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【プロ座談会】国産ニューモデルのベストバイ~トヨタがすごかった2023年総集編

【プロ座談会】国産ニューモデルのベストバイ~トヨタがすごかった2023年総集編
【プロ座談会】国産ニューモデルのベストバイ~トヨタがすごかった2023年総集編

2023年の日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)はトヨタプリウスが選ばれた。今年はプリウスに加えて、ホンダN-BOX、スズキスペーシア、トヨタアルファード/ヴェルファイア、日産セレナ(発表は昨年)などベストセラーのモデルチェンジが相次いだ1年だった。そんな2023年の新型車の中から、カルモマガジン執筆者たちが選んだベストバイな1台を紹介しよう。

 

プリウスはハイブリッドの価値と魅力を再認識させた(岡崎)

プリウスはハイブリッドの価値と魅力を再認識させた(岡崎)

馬弓:2023年に登場したクルマの中から、No.1を決める日本カー・オブ・ザ・イヤー。今年から点数配分が10点、4点、2点と変更されましたが、360点を獲得したトヨタプリウスが輝きました。150点で第2位のBMW X1がインポート・カー・オブ・ザ・イヤーを獲得。そして三菱デリカミニがデザイン・カー・オブ・ザ・イヤー。日産セレナがテクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤーにそれぞれ選ばれました。岡崎さんはプリウスに10点、アルファード/ヴェルファイアに4点、スバルクロストレックに2点を配点しています。やはり今年はプリウスですか?

岡崎:選考理由はCOTYの配点理由を見てもらえればと思いますが、一応書いておくと、「時代はもはやEV。ハイブリッドは周回遅れ。そんな主張を見事に周回遅れにしたのが新型プリウスだ。エンジン車と同じ使い勝手を持ちながら二酸化炭素排出量を大幅に削減するハイブリッド車は、誰もが無理なく手に入れ、使いこなせる普及型環境車として今後も地球に必要な存在であり続ける。デザインと走りを一新し商品力を大幅に引き上げた新型プリウスは、「古くて新しい存在」として、ハイブリッド車の価値と魅力を多くの人に再認識させるきっかけとなるだろう。充電環境をもっている人にはPHEVもオススメ。 」というのがプリウスに10点を入れた理由です。

馬弓:10点のプリウスはスムーズに決まりましたか?

岡崎:実は、プリウスとアルファード/ヴェルファイアで迷いました。プリウスを10点にしたのは、現在の時点で日本車としてグローバルにどれだけ影響を与えられるのか、という視点で考えた時にプリウスのほうが大きいなと。しかし、アルファード/ヴェルファイアのようなラージサイズミニバンは日本ではショーファードリブンとして使われている文化があり、中国をはじめアジア圏でも広がり始めた。これが舌の肥えた欧州まで普及するのかは気になるところ。この2つを比べたときに今のところは、ハイブリッドの復権、再評価という点で大きな影響をグローバルに与えているということでプリウスを10点としました。

岡崎五朗さん


岡崎五朗さん:大学在学中から自動車雑誌での執筆を開始し、卒業後は一貫してフリーランスのモータージャーナリストとして活動する。現在はテレビ神奈川「クルマでいこう!」に出演中。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)理事、日本カーオブザイヤー選考委員なども務めている。岡崎さん執筆記事はこちらから。

馬弓:韓国のヒョンデに続いて、中国のBYDが日本市場に参入し始めましたが、BEV(電気自動車)だけが次世代の答えではない。モーターの使用割合を高めれば、より高い環境性能を実現できるということで、岡崎さんのおっしゃるとおりハイブリッドが再評価されている。その流れの中でこれまでのプリウスのイメージを変えた新型の登場。まさにタイミングピッタリということですね。萩原さんは2023年をどう思いますか?

