2020年12月に発売された日産「ノート」(2,299,000〜3,063,500円)が2023年12月に、そして2021年8月に発売された「ノート オーラ」(2,779,700〜3,473,800円)が2024年6月に、それぞれマイナーチェンジを受けました。大きく変わったフロントマスクが話題を集める日産の主力コンパクトを島崎七生人さんが試します。
12月ノートから7月のオーラNISMO でマイナーチェンジ完了
通算3世代目となる現行日産ノートが発売されたのは2020年12月。登場時の車両開発主管へのインタビューを振り返ると「2代目の先代ノートで投入されたe-POWERの販売比率が終盤では7割近くに達したため、現行モデルでは、e-POWERに1本化、その上で先進性、上質感を意識して開発したクルマ」……そんな話だった。実車はその後、昨年12月のノートを皮切りに、今年に入り5月ノートオーテック・クロスオーバー、6月ノート オーラ(以下オーラと表記)、7月オーラNISMOとマイナーチェンジが実施された。
スペックの違いは制御の違い
そんな最新……というか現行のクルマを借り出し、試乗してみた。借り出したのはノートX FOUR(車両本体価格:258万600円+メーカーオプション:65万1200円+ディーラーオプション:15万5029円)とオーラG FOUR(車両本体価格:306万1300円+メーカーオプション:54万4500円+ディーラーオプション:15万6129円)の2台。
グレード名に“FOUR”とあるとおり、どちらもリアにも駆動用モーターを加え、フロントのモーターと合わせて、搭載エンジンはあくまで発電のために使いながら、モーター駆動による4WDとしたクルマ、だ。なおカタログでスペックをみると、リアモーターは共通(MM48型=50kW/100N・m)となっているが、フロントモーターについては同じEM47型ながら、ノート・オーラが100kW/300N・m 、ノートは85kW/280N・mとスペックに違いがある。が、この違いはあくまで制御の違いによるもので、モーター、バッテリー、インバーター、そしてエンジンといったハード部分は、ノートとオーラでは共通という。
相変わらず一つ格上感があるオーラ
走らせた印象だが、正直なところこれまでのモデルから劇的に変わった感じはしなかった。唯一、オーラのステアリングの切り始めの反応が以前より僅かに敏捷になったのでは?とも感じたが、これは下ろしたての個体でクルマもタイヤもまだ真新しいためかもしれない。
また従来型ではパワー感、乗り心地、静粛性などについてオーラのほうがそれぞれノートに対して1格上に感じられたが、その“関係性”も変わらず。基準車と呼んでもいいノートと乗り較べるとオーラは、とくに4WDであれば無駄のない挙動やワインディングでの素直な挙動、スムースな乗り味などが魅力で、さらにパワー感に関しても、ノートとの数値上の差の分、余裕がありより自然な走りっぷりを味わわせてくれるのが体感できる。
ちなみにカタログ記載のWLTCモード燃費は今回の試乗車同士のスペックで見るとノートが23.8km/L、オーラが22.7km/Lと、その差はごくごく小さい。
実にわかりやすい “簡単早わかりガイド”
それともうひとつ、今回改めて気づいたのは、車載の“取説”で、分厚い本編に加え、備わる要点をまとめた薄い“簡単早わかりガイド”(※写真はアリアのもの)が用意されているのだがこれが実にわかりやすい。たとえばe-Pedal Stepについてシフトポジション、ドライブモードごとの特性(ブレーキが強い/やや強い/より強い)など丁寧な説明があり、ノート/オーラを初めて運転するドライバーでも理解しやすいはず。よくあるクイックガイドに較べ簡略化されすぎず、必要な、まず知りたい項目が網羅されているところがいい。
顔まわりはアリアからセレナに?
一方でいよいよ本稿の核心(!?)に迫ると、ノートもオーラもマイナーチェンジで大きく変えてきたのがエクステリアデザインだ。とくに顔まわりは、「エッ!?」と思わせられるほどの変貌ぶりだ。
どういう方針転換があったのか想像がつかないが、従来の顔つきはEVのアリア、サクラとも相通じる楚々とクールな雰囲気だった。対して新しい顔まわりは、現行セレナのあの存在感タップリの意匠をそのままコンパクトハッチバックのノートとオーラにも落とし込んだ風というべきか。
ノートは従来型のほうが無難だった
とくにノートのグリルは、これまでの組子細工をモチーフとした格子状から、ボディ色の横桟を上から下に重ねて、それをグリルのパターンとしたものになり、下の2本はヘッドライト下まで延長した加飾に切り替え、さらにその先のレリーフ部分まで繋げられている。桟の部分はボディ色にもよっては非ボディ色の組み合わせもあるようだが、明度の高い有彩色ではいやおうなしに横桟に目が行くし、本音は飲み込み限界ギリギリの表現でいうと、従来型のほうが無難だった……そんな思いが残る。
オーラならアクセントはダークグレーメタリックを選ぶ
オーラはグリル中心部分は1つ1つサイズを可変させたブロックを並べたパターンとし、左右のライト下には斜め縦3本の加飾がアクセントとして並ぶ。ノートのグリル部分のボディ色の横桟よりは目にササりにくいが、ボディ色次第で、カラーアクセントとダークメタルグレーアクセントのどちらかの組み合わせになるようなので、好み次第だが、筆者だったらダークグレーメタリックの目に落ち着くほうを選ぶと思う。
いろいろと凝ったデザインだが……
またノートのホイールキャップとオーラのアルミホイールのデザインも幾何学パターンのなかなか凝ったデザインだ。凝ったデザインといえば、新たに内部が2段となり、従来サイズの車検証ケースが上段にすっぽりと収めやすくなったグローブボックスのリッド裏にも同様の幾何学パターンが施されている。
そのほか、ドア開口部にグルリと回してあるラバーストリップの繋ぎ目が前後ともドアシル部中央にあるのは初期型と変わらず。前席ヘッドレストにもスピーカーが組み込まれたBOSEのオーディオシステム(メーカーオプション)は音質、音場とも非常に自然で聴きやすい……といったことも今回の試乗での発見だった。
(写真:島崎七生人)
※記事の内容は2024年9月時点の情報で制作しています。