ミニバンのなかでも人気のカテゴリー
ファミリーカーとして定着したミニバンの中でも、常に新車販売台数ランキング上位に顔を出しているのが、2Lクラスミニバンと呼ばれるカテゴリーの車種です。このカテゴリーに属するのはトヨタヴォクシー/ノア/エスクァイア、ホンダステップワゴン、そして今回徹底レビューを行う日産セレナです。
人気・実力が備わったクラスですが、日産セレナは2019年上半期(4〜9月)でミニバンNo.1の販売台数を誇る実力派モデルです。それでは現行型セレナについて紹介しましょう。
先進のプロパイロット、広さと工夫がすばらしい室内
初代のバネットセレナから数えて、5代目となる現行型セレナは2016年8月から販売開始されました。日産の誇る先進技術のひとつである、同一車線でアクセルとブレーキ、そしてステアリング操作を制御する運転支援システム「プロパイロット」をミニバンでは初めて搭載し、話題となりました。
強力なライバルがひしめくカテゴリーだけに、プロパイロット以外にもセールスポイントが用意されました。室内長は先代モデルよりも180mm拡大し、3240mmとクラストップレベルの長さを確保、セカンドシートは前後だけでなく、左右にもスライドするので、キャプテンシートにもベンチシートにも使い方に合わせてアレンジが可能です。
バックドアにもウィンドウの部分だけを開閉可能なデュアルバックドアを採用。狭い場所での荷物の出し入れが可能で非常に重宝します。先進技術のプロパイロット、利便性に優れた装備とさすがクラストップの人気車種セレナです。
先進のハイブリッド「e-POWER」でさらに人気上昇
しかし、セレナをクラストップに押し上げたのはこれだけではありません。セレナを名実ともにトップに押し上げたのは2018年2月に発表された「e-POWER」と呼ばれる革新的なパワーユニットを搭載したことです。
「e-POWER」は電気自動車(EV)の日産リーフの技術を応用したパワーユニット、トランスミッションの代わりにモーターをエンジンルームに搭載しています。1.2L直列3気筒ガソリンエンジンは発電のみに使用され、その発電された電力でモーターを駆動させて走行します。この方式はシリーズハイブリッドと呼ばれ、走行フィーリングはモーター駆動のEVに近い一方で、ガソリンを燃料とするために充電する必要がないというのが特徴です。モーターは発進時など低回転域から大きなトルクを発生するので、車両重量の重いミニバンにはピッタリのパワーユニット。この「e-POWER」が登場したことにより、セレナはハイブリッド車を擁するライバルたちに一気に差を付けたのです。
内外装デザインを一新、迫力を増したハイウェイスター
その「e-POWER」により順調な販売台数を記録していたセレナが2019年8月にマイナーチェンジを行い、商品力を向上させました。内外装のデザインを一新するとともに、「全方位運転支援システム」を全車に標準装備するなど先進安全技術の装備を充実させています。
エアロパーツ装着グレードのハイウェイスターは、クロームを贅沢にちりばめた宝石のようなグリルパターンを採用したフロントグリルや、縦長のリアコンビネーションランプを新たに採用しました。さらに従来モデルは15インチアルミホイールを装着していたe-POWER搭載車も1インチサイズアップの16インチアルミホイールを装着。見た目のカッコ良さだけでなく、走行性能の安定感が増しています。
ボディカラーはセレナの新しい夜明けにふさわしい「朝日」をイメージしたサンライズオレンジと精悍でスポーティな印象のダークメタルグレーの新色2色を追加。4つのツートーンカラーを含めて全14色としました。
安全装備も「全方位」に進化
安全装備の面では、360°の安全を提供する「全方位運転支援システム」を全車標準装備としました。前方は対向車がいてもハイビームをキープできるハイビームアシストの進化バージョンである「アダプティブLEDヘッドライトシステム」を日産車で初採用。フロントカメラで前方の状況を検知し対向車や先行車の有無に応じて、両側に12個ずつ配置されたLED照射パターンを変化させることにより、常に視認性の高い状態を維持できます。
後側方は走行中に隣接するレーンの後側方を走行する接近車両との接触を回避するよう支援する「インテリジェント BSI(後側方衝突防止支援システム)」や「BSW(後側方車両検知警報)」、後退時には、後方を横切ろうとする車両を検知し注意を喚起する「RCTA(後退時車両検知警報)」を新設定しました。
全車がサポカーSワイドに
また、「踏み間違い衝突防止アシスト」を標準装備にしたことで、全車が「セーフティ・サポートカーS<ワイド>(サポカーS<ワイド>)」該当車となっています。さらに「プロパイロット」の機能は、ドライバーのストレスをさらに軽減するため、下り坂での設定速度保持や、よりスムーズな減速を可能とするブレーキ操作などが可能となり、ワイパー作動時の機能向上なども図っています。
では、マイナーチェンジしたセレナe-POWERハイウェイスターV(2WD)に試乗しての印象はどうだったのでしょう。
しっかり感が増した走り、静かになった室内
実際に見ると縦長となった大きなグリルはブラックで、オレンジ色のボディカラーにさらに映えて圧倒的な存在感を放ちます。乗り味はe-POWER独特のスムーズな加速フィーリングは気持ち良く、今回装着するタイヤが16インチと大きくなったことで、安定感がかなり向上しています。ハンドルを切った時のクルマの揺れや、高速走行時の直進安定性などは従来モデルよりかなりレベルアップしており、全体的にしっかり感が強調されています。
静粛性も向上しました。従来モデルはエンジンが掛かるとノイズが車内に入ってきたのですが、マイナーチェンジ後のモデルはそのノイズがかなりカットされ上質な空間になったと言えるでしょう。
ボディが大きなミニバンだけに、全方位に安全装備が充実したのは大歓迎です。ドライバーからの死角にあるクルマや障害物をセンサーが感知して教えてくれるので、大事なクルマをぶつけてしまうということも減りそうです。
マイナーチェンジしたセレナの車両本体価格は257万6200円〜359万4800円となっています。高価格帯のグレードはオーテックと呼ばれるカスタマイズカーで、ボディ補強や特別にあしらったパーツを装着しプレミアムスポーツを具現化したモデルです。人気モデルのセレナだけに、街でよく見かけるモデルは…。というこだわり派の人におすすめです。
e-POWERの採用、そしてプロパイロットをはじめとした先進の運転支援技術で群雄割拠のカテゴリーで順調に販売台数を稼ぐセレナ。やはりおすすめはe-POWERを搭載した存在感タップリのハイウェイスターです。
※記事の内容は2019年12月時点の情報で制作しています。