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ミニバンマーケットから撤退したマツダの隠し球は3列シートSUVだった。従来のSUVよりミニバンの快適性に近づけた2列目・3列目シートやクリーンディーゼルの魅力的な走りで一躍スマッシュヒットとなったマツダCX-8の試乗レポートをお届けしよう。
ミニバンはカッコよくできない(マツダ談)
マツダは、つい最近までプレマシー、ビアンテ、MPVという3車種のミニバンを販売していました。しかし、2016年3月のMPV販売終了を皮切りに、ビアンテが2017年9月、そしてプレマシーが2018年1月に続々と販売終了となり、マツダの車種ラインアップからミニバンが姿を消しました。マツダがミニバンの販売を終了した理由の一つとして挙げられるのが、2012年にマツダの新世代商品群第1弾として登場した初代CX-5から取り入れた「魂動」デザインがミニバンでは表現できないからと言われています。
3列シートのSUVとしては異例のヒット
ミニバンを廃止したマツダが、6人以上の多人数乗車できるクルマの新しい提案として2017年4月に発表したのが3列シートをもつクロスオーバーSUVのCX-8でした。12月14日に販売開始したCX-8は2017年12月の新車販売台数では2081台で33位にいきなりランクイン。これまで3列シート車=ミニバンという図式を見事に崩すことに成功しました。
3列シートをもち多人数乗車が可能なSUVはトヨタのランドクルーザープラドをはじめ、三菱パジェロなどかつてクロカン4WDといったモデルのほか、日産エクストレイル、三菱アウトランダーのガソリンエンジン車に用意されていました。しかし、ミニバンからユーザーを獲得できたのはCX-8が初めてのモデルと言っても言い過ぎではないでしょう。では3列シートSUVのヒットモデル、マツダ・CX-8を試乗してみましょう。
ベースとなったのは「5」ではなく「9」
今回試乗したのは、車両本体価格419万400円のマツダ・CX-8 XD Lパッケージ 4WDです。マツダのSUVの中心モデル・CX-5のボディサイズは全長4545mm×全幅1840mm×全高1690mm、対してCX-8は全長4900mm×全幅1840mm×全高1730mmです。一見するとCX-8はCX-5のボディを延長したクルマと思う人も多いでしょう。しかし、実際は違っていて、CX-8は北米で販売されているCX-9のボディをベースに静粛性やボディ剛性などCX-8独自のチューニングを施したモデルなのです。その結果、CX-5以上に高い静粛性をCX-8は実現しています。
CX-8専用に改良されたクリーンディーゼル
CX-8に搭載されているエンジンはスカイアクティブD ・2.2L直列4気筒ディーゼルターボの1種類。CX-5をはじめ、アテンザなどにも搭載されているエンジンですが、車両重量が1790〜1900kgとウェイトが増えたCX-8でも力強く滑らかな走りを実現できるように大幅な改良が加えられました。燃焼効率や実用燃費を向上させるために、「急速多段燃焼」をはじめ、数多くの新技術を惜しみなく投入し、エンジン性能そのものをレベルアップさせたのです。
最高出力では従来の129kwから140kW、最大トルクは420Nmから450Nmへとパワーアップしています。さらに、ディーゼル特有のノック音を低減するナチュラル・サウンド・スムーザーやナチュラル・サウンド周波数コントロール、ドライバーのペダル操作に合わせて一体感のある走りを実現するDE精密過給制御を採用しています。
実走行でも15km/L以上の好燃費
様々な新技術が導入された2.2Lディーゼルターボエンジンはこれまでのディーゼル車にありがちな、アクセルペダルを踏んでから加速までの反応の鈍さを解消。まるでガソリンエンジン車かと錯覚するような鋭い加速をみせます。車両重量が2トン近いCX-8ですが高速道路の合流や追い抜きなどでもまったくストレスを感じません。
また静粛性も抜群です。ディーゼルエンジン特有のカラカラというノック音は、走行時だけでなく停車中でも車内にほとんど侵入してきません。JC08モード燃費でFF車が17.6km/L、4WDが17.0km/Lという数値を誇るCX-8ですが、今回試乗した300kmほどのインプレッションでも15km/Lを切ることはありませんでした。しかも使用する燃料は軽油なので、非常にランニングコストを抑えることができます。
大きなボディならではの穏やかな乗り味
CX-5がキビキビとした軽快感のある走りを披露するのに対して、CX-8は2930mmというロングホイールベースが生み出す、懐の深い穏やかな乗り味が特徴です。ドライバーの操作に対して非常にスピーディに反応する一方で、セカンドシートやサードシートに座っている人には非常にフラットで揺れの少ない乗り味となっています。
SUVではなくミニバンに近い2列目シートや3列目シート
CX-8にはセカンドシートが2人乗りのキャプテンシートと3人乗りのベンチシートが用意されます。そしてサードシートは身長170cmの大人が無理なく座れるスペースを確保しています。これまでのミドルサイズSUVのサードシートと比べてCX-8のそれは段違いに快適です。
またサードシートに人が乗った場合でもラゲージスペースの容量は239Lを確保するという実用性の高さも魅力です。サードシートを倒すと572L、さらにセカンドシートを倒せば、自転車を2台搭載できるフラットなスペースが出現します。
現在、人気の高いSUVの新提案であるCX-8はサードシートでも快適に過ごせる室内空間とマツダらしい高い走行性能を両立したモデルです。これまでミニバンしか選択肢のなかった大家族にとって選択肢の一つとして加わるのは確実です。
■マツダCX-8価格表(2018年8月現在)
グレード | 駆動方式 | WLTCモード燃費(km/L) | 車両本体価格 |
---|---|---|---|
XD | FF | 15.8 | 319万6800円 |
4WD | 15.4 | 342万9000円 | |
XD プロアクティブ | FF | 15.8 | 353万7000円 |
4WD | 15.4 | 376万9200円 | |
XD Lパッケージ | FF | 15.8 | 395万8200円 |
4WD | 15.4 | 419万400円 |
※記事の内容は2018年8月時点の情報で執筆しています。