かつてはファミリーカーから高級車まで人気を誇ったセダンですが、ミニバンやSUVなど多彩なボディタイプの台頭で、すっかり影が薄くなったようにみえます。一方でステータスや走りを求める人たちから根強い支持があり、メーカーもそれに応えるモデルを投入しているのもまた事実。今回は2020年上半期の販売ランキングを眺めつつ、カテゴリーごとに厳選した人気セダン10車種を紹介します。
セダンが売れていないのは自動車先進国の証 !?
かつて自動車のボディタイプで圧倒的な人気を誇ったセダン。しかし自動車の使い方や価値観の多様化に伴って誕生したミニバン、SUVなどの新しいボディタイプに押され、日本ではその数を徐々に減らしてきました。
ちなみに世界を見渡すとセダンの人気がいまだに高いエリアもあります。中国を筆頭とした自動車の普及がこれからまだまだ進む、という段階にある国々です。言い換えると自動車は社会的なステータスを表現する手段である、という意識が高い場所ではセダンがまだまだ主役です。欧州は今でこそSUVブームが訪れていますが、比較的最近までセダンは根強い人気がありました。欧州のセダン人気の理由は階級社会の名残だ、などと言う人もいます。
一方、日本は自動車先進国の中で米国と並んでセダンのシェアが早めに下がった国です。そう考えるとセダンの衰退が早かった日本は、米国と並んで精神的にも社会的にも世界有数の自由で平等な国なのかもしれません(個人の感想です)。そんな日本がボディタイプ先進国であるとするなら、未来の世界は軽自動車のスーパーハイトワゴンのようなカタチの自動車が走り回っているのでしょうか。未来の世界が精神的にも社会的にもあまねく自由で平等ならばの話ですが。
それでも売れているセダンは3種類
■2020年1〜6月乗用車販売台数ランキング(セダン)*50位まで。軽自動車を除く
順位 | ブランド通称名 | ブランド名 | 台数 | 前年比 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
2 | カローラ | トヨタ | 57,235 | 119.6 | セダン・ステーションワゴン |
9 | プリウス | トヨタ | 36,630 | 52.1 | ハッチバック |
18 | インプレッサ | SUBARU | 19,381 | 79.3 | セダン、ハッチバック、SUV |
30 | クラウン | トヨタ | 11,826 | 54.1 | セダン |
37 | MAZDA3 | マツダ | 9,968 | 304.1 | セダン・ハッチバック |
42 | リーフ | 日産 | 6,283 | 59.6 | ハッチバック |
43 | カムリ | トヨタ | 6,170 | 52.6 | セダン |
コロナの影響で前年比を大きく落とした2020年上半期の乗用車販売台数。そのランキングで50位以内に入っているセダンはわずかに7車種(プリウスやリーフなど本来は2.0Lクラスのハッチバック、VWゴルフに代表される欧州Cセグメントにあたる一部の車種を例外的にセダンにカウントしているのはメーカーの定義などに準じています)。
2位に輝いたカローラはステーションワゴンのカローラツーリングとハッチバックのカローラスポーツなどを含んだ台数で、セダンは25%程度。同様にインプレッサとマツダ3も他のボディタイプを含んでおり、こちらもセダンは少数派です。
現在、国産車で買うことができるセダンは24車種。このうちダイハツアルティスはトヨタカムリのバッジ違いのOEM、トヨタプレミオとアリオンも兄弟車ですので実質、22車種です。つい先日もホンダがシビックセダンとグレイスの両セダンの販売中止をアナウンスするなど、ずいぶん減りました。国産9ブランドのうち三菱とスズキは国内向けにはセダンがありません。
しかし、そんな日本でもセダンならではの強みを活かした車種は、今でも一定の人気・ニーズがあります。セダンの強み、それは依然として残るフォーマルさや高級感、ミニバンやSUVに比べて低い車高がもたらす走行性能の高さ、この2点でしょう。そんな強みを活かして生き残っている今日の日本市場のセダンは、高級セダンとスポーティーセダン、そして実用セダンの3種類に分類することができます。
前置きがとても長くなりましたが、今回は販売ランキングなどで人気具合もチェックしつつ、3種類のセダンごとに2020年上半期おすすめの車種を紹介していきましょう。
フォーマルでエレガントな「高級セダン」の2020年上半期おすすめランキングBEST3
ロールスロイス、キャデラック、トヨタセンチュリーなどの運転手付き高級車はもちろん、ドライバーズカーとしても高級車は依然としてセダンが花形です。日本では長年、トヨタクラウンがこのセグメントの代表車種。東京あたりではメルセデス・ベンツやBMW、アウディなどの欧州プレミアムブランドのセダンも幅を利かせています。ホテルに乗り付けて良し、ゴルフエクスプレスとして高速を走らせても良し。オーナーのプライドを満足させてくれる、そんな高級セダンのおすすめを紹介しましょう。
ノミネートは全長5m前後の大型セダン、「レクサスLS」「レクサスES」「トヨタセンチュリー」「トヨタクラウン」「日産シーマ」「日産フーガ」「ホンダレジェンド」の7車種です。
1位 「トヨタクラウン」 間違いなく国産高級セダンの代表
1955年の販売開始から半世紀以上にわたって日本を代表する高級セダンとして君臨してきたトヨタクラウン。2020年度上半期の販売ランキングも11,800台余りで30位に食い込み、相変わらずの存在感を示しています。クラウンが日本の高級セダンとして名実ともにナンバー1であることは誰しもが認めるところでしょう。
