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17年のブランクを経て2019年に復活したトヨタスープラが一部改良を実施し、待望のマニュアル(MT)モデルを追加しました。兄弟モデルのBMW Z4には設定のない直列6気筒ターボ+MTのスープラ、その実力を岡崎五朗さんがサーキットで試しました。
Z4には3L直6ターボとMTの組み合わせはない
発売から3年。スープラについにMTが加わった。ご存じの方もいらっしゃると思うが、スープラはBMW Z4と兄弟モデル。同じプラットフォーム、同じエンジン、同じサスペンション形式を採用しつつまったく異なるキャラクターに仕上げている。Z4がオープンカーであるのに対しスープラはクーペモデルであり、ボディ剛性や重量といった走りに直結する部分では、当然ながらスープラが有利になる。
搭載するエンジンはBMW製の3L直6ターボと2L直4ターボ。今回MTが追加されたのは3L直6ターボになる。ちなみに、Z4には3L直6ターボとMTの組み合わせはなく、6速MTは今回スープラに搭載するにあたって新たに開発したものとなっている。
86の健闘がスープラのMT追加の呼び水に
面白かったのは、なぜMTを追加したのか?という質問に対する答えだ。MT比率は一貫して低下傾向にあり、もはや絶滅危惧種になっている。しかし86ではMTの人気が高く、なんと6割の人がMTを選んでいるという。トヨタとしては、86でスポーツカーの楽しさを再認識し、より高性能なモデルへの乗り換えを検討しているユーザーの期待に応えるべくスープラにMTを設定したのだそうだ。単純に考えても、86やGRヤリスにMTがあるのならスープラにも欲しいよね、ということになるなと思う。
世界でもっともスイートなエンジンの1つ
BMW製の3L直6ターボは世界でもっともスイートなエンジンのひとつだ。デビュー当初340psだった最高出力は2020年のマイナーチェンジで387psに強化。500Nmという強大なトルクとあわせ強烈な加速性能を誇るが、このエンジンの魅力は数字で表すことができる部分に留まらない。ストレート6ならではの滑らかさに加え、完全バランスされた剛性の高いパーツが精密に回っている・・・といった表現を使いたくなる独特の硬質感がいい。回転数やアクセルの踏み込み度合いに応じて微妙に変化するサウンドや、トップエンドに向けドラマティックに盛り上がっていく伸び感とパンチ力も最高だ。そんなエンジンの美味しさを骨の髄まで味わうにはやはりMTである。
クルマとの濃密な対話
6速MTはストロークが短く、シフトチェンジ時のフィーリングもカッチリしたスポーティーなもの。しかしクラッチは負担を感じるほど重くはないし、発進時の半クラッチもコントロールしやすい。さすがに長い渋滞にはハマりたくないなとは思うが、ゴー&ストップの多い街中で乗ったとしても苦痛ではなく、むしろ左足と左手と右足を連携させながらスムースに走らせるという、クルマとの濃密な対話を歓迎する人も多いだろう。
じゃじゃ馬感が強かったリアの動きもかなりマイルドに
スープラは2020年のマイナーチェンジ時に足回りにも大きなメスが入り、乗り心地と安定感を大幅に引き上げているのだが、今回は電子制御ダンパーや電動パワーステアリングといったソフトウェアの制御を変更。サーキット試乗でも、ステアリングの手応えがより濃密になっていることを確認できた。また、デビュー当初はじゃじゃ馬感が強かったリアの動きもかなりマイルドになり、コントロール性と安心感も高まっている。
サーキットが生まれ故郷ともいうべきGRMNヤリスと比べるとさすがに超高速高G領域での収まりは1ランク劣る。しかし、サーキットに合わせてしまうと今度は一般道での乗り心地や荒れた路面での接地性が犠牲になる。スポーツカーであると同時に高性能GTカーでもあるスープラのコンセプトを考えれば、いいバランスポイントだと思う。
「ほぼマイナーチェンジ」と捉えてほしい
開発陣が「ほぼマイナーチェンジと捉えていただければ」とアピールする2023年式スープラ。足回りの熟成やマットホワイトを含む新色の設定、タン色内装の追加も魅力だが、最大の注目ポイントはやはりなんといっても世界最高のストレート6エンジンをMTで味わえることにある。
(写真:トヨタ自動車)
※記事の内容は2022年6月時点の情報で制作しています。