人気車種のモデルチェンジや季節的な要因などによって中古車の相場は日々動いています。そんな中古車市場でいま狙い目のお得なモデルはどれなのか。中古車相場にも詳しい自動車評論家の萩原文博さんに聞いてみました。2022年新春の中古車情報として取り上げるのは「ラージサイズ・ミニバン編」。新車はトヨタアルファードの一人勝ちが続くマーケットですが、中古車はどの車種が狙い目なのでしょうか。
アルファード一強時代は続く
一般社団法人日本自動車販売協会連合会が発表している2021年の新車販売台数において、国産ミニバンで最も売れたのは9万5,049台でラージサイズ・ミニバンのトヨタアルファードでした。トヨタアルファードの新車価格は359万7,000〜775万2,000円で、売れ筋のモデルが諸費用込みの乗り出し価格が500万円以上という高級車です。
そんな高額車にもかかわらず、ラージサイズだけでなく、国産ミニバンで最も売れたクルマというわけですから、アルファード一強時代といえるでしょう。そんなアルファード一強が続く国産ラージミニバンの中から、今狙い目の中古車を紹介しましょう。
中身はアルファードと同じ!2.5Lガソリンエンジンのエアロ系が人気だが狙い目は……「トヨタヴェルファイア(現行型)」
まず紹介するのは、アルファードの兄弟車であるヴェルファイアです。2代目となる現行型ヴェルファイアは、2015年1月に登場。開発コンセプトは「大空間高級サルーン」で、高級ミニバンという枠にとらわれない新時代の高級車を目指して開発されました。
クルマの骨格にあたるプラットフォームから一新。リアサスペンションにはダブルウィッシュボーン式を採用。加えて高張力鋼板や構造用接着剤を使用し、新時代の高級車にふさわしい、優れた乗り心地や静粛性そしてハンドリングの良さを実現しているのが特徴です。
搭載されているパワートレインは3種類。2.5L直列4気筒ガソリンエンジン+CVT、3.5LV型6気筒ガソリンエンジン+6速AT。そして、2.5Lガソリンエンジン+モーターを組み合わせたハイブリッド車の3タイプを用意。グレード体系は標準系、エアロ系の2種類で、標準系にエグゼクティブラウンジというラグジュアリー仕様のモデルを設定しています。
2017年にマイナーチェンジを行い、内外装の変更とともに先進の運転支援システム「トヨタセーフティセンス」を全車に標準装備しています。搭載されているパワートレインの中で、3.5LV6ガソリンエンジンに組み合わされている6速ATが多段化され8速ATへと変更され加速&燃費性能が改善されました。さらにこれまで標準系グレードにのみ設定されていたエグゼクティブラウンジをエアロ系グレードにも追加しました。
その後、安全装備の機能性向上や2019年12月には、全車に車載通信機DCMが標準装備され、コネクティビティ機能を充実。そして2021年4月の一部改良では、2020年4月に発売された特別仕様車の「ゴールデンアイズ」に装備を充実化させ、カタログモデルに昇格。現在は2.5LエンジンのゴールデンアイズIIとハイブリッドゴールデンアイズIIにモデルを集約。選べるボディカラーも2色のみとなっています。
現行型ヴェルファイアの中古車は約1700台流通していて、平均価格は約330.5万円。中古車の価格帯は約180万〜920万円となっています。グレードでは圧倒的に2.5Lガソリンエンジンのエアロ系が多く、2.5Z Gエディション、2.5Z Aエディションそして特別仕様車の2.5Z Aエディションゴールデンアイズの流通台数が豊富です。
その反面、税金面や燃費面で3.5Lエンジン搭載車は敬遠されがちで、標準車も人気はイマイチです。したがってこういったグレードを狙うと、思いもしないお値打ち車が見つかることがあります。
ライバルに比べ割安感が大きい!狙うなら2014年式以降の上級グレードを「日産エルグランド(現行型)」
続いて紹介するのは日産のラージサイズミニバン、エルグランドです。現行モデルは2010年8月に登場しました。エルグランドは日産の最高級ミニバン用として最適にチューニングを施した低重心の新プラットフォームを採用し、乗用車のような安定感のある乗り心地と大人7人がゆったりと座れる快適性を両立したのが特徴となっています。