昔はターセル/コルサ、カローラ/スプリンター、カリーナ、コロナ、カムリ、マークⅡ/チェイサー/クレスタなど、トヨタにも多くのセダンがラインナップされていたのですが、しかし、その頂点にはいつもクラウンがいました(平成の一時期、レクサスLSの日本版・トヨタセルシオがありましたが、それは例外として)。「いつかはクラウン」という名キャッチコピーの世界は昭和の時代には確実に存在していたのです。
クラウンの人気が衰えないのは歴史に裏付けされたブランド力の高さもありますが、オーナーの高齢化や輸入車セダンの台頭といった時代の変化にきちんと対応してきたことも理由でしょう。なかでも2003年にデビューした12代目の通称「ゼロクラウン」と並んで、2018年デビューの15代目にあたる現行型はその最たるものです。外観や走りの方向性が大きく変わり、新しいユーザーの獲得を果たしました。
現行型クラウンの特徴は賛否両論ありますが大幅な若返りを図った外観です。アグレッシブなフロントマスクや6ライトとして軽快になったサイドビューは、輸入車セダンのトレンドを取り入れつつ日本的なクラウンらしさも巧みに融合しています。2.0Lターボ、2.5Lハイブリッド、3.5Lハイブリッドと3種類のパワートレーンが用意された走行性能も、ドイツの有名サーキットを走り込んで世界レベルに引き上げたとアピール。さらに車載通信機DCMを全車に標準搭載し、デジタルの世界でも最先端の「コネクティッドカー」に仕立ててきました。
一方で全長4,910 mm、全幅1,800 mm、全高1,455 mmと、特に車両幅は先代と変わらず1,800mmに抑えていたり、トランクにゴルフバッグが横積みできたりなど、日本のユーザーへの配慮も忘れていません。そう、この「日本人のための設計」ということが実はクラウンの最大のおすすめポイントなのです。グローバルでの厳しい競争の中で、決して大きいとはいえなくなってしまった日本マーケットのために作られている。この事実だけで筆者はこの車を高級セダン、いや日本のセダンのベストバイにしたいとすら思えます。6ライトのデザインがこなれていないとか、内装の趣味が依然垢抜けないとか、一部のグレードの乗り心地が悪いとか、言いたいことも少しありますが、まあ、やはりクラウンは買う人に満足感を与える車です。
2位 「レクサスES」 グローバル高級セダンの実力派
レクサスは2005年に日本でも展開が始まったトヨタのラグジュアリーブランド。北米や中国では非常に高い人気を誇ります。そのレクサスの最新ミドルクラスセダンがESです。レクサスにはGSというFR(フロントエンジン・リアドライブ)のミドルクラスセダンがありましたが、こちらは2020年8月で生産中止となっています。
ESはトヨタカムリをベースにしていることから分かるように現行レクサスのセダンとして唯一FF(フロントエンジン・フロントドライブ)を採用し、同クラスのライバルに比べて広い室内が特徴です。レクサスの日本導入前はトヨタウィンダムという名前で販売されていたESですが、その後は日本への導入が見送られていました。2018年10月に登場した7代目でようやく日本市場デビュー、日本には2.5Lハイブリッドの「ES300h」のみが導入されています。
高級セダンマーケットはFRが依然として主流ですが、ESは設計の新しさ、前述のように広い室内、FRと遜色のない高級感のある走りがおすすめの理由です。ベースとなったトヨタカムリの走りの良さには定評があり、そのカムリにさらにコストを掛けただけあって、ESは極めて滑らかでスムーズ、そして高い静粛性を実現しています。
クラウンが日本の高級セダンだとしたら、ESはグローバルの高級セダンです。全長4,975mm、全幅1,865mm、全高1,445mmと、クラウン(全長4,910 mm、全幅1,800 mm、全高1,455 mm)と比べ、その長さと幅にグローバルを感じさせます。内装の仕立ても欧州車よりはややアメ車に近いテイストで、そのあたりにもグローバルを感じることができるでしょう。高級セダンなのにFF?という固定観念を持っている人には無理にすすめませんが、クラウンのそれでも残る日本的な世界観が好きではない方には最善の選択かと思います。
3位 「ホンダレジェンド」 ホンダの技術の粋を尽くした高級セダン
第3位はレクサスLSと悩みましたが、2014年日本デビューのホンダの最上級セダンのレジェンドとします。この車、月販台数は数十台と、全くといっていいほど売れていません。ただし中身はホンダの最新技術が惜しみなく投入された実力車。特に3モーターハイブリッドシステム「SPORT HYBRID SH-AWD」は3.5Lエンジンに前輪1つ、後輪2つのモーターを組み合わせることで、前後だけでなく後輪左右の駆動配分をコントロールする先進のシステム、そう、ホンダが誇るスーパースポーツカーNSXと同じシステムが搭載されているのです。
北米や中国などではホンダのラグジュアリーブランド「アキュラ」から「RLX」として販売されており、全長5,030mm、全幅1,890mm、全高1,480mmと大柄なボディサイズと、上質な革をふんだんに使ったインテリアにもグローバルな印象が漂います。
多分、日本で使うには大きすぎるのと、コンサバな見た目が人気の出ない理由かと思いますが、2018年に大幅なマイナーチェンジを受けて、走行性能も安全性能もきっちりアップデートを重ねています。さらに原稿執筆時点では発表されていないものの、近いうちにさらに先進運転支援機能の拡充が図られるとの話もあります。このあたりが放置ぶりの目立つ日産フーガより高い点数をつけた理由です。
