軽自動車よりも短い全長2,985mmのボディで4人乗りが可能なパッケージングを採用したトヨタ「iQ」。狭い道でもスイスイ走れるシティコミューターとして注目されました。また、iQは開発段階からスポーツモデルを念頭に置いていて、“ホットハッチ”と呼ばれる熱い走りを楽しめるグレードも設定されました。現在でも300台以上の中古車が流通していて、自分に合った1台を選ぶのはなかなか大変です。この記事では中古車のiQなら、どのモデル、グレード、年式のものを買えば一番お得なのか、間違いがないのかという正しい買い方に加えて、気になる最新の中古車相場の状況などを専門家の目線で徹底解説します。ぜひ参考にしてください。
この記事のPOINT
- 一番推したい中古車のトヨタ「iQ」は2012年式130G
- シーケンシャルシフトマチックで走りと利便性の両方を味わう
中古車のiQ、おすすめモデルはズバリこれ。自分なら「2012年式130G」を50万円で買う!
2008年11月に登場したiQは非常に特殊なモデルです。軽自動車より短い全長2,985mm、5ナンバーサイズのマックスに近い全幅1,680mmという異質なサイズ感のボディに後部座席もつけた4人乗りの2ドアハッチバック。全長があまりにも短いので軽自動車と感じるかもしれませんが、全幅は軽自動車規格を超えるサイズですし、搭載されるエンジンも1Lと1.3Lになります。
そして限定モデルで何度かGAZOO Racingがチューンしたスペシャルモデルも登場しています。
その中から筆者が選ぶのは、ベーシックモデルで1.3Lエンジンを積んだ130G。年式は2012年5月以降のモデルになります。
iQの中古車で圧倒的に流通量が多いのは1Lエンジン搭載車。1L車なら毎年の自動車税が安くなりますし、シティコミューターとして使うならパワー的にも十分。
ただ、常識破りなiQの魅力を存分に味わうならパワフルな1.3Lエンジンを積んだ130Gがおすすめ。1.3Lエンジンは最高出力69kW(94ps)、最大トルク118Nm(12.0kg-m)。車両重量が950kgの車にパワフルなエンジンが乗っているので、その走りがどれほどのものか想像できるはず。
iQにはキビキビした走りを楽しみたい人のために6速MTも設定されました。ただ、普段使いを考えるとCVTのほうが楽。走る楽しさと快適性を両立したい人のために、iQは2012年5月の一部改良で1.3L車のCVTを7速シーケンシャルシフトマチックに変更。快適性を求めつつ走る楽しさも味わいたい人におすすめです。
この年式だと中古車の価格帯は40万〜70万円。流通台数は少なめなものの、じっくり探す価値のあるモデルですよ!
ほかにもこんなに!お買い得で魅力的な中古車のiQ
一押しモデルとして紹介した2012年5月以降の130G以外にも、iQはさまざまな視点から魅力的な中古車を探すことができます。セカンドカーとして維持費も考慮した選び方をするなら1Lエンジン搭載車を。スポーティーな走りを楽しむなら6速MTがおすすめ。究極の走りを楽しみたいならコンプリートモデルを探してみましょう。また、iQはプレミアムな雰囲気を味わえるレザーパッケージも用意されていました。コンパクトなシティコミューターに何を求めるか。じっくり考えて中古車を探してみてください。
iQのモデルチェンジ、マイナーチェンジ一覧
燃費が良くて狭い道でもスイスイ走れる小型のシティコミューターは、都市部での移動に欠かすことができない存在です。日本では軽自動車やリッターカーと呼ばれるコンパクトカーがその役割を担っていました。
1990年代後半になるとダイムラーベンツとスイスの時計メーカーのスウォッチが立ち上げたMMCからスマートシティクーペという全長2500mmの2人乗りシティコミューターが登場。このモデルが世界中で話題になり、日本でもヒットします。その後、軽自動車メーカーのスズキが全長2735mmの2人乗り軽自動車であるツインを発売。iQはこれらに対抗するモデルとして2008年11月に発売されました。
