軽自動車で大人気のスーパーハイトワゴン、広い室内と便利なスライドドアがユーザーからの支持を集めています。中でもホンダN-BOX、スズキスペーシア、ダイハツタントは販売台数ランキング上位の常連です。その3車種がそろって一部改良を実施。さっそく萩原文博さんが最新モデル3台に試乗して、その違いに迫ります。
売れているのはスライドドア装備のモデルばかり
日産ルークス、三菱eKスペースはエアバッグ不具合によるリコールで生産をストップしていましたが、2022年1月の軽乗用車の販売台数ランキングを見ると、トップのホンダN-BOXをはじめ、ダイハツタント、スズキスペーシアといったスーパーハイトワゴンが上位にランクインしています。
3位のダイハツムーヴ、4位のスズキワゴンRも現在売れているのはリアにスライドドアを採用したムーヴキャンバスとワゴンRスマイルなので、ベスト5までリアにスライドドアを採用したモデルが独占していると言っても言いすぎではないでしょう。
スーパーハイトワゴンの人気3モデルがそろって一部改良
実際、かつてママワゴンと呼ばれたスーパーハイトワゴンは、広い室内空間、利便性の高いリアスライドドア、多彩なシートアレンジなどミニバンの機能をギュッと凝縮したモデル。使い勝手の良さやランニングコストの高さなどにより、コンパクトカーユーザーを獲得する理由は納得できます。
軽自動車の中で人気を誇るスーパーハイトワゴンの人気3モデルがそろって一部改良を行い、改良後のモデルに試乗することができたので、インプレッションを紹介しましょう。
N-BOXはACCの全車速化とホールド付き電動パーキングブレーキを採用
まずは、ホンダN-BOXから。N-BOXは2021年12月に一部改良を実施し、「オートブレーキホールド付電子制御パーキングブレーキ」を全車標準装備としました。さらに、運転支援システム「Honda SENSING」の機能のひとつである、アダプティブクルーズコントロール(ACC)は渋滞追従機能が追加され、高速道路における渋滞時の運転軽減を図りました。そして、Nシリーズ10周年を機に、特別仕様車の「N STYLE+」を設定。
今回試乗したのは、この特別仕様車のN-BOXカスタムL・ターボSTYLE+BLACKで車両本体価格は205万7,000円。外観にブラックをアクセントカラーとしたフロントグリルやリアライセンスガーニッシュを採用。これにより、クールかついっそうの高級感を演出しています。
おしゃれで機能的なインテリア、ファーストカーで使える安定感がN-BOXの魅力
N-BOXの特長はIKEAの家具のようなおしゃれで機能的なインテリアです。軽自動車とは思えないような上質な空間を演出しています。広さや機能性だけでなく、おしゃれなデザインを取り入れているところはサスガです。
走りは、全高1,790mmもあるとは思えないほど、揺れの少ない安定感の高さが魅力です。運転していても重心の低さを感じ、高速道路を走行しても不安感はほとんど感じません。これほど安定感が高ければ、ファーストカーとしてどこへでも出掛けたくなります。
内外装を変更したスペーシア、ACCの車線逸脱機能とコネクテッドサービスを追加
続いては、スズキスペーシアです。スペーシアは2021年12月に一部改良を行いました。今回紹介する3モデルの中で唯一内外観を変更しています。中でもスペーシアカスタムはフロントグリルのデザインを変更し、人気ミニバンのアルファードを彷彿させるデザインとなりました。標準車もフロントマスクのデザイン、そしてギアはアルミホイールのデザインを変更。また、カスタムとギアはインパネカラーパネルやシートなどアクセント色を変更しています。
運転支援機能では、アダプティブクルーズコントロール装着車に車線逸脱抑制機能を追加。そしてハイブリッド GSを除くカスタムとギア全車にフロントガラス投影式ヘッドアップディスプレイを標準装備しています。さらに、新サービスであるコネクテッドサービス「スズキコネクト」に対応しました。
この機能はさまざまなデータの送受信を可能とする車載通信機を搭載することで、万が一、エアバッグが展開するような事故にあっても、自動通報が作動してオペレーターがすぐに緊急車両の出動を要請。また緊急事態が発生したときには、SOSボタン(手動通報)でもオペレーターにつながるスズキ緊急通報(ヘルプネット)をはじめ、トラブルサポートしてくれる機能です。さらに、専用のアプリをインストールしたスマートフォンよって、操作も可能となっています。
スペーシアはマイルドハイブリッドと柔らかい乗り心地が特長
試乗したのは車両本体価格188万3,200円のカスタム ハイブリッドXSターボ。3台の中では唯一マイルドハイブリッド機能を搭載しています。試乗すると、車両重量が900kgという軽自動車の中ではヘビー級のボディをターボエンジンの高出力によってスムーズに加速します。
信号からの発進のときにモーターが作動しアシストしてくれますが、その時間は短く、ほとんどエンジンパワーでまかなってしまいます。その結果、ハイブリッドシステムのバッテリー容量は常にMAX近くまで溜まります。今回は街乗り中心でしたが、坂道が多いシーンや高速道路ではよりマイルドハイブリッドの恩恵を受けられるかもしれません。
乗り味はN-BOXと比べると柔らかめです。カーブを曲がる際にはクルマの傾きもやや大きめとなりますが、後席の乗り心地を考えてのセッティングと言えます。高速道路ではこのセッティングだと直進安定性はやや物足りなくなるかもしれません。
タントはACCやコーナリングブレーキアシストの設定を拡大
最後は助手席側に採用した大開口が特長のミラクルオープンドアが魅力のダイハツタント。タントは先に紹介した2モデルに先駆けて2021年9月に一部改良を行いました。この一部改良で、「Xターボ」、「カスタムRS」、「カスタムRS“スタイルセレクション”」に電動パーキングブレーキやオートブレーキホールド機能、そして走行中カーブの差し掛かりでドライバーのブレーキをサポートし、安定した姿勢を保つコーナリングトレースアシストを標準装備し安全性を向上させています。
さらに、「X」、「カスタムX」、「カスタムX“スタイルセレクション”」には、全車速追従機能付きACCをはじめ、電動パーキングブレーキ、オートブレーキホールド機能、コーナリングトレースアシストなどを含む「スマートクルーズパック」をオプションで設定し、装備を充実させました。
ミラクルドアの使い勝手とソフトな乗り味がタントらしさ
今回試乗したのは、最上級グレードのタントカスタムRS“スタイルセレクション”で車両本体価格は190万3,000円です。外観デザインはやや押し出し感を強めたスポーティな印象ですが、乗り味は今回紹介する3モデルの中で最もソフトな印象です。
ミラクルオープンドアをコアとした利便性の高さは他の2モデルにはない魅力ですが、ロングドライブをする機会が多いという人にはこのソフトな乗り味だと直進安定性に物足りなさを感じてしまうかもしれません。しかし、街乗りならば不満は出ないと思います。
いずれも実力はハイレベル、使い方でベストバイは変わる
今回試乗した3モデルは装備内容をそろえると、ほとんど支払額は変わらなくなります。一見同じように見える3モデルですが、どのように使うのか、何を求めるのかでベストバイは変わると思います。ロングドライブにも使うなら安定感のあるN-BOX、買い物や送迎など街なかでの使用がメインならミラクルドアとソフトな乗り心地のタント、どちらも程々にということであればマイルドハイブリッドのパワーと燃費に優れるスペーシアですが、人気モデルだけにいずれも基礎点は高いことも付け加えておきます。
※記事の内容は2022年2月時点の情報で制作しています。