まだまだあります、日本の高級セダン
今回は高級セダンの中でもドライバーズカーということを重視しておすすめを選びました。ですのでトヨタセンチュリーや日産シーマなどは割りを食ったかもしれません。ベスト3以外の高級セダンについてもご紹介しましょう。
「レクサスLS」 国産セダンの最高峰
レクサスの最上級セダンがLSです。1989年にデビューした初代は日本ではトヨタセルシオとして人気を集めました。その後、2005年のレクサス日本導入に合わせ、日本でも4代目からは「LS」として販売が開始されます。2017年にデビューした現行型は5代目に当たります。すでにマイナーチェンジが予告されており日本での販売再開は2020年初冬とのことです。
3.5Lガソリンターボエンジン車には最新の10速ATが組み合わされ、3.5L+モーターのハイブリッド車はエンジン356Nm、モーター300Nmの巨大なトルクを誇るなど、とにかくトヨタ、いやレクサスが誇る最新技術が搭載されています。一方で外観スタイルにややまとまりを欠くことや、乗り心地がそれほど良くないとことが現行型のウィークポイントとして指摘されていましたが、そのあたりはマイナーチェンジで重点的に改善するようです。さらに先進の運転支援装置なども最高峰のものに切り替わります。
LSがベスト3からもれた理由は、メルセデス・ベンツのSクラスのロング仕様に迫る全長5,235mm、全幅1,900mm、全高1,450mmという、日本では持て余す巨大なサイズです。サイズとスタイルさえ気にならければぜひ、どうぞ。
「トヨタセンチュリー」 特別な人のための特別な車
ご存じの方も多いかと思いますが、この車は公用車や社用車として使われることを想定した特別な車です。全長 5,335 mm、全幅 1,930 mm、全高 1,505 mm。自分でドライブするような車ではありません。2018年に登場した現行型は3代目、時代に合わせて貴重な12気筒エンジンからV8ハイブリッドへとパワーユニットが変更となったことで、カーマニア的にも興味の対象から外れたのではないでしょうか。
約2,000万円という価格はむしろ割安ではないかと感じるほど、工芸品のようにしっかり丁寧に作られています。ただし主役は後席に座る方であり、運転する人はどんなに格好つけても職業ドライバーとして見られてしまうことに注意が必要です。
「日産フーガ」 クラウンやレクサスは遠くになりにけり
日産の高級セダンとして長年親しまれてきたセドリック/グロリアの後継として2004年に誕生したフーガ。2009年には2代目となる現行型がデビューしました。全長 4,980 mm、全幅 1,845 mm、全高 1,510 mmという大きさからも分かるように、海外では日産のラグジュアリーブランド・インフィニティから販売されています。日本市場でも2015年から最近までインフィニティマークを付けていました。
2015年に大幅なマイナーチェンジを受け内外装が刷新されました。ハイブリッドモデルもラインナップされていますが、さすがに動力性能や運転支援機能などは旧態化しており、着実に進化を続けるライバルのトヨタクラウンやレクサスESなどと比べるのは少々酷な話かもしれません。ただしモデルチェンジサイクルを見直すなどの最近の日産の方針変更の影響か、フーガも2019年末に仕様向上を受け日産マークが復活。安全装備のアップデートも行われました。果たして次期型は登場するのか、期待したいところです。
「日産シーマ」 日産のフラッグシップではあるものの
日産シーマは、当時の日産の高級セダン・セドリック/グロリアの上をゆく最高級セダンとして1988年に登場しました。そして爆発的なヒットを記録、バブルを象徴する出来事として「シーマ現象」と呼ばれる社会現象にまでなりました。
それから30年以上が経ち、現在もシーマは全長5,120mm、全幅1,845mm、全高1,510mmというサイズが示すように、フーガのロングバージョン&ハイブリッド専用車となった5代目が、細々と販売が続けられています。2012年の登場以降、フーガ同様の歩みを重ね、多少の手直しは受けているもののやはり旧態化は否めません。
走りと実用性を両立した「スポーティーセダン」の2020年上半期おすすめランキングBEST3
クーペには敵わないものの、ミニバンやSUVに比べて重心の低いセダンは走りという点で有利なボディタイプです。しかも4ドアで後席の人も快適に過ごせる空間を持っています。そんなセダンならではの強みを最大限に活かしているのが、ここで取り上げるスポーティーセダン。このカテゴリーには、ある程度の大きさと流麗なスタイル、そして時にはスポーツカーのように走らせることもできる走行性能が必要です。BMW3シリーズやメルセデス・ベンツCクラスあたりのライバルとなる国産スポーティーセダンのおすすめを紹介しましょう。
ノミネートは「レクサスIS」「トヨタカムリ」「日産スカイライン」「ホンダクラリティ」「ホンダアコード」「マツダ6」「スバルWRX S4」の7車種です。「ダイハツアルティス」はトヨタカムリのOEMですので今回は除外します。
1位 「日産スカイライン」 ワクワクが帰ってきた伝統のスポーティーセダン
スポーツセダン、ということだったら後述するスバルWRXが適任です。しかし今回は「スポーティーセダン」ですので、若干のプレミアム感も求められます。そうなるとBMW3シリーズなどに対抗できるのは、昨年マイナーチェンジでカンフル剤が投入されたスカイラインでしょう。
