2021年12月20日、ダイハツは軽商用車「ハイゼット カーゴ」「アトレー」をフルモデルチェンジ、同時に「ハイゼット トラック」をマイナーチェンジして発売することを発表しました。
本記事では、ハイゼット/アトレー新型2モデルのハイライトをまとめてお伝えします。
【動画】アトレー4ナンバー化の理由や新開発FR用CVTのスゴイところなどの取材会レポート
0:00 ハイゼット カーゴ
9:46 アトレー デッキバン
15:36 アトレー スローパー
21:12 アトレー
25:27 アトレー4ナンバー化の理由
26:55 ハイゼット トラック
31:50 ハイゼット トラック ジャンボ
34:24 荷箱 実証実験
39:55 新開発FR用CVT
ハイゼット/アトレーとはどんなクルマ?60年余の歴史が!
「ハイゼット」シリーズは、1960年にダイハツ初の軽四輪車として誕生しました。日常生活の足として、農業をはじめとする一次産業から、街の商店や土木建設業などの幅広いユーザーに愛されてきたロングセラーモデルです。今から60年以上も前に活躍、今回のフルモデルチェンジで11代目となりました。
ハイゼットシリーズは、エンジンがフロントシート下にレイアウトされる「キャブオーバー」タイプで、広い室内空間が最大の特徴です。2000年代になってから、軽自動車は空前のハイトワゴンブーム、今やブームというより定番となってしまい、キャブオーバーは人気薄となってしまいましたが、室内空間の広さ、使い勝手の良さはハイトワゴンにまさります。
キャブオーバーの難点といえば、車高が高く横風の影響を受けやすいことと、ボンネットがないため(正しくいえば、1993年改正の道路運送車両の保安基準により、1994年4月から販売されるキャブオーバー車は、クラッシャブルゾーンとなる小さなボンネットを設けないといけなくなりました)、正面衝突時の乗員保護に不安があるといったことが挙げられます。
しかし、広大な室内空間は、大人4人が窮屈せずに乗った上で荷物もしっかりと詰められるユーティリティの高さを誇り、キャブオーバー車は軽自動車のラインナップにはなくてはならない存在となっています。
ちなみに、現在、軽キャブオーバーを生産しているのは、ダイハツとスズキだけになりました。ほかのメーカーでは、その2社のいずれかのOEM供給を受けて販売されるモデルとなります。
デザイン新旧比較!アトレーは4ナンバーに
軽自動車の小さいボディサイズ規格は、キャブオーバーになるとさらにデザイン上の制約を受けてしまいます。軽トラになるとなおさら。先代と新型のデザインに特別顕著な違いはありません。先代のコンセプトをキープしてリフレッシュした印象です。
ただアトレーに関しては、クルマ好きではない方から、「どこが違うの?」という質問がくるかもしれません。以下に新型と先代の画像を並べて掲載しますので、サイゼリヤの間違い探しをするような感じでお楽しみください。
新型ハイゼット/アトレーのデザインの特徴は、直線を多用し全体的にキリッと引き締まった印象になったこと。特に、ヘッドライト下からリアエンドまで一直線かつ地面と水平に引かれたキャラクターラインは、クリーンな印象だけでなく、安定感も感じさせるデザインとなっています。
ハイゼット カーゴ
新型 ハイゼット カーゴ
先代 ハイゼット カーゴ
アトレー
新型アトレー
先代アトレー
ハイゼット トラック
新型ハイゼット トラック
先代ハイゼット トラック
アトレーは4ナンバー化
ハイゼットの乗用車版「アトレー」は、フルモデルチェンジして先代の5ナンバー(乗用車)から、4ナンバー(商用車)に変更されました。
5ナンバーと4ナンバーの最も大きな違いは、乗員空間と荷室空間の比率で、荷室空間のほうが広くなるのが4ナンバーです。ほんのわずかな差でも荷室空間が広ければ4ナンバーとなります。
キャブオーバーは元々室内空間が広く、1990年代になるまでの軽キャブオーバーは4ナンバーしかありませんでした。2000年代までは、軽キャブオーバーには5ナンバーのワゴン需要が高かったのですが、最近はハイトワゴン人気の影響で、5ナンバーの軽キャブオーバーの必要性が低くなったという背景があります。
ダイハツの商品企画担当者は、アトレーを4ナンバー化した理由について、軽自動車はハイトワゴンの需要増加に対して、キャブオーバー・ワゴンの需要が減ったことと、4ナンバーでも5ナンバー車同等の快適性、乗員空間の広さが確保できたから、と話していました。
目に見えないところの改良がスゴイ!
