この記事は、 4 分で読めます。
マツダのコンパクトSUV・CX-3が登場以来4回目となる改良を受けた。ほぼ毎年アップデートが加えられているCX-3、今回はクリーンディーゼルエンジンの排気量アップが大きな目玉だ。その走りはどう変わったのか?日本を代表する自動車評論家の一人、岡崎五朗さんの試乗レポートをお届けしよう。
登場後3年半で4回目の改良
マツダ車ってカッコいいよね。最近そんな声をよく聞くし、世界中のデザイン関係者からの評価も高い。なかでもCX-3はマツダデザインの考え方をもっとも象徴的に表現するモデルだ。数あるSUVのなか、もっともスタイリッシュなモデルだと思うし、マツダ車がカッコいい理由、さらに言うならマツダデザインのエッセンスがすべてここに隠されていると言っていいだろう。実は、そこには見事な逆転の発想があるのだが、そのあたりは後ほど解説するとして、まずは4回目となる商品改良について触れておこう。
いつ買っても最新モデル
ここでポイントになるのは商品改良の頻度だ。一般的な日本車は、モデルライフのほぼ中間、6年だとすると3年目に「マイナーチェンジ」するのが一般的だ。つまり6年に1回。それに対しCX-3は発売から3年半ですでに4回も改良を受けている。これまでの常識からするととんでもない頻度である。しかし日本の常識は世界の非常識?であって、海外には毎年細かい改良を施す「イヤーモデル制」を採用しているメーカーは少なくない。
イヤーモデル制のメリットは商品を常に新鮮な状態に保っておけることにある。これにより、ユーザーはモデルチェンジのタイミングを気にすることなく、欲しいときにいつでも買えるようになる。毎年改良を積み重ねていけば、「いま」が最高に熟成の進んだ買い時になるからだ。逆にデメリットは改良にかかるコストだが、そのための原資は新車値引きを抑えることで確保するというのがマツダの考え方。マツダ車は値引きが渋いが、それはその分のカネを商品改良に回しているから。新車を買うとき、後に買う人のための改良費用を負担していると考えると複雑な気持ちになるだろうが、長い目でみれば決して損にはならない。新車値引きが少ないクルマは売却時の値落ちも少ない傾向にあるからだ。実際、マツダはCX-3に3年後55%というかなり高い残価率を保証した販売プランを用意している。つまりイヤーモデル制は既存オーナーにとっても新しいオーナーにとってもメリットがあるということだ。
新エンジンより乗り心地と静粛性の向上が今回のポイント
さて、4回目の商品改良を受けたCX-3だが、最大のニュースはディーゼルエンジンの排気量が1.5Lから1.8Lになったこと。ただしエンジンのスペックはさほど変わっていない。動力性能の強化と言うよりは、ますます厳しくなる排ガス規制に余裕をもって対応するためというのがいちばんの理由だという。実際に乗ってみて感じたのは乗り心地と静粛性の向上だ。
タイヤ、サスペンション、ボディにまできっちり手を入れた成果、跳ね気味の乗り心地とうるさいロードノイズというデビュー当初の弱点は改善され、同時にインテリアの質感も大きく向上した。
中身の進化でますます輝くスタイリッシュなデザイン
となると冒頭で書いた抜群のスタイリッシュさがさらに活きてくる。「ノーズが長く、上屋がコンパクトで、下半身がドッシリしていて、タイヤが大きく、オーバーハングが短い」という、カッコいいクルマの基本様式(実はこれFR=フロントエンジン後輪駆動の特徴でもある)を、FFもしくはFFベースの4WD車で実現するというのが最近のマツダデザインの特徴。デザインとは機能の表現手段であるべきという常識では生まれ得なかった、このルネサンス的デザインはいまだ色褪せず、それどころか中身の進化によってさらに魅力的になった。
※記事の内容は2018年7月時点の情報で執筆しています。