日本を代表するスポーティーなセダン、スカイラインの歴史はプリンス自動車時代の1957年までさかのぼることができます。日本ではGT-Rによって神話化されたスカイラインですが、幾度かの紆余曲折を経て、2001年に発売された11代目からはグローバルプレミアムセダンとして生まれ変わりました。
その11代目からの流れを汲む13代目の現行型は2013年に発売、北米などでは日産のラグジュアリーブランドであるインフィニティからQ50として販売されています。全長4,810mm、全幅1,820mm、全高1,440mmと、以前のスカイラインからすると大柄ですが、日本でドライブするにはギリギリ困らない寸法を維持しています。国内でも当初は日産エンブレムではなくインフィニティのものを装着していました。FRの貴重なスポーティーセダンであるのは間違いないのですが、やはり昔からのスカイラインファンからの評判は芳しくなく、日本ではやや存在感が薄まっていました。しかし2019年7月のマイナーチェンジで内外装を大幅変更した際に、日産マークを装着するなど日本向けに大きくテコ入れがなされました。
スカイラインを評価するのはこの2019年のマイナーチェンジで、明確に日本人向けの車として(ある程度)仕立て直された点です。日産マーク以外にも丸形テールライトの復活などが象徴的です。従来からの3.5Lのハイブリッドモデルに日産ご自慢の先進運転支援装置「プロパイロット」の最新版が搭載され、高速道路など条件付きですが「ハンズフリー」運転を実現しています。またこのタイミングで追加された400Rというグレードは、チューンされた3LのV6ターボエンジンを搭載し、最高出力を405PSまで高めています。まさに走りのスカイラインの復活を日本人に強く印象付けました。
古典的なクルマ好きが喜ぶGTセダンを復活させ、ハンズフリーで今どきの人も心が動かされる、そんな久しぶりにワクワクするスカイラインを送り出したことは、良いニュースの少ない日産にあって拍手を送りたいところです。「プロパイロット」は400Rには用意されないとか、ハイブリッドモデルの走りが古臭いとか、言いたいことも結構あるのですが、でも日産が日本に戻ってくる、そんな期待を持たせてくれた一台です。
2位 「トヨタカムリ」 広くて速くて好燃費!いまどきスポーティーセダン
カムリはグローバル、特に北米で大成功を収めたモデルです。1980年に登場した初代はセリカ・カムリを名乗り、人気クーペのセリカとシャシーを共有するFRのスポーツセダンでした。「男30、GTアゲイン」というキャッチコピーは当時のクルマ好きのファミリー層に強い印象を残しました。1982年に登場した2代目以降は方針転換しFFで室内の広さをアピールポイントとしたファミリーセダンとして人気を集めていきます。
2017年にフルモデルチェンジを行い10代目となる現行型に切り替わりました。新世代のシャシーやハイブリッドシステム、そして大胆なフロントマスクを始めとしたスタイルなど、これまでの実用的な大きなセダンというカムリのイメージを、スポーティー方向にチェンジさせるのに十分な内容でした。さらに2019年8月に内外装や足回りをよりスポーティーに仕立てたWSが追加されたことで、その印象はさらに強まりました。
全長4,885mm(WSは4,910mm)、全幅1,840mm、全高1,445mmと、大柄なボディを持つ現行型カムリですが、トヨタの最新世代のハイブリッドシステムやシャシーの恩恵で、これまでのトヨタ車と一線を画した質の高い走りが評価のポイントです。カムリをベースとしたレクサスESを高級セダンで2位としましたが、それもカムリのポテンシャルの高さを示しています。最新のトヨタのハイブリッドシステムはダイレクト感が改善され、スポーティーと呼んでいいレベルになりました。
一方でスカイライン400Rのような突き抜けた動力性能はありません。またレクサスESがあるので仕方ないのですが、プレミアム感もやや薄いのが弱点でしょう。とはいえ、走りの質感などはスカイラインのハイブリッドモデルよりも確実に新しく、燃費も良好です。合理的なスポーティーセダンをお探しならスカイラインよりもこちらだと思います。
3位 「スバルWRX S4 」 日本的な高性能4WDスポーツセダン、最後の生き残り
スバルWRXはひとつ前のインプレッサG4をベースに走りを磨いたスポーツセダンです。現行型は2014年にデビュー、最近までさらにハイスペックなWRX STIもラインナップされていましたが、この春に惜しまれつつ生産終了、現在はこのS4のみ、3つあったグレードも1つにしぼられました。
全長4,595mm、全幅1,795mm、全高1,475mmという日本で使いやすいサイズの4ドアセダン、そして300PSを叩き出す2L水平対向ターボはフルタイム4WDと組み合わされ、トランスミッションこそCVTのみですがスポーツカー顔負けの高性能を発揮します。ボンネットフードに大きく開いたエアインテークや、リアのスポイラーがいかにも高性能4WDセダンをアピールしています。
生産中止となったSTIに比べてS4は街中でも乗りやすくチューニングされています。インテリアなどあちらこちらに古臭さは隠しきれなくなってきましたし、スポーティーセダンに不可欠なプレミアム感も無いに等しいのですが、それでも動力性能は抜群な唯一無二のクルマです。古くは三菱ギャランVR-4や日産ブルーバードアテーサ、その後は三菱ランサーエボリューションやスバルインプレッサWRXなど、日本で脈々と続いてきたこの手のスポーツセダンの最後の生き残りです。モデル末期にあるものの先進安全装備「アイサイト」には運転支援システム「ツーリングアシスト」も装着されています。心が抑えきれない方はぜひどうぞ!
