2022年6月の乗用車全体(軽自動車を含む)の販売台数は26万8077台、前年比は前月までよりやや回復し90.4%となりました。生産体制の混乱は続くもののブランド別では三菱(162.5%)を筆頭にマツダ(124.6%)、スズキ(117.4%)日産(115.3%)、スバル(109.6%)、ホンダ(103.0%)が前年を上回る一方で、トヨタ、レクサス、ダイハツのトヨタ系列3社は20%以上のダウンとなり明暗が分かれました。
軽自動車を除く6月の新車販売ランキングでは、トヨタヤリスが首位を続ける一方で、3位日産ノート、5位ホンダフリード、7位ホンダフィット、8位ホンダヴェゼルなどトヨタ勢以外の伸長が目立ちます。前月、スズキスペーシアが初の首位を獲得した軽自動車(乗用車)は、ホンダN-BOXが大差で1位に返り咲き、乗用車全体でも上半期首位となりました。
今回は1〜6月の上半期の結果も併せて、自動車評論家の島崎七生人さんに詳しく解説をしてもらいましょう。
国産乗用車販売台数 2022年上半期(1~6月・軽自動車を除く)
順位 | 車名 | ブランド名 | 台数 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1 | ヤリス | トヨタ | 81,580 | 68.5 |
2 | カローラ | トヨタ | 70,988 | 131.8 |
3 | ルーミー | トヨタ | 65,525 | 84.6 |
4 | ノート | 日産 | 56,948 | 121.5 |
5 | ライズ | トヨタ | 45,380 | 94.6 |
6 | フリード | ホンダ | 43,827 | 123.3 |
7 | アルファード | トヨタ | 34,799 | 61.3 |
8 | アクア | トヨタ | 34,143 | 169.7 |
9 | フィット | ホンダ | 29,617 | 99.8 |
10 | セレナ | 日産 | 27,894 | 86.4 |
11 | シエンタ | トヨタ | 25,861 | 76.6 |
12 | ヴェゼル | ホンダ | 23,855 | 118.7 |
13 | ノア | トヨタ | 23,642 | 93.7 |
14 | ヴォクシー | トヨタ | 22,609 | 55 |
15 | ハリアー | トヨタ | 22,250 | 46.1 |
16 | プリウス | トヨタ | 18,395 | 68.7 |
17 | パッソ | トヨタ | 17,981 | 95.8 |
18 | ソリオ | スズキ | 17,484 | 64.2 |
19 | ランドクルーザーW | トヨタ | 16,890 | 91.1 |
20 | CX-5 | マツダ | 15,482 | 124.3 |
21 | RAV4 | トヨタ | 15,227 | 53.6 |
22 | スイフト | スズキ | 13,297 | 108.5 |
23 | フォレスター | SUBARU | 12,643 | 108.1 |
24 | ステップワゴン | ホンダ | 12,413 | 58.4 |
25 | キックス | 日産 | 12,250 | 57.8 |
26 | MAZDA2 | マツダ | 11,757 | 92.2 |
27 | ロッキー | ダイハツ | 10,808 | 96.3 |
28 | インプレッサ | SUBARU | 10,755 | 68.4 |
29 | ジムニーワゴン | スズキ | 8,661 | 99.5 |
30 | アウトランダー | 三菱 | 8,595 | 883.4 |
31 | 86 | トヨタ | 8,540 | 531.4 |
32 | クラウン | トヨタ | 8,300 | 65.2 |
33 | CX-30 | マツダ | 8,167 | 70 |
34 | デリカD5 | 三菱 | 8,062 | 96.2 |
35 | シャトル | ホンダ | 7,758 | 99.9 |
36 | MAZDA3 | マツダ | 7,623 | 82.5 |
37 | CX-8 | マツダ | 7,206 | 65.7 |
38 | C-HR | トヨタ | 7,043 | 64.7 |
39 | リーフ | 日産 | 6,345 | 158.5 |
40 | クロスビー | スズキ | 6,089 | 76.1 |
41 | トール | ダイハツ | 5,292 | 63.8 |
