2024年10月16日に発売されたコンパクトサイズのクーペSUV、スズキ「フロンクス」(254万1000円〜273万9000円)が目標の10倍の台数を受注し好調な滑り出しを見せています。インドからの逆輸入モデルながら、足回りなどは日本専用に仕立て直したという、その走りの実力を岡崎五朗さんが公道で試しました。
2週間で目標の10倍を受注
フロンクスの販売が好調だ。当初スズキは月間販売目標を1000台に設定していたが、蓋を開けてみると最初の2週間で1万台の受注を達成。増産に取り組んでいるが、工場のキャパシティに限りがあるため、一気に増やすことは難しそうだ。というのも、フロンクスは日本以外でも大人気だからだ。
スズキといえば日本では軽自動車のイメージが強いが、日本独自の規格である軽自動車は海外では基本的に販売していない。そうはいっても大きくて豪華なクルマを作っているわけではなく、スズキが得意とするのはあくまで小型車。そしてこのジャンルが、いま世界で大きく販売を伸ばしている。アジア、中近東、中南米、アフリカといった国々で自家用車の普及が進み、スズキのコンパクトカーは大人気なのだ。フロンクスの世界累計販売はすでに20万台!に達している。
内外装の仕上げにインド製の不安なし
フロンクスを製造しているのはインド工場。当初はインド市場のみに供給(結果としてスズキのインドでのシェアは40%を超える)していたが、最近は海外輸出向けも生産。いまではスズキの一大輸出拠点に成長した。なかにはインド製と聞いて品質に不安をもつ人もいるだろう。僕もそこは気になって開発担当者に聞いてみたが、スズキの厳しい品質基準をすべてクリアしているとのこと。エンジンルーム内のコードに巻いた絶縁テープの巻き方あたりはちょっと雑かな?と思ったが、逆に言えば気になったのはそのぐらいで、内外装の仕上げに気になる部分はなかった。
立体駐車場に入るうえに、理屈抜きにカッコいい
ボディサイズは全長3995mm、全幅1765mm、全高1550mm。実用上は立体駐車場に入る全高に抑えているのが嬉しい。全長に関してもインドでは4mを超えるクルマに高税率を課しているため3995㎜としている。これも扱いやすさにはプラス。一方、全幅は大きめで、踏ん張りの効いたワイドなスタンスと、豊かに張り出した前後フェンダーがスポーティー感を強調している。後端に向かって落とし込んだクーペのようなルーフラインもスポーティーさを高めている理由のひとつだ。理屈抜きにカッコいい。とくに斜め後方からの眺めは抜群だ。
舌の肥えたユーザーを満足させる日本仕様
パワートレインは日本向けに余裕のある1.5Lエンジンのマイルドハイブリッドを搭載。4WDの設定も日本のみだ。その他、日本仕様専用としては先進運転支援システムやホイールの5穴化がある。
海外向けの4穴締結と比べ、5つのナットでホイールをガッチリと取り付けることで剛性を高め、ハンドリングが向上する。走りに高い定評のあるスイフトと同じプラットフォームを使いつつ、さらに日本仕様では舌の肥えたユーザーを満足させるべくこだわって仕上げているということだ。
高速道路を含めた一般道での気持ちのいい走り
実際、フロンクスの走りは上々だ。サーキットだけを走って低い評価を下している同業者もいたが、フロンクスが重視しているのは高速道路を含めた一般道での気持ちのいい走り。スイフトやスイフトスポーツと比べると乗り心地はしなやかかつ重厚で、直進安定性も高い。ステアリングの初期応答性をあえて控えめにしているのもクルマのキャラクターに合わせた味付けの一環。
海外向けにはある1Lの3気筒ターボではなく、あえて1.5L4気筒をチョイスしたのも同じ理由からだ。もちろん、アクセルを深く踏み込めば気持ちのいいダッシュ力を見せつけてくれるが、普段は4気筒エンジンならではの上質感を味わいながらゆったり走る。そんな選択肢を用意した開発陣の狙いを僕は支持する。ザラついた路面を走った際に発生するゴーッという大きめのロードノイズをもう1レベル抑え込むことに成功すれば、全体の印象はさらによくなるだろう。
人気モデルになったのも頷ける
ゴキゲンなデザインと走り、上質なインテリア、実用的な後席と荷室空間、扱いやすいボディサイズ、豊富な快適装備と予防安全技術など、様々な魅力を一台のモデルに集約しつつ、254.1万円〜という価格を実現したフロンクス。人気モデルになったのも頷ける。
※記事の内容は2024年11月時点の情報で制作しています。