まだまだあります、日本のスポーティーセダン
高級セダンよりは小さく、運転する楽しみを前面に打ち出したスポーティーセダンは、世界的にもまだまだ人気があります。今回は走りにより比重を置いたので、ラグジュアリー志向が強いマツダ6やホンダアコードにはやや不利だったかもしれません。
「レクサスIS」 2回目の大幅マイナーチェンジに期待
レクサスのセダンとしては最もコンパクトなIS。3代目となる現行型は2013年にデビュー。最近のレクサスの特徴であるスピンドルグリルをいち早く採用するなど、アグレッシヴな外観が特徴です。全長4,665mm(2016年のマイナーチェンジ以降は4,680mm)、全幅1,810mm、全高1,430mmと、前のモデルより若干大きくなったものの、比較的取り回しに困らないサイズで、FRならではの走りが楽しめるレクサスセダンとして根強い人気があります。
2020年秋に2回目のマイナーチェンジが行われることがHP上で予告されており、好き嫌いの分かれたフロントグリルやリアコンビネーションランプなどはずいぶんスマートなデザインに修正されます。ボディサイズは全長4,710(+30)mm、全幅1,840(+30)mm、全高1,435(+5)mmとさらに拡大されました。インテリアもデジタル化が推進され、先進安全装備も大幅に刷新されています。
これまで通り2.0L4気筒ターボ、2.5Lハイブリッド、3.5L V6の3種類のパワーユニットが用意されますが、足回りと合わせて2019年4月に開設した新しいテストコースで相当試験を重ねた模様。今回はインテリアや先進安全装備などに古さが目立っていたマイナーチェンジ前のモデルで順位付けをしていますが、このビッグマイナーチェンジでどこまで息を吹き返すか要注目です。
「マツダ6」 多彩なエンジンラインナップと美しいデザインが魅力
マツダのフラッグシップセダンがマツダ6です。2012年のデビュー時はアテンザの名称でしたが2019年にグローバルの名称である「マツダ6」へと変更されています。全長4,865mm、全幅1,840mm、全高1,450mmとグローバルセダンらしい大きなボディに、伸びやかでスポーティーなマツダデザインがマッチしています。
エンジンの種類が多いのもマツダ6の特徴。2.0Lガソリン、2.5Lガソリン、2.2Lディーゼルに加えて、2.5Lガソリンターボも追加されています。駆動方式はFFですがマツダらしいキレの良いフットワークはFR車に負けていません。
しかし改良を重ねているものの、さすがにデビューから8年が経過しインテリアや運転支援などの最新デジタル装備には古さを感じます。ただし2.2Lディーゼルや2.5Lガソリンターボのトルクを活かした余裕のある走りはまだまだ現役。欲をいえばアウディのRSではなくS程度でいいので、スポーティーさを強調した切れ味豊かなスペシャルモデルが欲しいところです。
「ホンダアコード」 北米や中国ではベストセラー、しかし日本では……
トヨタカムリと並んで北米や中国で最も成功したセダンのひとつに数えられるのがホンダアコードです。10代目となる現行型はアメリカでは2017年にデビューしていましたが日本では2020年2月に発売が開始されたばかり。グローバルモデルなので全長 4,900 mm、全幅 1,860 mm、全高 1,450 mmと、日本ではやや持て余すサイズです。
そのあたりもあるのか、グレードはハイブリッドモデルの1種類だけ、タイからの輸入モデルとなり月間販売台数目標も300台と異例に控えめ、日本での販売には力を入れていない感が漂います。
今回の記事では高級セダンに含めるべきか迷いましたが、レジェンドとの兼ね合いもあり、ライバルのカムリのこともありスポーティーセダンにノミネートしています。ホンダの誇る2モーターの新しいハイブリッドユニットはモーターが主役で非常にスムーズな走りを披露するものの、スポーティーセダンかと問われると内外装の仕立てはラグジュアリー方向であり正直違うかなと思います。車の出来は良いのですが日本での売れ線から外れているのは確かでしょう。
「ホンダクラリティPHEV」 未来的なスタイルとPHEVは魅力だがセダンとしては中途半端
2016年にデビューした燃料電池車のクラリティ フューエル セルは、燃料である水素の供給ネットワークなどの問題もあり、販売エリアや販売先などが限定されたテスト販売的な色彩の強い車でした。そのクラリティをガソリンエンジンのプラグイン・ハイブリッドモデルとしたのがクラリティPHEVです。未来的なデザインのボディは全長4,915mm、全幅1,875mm、全高1,480mmと大柄です。
こちらも未来的なデザイン、2モーターハイブリッドの走りは素敵なのですが、車の仕立てとしては高級セダンともスポーティーセダンとも言い難く、日本では売れる理由が見当たらないのが正直なところ。
使いやすいサイズだが苦戦中、2020年上半期「実用セダン」のおすすめランキングBEST4
セダンならではの強みが発揮できる高級セダンやスポーティーセダンに比べると、ここから紹介する実用セダンは全長4.5m前後と日本では使いやすいサイズなのですが、他のボディタイプに押されて、やや販売的には苦しい状況が続いています。つい先日もホンダがグレースとシビックセダンの販売中止を発表したばかり。そんな実用セダンですがノミネート車種も多いのでおすすめを4台紹介しましょう。