42 | オデッセイ | ホンダ | 5,009 | 47.6 |
43 | エクストレイル | 日産 | 4,951 | 70.6 |
44 | ロードスター | マツダ | 4,817 | 148.4 |
45 | エクリプスクロス | 三菱 | 4,702 | 89.6 |
46 | CX-3 | マツダ | 4,627 | 98.4 |
47 | レガシィ | SUBARU | 4,576 | 994.8 |
48 | マーチ | 日産 | 4,560 | 92.3 |
49 | レヴォーグ | SUBARU | 4,311 | 24.5 |
50 | ハイエースワゴン | トヨタ | 4,265 | 92 |
※ 上記の台数は車名別の合算値となり、一部教習車などを含みます。
※ 例:ブランド通称名 カローラはカローラシリーズ全車種と教習車を含んでいます。
2年前から変わらない「売れているクルマ」
2022年1〜6月の新車販売台数(軽自動車を除く)の集計を見て、おや!?と思わされた。1年前(だけでなく2年前も)の同期(1〜6月)の集計と見較べてみると、順位の上下はあるものの、なんと上位10車種中7車の顔ぶれが同じだったからだ。ちなみに昨年(2021年)1〜6月は10位圏内だったが今年になり圏外に外れたのはいずれもトヨタのハリアー(15位)、ヴォクシー(14位)、シエンタ(11位)の3車種で、入れ替わりにランクインしたのはトヨタアクア、ホンダフィット、日産セレナの3車種。ただしアクア(2021年7月発売)やフィット(2020年2月発売)はともかく、2016年8月発売のセレナが2022年上半期に10位以内に食い込む健闘を見せている点は驚きだ。
減速傾向のヤリス、好調なカローラ、ノート、フリード
一方で販売台数の増減は車種ごとにまちまちだ。今期1位のトヨタヤリスは8万1580台だったが、2021年の11万9112台に対して、台数自体は落としており、ヤリスは直近6月単月も順位は1位ながら販売台数は1万3107台とし、後述するが軽自動車トップのホンダN-BOXの1万5149台に負けている。反対に2021年に対し販売台数で見て数字を伸ばしたのは、トヨタカローラ(5万3864台→7万988台)、日産ノート(4万6879台→5万6948台)、ホンダフリード(3万5551台→4万3827台)など。片や、あくまでも数字で見た結果だが、フルモデルチェンジで生まれ変わったトヨタノア(13位/2万3642台)、ヴォクシー(14位/2万2609台)が奮わないのは気になるところではある。昨今の情勢の影響で、納車がままならないようだ。
レガシィ、アウトランダー、86の躍進も目立つ
ほかに自身の前年比で躍進を遂げた車種は、スバルレガシィ(前年比994.8%)、三菱アウトランダー(同・883.4%)、トヨタGR86(同・531.4%)など。日産リーフ(同・158.5%)、マツダロードスター(同・148.4%)、CX-5(同・124.3%)なども健闘している。
なおトヨタの今年1〜6月の販売台数は513万7811台で、同期として3年連続で世界第1位とした。ただしトヨタ単体の国内生産は昨年同期から18.4%減の127万1659台で、半導体や部品供給不足、新型コロナ感染、豪雨ほか、さまざまな要因による操業停止などの影響も相変わらず影を落とす。
国産乗用車販売台数 2022年6月(軽自動車を除く)
順位 | 車名 | ブランド名 | 台数 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1 | ヤリス | トヨタ | 13,107 | 87.7 |
2 | カローラ | トヨタ | 9,093 | 99 |
3 | ノート | 日産 | 8,734 | 123.4 |
4 | ルーミー | トヨタ | 7,796 | 54.4 |
5 | フリード | ホンダ | 6,699 | 133.3 |
6 | ライズ | トヨタ | 5,376 | 79.9 |
7 | フィット | ホンダ | 4,971 | 146.5 |
8 | ヴェゼル | ホンダ | 4,948 | 86.9 |
9 | ノア | トヨタ | 4,302 | 101.6 |
10 | ヴォクシー | トヨタ | 4,207 | 61.9 |
11 | シエンタ | トヨタ | 4,147 | 99.5 |
12 | アルファード | トヨタ | 4,127 | 45.1 |
