日産の軽商用ワンボックスバンの「NV100クリッパー」2代目と現行モデルとなる3代目は、スズキ エブリイバンのOEM、初代は三菱 ミニキャブのOEMでした。クラストップレベルの低燃費と、広い室内が売りのモデルです。そんなNV100クリッパーのおすすめモデルと、中古車選びの4つの注意点をまとめてお伝えします。
※本記事は、軽貨物車の「NV100クリッパー」についてのみ記述しています。軽乗用ワゴンの「NV100クリッパー リオ」については触れていません。
この記事のPOINT
- 一番推したい中古車の日産「NV100クリッパー」は3代目・2019年6月改良モデル・先進予防安全装備搭載車
- 選ぶときのチェックポイントは4つ。ターボ車と過走行車は特に注意
中古車NV100クリッパー、おすすめモデルはズバリこれ。3代目・2019年6月改良モデル・先進予防安全装備搭載車
初代の2003〜2013年式、短命な2代目の2013〜2015年式、現行モデル3代目の2015年式以降のと3世代にわたるNV100クリッパー。このうち筆者がおすすめするのは、現行モデル3代目の2019年6月改良モデル。
2015年2月にフルモデルチェンジされた現行モデルは、「エマージェンシーブレーキ(自動ブレーキ)」や「踏み間違い衝突防止アシスト」が装備されましたが、2019年6月の改良で、新たに「LDW(車線逸脱警報)」「インテリジェント DA(ふらつき警報)」「先行車発進お知らせ」「ハイビームアシスト(ハイビームとロービームを自動切り替え)」「オートライトシステム」を、「DX セーフティパッケージ」と「GL セーフティパッケージ」「GX」「GXターボ」の各グレードに装備しました。これにより、サポカーS対象車になりました(対象グレードのみ)。商用車は、先進予防安全技術の採用が遅れていましたが、これでようやく追いついた格好です。
3代目は衝撃吸収ボディを採用していますが、ボディの小さい軽自動車は、普通車に比べると万が一の衝突のときの車体の変形、損傷は大きくなりがちです。物理的に、乗員の周りの空間が小さい分、車体が変形したりや損傷を受けたりしたら、乗員が被害を受ける危険性が高くなってしまいます。また、乗員だけでなく、対向車や歩行者も守ることになりますので、先進予防安全技術を搭載したモデルに乗りたいものです。
エンジンは、自然吸気(ノンターボ)とターボがありますが、重たい荷物を載せることがあまりない方、加速の良さにこだわりがない方であれば自然吸気で十分です。走りを重視するならターボがおすすめですが、注意が必要です(詳しくは後述の「NV100クリッパーならではのチェックポイント」の項をご覧ください)。なお、駆動方式は2WD(後輪駆動)と4WDを設定しています。
この2019年6月改良モデルの、2021年5月30日時点での中古車価格帯は、65〜145万円となっています(このうち、実質的に新車同様の未使用車も含まれています)。
★ほかにも!お買い得な中古車NV100クリッパー
前述した、2019年7月一部改良モデルでは価格が高いという方には、価格重視のモデルを紹介します。NV100クリッパー誕生からの稀有な歴史にも注目してください。
NV100クリッパーの歴史
NV100クリッパーの誕生から現在までの歴史を、前車名クリッパーからさかのぼり年表形式でまとめてお伝えします。自動車日産の“大人の事情”に翻弄され、短命に終わったモデルに注目してください。
初代(2003〜2013年)
2003年8月 車名決定
日産の新型軽商用車の名称を「クリッパー」に決定したことを発表。「クリッパー」は、1958年9月から1981年12月まで、日産の前身の一部となる富士精密工業(後のプリンス自動車工業で、1966年に日産自動車と合併する)で生産された小型トラックの車名として使用され、広く親しまれていた。日産は、軽商用車部門で今後、積極的にプレゼンスを高めていきたいとの思いから命名したとのこと。語源は「駿馬、俊足を誇る馬」を表す英語「Clipper」から。
2003年9月 初代デビュー
日産初軽商用車「クリッパー」を9月に発表。ワンボックスバンの「クリッパー バン」と軽トラック「クリッパー トラック」の2モデルを、三菱 ミニキャブからのOEM供給を受け10月から発売開始。