ノミネートは「トヨタプレミオ」「トヨタアリオン」「トヨタカローラ」「トヨタカローラアクシオ」「日産シルフィ」「ホンダインサイト」「マツダ3」「スバルインプレッサG4」の独立したトランクを持つ正統派セダンに、独立したトランクは持たないものの大きさや使われ方が似通っていてメーカーもセダンとしている「トヨタプリウス」、同じように「日産リーフ」(メーカーは電気自動車と表記(笑))も加えた10車種です。
1位 「トヨタカローラ」 今度のカローラは力作です
トヨタクラウンと並んで日本を代表するセダンがカローラであることに疑問の余地はありません。カローラは1966年のデビュー以来、日本のみならず世界中でベストセラーに輝いてきました。日本車らしい信頼性や経済性の高さに加え輸出先のニーズに合わせてボディやデザインなどを違えてきたことも人気の理由です。
一方で日本ではセダン人気の衰えとともにその存在感が薄まっていました。特に日本に投入された先代のカローラアクシオは5ナンバーサイズを守るためやコストダウンのために「格下」のコンパクトカー・ヴィッツとシャシーを共有するなど、「いいクルマ」とは言い難い内容でした。
しかし2019年にデビューした現行型カローラはそのような状況を一新する力作です。グローバルモデルと共通のシャシーを持ちながら、日本向けに微妙にサイズダウンしたボディを採用、全長4,495mm、全幅1,745mm、全高1,435mmと3ナンバーサイズになったとはいえ、使いやすいサイズを実現しています。内外装のデザインやクオリティも劇的に向上したので営業車に間違えられることはもうないでしょう。
走りも改善が著しく、コーナリング性能や乗り心地なども欧州車のライバルたちに引けを取りません。トヨタの現社長である豊田章男さんが「もっといいクルマを作ろう」と言い続けた成果を最も感じる一台です。ハイブリッドモデルを選べば燃費も抜群、先進安全装備も最新。実用セダンというよりはスポーティーセダンに近い内容のカローラ、おすすめナンバーワンです。
2位 「マツダ3セダン」 個性的で美しいスタイルとディーゼルの走りが魅力
トヨタカローラに先立つ1964年にデビューしたファミリアセダンがマツダ3のご先祖さま。1980年に登場した5代目となる初のFFモデルは「赤いファミリア」と呼ばれ、クリーンなデザインと欧州車ライクな走りで大ヒットを記録しました。その後、名前こそアクセラ、そしてマツダ3と変遷してきましたが、走りの良いハッチバック&セダンとして今日まで続いています。
2019年にデビューしたマツダ3は個性的な外観と新開発エンジン「スカイアクティブX」で話題を呼びました。前衛的なスタイルを持つファストバック(ハッチバック)に比べるとセダンは比較的オーソドックスですが、それでも他車とは異なる個性的な見た目はマツダ3セダンの大きな魅力です。今回はサイズ的に実用セダンに分類しましたが、スポーティーセダンといってもいいでしょう。全長4,660 mm、全幅1,795 mm、全高1,445 mmとこのクラスのグローバルセダンとしては標準的なサイズ。日本向けカローラよりは少し大きいのですが持て余すほどではありません。
登場当初は2.0Lガソリンエンジンと1.8Lディーゼルエンジン、その後、新開発の2.0LスカイアクティブXエンジンと、お買い得版の1.5Lガソリンエンジンが追加され、多彩なエンジンラインナップを誇ります。特に国産車のこのクラスでは珍しいディーゼルエンジンは余裕ある走りと高い経済性を両立しています。新開発のスカイアクティブXはガソリンエンジンとしては非常に高い熱効率を誇り、パワフルかつスムーズなエンジンですが、価格の割にわかりやすいメリットが打ち出せていないのが残念なところ。
マツダの最新モデルだけに内外装の仕立て、安全装備などには文句はありません。ディーゼルエンジン車であればカローラのハイブリッドと迷う価値のあるクルマです。
3位 「トヨタプリウス」 依然魅力的だが、そろそろ曲がり角
ハイブリッドカーの代名詞であるトヨタプリウス。初代は奇抜なスタイルのセダンでしたが、2代目以降、独特なファストバックスタイルを持つハッチバックへと変更され、現行型となる4代目もその流れを汲むデザインを採用しています。
2015年にデビューした現行型は新設計の「TNGA」と呼ぶシャシーを初めて採用し、課題といわれてきた操縦安定性や乗り心地を大きく改善しました。全長4,540mm(2018年のMC以降は4,575mm)、全幅1,760mm、全高1,470mmと、3ナンバーサイズですがカローラに近い使いやすいサイズをキープしています。自慢のハイブリッドユニットもさらに改良が加えられ、相変わらずトップレベルの燃費性能を誇ります。
