2021、2022年と2年連続で国産車プラグインハイブリッド(以下PHEV)の新車販売台数No.1に輝いた三菱アウトランダーPHEV。3代目となる現行モデルが2021年10月に登場以来、初となる大幅改良を受けました。内外装のみならずPHEVシステムも大幅に進化したという、その改良ポイントを見ていきましょう。
国産車で最も売れているプラグインハイブリッドモデル
2021年10月に登場した3代目三菱アウトランダーPHEVは、刷新された内外装デザインと新開発のプラットフォームの採用で大幅な進化を遂げたモデルです。
キャビン回りには三菱車初のホットスタンプ式超高張力鋼板を使用し、変形の少ない高耐力構造としながら軽量化を実現。さらにエンジンルームやキャビン周りに連続した環状構造を採用し、従来車よりもボディの曲げとねじり剛性を大幅に向上させることで上質な乗り味を実現しています。
搭載されているパワートレインは、2.4L直列4気筒ガソリンエンジンとモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドシステム+8速スポーツモードCVTで、注目のEV走行距離は当時約87kmを誇りました。
駆動系や運転支援もハイテク満載!
駆動方式は4WDのみ、前後トルク配分を行うセンターカップリングデバイスに電動モーターによる油圧クラッチを取り入れた電子制御4WDを採用しています。
もちろん、三菱ご自慢の車両運動統合制御システム「S-AWC」も搭載。ブレーキ制御「ブレーキAYC」を後輪にも採用することで、前後輪の分散制御も可能となり、かつての名車「ランエボ」を思い起こさせるコーナリング性能を獲得しました。またSUVらしく7つのモードから、路面状況の変化に合わせたドライブモードを選ぶことも可能です。
先進安全装備では、日産の「プロパイロット」に準じた高速道路同一車線運転支援技術「マイパイロット」を搭載。さらにナビリンク機能搭載車は速度標識を読み取って設定速度を自動で切り替えたり、ナビゲーションの地図情報を活用して、高速道路のカーブや分岐などで適切な車速に調整してくれます。
3代目アウトランダーのPHEVモデルの魅力はプラグインハイブリッドのみならず、先進的な走行性能や運転支援、そしてラグジュアリーさを増した内外装など盛りだくさん。まさに三菱のフラッグシップモデルと呼ぶに相応しいクルマです。先代モデルは7人乗り仕様はガソリン車のみでしたが、3代目ではPHEVもグレードによっては選ぶことができるようになったこともトピックでした。
マイナーチェンジで進化した6つのポイント
そんなアウトランダーPHEVも登場から3年が経過し、さらなる進化のタイミングとなりました。今回のマイナーチェンジのポイントは以下の6点です。
①駆動用バッテリーを刷新し、航続走行距離をこれまでの約87kmから約106km(Mグレード)と伸長。
②サスペンションの最適化や新タイヤ採用などより上質で安定感の高い乗り心地を実現。
③内外装デザインを一部変更し、質感を向上。
④ナビゲーション画面の大型化やコネクティッド機能の拡充、シートベンチレーション機能などの採用により利便性と快適性を向上。
⑤ヤマハ株式会社(以下ヤマハ)と共同開発し、音質へのこだわりを追求した2つのオーディオシステムを全車に採用。
⑥最上級グレード「Pエグゼクティブパッケージ」の設定
となっています。それでは各項目について解説しましょう。
バッテリーの刷新で航続距離のみならず走りも強化
①のポイントは、搭載されているリチウムイオンバッテリーを刷新。バッテリー容量を約13%増の22.7kWhとしました。その結果、全グレードでEV走行可能距離が延長しただけでなく、PHEVシステムの最高出力が約20%向上しています。それによって電動車の特徴であるスムースで力強い加速性能をさらに強化、高速道路での合流や追い越し時のストレスを軽減しました。また、アクセル操作時のモータートルク特性をマイルドにすることで、車両挙動が安定し快適性も向上させています。
足回りも見直し、乗り心地と旋回安定性を向上
②のポイントでは、サスペンションチューニングを見直すとともに、新開発のタイヤを装着しました。その結果、路面からの振動やショックを低減し、より上質で安定した乗り心地を実現。また電動パワーステアリングのアシスト力の最適化と出力向上によるS-AWCの制御見直しによって旋回中の安定性を向上させています。
内外装も上質さを増した
③では、外観のフロントアッパーグリルをスムースな造形に変更。そしてフロント&リアのスキッドプレートでは、立体的なデザインへの変更を加えつつ、色をチタニウムグレーとしています。リアコンビネーションランプはスモークタイプに変更し、Tシェイプのストップランプを際立たせています。また、ターンランプ、バックランプをLED化。18/20インチのアルミホイールは、上質感と力強さを表現した新デザインへと変更しています。
インテリアでは、最上級仕様のセミアリニンレザーシートデザインを変更。そしてシートやインストルメントパネルに新色の「ブリックブラウン」を採用することで、モダンでラグジュアリーな落ち着きのある室内空間としています。
大型モニターの採用、シートベンチレーターなど使い勝手も改良
④では、スマートフォン連携ナビゲーションシステムは、モニターサイズを従来の9インチから12.3インチに大型化しました。コネクティッド機能の機能拡充により、ナビゲーション上のPlace APIやストリートビュー、航空写真ビューも見ることが可能となりました。
運転席、助手席には、体とシート間の熱こもりを防いで快適なドライブを提供するシートベンチレーション機能や、常に優れた後方視界を提供するデジタルルームミラーを採用し、利便性と快適性を向上させています。
ヤマハと共同開発した新しいオーディオシステムの採用
⑤は、ヤマハと三菱自動車がアウトランダーPHEV専用に共同で「ダイナミックサウンドヤマハアルティメット」と「ダイナミックサウンドヤマハプレミアム」という2つのオーディオシステムを開発しました。
最上級グレードのPエグゼクティブパッケージに採用される「ダイナミックサウンドヤマハアルティメット」では、計12個のスピーカーとDUALアンプの搭載に加えて、車速に応じて音量や音質を自動調整し、ロードノイズの影響を低減するサウンド補正機能により、どんな走行条件下でも常に最高の音楽体験を提供してくれます。
P、G、Mグレードには、8スピーカーの「ダイナミックサウンドヤマハプレミアム」を搭載。ウーファーの同軸上にツィーターを配置したコアキシャルスピーカーをリアに採用し、高音から低音まで幅広い音域表現を可能としています。
シートやオーディオをアップグレードした最上級グレードを追加
⑥は従来、P、G、Mの3グレードでしたが、今回最上級グレードとしてPエグゼクティブパッケージを追加しました。このグレードはヤマハと共同開発した「ダイナミックサウンドヤマハアルティメット」をはじめ、専用のセミアリニンレザーシートを標準装備しています。また、従来GとMグレードでしか選択のできなかった5人乗りがP、Pエグゼクティブパッケージでも選べるようになりました。
輸入車SUV勢に対抗できるか?
大幅改良した三菱アウトランダーPHEVの車両本体価格は、M5人乗りの526万3500円~Pエグゼクティブパッケージ7人乗りの668万5800円。CEV補助金は55万円となっています。走りや静粛性そして音響などの質感を高めた三菱アウトランダーPHEV。輸入車が優勢のSUVのPHEVに一矢報いることができるかどうか注目です。
※記事の内容は2024年9月時点の情報で制作しています。