クリッパー バンはクラストップレベルの荷室幅1370mm、荷室高1230mm、荷室長1840mmの仕様を実現した。助手席シートバックは可倒式で、前に倒せば、6畳相当のカーペットの積載も可能。
2005年12月 マイナーチェンジ
フロントグリルのデザインを変更。
2012年1月 マイナーチェンジ/車名が「NV100クリッパー」へ
フロントのデザインを一新、インテリアでは装備の充実化が図られた。車名は、バンを「NV100クリッパー」、トラックは「NT100クリッパー」へと変更。パワートレイン(エンジン、トランスミッションなど)は変更なし。
2代目(2013〜2015年)
2013年12月 フルモデルチェンジ
車名変更を伴うマイナーチェンジから1年も経たずにフルモデルチェンジ。2代目は、三菱ではなくスズキからのOEM供給を受けた。この背景に、同時期に三菱がミニキャブの生産を終了し、以降はスズキからOEMを受けるということがあった。OEM供給元のモデルは、エブリイ バン。
NV100クリッパーは、前輪が前席前方へ移動され室内空間が広くなり、シフトレバーをインパネ部へ移動することで前席ウォークスルーを実現、使い勝手を大きく向上させた。また、クラストップレベルの低燃費と環境性能、最小回転半径4.1mの小回り性能を誇った。
2015年3月 販売終了
OEM供給元のエブリイ バンの生産終了、後継車へのフルモデルチェンジのため、2代目となるNV100クリッパーは、1年と3ヵ月という短い販売期間で終了した。
3代目(2015年〜現在)
2015年2月 フルモデルチェンジ
2月にフルモデルチェンジを発表し、3月から発売を開始。新型エンジンを搭載、軽量化も図った衝撃吸収ボディを採用。また、AT限定免許で運転できる2ペダル式のセミ5速AT「AGS」を新たに採用。クラストップレベルの低燃費を誇る。室内空間は広くなり、荷物の積み下ろし性能も向上させた。さらに、「エマージェンシーブレーキ(自動ブレーキ)」や「踏み間違い衝突防止アシスト」などの先進装備を採用し安全性能を向上。
2019年6月 一部改良、サポカーS対象車へ
新たに「LDW(車線逸脱警報)」「インテリジェント DA(ふらつき警報)」「先行車発進お知らせ」「ハイビームアシスト」「オートライトシステム」などを一部グレードに標準装備し、サポカーS対象車となった。
こちらもおすすめ! <タイプ別>中古車NV100クリッパー
● 価格と性能のバランスをとるなら 3代目 2015〜2019年式・4速ATモデル 中古市場の相場16〜120万円台
冒頭でおすすめした、2019年6月一部改良モデルでは価格が高い、という方には、その一部改良モデルより前の3代目、2015〜2019年式をおすすめ。3代目は、軽量化された衝撃吸収ボディと新型エンジンを採用し、クラストップレベルの低燃費と環境性能を達成しています。また、「エマージェンシーブレーキ(自動ブレーキ)」「踏み間違い衝突防止アシスト」などの先進装備を新たに採用しており、安全性能も向上しています。価格と性能の両方のバランスをとりたいなら、こちらのモデルから探しましょう。
なお、3代目からはAT限定免許で運転できる2ペダル式のセミ5速AT「AGS」を新たに採用しています。しかし、普通のATに比べて多少クセがあり、発進時のギクシャク感など違和感を覚えるユーザーがちらほら。画期的なトランスミッションで低燃費、走りも良いのですが、積極的にギアチェンジをみずから行って運転を楽しむことをしないのであれば、4速ATを選ぶほうが無難です。
この3代目、2015〜2019年式(一部改良前)の2021年5月30日時点の中古車価格帯は、16〜120万円台となっています。ただし、後述の「NV100クリッパーならではのチェックポイント」の項でお伝えしますが、過走行車には注意してください。
● 価格重視なら 2003〜2015年式・モデル 中古市場の相場9〜110万円
価格重視なら、初代の三菱 ミニキャブのOEM版か、短命に終わったスズキ エブリイバンのOEM版の2003〜2015年式となります。ただ、過走行車の場合がありますので注意してください。詳しくは後述の「NV100クリッパーならではのチェックポイント」の項をご覧ください。
