三拍子揃って売れに売れているロッキーとライズ
11月初旬の発売以来、売れに売れているのがロッキーだ。トヨタ版のライズと合わせれば月販で軽く1万台超え。安い(170万円〜)、扱いやすい(5ナンバーサイズ)、いまどき感(SUV)という三拍子揃ったのが大ヒットの理由だろう。
クラス唯一の正統派デザインSUV
軽自動車にはハスラーやジムニーがあるが、これほど身近で手軽なSUVは登録車にあるようでない。ガチンコのライバルになるのはスズキのクロスビーぐらいだが、デザインテイストがかなり違うため、どちらにするか迷う人は案外少ないと思う。
どこかMINI風の濃い味キャラに仕立てたクロスビーに対しロッキーはプレーンな正統派。より多くの人から支持を受けるのはロッキーだと思う。
扱いやすいサイズ、十分な室内&荷室スペース
スリーサイズは全長3995mm×全幅1695mm×全高1620mm。初代RAV4の3ドアよりは少し長く、5ドアよりは少し短いといった感じで、立体駐車場対応を除けば扱いやすさは上々だ。
それでいて室内&荷室スペースはかなり実用的。後席は大人が乗り込んでも窮屈さを感じさせないし、荷室はかなり広い。なにかと荷物が多くなるキャンプにもラクに対応してくれる。特にFFモデルのラゲッジアンダーボックスは驚くほどの深さがある。
圧倒的なスペース効率はタントのノウハウ
ミニバンならいざ知らず、SUVでこれほどのスペース効率を実現したのはすごいことだ。これに関して開発者に聞くと「われわれは広くつくるのは得意なので」という答えが返ってきた。実はこのロッキー、タントと基本骨格の多くを共有している。
タントといえば軽自動車でありながら驚くほど広大な室内スペースを持つクルマであり、ロッキーにはその技術的要素が活かされているというわけだ。もちろん、ロッキーとタントはボディサイズもタイヤサイズもボディ形状も載せているエンジンも違うが、メカを限りなく小さくしてスペースを稼ぐという軽自動車作りのノウハウは間違いなく活かされている。もちろん、大ベストセラーカーであるタントとのパーツ共用はコスト的にも有利に働く。
走りの良さも、いい意味でタント譲り
そこで気になるのは、軽自動車と共用パーツを使って果たしてきちんと性能が出るかどうかだ。スズキはかつてワゴンRをベースにしたワゴンRワイドをつくったが、狙い通りの性能を出すことができず「軽自動車と小型車との共用は失敗だった」と公言していた。
ならばロッキーはどうなのか。結論から言うと、まったく問題なしだった。重いエンジン、重いボディ、重いタイヤ&ホイールを組み合わせても、ボディやサスペンションにペラペラ感はまったくなく、重厚かつしなやかという表現さえ使える乗り味をきちんと出しているのだ。
元々タントの乗り味が優れているのに加え、当初からロッキークラスのクルマまで使うことを想定してプラットフォームを設計しているのが功を奏したようだ。ステアリング中立付近に若干渋さが残っていることと、凹凸が連続する路面でタイヤがバタ付き気味になることを除けば、乗り心地もハンドリングも上々。高速直進性も良好だ。
初めてのSUVに最適な一台
1L3気筒ターボの持ち味は低中速域の太いトルク。街中での動力性能はスペック以上に力強いし、静粛性にも合格点がつく。強烈な個性はないものの、走り、運転のしやすさ、パッケージング、デザイン、価格などを高度にバランスさせたロッキーは、シティユースから週末のレジャーユースまであらゆるシーンに対応してくれる懐の深いクルマだ。初めてのSUVとしておあつらえ向きの選択だと思う。
※記事の内容は2019年12月時点の情報で制作しています。