2024年の日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)はホンダフリードが選ばれ、2025年はスズキジムニーノマドデビューの熱狂で幕を開けました。100年に一度の変革期と言われ続ける2025年、皆さんのクルマ選びにも悩みどころ、迷いどころがたくさんあるのではないでしょうか。カルモマガジン執筆陣がそんな悩みと迷いにズバリ回答します!
【2025年も人気が予想されるカテゴリーのおすすめ車種は?】
~軽スーパーハイトクロスモデル、コンパクトSUV、コンパクトミニバンなど人気ジャンルで迷える人に、専門家イチオシはコレ!
N-BOX JOYが頭ひとつ抜けている(軽スーパーハイトクロスオーバー)
馬弓:2024年の日本カー・オブ・ザ・イヤーはホンダ「フリード」が選ばれました。昨年の販売ランキングを見ると、そのフリードとトヨタ「シエンタ」がガチバトルのコンパクトミニバン、スズキ「スペーシアギア」やホンダ「N-BOX JOY」が登場した軽スーパーハイトワゴンのクロスオーバーモデル、ホンダ「WR-V」とスズキ「フロンクス」に加えてスズキ「ジムニーノマド」の登場で波乱が予想されるコンパクトSUVなどが、2025年も人気ジャンルになりそうです。このあたりのおすすめモデルをまずはお願いします。
萩原:軽スーパーハイトのクロスオーバーモデルですが、ブームの火付け役は三菱「デリカミニ」だと思います。でも4WDを買わないと満足感が低い。スズキ「スペーシアギア」、ダイハツ「タントファンクロス」にも乗りましたけれど、やはり後出しじゃんけんで、総合点ではホンダ「N-BOX JOY」だと思います。なんと言っても乗り心地が良い。高価なショックアブソーバーを採用しているのがわかります。
馬弓:N-BOXが頭ひとつ抜けているのは同感、ただタントファンクロスも善戦していると思いました。

岡崎五朗さん:大学在学中から自動車雑誌での執筆を開始し、卒業後は一貫してフリーランスのモータージャーナリストとして活動する。現在はテレビ神奈川「クルマでいこう!」に出演中。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)理事、日本カーオブザイヤー選考委員なども務めている。岡崎さん執筆記事はこちらから。
岡崎:ダイハツのこと、読者の皆さん忘れているかもしれないですが、ダイハツはエンジン良いんです。ただ、スズキやダイハツの軽自動車をメインとしているメーカーと、登録車が中心のホンダでは同じ軽自動車でもクルマ作りに違いがあると思う。いいとか悪いとか、ではなく力を入れているポイントが違う。N-BOXについてはホンダが大事にしている上質さとかライフスタイルが見える内外装などがユーザーの期待とマッチして、価格は高いけれど販売台数NO.1を続けている。
萩原:ホンダはN-BOXで JOYをやらなくても良いと思っていたけれど、トレンドと営業現場からの声に応えて出してきたという感じもしますね。
ジムニーノマドは大ヒット間違いなし!(コンパクトSUV)
馬弓:本座談会時点では発表されていませんが、1月30日にジムニーシエラの5ドア版であるスズキ「ジムニーノマド」が登場します。あれは爆発的ヒットになる予感しかしません、価格は現時点で判明していませんが、事前撮影会の時に聞き出したニュアンスだとなんと300万円以下に収まりそうな気配です。(編集部注:5MT車が265.1万円、4ATは275万円と1月30日に発表されました)