しかし、現行型は思い切ったデザインのヘッドライトなど、デザインというか意匠の部分でとにかく不評でした。販売台数ランキングでも首位から転落する事態を受け、2018年に外観デザインを大幅変更し、人気は回復傾向にあります。ひと目でプリウスとわかるデザイン、先進的なハイブリッドカーであることがわかるデザイン、それが特徴で人気の理由でもあったのですが、室内空間やトランクスペースはカローラなどと比べて広いとはいえません。ハイブリッドカーが一般的なスタイルの車にも展開されてきた昨今となっては、ハイブリッドらしいデザインが裏目に出ている部分もちらほら目立つようになってきます。
それでもプリウスのブランド力は依然高く、間違いのない選択をしたい、エコカーに乗りたい、という方にはおすすめの一台であることは確かです。MC後は乗り心地やドライブフィールなども改善され、運転していて退屈なプリウスというイメージは過去のものとなりました。
4位 「ホンダインサイト」 中身はいい、かなりいい。だけど何かが足りない
現行型で3代目となるホンダインサイトはハイブリッド専用車ということでは一貫しているものの、初代はコンセプトカーを思わせる2人乗りのクーペ、2代目はプリウスを強く意識したハッチバック、そして現行型は独立したトランクを持つセダン、とボディタイプもコンセプトも大きく変化してきた車です。ハイブリッドに対する世間の受け止め方を反映する鏡のような存在、といったらホンダに怒られるでしょうか。
2018年にデビューした現行型は最近販売中止となったシビックセダンと大きくなったアコードの中間を埋めるセダン、全長4,675mm、全幅1,820mm、全高1,410mmとマツダ3よりもさらに大きいボディを持っています。サイズ的にはスポーティーセダンに分類するべきか、この車も迷うところですが、内外装、走りともスポーティーとは言い難いのでこちらにノミネートしました。
1.5Lエンジンに2モーターを組み合わせたハイブリッドシステム(最近になって「e:HEV」と呼ぶようになった)は、電気自動車のようなモーターが主役の走りを見せ、経済的な上に運転していてもなかなか新鮮味があります。設計が新しいだけに乗り心地や操縦性能、そして安全装備などにも抜かりはありません。ハードとしての出来は良いのですが、飛び抜けた何かに欠けているのでしょう、全体的に少々地味で日本では誰が買うのかがあまりイメージできない車です。
まだまだあります、日本の実用セダン
比較的コンパクトなサイズの実用セダンは、日本でもまだ根強いニーズがあります。比較的高齢な方も多いことから今回は安全性能や燃費性能に優れる車種を上位に選んだので、ハイブリッドのないスバルインプレッサG4などにはやや不利だったかもしれません。
「スバルインプレッサG4」 走り良し、室内良し、安全性良し、燃費……
カローラやマツダ3などと同様にグローバルマーケットに向けて投入されたスバルインプレッサは、スポーツと呼ぶハッチバックモデルとG4と名付けられたセダンモデル、さらに別車種扱いですがSUVのXV、シャシーを共有するステーションワゴンモデルのレヴォーグまでさまざまなボディタイプがラインナップされています。
インプレッサとしては5代目となる現行型は2016年にデビュー、「スバルグローバルアーキテクチャー」と呼ぶ新設計のシャシーを採用し、走行性能を大幅にアップしたことが特徴です。スバルらしい男性的な内外装は前モデルからの路線を継承、全長4,625 mm、全幅1,775 mm、全高1,455 mmとマツダ3と似たようなサイズ感です。
新世代シャシーは非常にハンドリングが良く、また2019年のMC後のモデルは乗り心地も大きく改善されるなど、走りという点ではプリウスなどよりもおすすめできる一台です。インテリアの質感はよくいえば男らしい、悪くいうと少し雑、そんな相変わらずのスバルな感じですが、室内空間自体は広く使い勝手も良好。先進安全装備ももちろん定評あるアイサイト、運転支援の「ツーリングアシスト」も全車標準です。そんな素晴らしいインプレッサがベスト4からもれたのはハイブリッドやディーゼルのような燃費の良いパワーユニットの用意がない点につきます。1.6Lと2.0Lのガソリンエンジンのみ。伝統の水平対向エンジンはマニアには響きますが、合理的な実用セダンを望む方にはどうでしょう。
「日産リーフ」 買える値段の電気自動車であること(だけ)が魅力
2010年に登場した初代リーフは、世界に先駆けて量販に成功した電気自動車です。2017年に2代目となる現行型に切り替わりました。プラットフォームや前後のドアは実は初代モデルからのキャリーオーバーながら、不評だったスタイルは実用的なものに切り替わり、バッテリーの大型化や改良などで航続距離も322km(WLTCモード)と大幅に伸びるなど、商品力が大幅に向上しています。2019年にはさらにバッテリーを大型化し航続距離が458km(WLTCモード)まで伸びたモデルも追加されました。
現行型のリーフが旧型の部品を使ったりしてまで追い求めたのは買いやすい価格の実現でしょう。電気自動車をハイブリッドのように普及させるにはとにかく価格を引き下げたい、そんな日産の気迫を感じます。しかしながら、それがリーフの弱点にもなっています。シートや内装の仕立てが安っぽく、電気自動車なのにデジタルモノが少ないインテリアには、コストダウンの影は見えるもののワクワクする未来を見つけ出すことは困難です。乗り心地やハンドリング性能も特筆すべきレベルではありません。つまり電気自動車であること以外の車としての魅力が薄いのです。
