ホンダは、2021年9月3日に「シビック」をフルモデルチェンジして発売しました。その後に開催されたメディア向け公道試乗会に参加してきましたので、そのレポートをお届けします。
シビックとは?
2021年9月3日にフルモデルチェンジした新型シビックについて、ホンダは「ハッチバックスタイル」と伝えていました。ただの「ハッチバック」ではなく、「ハッチバックスタイル」という表現をしているところがポイント。
新型シビックを後ろから見ると、リアハッチが大きくなだらかな形状となっています。一般的なハッチバックは、リアハッチはここまで寝かされていません。
ほかのメーカーでは、似たようなスタイルのモデルを「ファストバック」と呼び、セダンの仲間としていることもあります。クルマのボディタイプが多様化している現在。ホンダは、わざわざ「ハッチバックスタイル」と表現したのでしょう。
先代シビックは、ハッチバックとセダンがラインナップしていましたが、新型シビックはハッチバックのみとなります。先に発売された北米市場の新型シビックは、セダンもラインナップしています。
日本市場は、シビックに限らずセダンが不人気。先代シビックは、途中でセダンの国内販売が中止となりハッチバックのみのラインナップになっていました。
新型シビックは初代の原点回帰で企画開発
初代シビックは、1972年にデビューしました。この当時は、第4次中東戦争が原因で起こった第一次オイルショックや、マスキー法と呼ばれた厳しい排ガス規制によって、自動車メーカーは皆、苦しい経営を強いられていた時期でした。
そんな中、シビックは「CVCC」と名付けられたリーンバーンエンジン(ガソリンと空気の混合気をリーン=希薄にして排出ガスの有害物質を少なくする技術)を搭載、厳しいマスキー法対策をブレイクスルーしたモデルとなって、世界中で大ヒットを飛ばしました。
当時のホンダは、ホンダ「1300」が商業的に大失敗しており、四輪部門撤退が囁かれていました。しかし、シビックの大成功によりホンダ四輪部門は息を吹き返したのでした。
「初代シビックがなかったら、今のホンダはなかった」といって過言ではないでしょう。
11代目となった新型シビックは、そんな初代シビックのコンセプトへ原点回帰しています。
初代シビックに乗った当時のジャーナリストのひとりは「一服の清涼剤のようだ」と評していました。ホンダはその言葉を、11代目シビックのコンセプトとして取り入れ、「爽快シビック」というサブネームを付けたのでした。
ホンダは、2代目シビックに「スーパーシビック」というサブネームを与えました。その後7代目まで、なんらかのサブネームが与えられていました。
しかし、8代目でサブネームは消滅、9代目は日本市場未導入、スポーツモデルの「Type R(タイプR)」が2015年に導入されたのにとどまり、10代目もサブネームは与えられませんでした。
新型シビックに「爽快シビック」というサブネームが与えられたのも、原点回帰のひとつですね。
歴代シビックとサブネームの変遷
どこが「爽快」なのか?そのポイントは5つ
新型「爽快シビック」は、どこが『爽快』なのでしょうか?
試乗会のときのプレゼンテーション、開発者インタビューからと、筆者が運転して感じた「爽快シビック」のポイントは、次の5つでした。
① 低重心骨格
新型シビックは、ワイド&ローのパッケージ。リアトレッドは先代より10mm拡大して、1,565mmとなりました。たった10mmですが、クルマの10mmはでかい!操縦安定性がよくなり、爽快な運転が楽しめます。
低いプロポーションも、爽快な気分を感じます。
② 広い視界
新型シビックのAピラーは先代より後退しています。運転席に座った瞬間に、広い視界をすぐに感じれます。
視界が広いと、安全運転がしやすくなりますし、気分も爽快になりますね。
③ 開放的な空間
新型シビックは、フェンダーの高さを下げて、全体的にウィンドウ面積を大きくとっています。
また、先代にはなかったリアクォーターウィンドウを追加。小さな窓ですが、効果は絶大ですね。
ホンダは、「低重心骨格」「開放的な空間」「気持ちの良い視界」の3つのポイントをまとめて『爽快パッケージ』と表現していました。
④ 爽快で安定した走り
新型シビックは、文字どおりの爽快な走りでした。走りの気持ちの良さ、特に回して気持ちがいいエンジンはホンダの命でもありますね。
新型シビックのエンジンは、先代と同じ1.5L VTEC ターボをキャリーオーバーしていますが、ターボチャージャーやCVTのチューニングの変更、制御の最適化によって、静粛性の向上、燃費の向上、加速性の向上などなど、より爽快な走りを実現しています。
また、エンジンサウンドもチューニングされ、より爽快なドライビング体験ができます。特にマニュアルではとても気持ちがよかったですね。CVTでは、エンジンの回転数と実際の加速がマッチしていて、これも爽快でした。
新型シビックを運転してすぐに感じたのは、操縦安定性の高さ。四輪がしっかりと地面について走っている感覚を体験できました。試乗時は、雨で滑りやすい路面状態でした。しかし、そんな悪天候のコーナリングでも、低重心とサスペンションの良さがあいまって、爽快に走れましたね。
⑤ 高い安全性能
新型シビックは、進化した「Honda SENSING(ホンダ センシング)」を搭載しています。先代シビックに比べて、視野角が60°も広がったフロントワイドビューカメラと、リアに検知距離約25mのコーナーレーダー、さらにフロントとリアのソナーを組み合わせて、より広範囲の障害物や人、車の認識ができるようになりました。
先代シビックのホンダセンシングは、フロントカメラとミリ波レーダーを使用していました。新型シビックのホンダセンシングのほうが、守備範囲が広がっています。
また、新型シビックのホンダセンシングは、世界初の自動運転レベル3の市販車、レジェンドに採用された「Honda SENSING Elite(ホンダ センシング エリート)」の技術が転用されています。
レジェンドのホンダセンシング エリート搭載モデルは、限定100台のみリース販売のみでした。こんなすごいものを開発して元が取れるのかな?と老婆心ながら不思議に思っていたのですが、こういうことだったんですね。
フラッグシップモデルで開発して市販、その後、ほかのモデルに転用する。これは、F1やSUPER GTなどのレーシングカーの技術は、市販車に転用することも目的として開発する手法と同じですね。
進化したホンダセンシング
自動車メーカーは、運転支援機能の使用は高速道路でのみを推奨として、一般道路での使用を非推奨としています。しかし、筆者は、機能をよく理解し安全が確保できることを確認した上で、一般道路でも運転支援機能を積極的に使用したほうがいい、と考えています。運転支援機能は、運転疲労の軽減や事故防止に効果的です。
新型シビックの試乗では、雨天の白線が消えかかった道路でも、しっかりハンドル操作支援が入るなど、進化した「Honda SENSING」が体験できました。
以上、5点が新型シビックの『爽快』ポイントでした。
今回の試乗は、ショートドライブでしたので、次は広報車をお借りして、じっくりと長距離ドライブをしてみたいですね。
ホンダは新型シビックのターゲットは、Z世代だと伝えていました。Z世代にウケそうな長距離ドライブ企画を考えてみますね。
次のレポートも、どうぞお楽しみに!
画像ギャラリー
新型シビック グレード「EX」CVT
新型シビック グレード「EX」6MT
ボディカラー「プラチナホワイト・パール」
撮影・文・取材:宇野 智
※記事の内容は2021年9月時点の情報で制作しています。