端は低め)で、フォーマルな雰囲気を醸し出している。
王冠エンブレムは標準でいいのでは?
それともうひとつ、オプションカタログには、リアクォーター部に装着する“王冠”のエンブレムの用意がある(クロスオーバーも同様。税込み5500円)。渋めのスモークメッキで、装着位置の指定にもこだわったとわざわざ表記されているが、クラウンらしさを堪能する意味で、オプションというよりも、この位置のこのエンブレムはクラウンとしては必要不可欠と思うのだが、どうだろうか?
(特記以外の写真:島崎七生人)
※記事の内容は2025年2月時点の情報で制作しています。