2024年7月18日にマイナーチェンジされた日産「ノート オーラ NISMO」(307万2300〜347万3800円)。先行したノートやオーラのフロントマスク変更は賛否両論ですが、オーラNISMOはカッコよさをキープし、販売も好調なようです。新たに追加された4WDモデルも含めて岡崎五朗さんがリポートします。
新型オーラの顔はちょっと厚化粧過ぎる……
エンジンを発電機として使い、100%モーターのみで走行する日産独自のハイブリッドシステム「e-POWER」を搭載するコンパクトカーがノートだ。標準モデルの「ノート」、豪華装備とワイドボディをもつ3ナンバーモデルの「オーラ」、日産のモータースポーツ部門であるNISMOが手掛けたスポーツモデル「オーラNISMO」、上質感を高めた「オーラAUTECH」で構成されるノートシリーズは、2021〜2022日本カーオブザイヤーを獲得するなど、高い評価を獲得している。
今年行われたマイナーチェンジでは内外装を中心にアップデート。不評だったグローブボックス容量の拡大など嬉しいポイントもあるが、派手さを増したオーラの顔付きは意見が分かれるところだろう。スッキリしたクリーンなデザインを気に入っていた僕からすると、新型オーラの顔はちょっと厚化粧過ぎると思う。「物足りない」とか「高級感が足りない」という一部の意見に過剰反応し、本来の魅力がスポイルされたように感じる。
「顔のカッコよさ」でNISMOは販売好調!
とはいえ、今回紹介するオーラNISMOにそれは当てはまらない。ブラックアウトしたグリルは精悍な顔つきを作り出しているし、徹底的に空力性能にこだわった本格的エアロパーツも素晴らしい仕上がりだ。なかでも気に入ったのがNISMO専用色であるステルスグレーとブラックの2トーン仕様。レッドのアクセントカラーと渋いボディカラーの組み合わせは最高にカッコいい。決して安い価格ではないにもかかわらず、オーラNISMOはオーラの販売の2〜3割を占める人気モデルになっている。それにはこのカッコよさがかなり貢献しているのではないだろうか。
真打ちは4WDモデル、他のノートとはまるで異なる刺激的な加速
もちろん、オーラNISMOの魅力はスタイルだけではない。むしろ、走らせれば走らせるほど魅力が際立ってくる。軽量に仕上げたFFモデルもいいが、真打ちは新たに加わった4WDモデル。GT-Rで培ったスポーツ4WD技術を投入することで、走りの次元をさらに一段と引き上げているのだ。82psを発生する発電用エンジンは他のノートシリーズと同じ1.2L3気筒。しかしフロントに100kW、リアに60kWという高出力モーターを搭載することで、他のノートシリーズとはまるで異なる刺激的な加速を演じてくれる。
エンジンが82ps=60kWなのに、合計160kWのモーター??? 計算が合わないぞ???と思った人もいるだろう。ここがe-POWERの面白いところで、フル加速時にはエンジンが発電した電力とバッテリに蓄えた電力をミックスしてモーターに送り込むことで、エンジンパワー以上の出力を発揮できるのだ。もちろん、長い上り勾配でフルスロットルを続けると数分でバッテリーが空になり、82ps相当のクルマになってしまうが、そういった状況に陥るのはレアケース。
一般道や高速道路を走っているかぎり、システムが上手に電気をやりくりするので、鈍足になる心配はほぼない。実際、オーラ・ニスモの加速性能は素晴らしい。絶対的な加速力もさることながら、モーター駆動ならではのレスポンスのよさもドライビングプレジャーを大きく引き上げている。とくにアクセルを踏み込んだ瞬間の力強さは、1.2L3気筒82psとは思えないレベルだ。
最新のNISMOモデルに共通する美点
優れた動力性能を支えるのが優秀な足回り。他のノートシリーズよりも固めてはいるが、決して粗さを感じさせる様な固さではなく、むしろしなやかさすら感じる。このあたりはZやアリアといった最新のNISMOモデルに共通する美点だ。
加えて4WDモデルは後輪が駆動を分担することで前輪に余力が生まれ、それを旋回性能の向上に充てている。FFモデルと比べるとより少ないステアリング操作でコーナーを曲がることができ、なおかつ安心感も同時に高まっている。約40万円と値は張るが、オプションのレカロシートを組み合わせればスポーツ度がさらに高まること請け合いだ。
3拍子揃った高性能ハッチバック
オーラNISMOは、街中での機動力を高めるコンパクトさ、カッコよさ、質感の高い速さの3拍子揃った高性能ハッチバックだ。FFで307万円、4WDモデルで347万円と価格はそれなりにするが、クルマ好きであれば間違いなく価格以上の価値を見出すことができる。気になる方はぜひ試乗することをオススメしたい。
※記事の内容は2024年10月時点の情報で制作しています。