2019年12月の軽自動車を除く新車販売台数はセダンとツーリングが追加となったカローラが3ヵ月連続のトップに輝きました。11月に発売されたばかりのトヨタライズが2位、兄弟車のダイハツロッキーも16位にランクイン、マツダのCX-30も18位に入るなどコンパクトSUV戦線の動きが活発です。一方、軽自動車では11月に王者ホンダN-BOXを抜いたダイハツタントがまさかの大失速で4位に転落するなど波乱の展開。自動車評論家の島崎七生人さんに詳しく解説してもらいましょう。
国産乗用車販売台数 2019年12月(軽自動車除く)
順位 | 車名 | メーカー | 台数 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1 | カローラ | トヨタ | 9186 | 143.6 |
2 | ライズ | トヨタ | 9117 | (19年11月発売) |
3 | プリウス | トヨタ | 7566 | 107.2 |
4 | シエンタ | トヨタ | 7279 | 80.6 |
5 | フリード | ホンダ | 6520 | 110.9 |
6 | ノート | 日産 | 6018 | 74.6 |
7 | ルーミー | トヨタ | 6015 | 94.1 |
8 | RAV4 | トヨタ | 5759 | (19年4月発売) |
9 | アクア | トヨタ | 5623 | 62.1 |
10 | アルファード | トヨタ | 5183 | 112.7 |
11 | ヴォクシー | トヨタ | 5105 | 78.6 |
12 | タンク | トヨタ | 4695 | 85.5 |
13 | セレナ | 日産 | 4422 | 74.8 |
14 | ヴィッツ | トヨタ | 4283 | 77.2 |
15 | C-HR | トヨタ | 3577 | 76.9 |
16 | ロッキー | ダイハツ | 3514 | (19年11月発売) |
17 | ソリオ | スズキ | 3308 | 89.4 |
18 | CX-30 | マツダ | 3226 | (19年10月発売) |
19 | ステップワゴン | ホンダ | 3006 | 75.9 |
20 | インプレッサ | SUBARU | 2989 | 92.2 |
21 | ノア | トヨタ | 2982 | 76.8 |
22 | エスクァイア | トヨタ | 2969 | 103.3 |
23 | MAZDA3 | マツダ | 2793 | (19年5月発売) |
24 | ヴェゼル | ホンダ | 2660 | 73.6 |
25 | ヴェルファイア | トヨタ | 2287 | 76.7 |
26 | スイフト | スズキ | 2182 | 97.5 |
27 | パッソ | トヨタ | 2133 | 58.9 |
28 | MAZDA2 | マツダ | 2114 | (19年9月発売) |
29 | CX-8 | マツダ | 1822 | 61.5 |
30 | エクストレイル | 日産 | 1753 | 61.9 |
トヨタライズが大躍進、“全部入り”の最上級グレードが7割
2019年12月の市況で「やっぱり!」とうなずかされたのがトヨタライズの大躍進だ。発売は前月11月5日ながら、いきなり首位のカローラを限りなく脅かす9117台の登録となった。ちなみにトヨタの発表によれば受注ベースでの台数は約3万2000台で、これは月販目標(4100台)のおよそ8倍(!)にあたる。
グレード別では最上級の“Z”が7割を占めているというが、この傾向も納得がいく。というのも、Zには全車速追従機能付ACC、サイドビューランプ、レーンキープコントロールが(Gの標準項目に対し)プラスされた“全部入り”の予防安全機能=スマートアシストが標準搭載されているからだ。ほかに見栄えでいうと、17インチタイヤ&アルミホイールもシリーズで唯一の標準装着となる。装備と機能の違いでGグレードとのメーカー希望小売価格の差は16万5000円~14万8500円、上級のZでFF車を選べば、Gの4WDに対し、素の状態なら反対に7万3700円予算が抑えられる。
ユーザーの心を動かすライズ最上級グレードの細かな「芸」
こうした装備差の説明をテーブルでお茶をご馳走になりながらセールスマンから聞き、ショールームの展示車でステアリングホイールのスイッチがひとつ多い(ACCのスイッチが追加される)ことや、シフトブーツの付け根にZならクロームの縁取りがキラリと光るのを見れば(Gは樹脂色)、上級のZに心がなびくのも自然…、といえる。
ちなみに昔の名前で出てきた兄弟車のダイハツロッキーも16位につけ、こちらも月販目標台数2000台に対し3514台と健闘している。ライズ(=ロッキー、だろう)は、4m以下のコンパクトな外観、広い室内、スマートアシストの安心感が選ばれている理由のトップ3だそうだが、まさしくそのとおりといった、手頃な実用車に仕上げられていることは間違いない。
