東京モーターショーで華々しいデビューを飾った4代目の新型ホンダフィット。電動パーキングブレーキの不具合改善のために正式発売は2月に延びたが、岡崎五朗さんが、そのプロトタイプにいち早く試乗した。スタイル、走りとも歴代ベスト、という新型フィットのインプレッションを紹介しよう。
リコールよりは発売延期の方がよい
東京モーターショーでお披露目された新型フィットが間もなく発売される。本当はもう少し早く売り始める予定だったのだが、N-WGNと同じく電動パーキングブレーキ関係の不具合改善に時間がかかった。そういえば先代フィットも発売直後、ハイブリッドとDCTの組み合わせにトラブルが出てリコールを繰り返した。
新型の登場を心待ちにしていたユーザーにとっては迷惑な話だが、そこを糾弾するつもりはない。もちろんトラブルフリーであることが理想ではあるけれど、人のやることに完璧はあり得ないわけで、起こってしまったことに誠実に対応さえしてくれれば、よしとしようではないか。そういう意味で、見切り発車的に販売せず、発売時期を遅らせてまで(自動車メーカーにとっては重大事件だ)、きちんと対策してから発売しようという姿勢は、リコールを繰り返した前回から得た教訓なのかもしれない。
適度な脱力感と実用性が同居したデザイン
さて、4代目となる新型フィットだが、僕としては歴代フィットのなかでベストだと感じている。実際、あ、これ欲しいかも、と思ったフィットはこれが初めてだ。
まず、適度に脱力感のあるデザインがいい。先代のガチャガチャとうるさいデザインとは真逆のシンプルで暖かみのある姿は、見る人の心を癒やしてくれる。その上で視界を大きく左右するフロントピラーを極限まで細くしたり、インテリアを居心地のいいカフェのような雰囲気にしたり、シートの座り心地にこだわったり。
出来の良い新しいハイブリッド
プラットフォームは先代からのキャリーオーバーだが、ダンパーのフリクションを極限まで下げるなど乗り心地のよさにもこだわった。e:HEVと呼ぶ電動駆動フィールの強いハイブリッドもいい出来だ。
新型フィットの魅力は、燃費とかパワーとか広さとか、そういう「数字」で表現できることではなく、オーナーに気持ちのいいカーライフを提供するにはどうしたらいいかを第一優先に据えたコンセプトだ。
スポーティーなヤリス、癒やしのフィット、どちらもレベルが高い
期せずしてほぼ同時に発売されるトヨタ・ヤリスはデザインも走りもスポーティーにこだわった。癒やしを目指した新型フィット。まったく異なる個性がマーケットでどんな戦いを見せるのか興味深いところだ。貴方はフィット派、それともヤリス派? われわれユーザーがまず喜ぶべきことは、そんな問いかけが成立するほどキャラの立った選択肢が国産コンパクトで提供されるようになったことだと思う。
(写真:ホンダ)
※記事の内容は2020年2月時点の情報で制作しています。