10ベストにアルファード/ヴェルファイアが残ったことはかなり注目(萩原)

10ベストにアルファード/ヴェルファイアが残ったことはかなり注目(萩原)

萩原:個人的には10ベストにアルファード/ヴェルファイアが残ったことはかなり注目でしたね。COTYでミニバンはこれまで高く評価されませんでしたから。しかし岡崎さんのおっしゃるとおり、先代から大きなミニバンから室内空間の広い高級車へとシフトしていましたが、乗り心地などは追いついていませんでした。しかしプラットフォームを一新したことで、目指していた高級車に達したと思います。

岡崎:そうだね。旧型のアルファード/ヴェルファイアは、リアサスペンションをダブルウィッシュボーン式に変更したことを強調していたけれども、ちょっと荒れた路面を走ると、セカンドシートがブルブル震えていることがわかった。きっとセカンドシートに乗る偉い人にしてみると、広いことは良いとは思うけれども、ちょっと気の毒だなというのがあった。でも現行型はショーファードリブンに合う走りの質感を実現しているのよね。

 

萩原文博さん

萩原文博さん:中古車雑誌編集部を経てフリーランスとして独立、現在はAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員として多くのメディアで執筆中。日本で最も多くの広報車両を借り出している男として業界で有名だ。萩原さんの執筆記事はこちらから。

萩原:そう思います。個人的に2023年は、各自動車メーカーから販売台数の多いコアモデルが多く登場した年だと思います。トヨタはプリウス、アルファード/ヴェルファイア。日産はセレナ、ホンダはN-BOX、スバルはクロストレック。販売台数が多いということは、絶対に失敗できないクルマです。したがって一見すると派手さはないけれども、高い実力を備えたモデルが多かった。その中で、ハイブリッドを再定義したパイオニアのプリウスがCOTYを獲得するのは当然かなと思いました。

スマートに乗れるプリウスはSUV以外の良い落としどころ(馬弓)

スマートに乗れるプリウスはSUV以外の良い落としどころ(馬弓)

馬弓:3年くらいから国産車がグッと良くなったと思います。

岡崎:本当に、国産車良くなったよね。プリウスだって、これまでは燃費の良いクルマというイメージしかなかった。燃費は良いけど走りはイマイチ。だからクルマにこだわりのない人たちが乗っていた。旧型はTNGAプラットフォームを採用して、走りは良くなったけれどもデザインが厳しかった。そして2023年に登場した現行モデルはパワートレインを一新し、攻めたデザインを採用している。さらに4WD車はリアに高出力モーターを搭載して走りにこだわりを見せた。そういった点からもプリウスは変わった。と感じましたね。

萩原:現行型のプリウスは、HEVとPHEVのデザインがほとんど変わらないのも良いと思いますね。PHEVはもう特別なモノではないというメッセージを感じます。

岡崎:そう。5年先、10年先のちょっと未来的なでも、すごく使いやすいクルマ像というのを表現していると思うな。

馬弓良輔さん

馬弓良輔:旅行やクルマ雑誌の編集長を歴任し、2017年8月からカルモマガジン編集長。クルマは見た目が5割、走り味が4割、あとの1割は「運命の出会い」というのが自身のクルマ選びのモットー。たまにしか書かない執筆記事一覧はこちらから。

馬弓:激戦区ゆえ保守的なCセグメントに攻めたデザインのプリウスが出てきた。子育てが終わって、SUVやミニバンは要らないしスーパーハイトワゴンは乗りたくないという人が、スマートに乗れるのがプリウスという感じで、SUV以外のチョイスとして良い落としどころになっていると思います。

岡崎:そうだね。室内が狭いというのであれば、カローラハイブリッドを購入すればイイと思うし。そういう点で多くの車種にハイブリッドを用意しているのは強みと言えるね。

スバルはコアモデルに水平対向エンジンを残して、そのほかはトヨタのハイブリッドでも良い(岡崎)

スバルはコアモデルに水平対向エンジンを残して、そのほかはトヨタのハイブリッドでも良い(岡崎)

馬弓:Cセグメントというと、プリウスだけでなくスバルインプレッサもフルモデルチェンジして世代交代をしました。個人的には旧型と見分けがつかないのですけれど、どうでしょう。

岡崎:開発者に新型インプレッサのセールスポイントは?と聞くと「安全です」と答えるのですよ。そもそもスバルってそういう自動車メーカーなのかなと疑問に思います。インプレッサがあり、クロスオーバーモデルのクロストレックがある。デザイン的にも販売が好調なのはクロストレックでしょう。インプレッサは魅力が乏しい。最初からSTIモデルを出して走りをアピールしたほうが良かったと思う。

萩原:スバルユーザーというと、スバリストと呼ばれるコア層が中心でした。しかしスバルはアイサイトで、「ぶつからないクルマ」とキャッチコピーで安全性の高さをアピールし、ユーザー層が拡大し、成功しています。この点は高く評価できます。元スバル車に乗っていた人間からすると、パワートレインに魅力が乏しいですね。e-BOXERというパワートレインは、まだ使っているの。というのが正直なところですね。