この年式では、同じ年式、同じ走行距離でもグレードの高い車よりグレードの低い車のほうが車両価格が安いということがあるなど、グレード別の相場価格がつかみにくい状況となっていますので、価格と走行距離を軸に候補を絞り込み、その後、装備を見て選んでいくほうが見つけやすいでしょう。
NV100クリッパーならではのチェックポイント
NV100クリッパーは、商用貨物バンのため、過酷な使用をしいられた営業車から、ほとんど駐車場で眠っていた自家用車まで幅広い用途の中古車があります。また、中古車は前のオーナーがどんな使い方をしていたかを知ることが難しいものです。こうした点から、NV100クリッパーならではのチェックポイントを4点にまとめてお伝えします。なお、このポイントはNV100クリッパーに限ったことではありませんので、中古車選びの基礎知識としてご覧ください。
① ターボモデルは要注意
営業車などで重たい荷物を積んで毎日過酷に使われ、メンテナンスもきちんとされていないとターボが効かず、十分なパワーが出ない可能性があります。ターボ車を選ぶなら、後述する過走行車は避け、メンテナンスノートにしっかりと点検履歴が残され、オイル交換が十分にされた車を探しましょう。
② 過走行車は避けたほうが無難
平均年間走行距離が10,000kmを超えると過走行車という基準を、日本中古車査定協会が設けています。ただ、過走行車かどうかは中古車情報に記載を義務付けていませんので、現在の年から年式を引いた経過年数(これはあくまで目安です。下取りに出されてから中古車販売店で売られるまでの期間、売り手がつかずに長期間在庫となっている場合などがあります)から、平均年間走行距離を求めてみてください。過走行車は、故障のリスクが高くなりますので、避けたほうが無難です。
③ 年式に見合わず走行距離が短い車も注意
ほとんど運転されずに駐車場で眠ったままの車は、エンジンやトランスミッション、サスペンションなどの可動部分がスムーズに動かないなどの不調や、故障のリスクがあります。例えて言うなら、健康な人間を強制的に長時間寝たきりにさせてしまうのと同じです。また、運転する頻度が高くてもごく短い距離しか乗らないのなら、車にとっては負担となります。
目安として平均年間走行距離が3,000km以下は、年式に見合わず走行距離が短い車となります。現在の自家用乗用車の平均年間走行距離は、6,000kmとされています。例えば、毎日近場へ車で買い物に行くだけでも、年間走行距離は4,000kmを超えます。
中古車を探すなら、平均年間走行距離が4,000〜8,000kmの範囲の車をおすすめします。
④ 保証なしは覚悟を決めて購入のこと
中古車でも、メーカー保証の対象車となる場合があります。定められた経過年数、走行距離の範囲であれば、メーカー保証の対象となりますが、対象外となる例として、所定のメンテナンスを受けていない場合や、きちんと記載されたメンテナンスノートが備えられていない場合などがありますので注意してください。
メーカー保証の対象外でも、中古車販売店の保証の対象となっているものは多数あります。
保証がない中古車は、例えば納車の翌日に故障してしまったら、自分で修理費用を負担しなければなりません。保証なしの中古車を買うときは、覚悟を決めて購入すべきです。
比べて検討!NV100クリッパーのライバル車種
ダイハツ「ハイゼット カーゴ」/トヨタ「ピクシス バン」/スバル「サンバー バン」
NV100クリッパーのOEM供給元のスズキ エブリイバンは、マツダ スクラムバンにもOEM供給している全部で4兄弟(四つ子が正しいか?)となっており、現行モデルをベースにするとライバル車が限定されます。そのひとつ、ハイゼット カーゴも軽商用ワンボックスバン。OEM供給先にピクシス バン、サンバー バンがあり3兄弟(三つ子が正しい?)となります。
2021年5月30日時点のハイゼット カーゴの中古車価格帯は0.1〜318万円、平均価格は約74万円(カスタムカー、キャンピングカーが含まれているため中古車価格帯と平均価格が高くなっています)、流通台数は3,500台ほど、ピクシス バンの中古車価格帯は15〜143万円、平均価格は約68万円、流通台数は170台ほど、サンバー バンの中古車価格帯は1.5〜210万円、平均価格は約52万円、流通台数は550台ほどとなっています。
中古車NV100クリッパーはここで探せ!