好調が続くカローラ、オプションの誤発進抑制装置の装着率も高い
ほかに10月以降3ヵ月連続で首位の座をキープしているカローラにも注目。12月の登録台数は9186台と1万台こそ割ったものの、対前年比は143.6%と、まさにカローラらしさを取り戻した状況にあるといっていい。新型の発売が9月ながら2019年通年でもアクアを押しのけ、プリウス、ノート、シエンタに次いで4位に食い込んだ。発売直後の情報だが、カローラではオプションの“インテリジェントクリアランスソナー[パーキングサポートブレーキ(静止物)]”の装着率が約8割というのも、昨今の空気感を反映している。
コンパクトSUV戦線異状あり! ジワジワと順位を上げるマツダCX-30、マイナーチェンジしたC-HRも再上昇
昨年10月発売のマツダCX-30は、ジワジワと台数を上げてきた。12月は3226台と、ハッチバックのマツダ3を上回る数字だったが、年が明け、注目のSKYACTIV-X搭載車も発売され、これから台数的な伸びも見せるはず。同じSUVカテゴリーでは、通年でもっとも販売台数が多かったのはホンダヴェゼル(5万5886台・14位)だったが、トヨタCH-Rは通年では15位とヴェゼルの次ながらも、直近の12月はマイナーチェンジの効果で、ヴェゼルの24位に対し15位に入っている。
通年2位のコンパクト系の日産ノートも強みを見せているほか、ミニバン系はトップ10圏内にトヨタシエンタ、日産セレナ、ホンダフリードなどの顔ぶれが並び、底力を発揮している。
軽乗用車販売台数 2019年12月
順位 | 車名 | メーカー | 台数 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1 | N-BOX | ホンダ | 16865 | 101.6 |
2 | スペーシア | スズキ | 12270 | 101 |
3 | デイズ | 日産 | 10105 | 99.1 |
4 | タント | ダイハツ | 8081 | 82.4 |
5 | ムーヴ | ダイハツ | 6961 | 75.6 |
6 | ミラ | ダイハツ | 5527 | 63.5 |
7 | ワゴンR | スズキ | 5346 | 79 |
8 | アルト | スズキ | 5007 | 108.9 |
9 | ハスラー | スズキ | 4365 | 85.4 |
10 | キャスト | ダイハツ | 2503 | 81 |
11 | ジムニー | スズキ | 2157 | 126.4 |
12 | eK | 三菱 | 1945 | 68.8 |
13 | ピクシス | トヨタ | 1315 | 75.3 |
14 | ウェイク | ダイハツ | 1199 | 61.8 |
15 | エブリイワゴン | スズキ | 1040 | 86.2 |
※ 同一車名のものは合算して集計しています(アルト、ミラ、ムーヴ、タント、eK、プレオ、N-BOX、デイズ、ピクシスなど)
王座を守ったホンダN-BOX、2019年はプリウスの2倍の販売台数
一方で軽自動車では、12月単月でも1〜12月通年の集計でも、相変わらずホンダN-BOXが断トツの強さを見せる結果となった。通年で25万3500台と、フルモデルチェンジで追撃中のダイハツタントの17万5292台を大きく引き離している。単純に台数で比較すると、登録車のナンバー1だったトヨタプリウス(12万5587台)のざっと倍の台数。しかもN-BOXはトップの座を2016年以降4年連続でキープしている。
タント、スペーシア、そして…、スーパーハイトワゴンは今年も熱い
12月は失速したとはいえ年間販売台数2位のダイハツタントも前年比でいうと128.4%と勢いはある。12月にそれまでのパックオプションを標準化したお買い得グレードの“セレクション”を追加設定したほか、あいおいニッセイ同和損保の「壊れにくさ、修理のしやすさの評価」による対象車に認定され、車両保険10%割引が適用されるなどとした。
タントは11月にホンダN-BOXを負かし1位の座につく実績も上げている。昨年7月の新型導入直後には月販目標台数のおよそ3倍の受注(約3万7000台)があったほどだから、今後は王者の座を奪還する可能性を秘めている。
同じスーパーハイトワゴンではスズキスペーシアも手綱を緩めず拡販に躍起だし、このあと日産/三菱連合からの新型車の投入も控えている。販売の現場では熾烈な戦いが続きそうだ。
目が離せない2代目スズキハスラー
新型車といえばほかにもスズキハスラーの登場が注目だ。2014年に登場した初代は、軽自動車の中ではいわば“レアキャラ”な存在で、遊び心をかき立てるチャーミングな存在として大ヒットした。新型もまだ未試乗ながら、初代の持ち味を殺すことなく洗練・進化させているようだし、実用車+αの価値観を持つ貴重な存在として動向から目が離せない。
※記事の内容は2020年1月時点の情報で制作しています。