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トヨタアクアが10年ぶりにフルモデルチェンジを行い2代目に進化しました。コンパクトでお買い得なハイブリッド専用モデルとして大ヒットモデルとなった初代。しかし新型はノートやフィット、そして身内の強敵・ヤリスなど多くのライバルがひしめく中に投入されました。果たして新型アクアは存在感を示せるのか。岡崎五朗さんがリポートします。
200万円以下のハイブリッドカーとしてヒットした初代アクア
アクアが10年ぶりにフルモデルチェンジした。先代アクアの累計販売台数は190万台弱。輸出を含めての数字ではあるが、年平均19万台はかなりすごい数字だ。
なぜアクアはそこまで売れたのか。いまでこそシエンタやヤリス・ハイブリッドといったハイブリッドの選択肢は増えているが、当時は違った。ハイブリッドがまだ特別な存在だったなか「200万円以下で手に入るハイブリッドカー」という価値を提供したのが成功の要因になったのは間違いない。
しかしいまは違う。上記のトヨタ車以外にもハイブリッド市場に日産ノートやホンダフィットが参入。それでもそこそこ売れ続けてきたのは、ハイブリッド専用車であることに加え、ライバルを凌ぐ燃費性能やブランド力といった強みがあったからだが、さすがのアクアも10年経ってついに神通力が落ちてきた。ということで満を持してのモデルチェンジが行われたというわけだ。
最大の強敵は身内のヤリス、もはや安いだけでは戦えない
ライバルが増えたということは、もはや「安いハイブリッド」だけでは戦えないことを意味する。ましてや身内にヤリス・ハイブリッドという強敵がいるわけで、アクアとしてどんな価値をユーザーに提供するかが問われることになる。ということで新型のレビューに入っていくわけだが、その前提として先代に対する僕の評価をお伝えしておくと、これはもうかなり低かったと言わざるを得ない。インテリアはシンプルといえば聞こえはいいが僕には安普請としか思えなかったし、走らせれば直進安定性に難があり、ステアリングを切れば「本当は曲がりたくないけど仕方ないな」という感じで嫌々曲がる。静粛性や乗り心地、ハイブリッドシステムのドライバビリティにも高得点は付かなかった。
高められたデザイン品質、ひと目でアクアの新型とわかる
おそらく、いや間違いなくトヨタの開発陣はそういった問題点を認識していて、新型ではクルマ全体を大幅にレベルアップすることを狙ったのだろう。新型アクアからはそういった意思が強く伝わってきた。まずはエクステリアだが、トレードマークであるルーフ後端を落とし込んだ空力性能重視のスタイルは維持しつつ、質感を大きく高めてきた。全車に採用したLEDヘッドライトや流れるような形状のリアコンビランプといったパーツ単位での質感向上もさることながら、豊かな面の張りや彫刻的な造形による光の映り込みといった、いわゆるデザイン品質を高めてきたのが大きく効いている。ひと目でアクアだとわかるが、同時にひと目で新型であることもわかるといった仕上がりだ。
後席の快適性がヤリスとの最大の差別化ポイント
質感と存在感が高まったため大きくなったのかと思いきや、全長4,050㎜、全幅1,695㎜というサイズは従来通り。ただし全高は30㎜高めて課題だった後席ヘッドルームに余裕を与えてきた。同時にホイールベースも50㎜伸ばしている。実はここが大きなポイントで、ヤリス・ハイブリッドとの差別化を図るためにも後席の快適性向上は新型アクアの大きなテーマだった。実際、後席に乗り込んだときの広々感はヤリスを明らかに凌ぐ。デザインの好き嫌いを横に置けば、後席の広さがヤリス・ハイブリッドとアクアのどちらを選ぶかの最大のポイントになるだろう。写真を見ていただければすぐにわかるが、課題だったインテリアもかなり上質になった。
旧型比3倍!洗練された電動駆動フィール
走りでもっとも印象的だったのがハイブリッドシステムの進化による電動駆動フィールの向上だ。先代は発進するとすぐにエンジンがかかっていたが、新型はモーターのみで走る領域が大幅に増えている。感覚的には3倍増ぐらい。ノート オーラほどではないにしろ、電動駆動ならではの静かでスムースで力強い走りを楽しめる。エンジンとモーターはヤリス・ハイブリッドと同じだが、バイポーラ型ニッケル水素バッテリーの採用がこうしたフィーリングを強めている。
ラクに運転したいというユーザーに寄り添う乗り味
ハンドリングもヤリスがスポーティーでキビキビした味付けなのに対し、アクアはゆったりとした乗り味であり、運転を楽しむというよりはラクに運転したいというユーザーの想いに寄り添っているなと感じた。といっても先代のような曖昧さはなく、ワインディングロードを走ってもステアリングからはしっかりとしたインフォメーションが伝わってくるし、高速直進安定性もきっちり作り込まれている。
16インチタイヤはちょっとゴツゴツしている
基本的には乗り心地もマイルド方向だが、オプションの16インチタイヤを装着すると、専用のスウィングバルブダンパーを備えた最上級仕様のZグレードでも荒れた路面ではゴツゴツ感を強めに伝えてきた。たしかに16インチのほうがカッコいいが、タイヤでは余り無理をしないほうがアクアの持ち味であるゆったり感をストレートに味わえると思う。
※記事の内容は2021年9月時点の情報で制作しています。