とはいえ、現実的な価格で、実際的に使える航続距離を実現した電気自動車・リーフには特別な魅力があるのも事実です。運転支援の「プロパイロット」も含めて、モーターによるその走りは未来的な感覚で満ちあふれています。
「AUTECH」や「NISMO」などのスペシャルパッケージが用意されているのも日産の本気を感じます。いろいろ苦しい日産の台所事情を考えると応援したくなりますが、電気自動車であること以外の車としての魅力が薄いことは大事なことなので2回書きます。
「トヨタプレミオ/アリオン」 5ナンバーサイズセダンであること、目立たないこと
かつてトヨタのミドルサイズセダンの中核車種だったコロナをルーツに持つのがプレミオ、同じくミドルクラスのスポーティーセダンだったカリーナをルーツとするのがアリオンですが、見た目の多少の違い以外は同一の車種です。この手の兄弟車戦略は、多チャンネル販売店時代の名残ですが、トヨタもいよいよ2020年5月から全販売店で全車種取り扱いとなりました。同じような関係にあるトヨタのミニバン、ノア/ヴォクシー/エスクァイアはこっそりグレードの廃止などが行われましたが、販売台数の少ないプレミオ/アリオンもいずれ車種統一などの道を歩むことになりそうです。
現行型のプレミオ/アリオンのデビューは2007年。その後、2010年、2016年にマイナーチェンジを受けて内外装を刷新していますが、そもそもシャシーは2001年デビューの先代モデルを流用・改良していることもあり、さすがにいろいろと古さが目立ちます。エンジンは1.5L、1.8L、2.0Lとそろうあたりが昔のこのクラスのセダンを思い出して懐かしい気持ちになります。もちろんハイブリッドはありません。自動(被害軽減)ブレーキなど心ばかりの安全装備は付いているものの、最新モデルと比べると二世代以上、前のタイプです。
ここまで続いたのは全長4,600mm(2010年のMC以降は4,595mm)、全幅1,695mm、全高1,475mmという日本で重視されてきた5ナンバーサイズということなのでしょう。目立ちたくない、だけど後席に大事な人を乗せることが多い、例えば不動産屋さんや覆面パトカーで使われているのをよく見る気がします。そんな理由でもない限り、カローラでいいのではないでしょうか。
「日産シルフィ」 新型はまだでしょうか?
かつての日産の人気ミドルクラスセダン・ブルーバードにそのルーツを求められなくもないのが、シルフィです。当初はブルーバードシルフィと名乗っていましたが、2012年に発売が開始された3代目となる現行型からブルーバードの名前が外れています。
現行型は全長 4,615mm、全幅1,760mm、全高1,495mmと、グローバルモデルらしい3ナンバーサイズながら比較的使い勝手に困らない大きさに収まっています。エンジンは1.8Lのガソリンのみ、ハイブリッドなどの燃費の良いエンジンは用意がありません。
上級セダンだったティアナも、コンパクトセダンだったラティオもなくなった今、シルフィにはスポーティーな仕様やラグジュアリータイプも用意され、苦しい台所事情の中で精一杯の抵抗を試みている感もあります。しかし、自動(被害軽減)ブレーキに代表される先進安全装備が用意されていないことなど、おすすめするには少々厳しい内容の車であることは否定できません。2019年7月には中国で4代目が発表・発売されているのですが、それからはや1年。生まれ変わりつつある(らしい)、いろいろやっちゃう(であろう)日産に期待です。
「トヨタカローラアクシオ」 ガレージが狭くてMT車が欲しい方なら
前述のように2019年に素晴らしい新型カローラが登場したにもかかわらず、前モデルのカローラアクシオはグレードを整理しつつも販売が継続されています。カローラアクシオのボディサイズは全長 4,400 mm、全幅 1,695 mm、全高 1,460mm。グローバルモデルを日本向けに小さくしたとはいえ、新型の全長4,495mm、全幅1,745mm、全高1,435mmでは困るという人や会社が無視できないほどあるということでしょう。このあたりはお客様を大事にするトヨタらしい気配り、リーディングカンパニーらしい立派な心がけだと思います。
現在は1.5Lガソリンと1.8Lハイブリッドの2本立て、1.5LガソリンにはMT車もラインナップされています。シルフィのように先進安全装備がない、というような致命的な古さはありませんが、ガレージの都合でもない限り個人ユーザーが積極的に選ぶ理由はありません。
(まとめ)まだまだ魅力的なセダンは多い
セダンならではの強みを活かした高級セダンやスポーティーセダンには魅力的な車種がまだまだあることは間違いありません。根強い需要がある実用セダンもカローラやマツダ3の登場で盛り上がりを取り戻してきたようにも見えます。なかでもきびしいグローバルでの競争の中、日本のニーズにあったセダンを作り続けているトヨタはやはりさすがと言わざるをえません。グローバル化に翻弄されている感の強い日産やホンダも、日産がスカイラインで見せたやる気を望みたいところです。
※記事の内容は2020年9月時点の情報で制作しています。