13 | アクア | トヨタ | 3,813 | 155 |
14 | セレナ | 日産 | 3,544 | 83 |
15 | ステップワゴン | ホンダ | 3,378 | 138.2 |
16 | ランドクルーザーW | トヨタ | 3,349 | 142.8 |
17 | ソリオ | スズキ | 3,189 | 127.1 |
18 | ハリアー | トヨタ | 2,712 | 37.5 |
19 | RAV4 | トヨタ | 2,425 | 43.6 |
20 | パッソ | トヨタ | 2,209 | 66.8 |
21 | スイフト | スズキ | 1,965 | 161.2 |
22 | フォレスター | SUBARU | 1,960 | 116.8 |
22 | CX-5 | マツダ | 1,937 | 164.7 |
24 | MAZDA2 | マツダ | 1,930 | 214.9 |
25 | インプレッサ | SUBARU | 1,706 | 72.7 |
26 | プリウス | トヨタ | 1,638 | 39.3 |
27 | アウトランダー | 三菱 | 1,631 | 1430.7 |
28 | ロッキー | ダイハツ | 1,614 | 94.7 |
29 | シャトル | ホンダ | 1,582 | 134.6 |
30 | CX-30 | マツダ | 1,415 | 102.8 |
31 | クロスビー | スズキ | 1,380 | 113 |
32 | リーフ | 日産 | 1,340 | 660.1 |
33 | レヴォーグ | SUBARU | 1,299 | 100.2 |
34 | ジムニーW | スズキ | 1,169 | 127.6 |
35 | デリカD5 | 三菱 | 1,152 | 244.1 |
36 | CX-3 | マツダ | 1,121 | 226.5 |
36 | 86 | トヨタ | 955 | 4775 |
38 | C-HR | トヨタ | 911 | 99.2 |
39 | MAZDA3 | マツダ | 849 | 75.7 |
40 | キックス | 日産 | 814 | 30.9 |
41 | エクリプスクロス | 三菱 | 774 | 95.7 |
42 | エクストレイル | 日産 | 737 | 81.7 |
43 | ロードスター | マツダ | 735 | 173.8 |
44 | NX350H | レクサス | 722 | 21年11月発売 |
45 | シビック | ホンダ | 679 | 1257.4 |
46 | トール | ダイハツ | 665 | 59.5 |
47 | ハイエースW | トヨタ | 662 | 84.4 |
48 | CX-8 | マツダ | 653 | 85.1 |
49 | マーチ | 日産 | 593 | 85.6 |
50 | レガシィ | SUBARU | 589 | 未発表 |
※ 上記の台数は車名別の合算値となり、一部教習車などを含みます。
※ 例:ブランド通称名 カローラはカローラシリーズ全車種と教習車を含んでいます。
実力を実績に反映できないノア/ヴォクシー
そうした中での6月単月の販売台数は、全体で26万8077台、前年比では前月よりもやや持ち直して90.4%となった。台数を見ても厳しい状況の中でも数字を上乗せできた車種は決して少なくなく、1位のヤリスは5月の1万2400台から1万3107台へ。9位のノア(5月→6月=2720台→4302台)、10位のヴォクシー(同・2157台→4207台)は台数だけなら倍増ではあるが、本来、さまざまな障害がなければもっと台数を伸ばしたいところだろう。
86とシビック、マツダ各車の伸びが目立った6月
上半期のところでも触れたアウトランダー同様、前年比の計算上で突出した数値を見せた車種には86(4775%)、ホンダシビック(1257.4%)などがあり、リーフ(660.1%)、三菱デリカD:5(244.1%)などの伸びも目立つ。マツダの各車も、CX-3=226.5%、マツダ2=214.9%、ロードスター=173.8%、CX-5=164.7%、CX-30=102.8%と、順位では22位のCX-5が最高位ながら、こぞって販売台数を伸ばした。
軽乗用車販売台数 2022年上半期(1~6月)
順位 | 車名 | ブランド名 | 台数 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1 | N-BOX | ホンダ | 103,948 | 94.0 |