搭載するエンジンは、3.5L V型6気筒エンジンと2.5L 直列4気筒エンジンの2種類。組み合わされるトランスミッションは、エクストロニックCVT-M6を採用しています。プラットフォームの変更により、駆動方式は従来のFRから前輪駆動のFFに変更。さらにフロント・リアサスペンションともに、アルミ製リンクを採用し、バネ下荷重を軽量化。リアには優れた操縦安定性と乗り心地を実現するマルチリンクサスペンションを採用しているのがポイントといえます。
快適装備として、助手席シートと2列目シートの3席で同時に使えるトリプルオットマンを採用。シート一体型の大型オットマンとシートクッション全体で身体を支持することで体圧を分散し、長時間ドライブの際には疲れにくくなっています。
エルグランドも長いモデルライフで改良が加えられていて、2014年1月にビッグマイナーチェンジで内外装を変更。外観は250XGを除く全グレードで、ヘッドランプ、フロントグリル、フロントバンパーのデザインを一新。フロントグリルは大型化し、全周をクロームメッキで囲むことで押し出し感と高級感を高めました。変更の目玉はラゲッジスペース。3列目シートに前方向240mmのスライド機能を追加。これにより3列目シートに人が座っていても後部ラゲッジ長を拡大することを可能とし、使い勝手を向上させています。
2018年2月には一部改良を行い、先進安全装備を全グレードに充実。「LDW(車線逸脱警報)」や「インテリジェントLI(車線逸脱防止支援システム)」、「進入禁止標識検知」のほか、緊急時のブレーキをアシストする「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」、先行車や対向車のライトや周囲の明るさを検知し、ヘッドライトを自動的に上向きと下向きに切り替える「ハイビームアシスト」を標準装備としています。
さらに2020年10月、2度目のマイナーチェンジを行い、内外装を変更。さらに安全装備も全方向から運転をサポートする360°セーフティアシストを全車標準装備するなど充実させています。
現在、現行型エルグランドの中古車は約1,260台流通していて、平均価格は約190万円。中古車の価格帯は約40万〜500万円となっています。ヴェルファイア同様に2.5Lガソリンエンジン搭載車が中心で、250ハイウェイスター、250ハイウェイスターアーバンクロム、250ハイウェイスターSなど250ハイウェイスター系が中心。
オススメは3列目シートにスライド機構が付き、ラゲッジルームの利便性が向上した2014年式以降のモデル。プレミアムならば、最上級の豪華な空間が広がっています。
新車で買い損ねた人は要チェック!2020年11月のマイナーチェンジモデルは流通量多し「ホンダオデッセイ(最終型)」
ホンダのラージサイズ・ミニバンといえば、現在のミニバンブームを作ったオデッセイです。残念ながら、2021年12月で生産終了となってしまいました。大幅なマイナーチェンジからたった1年、2021年の販売実績は前年比を大きく上回っていただけにもったいないと感じます。
最終型となった5代目の最終型オデッセイは2013年10月に登場。上級モデル、エリシオンとのモデル統合によってオデッセイはシリーズ初となるリアスライドドアを採用したのが特徴となっています。
モデル体系は標準モデルとアブソルートの2種類で、搭載するエンジンは全車レギュラーガソリン仕様の新開発2.4L直列4気筒i-VTECエンジンとなりました。なかでもアブソルートには、力強い加速を発揮する2.4L直噴 i-VTECエンジンを搭載しています。組み合わされるトランスミッションは全車CVTで、アブソルートにはパドルシフトを採用した7スピードモード付CVTを採用しています。
デビュー当初から先進の安全装備として前走車だけでなく、対向車にも作動し、誤発進抑制機能も備えるなどさらに進化した「衝突軽減ブレーキ(CMBS)」をはじめ、前走車への追突や誤発進の未然防止をサポートするシティブレーキアクティブシステムなどを採用しています。そして、2015年の一部改良で、衝突軽減ブレーキ(CMBS)をはじめ7つの運転支援機能をパッケージ化した先進の安全運転支援システム「Honda SENSING」を採用しました。
2016年には「スポーツハイブリッドi-MMD」と呼ばれる2Lエンジンと駆動・発電を行う2つのモーターを搭載したハイブリッドシステム搭載車を設定しています。2017年11月には内外装の変更と同時に、機能性が向上した安全運転支援システム「Honda SENSING」を全車に標準装備として、安全性を向上させています。
