2024年6月28日に発売された新型ホンダ「フリード」(2,508,000〜3,437,500円)。ハイブリッドモデルのe:HEVや3列シートモデルに話題が集まっていますが、ガソリンの2列シートモデルもなかなかの使い勝手のようです。島崎七生人さんと愛犬シュンくんによる試乗レポートをお届けしましょう。
大人2人+犬1匹でも意外と手間ひまが
我が家の家族構成は大人2人+犬1匹。こう書くと「気楽でいいよね」と思われるかもしれないが、実はそうでもない。もちろん日頃はコンパクトカーの自家用車(フィアット500)で通用“させて”はいるが、やってみてわかったことは、たとえ犬1匹だけでも頭数が増えると、それに伴っていろいろと荷物が増えたり、移動中に本人を乗せておく場所を考えたり……と、人だけの時とは違う手間ひまがそれなりに増え、準備を整えたり装備を用意する必要がある。
飼い主の生業のせいで我が家の犬は代々“モータージャーナリスト犬”としての宿命(!?)を課せられ、オートナビガイドでもしばしば登場させていただいている。いずれも犬種は同じ柴犬で、先代の後を引き継いだ3代目となる現在のシュンは、目下、2歳9カ月となり体重が15kgほどに成長した。犬のことがおわかりの方なら、先代までがせいぜい11〜12kgだったとお伝えすれば、柴犬としていかに立派な体格であることかご理解いただけるだろう。家内など、今のシュンは抱きかかえるにしてもひと苦労で、クルマの載せ降ろしも、同じ柴犬なのにそれまでとは勝手がまるで違うことを実感させられているところだ。
日常的な使いやすさ+乗り心地の現実的選択
さてそうした我が家のようなケースでは、いかに日常的に使いやすいクルマかどうかが重要になってくる。もちろん乗り心地は重要で、今年の試乗車(カレは撮影&試乗で、今年30数台のクルマに乗っている)の中で、新型メルセデス・ベンツEクラスセダンやDS4やBEVのBYDシールなど、よほど心地よかったせいか乗るなり後席でウタタ寝をしていた例もあった。が、実勢に則せば我が家ではプライベートでカレにそんな贅沢はさせられるはずもなく、もしどれか1台になっても、現実的な選択肢の中からどのクルマがいいのか考えることになる。
そこでフリードである。今回借り出したのはガソリン・モデルのクロスター・FF・5人乗り(メーカー希望小売価格281万2700円)。すでにe:HEVは試乗会で経験済みで、ホンダの広報部に個別試乗を申し込んだところ「ガソリン車に乗っていないでしょう?」と用意された試乗車だった。光の加減で写真ではわかりづらいかもしれないが、ボディ色はトワイライトミストブラック・パール……要するに黒で、クロスター独自のフロントバンパーの樹脂色無塗装部分やホイールアーチがやや引き立ちにくいものの、反対にシルバーのドアハンドル、ルーフレールはよくわかる、そんな外観が特徴だ。
フリードは“人と家族に優しいクルマ”
ところで今回は、肌感覚で実用性を試すべく、あくまでも日常使いの範囲での試乗とした。するとまず理解できたのが、このクルマはおよそ幅広いユーザーが何の抵抗もなく乗って運転できるクルマに仕上げられているということ。
全長4310mm×全幅1720mm、ホイールベース2740mm、最小回転半径5.2mのコンパクトなボディが扱いやすく、視界が広く明るいのがいい。視界ということでは実はノーズ先端は直接視認できない。が、これは近年のミニバンや軽自動車はみなそう。なので、今どきのユーザーは、ノーズが見えるか見えないかよりも、センサー、カメラ類のサポートを得ながら、こういうタイプのクルマでもサラッと扱える……ということかもしれない。
実車を生活の中で使って感じたのは、フリードはやはり“人と家族に優しいクルマ”だということ。たとえばスライドドアを開けようとした際、力を込めてグイッ!とドアハンドルを引く必要はなく、指先の第一関節程度の力で軽くハンドルの内側を引けばドアロックが外れ、電動スライドでドアが開く。また前席アームレストの付け根部分は(写真のように)ペットボトルなどが入った小さめのレジ袋がかけられるようになっており、手の届く位置でレジ袋もかけやすくてよかった。
5名乗り・FFのメリットはラゲッジルームの広さ
他方、5名乗り・FFのクロスターの場合、何といってもラゲッジスペースの広さ、実用性の高さを見逃すわけにいかない。付属のボードでラゲッジスペースを2段にして使えるほか、ボードを外すと天地134cm(実測値)ほどの悠々としたスペースが出現。床面はまさに低床で、路面から33cm(同)ほどしかない。この床に合わせテールゲートと開口部形状は専用設計になっている。
用品としてルーフラック、サイドボックス、防水のラゲッジトレイ、ユーティリティフックといった利便性を高めてくれるアイテムも揃うから、自分仕様にして使いこなすのもよさそうだ。
軽々とした走り、実燃費も14km/L以上
それと乗り心地・NVH評価担当の我が家のシュンも後席に乗り、撮影場所まで移動をしたが、まるで自分の家のクルマのように、乗車した瞬間から馴染んだ風だった。低過ぎず高すぎずの乗車位置もよかったらしい。
クルマそのものは、試乗車はシリーズ中では最軽量な部類の車重(1400kg。6名乗りは1390kg)のせいか、全体に軽々と自然な挙動が印象的で、乗り心地もまずまずのスムースさ。ドライバーとしても、必要にして十分な動力性能で気を遣わずにアクセル操作ができるところがよかった。ここぞという時にはシフトを“S”にすることでより心強い加速もえられる。が、今回は試乗中はほとんど“ECON”モードにして走行、クルマに省燃費・高効率な運転をサポートしてもらったところ、試乗車返却時、スタンドで「オートストップで給油を止めてください」と頼んだガソリン給油量から割り出した燃費は14.26km/Lほど。カタログのWLTCモード燃費が16.4km/Lだから、まずまずといったところだった。
日常中心の用途であればe:HEVに対して動力性能は大きく見劣りはしないし、自由なクルマの使い方を可能にする潔い5人乗りという点にも、魅力を感じるユーザーも少なくないはず。ファーストカーとしてもセカンドカーとして使ってもいいし、子育て世代に限らず、案外、大きな受け皿となるクルマではないだろうか。
(写真:島崎七生人)
※記事の内容は2024年10月時点の情報で制作しています。