ル・ガラージュ

久しぶりの座談会の会場は今回も六本木AXISビルにある自動車雑貨のお店「ル・ガラージュ」の一角をお借りした。このお店に並んでいるのは洗車用品、ドライビンググローブ、ドライビングシューズ、カーアクセサリー、アンティークなど、いずれもこだわりの品ばかり、中には日本で手に入るのはココだけという逸品もあるセレクトショップだ。

馬弓:燃費的にもかなり厳しいですしね。

岡崎:スバルは水平対向の呪縛から解けないと厳しいと思うな。完全に辞めた方がいいとは思わない。ポルシェだって水平対向6気筒エンジンは911に積んでいる。カイエンやマカンは水平対向ではないが、紛れもなくポルシェ。レガシィやWRXといったコアモデルに水平対向エンジンを残して、そのほかはトヨタのハイブリッドでも良いと思うな。スバルはしっかりとシャシーを作る。それでスバルらしい走りを表現すれば良いと思う。

馬弓:VWゴルフを見ても、純粋なCセグエメントのハッチバックは苦戦しています。やはりSUVブームの影響を大きく受けていると言えるのでしょうか。

萩原:トヨタカローラクロスやホンダZR-V、マツダCX-30、そしてスバルクロストレックの好調さを見れば、Cセグメントハッチが苦戦しているのはわかりますね。ユーザーの趣向が変わったということでしょう。

デリカミニは外観デザインに加えて、画期的なことが起きた(岡崎)

デリカミニは外観デザインに加えて、画期的なことが起きた(岡崎)

馬弓:年末になってダイハツの認証に関する不正が明らかになりました。それでも2023年は5月に三菱ekクロススペース改めデリカミニが登場。10月に軽のベストセラーカーであるホンダN-BOX、そして11月にはスズキスペーシアがフルモデルチェンジして新型にスイッチしました。ある意味、現在の軽主力モデルであるスーパーハイトワゴンのヴィンテージイヤーと言える年でした。

岡崎:デザイン・カー・オブ・ザ・イヤーを三菱デリカミニが獲得。デザイン的にはフロントマスクとリアガーニッシュを変更しただけで、販売台数が数倍になるというのだからスマッシュヒットと言えますね。

馬弓:「デリ丸。」くんもカワイイ。

岡崎:そういう戦略も当たったと言えるけれども、そもそもこれまでNMKVができてからの三菱の軽自動車は顔とバッジが違うだけで、何から何まで、全部日産と同じだった。メーカー名が違うのに、何から何まで中身が全く言うことこそナンセンス。その点デリカミニは外観デザインに加えて、画期的なことが起きた。それはデリカミニのサスペンションの開発を三菱の開発者がやらせてもらったこと。三菱らしく砂利道での足の動きをチューニングしたり、15インチタイヤを装着したり、4WD車だけとはいえ三菱らしい個性を出せたのは画期的なこと。

萩原:一般的に、軽自動車はジムニーなど一部の車種を除けば、2WD車と4WD車の割合は8:2という数字。それがデリカミニは拮抗している。それだけ三菱がチューンしたサスペンションに乗りたいという人が多いことを示しています。

馬弓:デリカミニは新型車ではなくビッグマイナーチェンジですが、これだけ売れているのはどう思いますか?

デリカミニは外観デザインに加えて、画期的なことが起きた(岡崎)

ぬいぐるみまで発売されたデリカミニのキャラクター「デリ丸。」写真はCMに出演した本物。ミラージュのエリマキトケゲの反省を活かして(?)ちゃんとデリカミニと結びついている好デザインだ

萩原:軽自動車を購入するユーザー層の多くは、自動車雑誌を読まないし、必要な時にネットで情報を得る程度でしょう。したがってデリカミニがeKクロススペースのマイナーチェンジであることは関係ないのです。先ほど言っていましたけれど、「デリ丸。」くんカワイイ。子供がぬいぐるみほしい。それが購入のきっかけになってしますのです。

