2007年にデビューしたR35型の日産「GT-R」がいよいよ2025年8月に生産終了を迎えます。約18年に渡るR35型GT-Rの軌跡を振り返るとともに、最終モデルとなる日産GT-RプレミアムエディションTスペックの2025年モデルの試乗レポートをお届けしましょう。
ついに2025年8月で生産終了
2021年9月に発表された日産GT-Rの2022年モデル。翌年に2023年モデルが発表されなかったこと。そして長い間受注が止まっていたこともあり、自動車メディアでは生産終了と騒ぎになりました。しかし、2023年3月に外観デザインを変更した日産GT-R 2024年モデルを発表がされます。
そして2024年3月には2025年モデルを発表するとともに、ついに2025年8月に生産終了となることがアナウンスされました。したがって日産GT-Rは2025年モデルが最終年式となることになります。今回、集大成とも言える2025年モデルに試乗できましたので、インプレッションとともに、日産GT-Rの約18年に渡る軌跡を振り返ってみましょう。
誰でも、どこでも、どんな時でも
R35型と呼ばれる現行型日産GT-Rは、「誰でも、どこでも、どんな時でも最高のスーパーカーライフを楽しめる」をコンセプトとしたマルチパフォーマンススーパーカーとして2007年10月に登場しました。
毎年のように改良が加えられている日産GT-Rは、2010年に初のマイナーチェンジを行い、フロントバンパーにハイパーデイライトを装備するなど内外装を変更。さらに、エンジンの最高出力は530ps、最大トルク612Nmに向上させています。2011年の一部改良ではエンジンの効率化により、最高出力550ps、最大トルク632Nmに向上。また、左右非対称のサスペンションセッティングの採用し、安定した上質な乗り心地に磨きを掛けました。
2013年には2度目のマイナーチェンジを行い、ヘッドライトにLEDポジショニングランプによるランプシグネチャーを採用。またリアコンビネーションランプにもLEDランプを採用するなど内外装を変更しました。同時にハイパフォーマンスモデルのGT-R NISMOを追加されています。
2017年モデルから始まったR35型GT-R第二章
2016年に発表された2017年モデルからは開発責任者が当初の水野氏からR34型も担当した田村氏に代わりました。それまでのラップタイムを削るためのGT-Rから、GT(グランツーリスモ)としてのGT-Rへと方向修正が行われ、大幅な改良が実施されています。
外観ではフロントからリアに至るまで大幅なデザイン変更を行い、バンパー開口部の拡大により冷却性能を向上させつつ、空気抵抗・ダウンフォースは従来どおりをキープ。インテリアもナッパレザーを多用し、高級感を演出し、ナビのディスプレイも7インチから8インチへと拡大しています。
搭載されているエンジンは最高出力が570ps、最大トルク637Nmまで向上。また、ハイパフォーマンスモデルGT-R NISMOもマイナーチェンジを行い、内外装が変更されると同時に、エンジンは専用のチューニングを施すことで、最高出力600psまで高められました。
2019年の一部改良では、エンジンのターボチャージャーに変更を加え、またサスペンションを新しいセッティングを採用するなど、より街乗りでの快適性を重視しました。
GT-Rらしさを体現した「T-speck」は2022年モデルから
2021年9月に発表された日産GT-R 2022年モデルには、100台限定の特別仕様車「T-spec」が設定されました。「T-spec」の名称は、「時代を導くという哲学」であり、GT-Rの在り方や、その時代を牽引するクルマであり続けるという願いを表現した「Trend Maker」と「しっかりと地面を捉え駆動する車両」という開発におけるハードウェアへの考えを表した「Traction Master」から名付けられています。
この「T-spec」は専用カーボンセラミックブレーキ、カーボン製リアスポイラー、専用エンジンカバー、専用バッジ(フロント・リア)という特別装備に加えて、専用レイズ製アルミ鍛造ホイールを採用することでのバネ下質量の軽量化を活かした専用セッティングサスペンションとなっています。
そして、2023年3月に2024年モデルの日産GT-Rが発表されます。外観は2025年モデルと同様で、フロントバンパーとリアバンパー、リアウイングに空力性能を向上させる新たなデザインとなり、空気抵抗を増さずにダウンフォースを増加させています。同時にタイヤの接地性やハンドリング性能も高めることで洗練された乗り味を実現しています。
最高出力や最大トルクなどのパフォーマンスを維持しながらも、走行時の不要なノイズと振動を低減する新車外騒音規制対応のマフラーを新たに採用。綿密に調律された、感性に響く迫力ある新たなGT-Rサウンドを楽しめます。
2025年「T-spec」の特徴は高精度重量バランス部品と2つのプレート
そして、2024年3月に発表されたR35型GT-Rの集大成となる2025年モデル。2024年モデルをベースに、プレミアムエディションには青を基調とした専用特別内装色である「ブルーヘブン」を新設定しました。
また、「T-spec」には、ピストンリング、コンロッド、クランクシャフトなどに、これまで「GT-R NISMO スペシャルエディション」のみに採用されていた高精度重量バランス部品を採用することで、レスポンス精度を高め、性能に磨きをかけています。さらに赤文字で匠の名が刻まれたアルミ製ネームプレートとゴールドのモデルナンバープレートを新たにエンジンルーム内に採用しています。
サーキットでは圧倒的、一般道では暴れ馬だった初期モデル
今回試乗したのは、車両本体価格2035万円のプレミアムエディションTスペックです。日産GT-Rは2007年に登場したときからハンドルを握ってきましたが、この2025年モデルが最後となると、特別な感情がこみ上げてきます。
2007年に試乗したモデルは、サーキットなどのキレイな路面では圧倒的なパフォーマンスを発揮しましたが、荒れた路面の一般道では、まるで暴れ馬のようで運転するのに、すごく緊張感が伴いました。
2017年モデル以降は調教されたサラブレッドに進化
そして、大きく内外装が変更された2017年モデル以降は、ハイパフォーマンスモデルのGT-R NISMOでも公道でも緊張感を感じることなく走行できるしっかりと調教されたサラブレッドに進化していました。
今回、試乗した集大成といえる2025年モデルの日産GT-Rですが、率直にいうと非常に運転しやすく、「誰でも、どこでも、どんな時でも最高のスーパーカーライフを楽しめる」とうGT-Rのコンセプトどおりに仕上がりました。
調律の取れたエンジン、荒れた路面でも快適な乗り心地
高精度重量バランス部品を採用したエンジンは、調律がとれており、アクセルレスポンスが良いだけでなく、ひじょうにスムーズに回転数が上がっていきます。そのフィーリングの軽さは3.8L V6エンジンとは思えないほどでした。
最高出力570psというハイパワーなエンジンですが、東京から箱根の往復での走行燃費は約8.2km/L。高いパフォーマンスは走行性能だけでなく、燃費性能にも及んでいます。ただ、トランスミッションが6速ATなので、高速道路でのエンジン回転数が高くなってしまいますので、8速など多段化できれば、まだまだ進化できそうです。
コンフォートモードで走行すれば、荒れた路面でも非常にフラットで快適な乗り心地を実現していますので、ロングドライブでも疲労感は少ないでしょう。
究極のドライビングプレジャーを追求するという日産GT-Rの商品コンセプト。18年という月日の経過によって結実したと感じました。
※記事の内容は2024年9月時点の情報で制作しています。