そして、2020年11月オデッセイはマイナーチェンジを行い、内外装のデザインを一新。さらに、安全運転支援システム「Honda SENSING」に後方誤発進抑制機能を追加するなど商品力を向上させています。
最終型オデッセイの中古車は約1,855台流通していて、平均価格は約216.2万円。中古車の価格帯は約65万〜500万円となっています。グレード構成は販売期間の長い2.4Lガソリンエンジンを搭載したアブソルートが多く、2016年以降ではハイブリッド車の比率が高まっています。押し出し感を強めた2020年11月以降のモデルは2.4Lガソリン、ハイブリッドともに多く流通していて、新車で買い損ねた人にはオススメです。
唯一無二のミニバンSUV、ロングセラーだけに幅広い価格帯で中古車が狙える「三菱デリカD:5(現行型)」
最後に紹介するのは、三菱デリカD:5です。2007年に登場して以降、丸15年も販売されているロングセラーミニバンです。デリカD:5は、「さまざまな走行環境下で、多くの乗員を安全に目的地まで運ぶ」という“デリカブランド”の特長を発展させ、「ミニバンの優しさ」と「SUV の力強さ」の融合をコンセプトに、高い悪路走行性を備えたミニバンです。
デビュー当初、搭載したエンジンは小型、軽量な2.4L直列4気筒MIVECエンジン。組み合わされるトランスミッションはエンジン回転数と変速比を常に最適な領域で制御し、低燃費と俊敏で滑らかな加速が得られるINVECS-Ⅲと呼ばれる CVT を採用しています。
駆動方式は、走行状況に応じて、前後輪へのトルク配分を適正にコントロールする電子制御4WDを全車に採用。インパネ中央にあるダイヤル式のドライブモードセレクター)により、3 つの走行モード(2WD、4WD オート、4WD ロック)の切り換えが可能で、路面状況に合わせて選べます。
デリカD:5は長いモデルライフで数々の改良を行い進化し、2009年11月の一部改良では、4WD車のエンジンやCVTの制御を見直し、燃費性能を向上させています。また新デザインのハイコントラストメーター&カラー液晶マルチインフォメーションディスプレイを採用しました。2012年12月の一部改良では従来の2L、2.4Lガソリンエンジンに加えて、最高出力148ps、最大トルク360Nmを発生する2.2L直列4気筒ディーゼルターボエンジンを新たに追加。組み合わされるミッションは6速ATで、シフトパターンなどの最適化が図られています。さらに、フロント・リアともにショックアブソーバーの減衰力を最適化し、操縦安定性と乗り心地を両立しました。
そして、2019年2月にデリカD:5はビッグマイナーチェンジを行い、外観デザインは三菱のフロントデザインコンセプトである「ダイナミックシールド」を採用。縦型のマルチヘッドライトなどにより、ひと目でデリカD:5とわかる個性的なデザインへと変更しました。
搭載するエンジンは大幅に改良が加えられた2.2L直列4ディーゼルターボエンジンで、組み合わされるミッションは新開発の8速ATを採用。また駆動方式は4WDのみとシンプルな構成となりました。新型デリカD:5は標準車に加えて、アーバンギアというエアロパーツを装着したグレードの2種類を用意しています。
さらに安全装備も強化され、予防安全技術「eアシスト」を採用。衝突被害軽減 ブレーキシステム[FCM]や車線逸脱警報システム[LDW]、レーダークルーズコントロールシステム[ACC]などの運転支援システムにより、ドライバーのサポートそして負担を軽減させています。
現在デリカD:5の中古車は約2,280台流通していて、平均価格は約261万円。中古車の価格帯は約16万〜635万円と幅広くなっています。お手頃な価格で手に入れるのであれば、2.4Lガソリンエンジンがオススメ。長く乗りたいというのであれば、2019年以降の2.2Lディーゼル車が狙い目です。
あえてアルファードを外して探してみよう
中古車は性能とは関係のない「人気」という要素が価格に影響を与えます。アルファードの人気を上手に考えれば、もっと装備が充実した年式の新しいモデルなどの「オイシイ中古車」を見つけることができるのです。
※記事の内容は2022年1月時点の情報で制作しています。