ハイゼット/アトレーは、17年ぶりのフルモデルチェンジということで、改良点は多岐にわたります。そのおもな改良のポイントをまとめてお伝えします。
DNGAプラットフォームの採用
クルマの「プラットフォーム」とは、簡単に言えば骨格のことで、シャシーをはじめとする主要構造物となります。人間に例えるなら、体幹。体幹がしっかりした人とそうでない人、どちらかの背中におんぶされるなら、迷わず体幹がしっかりした人を選びませんか?クルマも同じです。
しっかりしたプラットフォームは、クルマの基本性能がしっかりとして、走る・曲がる・止まるがドライバーの意のままに行うことができ、乗り心地も良くなります。
新開発FR用CVTを採用
クルマに詳しい方なら「お、ついにダイハツは開発したのか!」と思ったことでしょう。現在のクルマのほとんどは、FF(フロントエンジン・フロントドライブ/前輪駆動)になりました。キャブオーバー車は、FR(フロントエンジン・リアドライブ/後輪駆動)です。
クルマは加速するとき、後輪に荷重がかかります。重たい荷物を積んで走るクルマは、後輪駆動のほうが有利です。現在、軽自動車の中では、キャブオーバーと軽トラだけが、FRとなってしまいました。
そんなマイノリティーであるFRのトランスミッションは、古くからあるステップ式AT。対して軽FF車のトランスミッションは、すべてCVT(無段変速機)となりました。
CVTの変速は、プーリーとベルトを使っていますので、変速比が自由に設定でき、効率良く走ることができるメリットがある一方、滑りが生じたり、無駄にエンジン回転音が上がったりするなどのデメリットもありました。
軽自動車のFF化、CVT化が進む中、軽キャブオーバーが、いにしえのトランスミッション方式を採用し続けてきたのは、後輪駆動方式が必要だったから。軽トラでFFでは、全国の農業関係者からの非難が殺到するに違いありません。
ちなみに、農村地帯で無敵だったのが、RR(リアエンジン・リアドライブ)を採用していた、先代スバル サンバー。サンバーは「農道のポルシェ」との異名をとり、RRならではの駆動力の良さが農業関係車などから絶大な支持を得ていました。
話がそれてしまいましたが、マイノリティーになった軽FR向けのCVTを新たに開発したことに、筆者は拍手を送ります。が、肝心なのは走り。実はちょっと心配していますが……この点は、のちに試乗するかと思いますので、そのときにレポートしましょう。
最新の「スマートアシスト」を採用
2020年代に発売される新型車で、最新の先進安全技術が採用されないケースはほとんどありません。軽商用車でも、先進安全技術の装備は当たり前の時代です。
ただ、ハイゼットシリーズはピュアな商用車で、先進安全技術をまったく必要としないクルマの使い方をする業種にも対応できるようにするため、先進安全技術が採用されないグレードもきちんと用意されています。
ハイゼット カーゴはクラス最大の荷室長・荷室幅・荷室高に
新型ハイゼット カーゴは、車体構造のスクエア化によって、クラス最大の荷室長・荷室幅(軽キャブオーバーバンの4名乗車時の)・荷室高になりました。
【画像で見る】新型ハイゼット/アトレーのハイライト
ハイゼットカーゴ「効率 極めた 活力カーゴ」
新型ハイゼットカーゴのコンセプトは「効率 極めた 活力カーゴ」とのことでした。
新色3色を追加して全7色のカラーバリエーションへ
インテリア
シートアレンジ
アトレー「使い尽くせる マルチBOX」
新型アトレーの開発コンセプトは「使い尽くせる マルチBOX」。
アトレー デッキバン
インテリア
ハイゼット トラック「た さ い トラック」
ハイゼット トラックの開発コンセプトは、多く積む『多載』とユーザーを選ばない『多才』と、選択肢が多い『多彩』。ひらがなで表現しています。
ハイゼット トラック ジャンボ
インテリア
福祉車両「スローパー」
以上、新型ダイハツ ハイゼットシリーズ、アトレーのハイライトをお伝えしました。次の機会は、試乗レポートをお届けしたいと思います。
※記事の内容は2021年12月時点の情報で制作しています。