岡崎:そうだよね。それもあるし、デリカブランドというのも大きいと思う。三菱はパジェロやランサーといった自社のブランドを軽視している感じがする。4WD車のサスペンションを独自でチューンしたというのは、やはりこれをやらないとデリカじゃない!という考えがあったからだと思うし、もっと活用すべきだと思う。

N-BOXは良いクルマに仕上がっている(岡崎)

N-BOXは良いクルマに仕上がっている(岡崎)

馬弓:デリカミニだけで、これだけ話が盛り上がるのもスゴイですけれど、軽スーパーハイトのキング、ホンダN-BOXとスズキスペーシアはどうでしょう。

岡崎:現行型は初のプラットフォーム、パワートレインともにキャリーオーバーだけど、N-BOXは良いクルマに仕上がっていると思う。センタータンクならではのシートアレンジも可能だし、元々のプラットフォームの実力も高いから走行性能もしっかりしていてレベルが高い。ただ、ターボ車がN-BOXカスタムしか選べなくなったのは残念。

萩原:スペーシアは旧型から標準車は自然吸気車のみで、カスタムにのみターボ車を設定していました。現行型スペーシアもこのラインナップで、N-BOXはスペーシアに揃えたように感じますね。

馬弓:N-BOXは2代目が恐ろしくレベルの高い車だったので、キャリーオーバーも仕方ないというか文句もないのですが、マイルドハイブリッドなどの「飛び道具」は欲しかったですね。軽にはEVは用意してもハイブリッドは投入しないという話です。

軽自動車はセカンドカーという雰囲気から抜け出したスペーシア(萩原)

軽自動車はセカンドカーという雰囲気から抜け出したスペーシア(萩原)

馬弓:N-BOX、スペーシアそれぞれの走りに関してはどうでしょう。

萩原:N-BOXは登録車メーカーが作った軽自動車ということで、内装の素材や走りの質感が高いです。それはN-BOXはファーストカーとしても役不足ではないということでしょう。一方、旧型までのスペーシアは、軽自動車はセカンドカーという雰囲気がありました。しかし現行モデルは自然吸気エンジンの変更やシャシーに手を加えたことで、N-BOXに肩を並べるぐらいまで走りの質感は上がったと思います。これならファーストカーでいけます。この2台、もはや販売台数ほどの実力差はないと思います。

岡崎:N-BOXやタント、ルークスは圧倒的にカスタム系の販売台数が多い。対してスペーシアは半数が標準車。こういった点においてもスズキらしさが出ていると思う。でも現行型は装備や価格設定を見てもカスタムに売ろうという意識を感じる。

馬弓:新型スペーシアは本当に良くなりました。旧型のN-BOXとスペーシアでロングドライブしたことがありましたが、最初の数キロでもうN-BOXの圧勝でした。スペーシアが良かったのは燃費性能だけで、走行性能は大きな差がありました。

岡崎:スズキの感心するところは、アルトの車両重量は600kg台に抑えて、安全装備を付けても価格も100万円以下も用意している。売れ筋のスーパーハイトワゴンのスペーシアでも、一部のグレードでリッター25kmというクラストップの燃費を記録している。軽自動車は高い経済性が特徴というのを外さない。

萩原:スズキ独自のマイルドハイブリッドシステムが有効です。スペーシアはN-BOXに対して、車両重量も軽いし、モーターのアシストもある。新搭載の自然吸気エンジンは音の質も耳障りではないし、今回のスペーシアは自然吸気エンジンを搭載したカスタムXSがベストバイだと思います。

馬弓:スペーシアのスゴイのがリアシート。オットマンなんてあざといことを!と思って使ったらレッグサポートモードにやられました。非常に快適。

軽自動車はセカンドカーという雰囲気から抜け出したスペーシア(萩原)

萩原:軽スーパーハイトワゴンはシートアレンジ優先ゆえに、リアシートのシート座面が短いです。従って大人が座ると脚を支えてくれないので疲れる。これを解消したのが「マルチユースフラップ」。レッグサポートモードも魅力ですが、荷物が動かないように固定できるモードなど凝っています。

岡崎:スペーシアは運転支援システムのデバイスをミリ波レーダーと単眼カメラに変更したのも興味深い。単眼カメラのみに比べるとより質の高いサポートが期待できる。こういった点を見ても、ロングドライブもこなせるファーストカーに進化したと言えるのかもしれないね。