2 | スペーシア | スズキ | 47,675 | 60.6 |
3 | タント | ダイハツ | 44,188 | 63.8 |
4 | ムーヴ | ダイハツ | 42,498 | 73.6 |
5 | ワゴンR | スズキ | 39,728 | 131.4 |
6 | ルークス | 日産 | 37,351 | 74.6 |
7 | ミラ | ダイハツ | 34,747 | 96.1 |
8 | ハスラー | スズキ | 34,349 | 71.2 |
9 | アルト | スズキ | 33,770 | 92.9 |
10 | タフト | ダイハツ | 28,721 | 89.2 |
11 | デイズ | 日産 | 27,575 | 87.4 |
12 | N-WGN | ホンダ | 22,458 | 81.1 |
13 | ジムニー | スズキ | 21,880 | 98.9 |
14 | eK | 三菱 | 14,797 | 77.3 |
15 | N-ONE | ホンダ | 10,869 | 77.8 |
N-BOX強し、上半期は乗用車全体でも圧倒的1位に
2022年上半期(1〜6月)の軽自動車の販売台数、トップ15車種の顔ぶれはまったくおなじみで順当……そんなところだ。後述する6月とも、順位こそ違いはあるが、まったく同じ車種が並ぶこととなった。
その中でやはり注目しないわけにいかないのが1位のN-BOX。台数も10万3948台となり、これは登録車のヤリスの8万1580台を大きく凌ぐ台数だ。台数的にはN-BOXに大きく水をあけられてはいるものの、2位のスズキスペーシア、3位のダイハツタントと4万台クラスのスーパーハイトワゴン系が占め、変わらない軽自動車市場の様相がこのランキングからも見てとれる。
スマイル効果で唯一、前年比を上回ったワゴンR
また前年比ではスズキワゴンRが15車中では唯一131.4%と前年比で上回っている。“スマイル効果”は少なくないはずだが、ライバルのダイハツムーヴキャンバスが超キープコンセプトの新型車を投入、下半期の動きが気になるところだ。
軽乗用車販売台数 2022年6月
順位 | 車名 | ブランド名 | 台数 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1 | N-BOX | ホンダ | 15,149 | 86.7 |
2 | スペーシア | スズキ | 8,780 | 92.3 |
3 | ムーヴ | ダイハツ | 7,917 | 91.8 |
4 | ワゴンR | スズキ | 7,199 | 275.0 |
5 | ルークス | 日産 | 6,561 | 135.0 |
6 | タント | ダイハツ | 5,761 | 64.0 |
7 | ハスラー | スズキ | 5,035 | 69.5 |
8 | アルト | スズキ | 4,877 | 104.4 |
9 | ミラ | ダイハツ | 4,669 | 86.2 |
10 | N-WGN | ホンダ | 4,651 | 123.3 |
11 | タフト | ダイハツ | 4,289 | 82.9 |
12 | ジムニー | スズキ | 3,933 | 166.7 |
13 | デイズ | 日産 | 3,181 | 99.7 |
14 | eK | 三菱 | 2,400 | 97.0 |
15 | N-ONE | ホンダ | 2,226 | 102.7 |
5月のN-BOX首位陥落は一時的な生産調整の影響だった
その一方で6月の販売台数では、N-BOXが通常(?)の台数を上げ、スペーシアからポジションを奪い返し、1位に戻った。ところでN-BOXは5月に販売台数を大きく落とし、2位に順位を下げたことが記憶に新しい。このことについてその後、確認をとってみたところ「5月は昨今の複合要因に伴う部品調達の影響を受け、鈴鹿製作所の生産が繋がらず、一時的ながら生産調整が発生したため」(ホンダ広報部)との回答があった。
部外者には何により、どれだけの影響があったのかの詳細は見えてこないものの、「6月からは通常稼働に戻った」(同)との説明どおり、6月分の販売台数はものの見事にリカバーしている。
6月の軽自動車の販売台数では、EVの日産サクラ(1675台)と三菱eKクロスEV(426台)が、早速、集計に入ってきていることにも注目だ。
※記事の内容は2022年7月時点の情報で制作しています。