スバルの屋台骨を支えるフォレスター
2018年6月に5代目へと進化したスバルのミドルクラスSUV「フォレスター」の販売が好調です。世界販売の中でも北米の比重が高いスバル、その屋台骨を支えているのはアウトバックとフォレスター。今回はアクティブな外観が印象的な2.5Lの「X-BREAK」と注目のハイブリッドモデル「Advance」、見た目も中身も結構違う2台のフォレスターを連れ出して、その走りをレポートしましょう。
スバルの中ではオフロード志向
4WD(スバルはAWDと呼ぶ)のラインナップの多いスバル車のなかで、歴代のフォレスターはオフロード向けのSUVとして位置付けられてきました。XVやアウトバックのようなベースモデルからの派生ではなく、専用ボディに豊かな最低地上高としっかりした四駆システムを組み合わせているのが特徴です。好評だった外観はキープコンセプトですが、より力強さを増した印象で、このあたりは北米市場を意識したデザインだな、と感じます。
エンジンはターボなし、2.5Lとハイブリッドの2本立て
日本ではフォレスターというとターボモデルのイメージが強い方も多いかもしれませんが、今回の新型にターボモデルの設定はありません。メインは2.5Lエンジン、それと最上級グレードのAdvanceに「e-BOXER」と名付けられた2.0L+モーターのハイブリッドが搭載されています。ハイブリッドといってもプリウスのような本格的なものではなく、スタート時のアシストがメインのマイルドハイブリッドに分類されるタイプです。
内も外もアクティブ感いっぱいのX-BREAK
最初に紹介するX-BREAKは、最近流行りのクロスオーバー感をより強めたデザインが特徴です。内外装の随所にオレンジ色のアクセントが入ってポップな印象を受けます。この色の差し方、なんとなくGショック好きな人向け、という気もします。
シートやダッシュボード周りにもオレンジ色の加飾が施されていて、ノーマルモデルのシックな印象とはずいぶん異なります。アクティブと捉えるか、落ち着かないと感じるかは、その人次第です。
室内空間の余裕はさすが、しかも実用的
室内空間は大人4人で2泊以上の旅行に連れ出したとしても十分な余裕があります。特に左右方向の広さがいいですね。
リアシートはフロントより少し高い位置にあるので、前方の見晴らし良好、ミニバンほどではないものの居心地の良い空間です。
ラゲッジスペースも十分。ホイールハウスの張り出しが少ないのはさすがスバル。走りにこだわったサスペンションの影響でこの部分の張り出しが大きいCX-5より使い勝手は良いでしょう。
古典的な意味でスバルらしいX-BREAK
2.5Lエンジンを搭載したX-BREAK の走りを端的に表現すると「昔ながらのスバル車」。アクセルを軽く踏んだときの急激な加速感は少々わざとらしい印象です。
エンジン音も結構車内に入ってきます。好きな人は好きなのでしょうが、最近の車の主流の味付けとは異なります。低中速域で目立つ、このラフで大味な走りは、北米で売れているという先入観を差し引いてもアメ車っぽい印象です。
特筆すべきはステアリングのシャープさ。インプレッサもそうでしたが、新世代のシャシーはこの部分の進化幅が大きいと感じます。80km/hあたりまでですが高速での落ち着いた乗り心地も新シャシーの恩恵でしょう。ブレーキがとてもリニアで扱いやすいのも美点です。いっぽうX-BREAK専用の17インチタイヤは荒れた路面で高周波のノイズが少々気になりました。
日本での本命はハイブリッドのAdvance
そしてもう一台の2.0Lエンジン+モータのハイブリッドモデル、Advance。ランニングコストなどを考えると日本ではこちらが本命でしょう。
派手できらびやかなインテリア
Advanceのほうはオプションの本革内装のせいもあって、シックな外観と違って随分豪華な印象です。スバル車の課題である内装の品質感は随分良くなりましたが、細かいところはエクストレイルよりはマシなもののCX-5やハリアーあたりと比べると少々雑だなと思う部分も残っています。
見た目のかっこいい革シートは座面が少々薄いのか、長い時間乗っているとX-BREAKよりも早いタイミングでお尻がしびれてきたのは意外でした。
e-BOXERはジェントルな走り
e-BOXERを搭載するAdvanceの走りはX-BREAKと対照的に、スバルらしくなくスムーズで大人びた印象を受けました。そしてとても静かな車です。ハイブリッドといっても主役はエンジンですので、アクセルペダルの踏み加減とエンジン回転数の上がり方がシンクロしていることも好印象です。
このすばらしいハイブリッドシステムに注文をつけるとしたら、モーターとエンジンの制御が複雑な低速域で、時々ギクシャクすることでしょう。このあたりはトヨタやホンダに追いついていません。加速時もそうですが、減速時にもギクシャク感がありブレーキフィールはX-BREAKとは悪い意味で別物でした。
タイヤの印象はいい意味でX-BREAK と異なります。Advanceの18インチタイヤは静かで大人の乗り味をうまく演出していました。
アイサイト自体はすばらしいけれど
スバルのアイサイトはこの手の装置の先駆けだけに、特にACC(アダプティブ・クルーズコントロール)の先行車に対する追従の良さはさすがです。ただしe-BOXER搭載のAdvanceは低速域でのギクシャク感がACCにも影響を与えています。このあたりは年次改良で解消されることを期待しましょう。
大陸的なおおらかさか、品の良いインテリか
新しいフォレスターのX-BREAKとAdvanceは、見た目以上に走りの質が違う車でした。
大陸的なおおらかさを持つX-BREAK、品の良いインテリな走りのAdvance。どちらを選ぶかはお好みで!
※記事の内容は2019年9月時点の情報で執筆しています。