岡崎:だとしたら安すぎるくらいだね。コンパクトSUVは、ジムニーノマドの登場で大きなうねりが起きると思う。SUVって乗用車的なクルマが増えているけれども、実際にはランドクルーザーのような本格オフローダーがすごく売れている。今後、SUVユーザーはクロカン系と都市型クロスオーバーで二分化されていくと思うので、コンパクトSUVもスズキ「フロンクス」のようなクロスオーバーモデルとジムニーノマドのような本格オフローダーに割れると思う。

萩原文博さん:中古車雑誌編集部を経てフリーランスとして独立、現在はAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員として多くのメディアで執筆中。日本で最も多くの広報車両を借り出している男として業界で有名だ。萩原さんの執筆記事はこちらから。
萩原:ジムニーノマドは、ぱっと見ベイビーGクラスに見えますし、しっかりと人が乗れるようにリアシートも改良されています。
馬弓:事前撮影会で見た赤のボディカラーの佇まいはまさにベイビーGクラスでした。
岡崎:2025年最初に登場したモデルなのに大本命と言えるモデルだね。シエラがヒットしているから、ノマドも大ヒット間違いなし。
実力はフリードだがシエンタとの価格差がどうなるか(コンパクトミニバン)
馬弓:最後のコンパクトミニバンですが、2024年の日本カー・オブ・ザ・イヤーのイヤーカーにホンダ「フリード」がミニバンで初めて輝きました。個人的には2024年乗ったクルマの中でハード的にも内容的にもベストでした。
岡崎:僕はフリードに10点入れました。このカテゴリーはフリードとトヨタ「シエンタ」の2択しかない。点数を付けるときに悩んだのはフリードとシエンタの価格差。当時30万円くらいあった。
萩原:先日フリードは値上がりしました。このクラスを購入するファミリーは価格差に敏感だと思います。絶対フリードじゃないとダメという人たちではないので、価格面で考えるとシエンタは有利です。今年の新車販売台数がどうなるのか注目です。
馬弓:シエンタとフリードは見た目の違いも大きいから、実はユーザーはあまり悩まない気もします。価格の問題はありますが、シエンタも最上級グレードと他の装備差が大きいですし。

馬弓良輔:旅行やクルマ雑誌の編集長を歴任し、2017年8月からカルモマガジン編集長。クルマは見た目が5割、走り味が4割、あとの1割は「運命の出会い」というのが自身のクルマ選びのモットー。最近はYoutubeチャンネル「カルモくんTV」にうつつを抜かし、全然書かない執筆記事一覧はこちらから。
ジムニーノマド、ノートオーラNISMO、フリードが2025年のイチオシ
馬弓:ちなみに専門家の2025年のイチオシとして、国産車でカテゴリーは問いませんので1台だけピックアップしてもらえますか。
岡崎:僕はジムニーノマド。高い悪路走破性を維持しながら利便性を向上させている点は、購入するユーザー層の拡大につながるだろうし、実車見たら欲しくなるかも。
萩原:私は日産「ノートオーラNISMO」の 4WD。前期型は硬さばかり目立つ乗り心地でしたが、後期型の4WDは電動車ならではの異次元のコーナリングを味わえます。ちょっと見た目は派手ですけれど、あのパフォーマンスは魅力ですね。
馬弓:自分はフリードです。日本で乗るのに最高にちょうどいいホンダ、いや日本車だと思います。使い勝手の良いミニバンという基礎点の高さに加えて、最新のホンダハイブリッド・e:HEVの制御が素晴らしい。そして乗り心地の良さにも脱帽です。ワクワクが止まらないのはノマドですが、理性的に多くの人にすすめるならフリードで決まりです。それにしても新車販売台数を見てもトヨタ1強が続いているので、もっと他のメーカーもがんばって下さい!という我々のエールがこもったチョイスでしたね。
【SUVの次に来るものは?】
~目新しさで依然人気のSUVだが、そろそろSUV疲れしてきたアナタにおすすめのクルマは?