馬弓:スペーシアのACCのコーナー抑制機能は本当に使えます。それにしても軽自動車はスーパーハイトワゴンが全盛ですが、デリカミニが良い例ですけど、軽スーパーハイトワゴンの新しい潮流としてクロスオーバーがありますね。今後どんなクロスオーバーが登場すると思いますか。

萩原:日産ラシーンやホンダクロスロードといった直線基調のボディを採用した車種のカスタムが流行っているのを見ると、軽自動車ではアルトや販売終了となったダイハツミラトコットをギア化するのは流行りそうです。

岡崎:そうだね。現行型のアルトは素のまま乗りたくないけれど、上級グレードベースにギア化すれば、ユーザー層は広がるはず。

ヴェゼルのデザインでZR-Vの走りなら満足できる(岡崎)

ヴェゼルのデザインでZR-Vの走りなら満足できる(岡崎)

馬弓:10ベストにホンダZR-V、スバルクロストレックが入り、年末にはスバルレヴォーグレイバックが登場しました。車高を抑えたSUVについてどう思いますか。

岡崎:ZR-Vは走りの良いSUVというイメージしかないな。個人的にはヴェゼルのデザインでZR-Vの走りなら満足できると思う。クロストレック、レヴォーグレイバックも佐渡島で試乗したけれど、どちらもハンドリング、乗り心地のレベルは高い。特にレヴォーグレイバックは非常にフルボトムするような荒れた路面でも路面追従性が高かった。

ヴェゼルのデザインでZR-Vの走りなら満足できる(岡崎)

最低地上高200mmにこだわって車高が1,570mmで登場したレヴォーグレイバック。立体駐車場の制約である1,550mmのことは今後の検討材料というが

ヴェゼルのデザインでZR-Vの走りなら満足できる(岡崎)

XVから生まれ変わったクロストレックもメインマーケットである北米の要望を受けて大型化してしまった

萩原:私も岡崎さんと同じ意見ですね。レヴォーグレイバックのしなやかな足回りは、レヴォーグでも採用してもらいたいぐらいです。この3車種に言えるのは、車高が1,550mmを超えてしまっていること。特にスバルクロストレックは、先代までのXVはクリアしていたのに、割り切ってしまった。立体駐車場ユーザーとしては全幅1,850mm、全高1,550mmというのは大きな壁なのです。だからBYDドルフィンがわざわざ日本仕様だけシャークフィンを改良して1,550mmにしたのは大変意義があると思いますね。

岡崎:そうだよね。クラウンスポーツも全高1,565mmだから諦めないとならない。

馬弓:レイバックは1,550mmのことをスバルも気にしてはいたので、そのうちローダウンサスで対応してきますかね。やはり低いSUVは立体駐車場に対応した全高がキーポイントということはよくわかりました。

ノア/ヴォクシーの納車が長くても、ユーザーはセレナに浮気をしない(萩原)

高がキーポイントということはよくわかりました。  ノア/ヴォクシーの納車が長くても、ユーザーはセレナに浮気をしない(萩原)

馬弓:10ベストにも残りましたし、テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した日産セレナ。このセレナが属する売れ筋のミドルサイズミニバンについてどうでしょう。

岡崎:1.4リッターエンジンを採用したe-POWER。ルキシオンに搭載したプロパイロット2.0などがテクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した理由だと思う。だけど僕は点数を入れていない。その理由はプラットフォームが3世代キャリーオーバーという点。TNGAプラットフォームを採用したトヨタノア/ヴォクシーと走りという点で大きな差が開いたと思う。

萩原:装備面ではほぼ互角、プロパイロット2.0を搭載したことでテクノロジーという面ではセレナがリードと言えますが、販売台数は圧倒的にノア/ヴォクシーが上回っています。ノア/ヴォクシー、セレナ、ステップワゴンで、人気車のノア/ヴォクシーが納車までの期間が最も長いのですが、ユーザーはほとんど浮気をしません。やはりノア/ヴォクシーが良いクルマというのをわかっているのでしょう。

馬弓:その3車種の中で、ステップワゴンが販売台数で大きく水を開けられています。

萩原:新車価格が高いこと、そして販売台数が多いわけではないのに、納車までの期間がノア/ヴォクシーと変わらないというのは厳しいですよね。セレナは一時期、がんばって生産し納車までの期間を短くしていましたから。