では、中古車NV100クリッパーをどこでどのように探したらよいでしょうか。カーライフを賢くスムーズに始めるのに、おすすめのサービスや販売店をご紹介します。
グーネット
2大中古車検索サイトの1つ、グーネット。1977年に「中古車情報通信」の名称で創刊された中古車検索雑誌から歴史が始まった老舗です。
グーネットは「グー鑑定」と呼ばれる、中古車を探している人に代わって、プロの鑑定士が中古車の車両状態を鑑定するサービスを提供。この鑑定士は第三者機関の「日本自動車鑑定協会(JAAA)」に所属。公正な鑑定が行われています。これで鑑定された中古車は、内外装、エンジンやトランスミッションといった機関、修復歴などの評価をまとめた「グー鑑定証」が与えられ、中古車情報ページの「グー鑑定」のアイコンから、その鑑定証を確認することができます。
また「ID車両」と呼ばれる中古車の品質を公正に証明するサービスも提供しています。「グー鑑定」と似ていますが、こちらはディーラー独自の基準で厳しいチェックを行った中古車の鑑定結果を「車両状態評価書」にまとめたものとなります。これは中古車情報ページの「ID車両」のアイコンから、その評価書を確認することができます。
「グー鑑定」や「ID車両」対象車は、全体の2割程度となっています。なお、非対象車は品質が良くないという意味ではありません。
さらに「グー保証」と呼ばれる、グーネット独自の中古車保証制度も提供しています。保証期間は国産車が最長3年で部品交換や修理から、移動中のキー閉じ込めなどのトラブル対応やレッカー移動などのロードサービスも全国24時間365日対応で付属(ロードサービスは自動車保険にも付いていることが多いですが)。なお、グー保証対象車は全体の1割程度となっていますが、これが付いていなくても、トヨタ保証やディーラー保証、中古車販売店保証が付いている中古車は多くあります。
2021年5月30日時点、グーネットでは、NV100クリッパーの掲載件数は1,481件、価格帯は9.5~330万円、平均価格は約77万円となっています。(カスタム車が掲載されているため、価格帯、平均価格ともに高くなっています。)
カーセンサー
2大中古車検索サイトのもう1つ、カーセンサー。1984年に中古車情報雑誌「カーセンサー」が創刊、今はグーネットと肩を並べる老舗中古車検索サイトとなっています。中古車掲載台数は、時期によって変動しますが約50万台。この台数はグーネットとほぼ同じで、掲載される中古車物件もほぼ同じとなります。これはほとんどの中古車販売店が、カーセンサーとグーネットの両方に掲載登録している背景があるためです。
カーセンサーは「カーセンサー認定」と呼ばれる中古車の品質鑑定情報を提供しています。鑑定は、第三者機関の「AIS」が行い、内外装の状態から目立たない小さなキズまで厳しくチェックし10段階評価しています。鑑定結果は、中古車情報ページから「車両品質評価書」で確認することができます。カーセンサー認定中古車は、全体の1割程度となりますが、この認定中古車でなくても、一般財団法人日本自動車査定協会の「V-CON」や、トヨタ、ディーラーの品質評価制度に基づく検査結果が掲載された中古車が無数にあります。
また「カーセンサーアフター保証」と呼ばれるカーセンサー独自の有償保証制度を提供。これは、エンジン、トランスミッションといった機関から細かい電装装備品まで全350項目を保証、走行距離無制限で最長3年まで加入できる手厚いものとなっています。カーセンサーもグーネット同様に、カーセンサー保証対象車でなくても、トヨタ保証、ディーラー保証、中古車販売店保証が付いている中古車は無数にあります。
カーセンサーのスマホアプリでは、写真からNV100クリッパーが検索できる機能を備えています。街で見かけて気になった車を撮影して、アプリからアップロードするとNV100クリッパーを特定、そのまま中古車情報を調べることができる便利な機能。中古車探しのライフハックツールとしてもおすすめです。
2021年5月30日時点、カーセンサーでは、NV100クリッパーの掲載件数は1,368件、価格帯は15~330万円、平均価格は約84万円となっています。(カスタム車が掲載されているため、価格帯、平均価格ともに高くなっています。)
おすすめは3代目の2019年6月改良モデル、価格重視で選ぶなら注意が必要
筆者がおすすめするのは、先進予防安全装備を追加装備しサポカーSに対応したグレードをラインナップした、2019年6月改良モデル。価格重視で選ぶなら、特にターボ車と過走行車に注意してください。軽商用バンという特性上、前オーナーは過酷な使い方をしている可能性があります。詳しくは前述の「NV100クリッパーならではのチェックポイント」の項をご覧ください。
よくある質問
Q1:中古車のNV100クリッパー、どれを買うべき?
A:3代目の2019年6月改良モデルをおすすめしますが、過走行車、年式に見合わず走行距離の短い車、保証のない車は避けたほうが無難です。詳しくは「NV100クリッパーならではのチェックポイント」の項をお読みください。
Q2:中古車NV100クリッパーを買うときに気を付けたいポイントは?
A:NV100クリッパーは軽商用バンで、前オーナーが負荷の高い状態で車を酷使している可能性があります。前項「NV100クリッパーならではのチェックポイント」でお伝えした、保証がついた平均年間走行距離が4,000〜8000kmの中古車を探すようおすすめします。
Q3:中古車NV100クリッパーはどこで手に入れればいい?
A:購入するなら全国の販売店の窓口となっているカーセンサー、グーネットなどの中古車情報検索サイトを活用するとよいでしょう。頭金や初期費用の一括払いが必要ない方法を探しているなら、定額カルモくんがおすすめです。支払いは毎月定額の利用料金だけなので、すぐにお好みの中古車NV100クリッパーに乗ることができます。
※当記事記載の中古車価格等の情報は、2021年5月30日時点のものです。