SUVはクロカン系とクロスオーバー系に分かれていく
馬弓:軽自動車からラージサイズまでSUVのラインナップが充実している国産車ですが、そろそろお腹いっぱいな感じもしませんか?次に来るとしたらどんなクルマでしょうか。
萩原:駐車場の環境は大きいと思います。実際自分は全高1550mm、全幅1800mmという制限がありますし。
岡崎:そうだよね。全高1550mmは大きいと思う。僕は新幹線で出張に行くとき、某駅近くの駐車場に停めるのだけれど、全高1550mmは最大料金があるけれど、背の高いSUVは最大料金なし。そういった経済面を考えると背の高いSUVはこれから厳しくなると思うな。
萩原:スズキは「フロンクス」のようなクーペSUVを出す。その一方で、インドから本格オフローダーの「ジムニーノマド」を出しました。SUVも今後二極化が進んでいくんじゃないですかね。
岡崎:そうだね。クラウンも「クラウンスポーツ」というSUVを出している。その一方で「ランドクルーザー250」はすごく売れている。フロンクスやクラウンスポーツは元々ハッチバックのSUV派生タイプと考えると、そういったクロスオーバーモデルと本格オフローダーにユーザーも分かれると思う。
高速で揺れる、駐車場に停められない、タイヤ代が高い、そんなSUVのネガに気づいたら
馬弓:買い替えサイクルが7~8年に延びているので、まだ今はSUVを初めて買うという人も多い状況ですが、それが一巡したらその時はどんなクルマが来るのでしょうか。
岡崎:個人的には低重心が見直され、荷物をSUVほどではないけれど積めるステーションワゴンが復権すると思う。現在国産車ではスバル「レヴォーグ」やトヨタ「カローラツーリング」ぐらいしかない。輸入車でもVW「パサート」、ボルボ「V60」、メルセデス・ベンツはC、Eクラス、BMWも3と5シリーズとかなり少ない。
馬弓:低重心は重要ですよね。ステーションワゴンではないですけれどホンダ「アコード」に乗って感動しました。
萩原:先日、VWパサートとティグアンの試乗会に行きましたけれど、やはり低重心って大切だなと実感しましたね。
岡崎:そう。背の高いクルマばかり乗っていて、久しぶりに背の低い低重心のクルマに乗ると落ち着くし、疲れにくい。
馬弓:無駄な動きが少ないですしね。酔いやすい子供やペットとロングドライブに行くならば、低重心のクルマのほうが人にもペットにも優しいと思います。
岡崎:僕らは多くのクルマに乗っていることもあって、トレンドに先んじて「SUV疲れ」が来ているのかもね(笑)。高速で揺れる、駐車場に停められない、タイヤ代が高い、洗車が大変(笑)。そんなSUVのネガを多くの人が実感して、数年後にはSUV疲れが訪れるかもしれない。そうなるとステーションワゴンやステーションワゴンベースのクロスオーバーモデルが復権する可能性がある。トヨタ「クラウンエステート」はその試金石になるかもしれないクルマだと思う。
【日産はどうなる?】
~日産が窮地に追い込まれた背景は?日産車を買っていいのか迷っている人は必読!
なぜ新車投入がここまで遅れているのか?
馬弓:続いてのテーマは「日産はどうなる」です。ここまで追い込まれた背景、今後の見通し、それでもおすすめしたい日産車などがあれば。
萩原:ラインナップしている車種が厳しいですよね。現在売れ筋のカテゴリー、コンパクトミニバンやラージサイズのSUVなど国内向け車種ラインナップに穴が多いと思います。
岡崎:先日、ドバイにジャーナリストを数人連れて行ってラージサイズSUVの「パトロール」に乗せたみたいだけれども、あれは日本に入れてほしいよね。
萩原:トヨタ「ランドクルーザー250」「ランドクルーザー300」のヒットを見れば、当然日本市場に導入しても成功するのではないでしょうか。先日、日産の熱烈なファンが集まるオーナーズミーティングでアンケートを取りましたが、皆さん口を揃えて、ハイトワゴンの「キューブ」、コンパクトミニバンの「キューブキュービック」がないのが厳しいと言っていました。
馬弓:キューブは日本市場ではモデル末期までそれなりの販売台数だったのにもったいなかった。キューブキュービックもアイデアとしては良かったと思います。シエンタやフリードに対抗するコンパクトミニバンが欲しいですね。一方、北米で発表されたコンパクトSUVの新型キックスはカッコいい。思わず二度見しました。ただ、現状e-POWERは載っていないし、日本導入の目処が立っていないと関係者が話しているのを小耳に挟みました。