岡崎:ステップワゴンは、エアーとスパーダで装備の差別化が大きいよね。個人的にはエアーがカッコイイと思うのだけれど、電動バックドアが付かないとか制約が多くてケチケチしているように感じる。これはN-BOXにも言えることだけど、日本一売れているクルマがメーカー側の都合で、ユーザーが自由に選べないというのはダメだね。こういった部分からユーザー離れは始まると思う。

馬弓:自分たちの都合や利益を優先しているように見えますよね。ではどうしたらステップワゴンの販売は復活すると思いますか。

岡崎:エアーをベースに装備も充実させてクロスターを作れば良いじゃない。フリードやフィットもクロスター戦略が功を奏しているし、ノア/ヴォクシーやセレナにない商品を作らないと回復する力はないと思う。

トヨタがこれほど変わったのだから、ほかのメーカーももっとがんばってもらいたい(岡崎)

トヨタがこれほど変わったのだから、ほかのメーカーももっとがんばってもらいたい(岡崎)

馬弓:2023年は販売のコアモデルが多かったというお話ですけれど、2024年楽しみにしているクルマはありますか?

岡崎:2024年にエステートが登場することで、2022年から始まった新型クラウンのストーリーがひと段落する。高級車=セダンという常識がミニバンに移行したように、クラウンはSUV、クロスオーバー、新機軸のエステートへと変わって、多用化したニーズに応えられるラインアップが完成する。どのようなケミストリーが起きるのか楽しみ。

萩原:個人的には次にGRがどんなモデルを出すのか楽しみですね。同じ年にGRカローラを乗りましたけれど、全く別のクルマ?というくらい進化していました。それこそ、SUVやヴェルファイアのターボ車のGRというのが出たら興味深いです。

馬弓:2人ともトヨタ車ですか。笑

岡崎:昔はトヨタで、これだけ盛り上がることはなかったのだから、豊田章男会長の「もっとイイクルマを作ろうよ」という想いが、10年でようやく関わる人に伝わったということだと思う。トヨタがこれほど変わったのだから、ほかのメーカーももっとがんばってもらいたいな。

2024年の自動車業界について編集部からの質問コーナー

編:ガソリン価格は今後も高騰するのでしょうか?またそれにそなえて、高くともハイブリッドを買うべきでしょうか?

岡崎:ガソリン価格は高値で安定する可能性は高いので、燃費を気にする人はハイブリッドを購入したほうが良いでしょう。補助金を使ってPHEVという選択もありですね。ただし、PHEVは家庭で充電できる人だけが恩恵を受けることができますので、まだまだハイブリッドが主流でしょう。また、高速道路を頻繁に使うし、年間の走行距離が多いという人はディーゼルがピッタリでしょうね。軽油は価格も安いし、高速道路の燃費も良いからです。自分の使い方に合ったパワートレインを選ぶのが良いでしょう。

編:SUV人気はまだ続きますか?それとも新しいタイプの流行がありそうでしょうか?

馬弓:SUVはもはや一過性のブームではなくボディタイプとして定着していますので、人気は安定した状態で続くでしょう。レヴォーグレイバックのようなステーションワゴンベースのクロスオーバーやミニバン、スーパーハイトワゴンのクロスオーバーなどが流行る可能性があります。

編:EVは今「買い」でしょうか?まだ早いですか?

萩原:一軒家で自宅に充電器を設置できる人は、購入しても良いと思います。ただし、日産アリアやスバルソルテラ/トヨタbZ4XといったロングレンジのBEVはインフラに脆弱性があるので、まだまだ厳しいです。今買いのBEVは日産サクラや三菱eKクロス、BYDドルフィンのような低価格のコミューターです。こういったモデルをセカンドカーで街乗り中心で使い、長距離ドライブはミニバンやSUVという使い方ができるユーザーならば今買っても良いと思います。

編:来年モデルチェンジがありそうな車、教えてください。

すでに公開されているのは、トヨタランドクルーザー250、レクサスGX、ホンダアコード、ホンダフリード、ホンダWR-V、スズキスイフト、三菱トライトンです。ホンダフリード、N-BOXのクロスモデル、スズキスペーシアギアなども登場するかもしれません。ダイハツはムーヴのモデルチェンジが確実視されていましたが、認証不正問題で全く見通せない状況です。

 

(取材協力:ル・ガラージュ)

※記事の内容は2023年12月時点の情報で執筆しています。

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