岡崎:そういった部分に日産が窮地に追い込まれた背景があると思う。ゴーンさんが来て一気にグローバル重視となった。キューブもどうせ、このクルマは国内でしか売れない。それならば販売終了ということになったのが透けて見える。
馬弓:高級ミニバンを発明した「エルグランド」もモデルチェンジが行われず、すっかり「アルファード/ヴェルファイア」の陰に隠れてしまいました。色々と新規車種の投入が遅れているのは、ゴーン時代のダットサンの失敗も大きかったと聞いています。中国が厳しそうだから他の新興マーケットへ、という点では先見の明がありましたが。
岡崎:インドネシアで販売するために開発した「ダットサンGO」ね。某国産メーカーの人に聞いたら、途上国の人が嫌う要素を詰め込んだクルマだと評価していた。この価格でこんなスペックで良いだろう。という上から目線で、見るからに安っぽかった。あれでは成功しない。
クルマ好きな社員とユーザーを大切にするべき
萩原:一方で販売店の一部は、セレナとノート/ノートオーラがあれば良いと言っているとも聞きます。
岡崎:販売の現場がそれでは、厳しいと思う。トヨタの現在の繁栄は、豊田章男社長になって「もっと良いクルマを作ろうよ」と開発陣に言い続けて、10年経ってようやく実を結んだ結果。豊田章男会長はチーフエンジニアをやっていないけれども、現社長や取締役はチーフエンジニア出身の方が多い。やはり自動車メーカーなのだから、クルマ作りの最前線を体験しているということは大きいと思う。
馬弓:日産は伝統あるスカイラインのチーフエンジニアをしても取締役になれないですしね。
岡崎:そういう人材は旧オーテックやNISMO、つまり現日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社に行ってしまう。でも現在、ノートオーラで最も売れているのはNISMOだから。カスタマイズや性能という部分にお金を出してくれるユーザーがいるのだから、もっと日産はクルマ好きな社員とユーザーを大切にするべき。
開発現場はまだ高い実力があるし、魅力的な車種もある!
馬弓:今の日産車でオススメはありますか。
萩原:個人的には最高出力600psながら、高速走行でリッター当たり約10kmという燃費の「GT-R NISMO」や、VCターボエンジンを採用したe-POWERを搭載した「エクストレイル」あたりが好きなのですが、多くの人にすすめるならやはりさっき言ったように「ノートオーラNISMO」の 4WD。
岡崎:エクストレイルは僕もイイと思う。あのVCターボはゴーンさんの置き土産と言える代物です。ゴーンさんは、色々と言われているけれども面白いと思ったものには予算をしっかりと付けてくれた。GT-Rもそうだしね。ノートオーラNISMOもなかなか良いクルマだよ。
馬弓:エクストレイルの統合制御のe-4ORCE、ノートオーラのは少し違いますが、どちらもモーター+4WDというパワートレインで、雪上試乗会でその実力の高さに驚愕しました。オーラNISMOは顔が前期型に近いので好感度大ですが、個人的にはエクストレイルがおすすめです。VCターボ+第二世代e-POWER、そして統合制御4WDのe-4ORCEは、いま現実的な値段で手に入れることができるクルマとして世界最先端です。踏み込めば聞こえる直列6気筒のようなエンジン音も素晴らしい。価格がライバル車と比べて高いのがネックですけれど、実力は価格に見合っていると思います。
岡崎:日産は「これ作ったらいくら儲かるの?」という人たちが経営陣から減っていかないと厳しいと思う。企業だから利益は大事だけれども、理念というかユーザーに対してのメッセージが希薄。もう少しトヨタを見習ったほうが良いと思う。開発現場はまだ高い実力があるのだから。
【ハイブリッドなのか、EVなのか?】
~急失速したEVは本当にダメなのか?ハイブリッドは万能なのか?この先の10年を見通したクルマ選びに迷う人に
ボルボもメルセデスもEV化を大幅にトーンダウン
馬弓:2030年までに新車ラインナップをすべてBEV(電気自動車)にするという目標を掲げていたボルボですが、2024年9月に「2030年までに世界販売台数の90~100%を電動車とすることを目指す」と大幅にトーンダウンしました。BEVではなく電動車という部分がポイントです。全BEV化への道筋を変更したのはボルボだけではなく、すでに2024年2月にメルセデス・ベンツグループも、2030年までに全販売車種をBEVにするという2021年の宣言を撤回しています。2030年代もPHEVなどエンジンを搭載した電動車を販売し、各地域の排ガス規制に対応するため新しいエンジン開発も行うと。
萩原:直近では、2022年7月に日本市場に参入した中国の自動車メーカーのBYDが、これまでのBEVに加えて、2025年内にPHEVを導入すると発表しました。こちらも一見すると後退のように見えますが、元々BYDの乗用車販売台数シェアを見るとBEV約42%に対してPHEVが約58%とPHEVが多い。BYDはBEV、PHEVを合わせて新エネルギー車と言っていますし、日本市場への導入は時間の問題だったのかもしれませんね。
電動車は居住環境によって利便性に差が出る
馬弓:そもそもBEV、PHEVはどんな人にもオススメできるものなのでしょうか。
岡崎:僕はトヨタ「MIRAI」に乗っています。バッテリーの代わりに水素タンクを搭載しているBEV。自分の自宅のそばに水素ステーションがあるから全く不便に感じない。
萩原:都内にあれほど水素ステーションができていることに驚きました。
馬弓:横浜市内の自宅の近所にも水素ステーションがあります。開店休業状態なのが気がかりですが。
岡崎:実は都内には水素ステーションがたくさんあります。芝公園にある水素ステーションは夜8時まで営業しているので、以前に比べると不便さはなくなったと思います。水素をエネルギーとして走行するFCVをはじめ、BEV、PHEVといった電動車は、インフラの環境が大きく影響する。僕の場合、近くに水素ステーションがあるから、FCVのMIRAIに乗っていても全く問題ない。だからといって「アナタも乗ったらいかがですか」とはならない。それはすべての人が僕と同じように近くに水素ステーションがあるわけではないから。
萩原:私は集合住宅に住んでいるので、BEVやPHEVの広報車を借りてきても自宅で充電できませんでした。しかし近くの有料駐車場に6kWhの普通充電器が設置されて状況が一変しました。その駐車場は夜間の駐車料金上限が安いし、充電料金は今のところ無料という奇跡的な状況が生まれました(笑)。
岡崎:そう、BEVやPHEVといった電動車は、自宅で充電できるかどうかで利便性が大きく変わるよね。エンジン車やハイブリッドは、みんなガソリンスタンドへ行かないと給油できなかった。居住エリアによって利便性にそれほど差はない。しかし、電動車は居住環境によって利便性に差が出る。都心なんて約8割が集合住宅なのだから、自宅で充電できないとメリットを享受できないBEVやPHEVが増えるのは難しい。
当面の主役は燃費が良くてCO2排出の少ないハイブリッドや軽自動車
馬弓:実際、トヨタ「プリウス」もPHEVは苦戦しているようですしね。「アルファード」にもPHEVが追加されましたけれど、どうなのでしょうか。
岡崎:普通のハイブリッドのプリウスの走行性能と燃費性能で多くのユーザーは満足している。そこに自宅で充電できますという行為に対してお金を払おうという人が少ないということだよね。普段は家から駅までの送り迎えなど短距離の使用がメインで、週末に時々ドライブへ出かける、そんな使い方なら本当はPHEVが向いている。アルファードのPHEVは送迎から旅行までクルマは一家に1台という都市部のファミリーに向いているし、法人需要も見込めるかもしれないから、予想以上に売れるかもしれない。PHEVの正しい使い方、というか向いているライフスタイルを販売店がユーザーに伝えられればね。
萩原:地方に行くとガソリンスタンドの閉鎖が目立ちます。しかし地方は一軒家も多いし、当然電気も普及している。毎日乗るけれど1回あたりの走行距離は多くない。実はそういった地域ほどBEVに乗るメリットが大きいと思います。
岡崎:そう、日産「サクラ」や三菱「eKクロスEV」もそこ狙いだよね。でも結局、販売店のスタッフがBEVに対してのメリットなどに懐疑的だから普及しないという面もあるかもしれないね。
馬弓:岡崎さんは以前から言っていましたが、BEVやPHEVといった電動車はすべての人におすすめ、ということではなく、ある一定の「向いている使い方」があるということですよね、居住エリア、住居環境、所有台数など。そうなるとそういったことに関係なく燃費が良くてCO2排出の少ないハイブリッド、ガソリンでも軽自動車などが、まだしばらくは万能と言えるかもしれませんね。

座談会の会場は今回も六本木AXISビルにある自動車雑貨のお店「ル・ガラージュ」の一角をお借りした。このお店に並んでいるのは洗車用品、ドライビンググローブ、ドライビングシューズ、カーアクセサリー、アンティークなど、いずれもこだわりの品ばかり、中には日本で手に入るのはココだけという逸品もあるセレクトショップだ。
(取材協力:ル・ガラージュ)
※記事の内容は2025年1月時点の情報で制作しています。