iQの特徴は全長2985mm、全幅1680mmというボディサイズながら、タイヤをボディの四隅に寄せるとともにエンジンルームをとことん小さくして4人乗りを実現したこと。そのためにトランスミッションの構造変更、燃料タンクのフラット化、ステアリングギアボックスの配置位置変更など、さまざまな工夫が施されています。
すごいのは、単に後部座席を設けて形だけ4人乗りにしたのではなく、大人が3人に子供が1人きちんと座れるようにしていること。そのために前席背もたれのホールド性を確保しながら薄くしたり、助手席前を広くした上で助手席のスライド量を多くしたりするなどの工夫がされています。
さらに後部座席を格納すれば大型スーツケースを積み込めるだけのラゲッジスペースも確保されました。
最小回転半径は世界最小レベルとなる3.9m。日本の狭い裏路地もスイスイ走ることができます。
iQは全幅が5ナンバーサイズほぼいっぱいまで広げられたことで、トレッド(左右タイヤの中心間の距離)を広く設定できました。そのためコーナーでも踏ん張りが効くようになっています。
デビュー時のエンジンは1L直3DOHC。最高出力は50kW(68ps)と街中を走るには十分なパワーが与えられ、燃費も当時の1L車でトップレベルの23.0km/L(JC08モード)を達成しました。
2009年6月、トヨタはiQをイギリスの超高級車ブランドであるアストンマーティンにOEM供給することを発表。後にシグネットとしてアストンマーティンブランドから発売されました。このことからもiQの完成度の高さがわかるでしょう。
2009年8月には69kW(94ps)を発揮する1.3Lエンジン搭載車をラインナップに追加します。
そしてこのタイミングで1.3L車をベースにしたiQのチューニングカーである「iQ GAZOO Racing tuned by MN」が100台限定で発売されました。これは形だけスポーティーにしたいわゆる“なんちゃってモデル”ではなく、トヨタが2007年にGAZOO Racingプロジェクトを発足させてから、トヨタマスターテストドライバーの成瀬弘らとともに追い求めている「クルマの味づくり」を具現化したスペシャルモデルです。
トランスミッションは6速MTで、約30mmローダウンされた専用チューニングサスペンション、16インチアルミホイール、強化ブレースなどが取り付けられました。
2010年5月には運転席の上下アジャスターを全グレード標準装備に。そして2010年8月には、専用エアロバンパー(フロント)並びにリヤデフューザーを採用しインテリアにグレー&ブラックの内装色を設定したスポーツパッケージの“→(ゴー)”を新設定。1.3Lの→(ゴー)には6速MTも用意されました。MTモデルにはアイドリングストップシステムも搭載されています。
2012年5月の一部改良では、1.3Lエンジンを搭載するCVTモデルにマニュアルモードでスポーツ気分を味わえる7速シーケンシャルシフトマチックを採用。
2012年9月には130GのMT車をベースに開発された過激なスポーツコンバージョン、iQ GRMN スーパーチャージャーが100台限定で販売されました。
このモデルはスーパーチャージャーにより最高出力と最大トルクがベースモデルより30%高められています。クロスレシオさせた6MTや専用のチューンドサスペンションで走りの性能が大幅に高められました。インテリアはスポーティーな気分を盛り上げてくれる専用のスポーツシートや専用メーターが採用されています。
こちらもおすすめ!タイプ別にiQの中古車を選ぶなら
●iQだからこそ味わえる利便性と経済性が両立「100G」 中古車の相場20万〜90万円
iQの中古車の中で最も流通量が多いグレードが1Lの上級グレードである100G。当時のクラストップレベルを達成した燃費性能、リッターカーならではの自動車税、そして車両重量が1Lを切るので、車検時の自動車重量税も安くなります。
車重が軽いから1L車のパワーでも十分キビキビ走ることができるのも魅力。むしろオーバーパワーではないから1.3L車よりストレスなく走れるという人もいるはずです。
デビューから時間が経っていることもあり、年式による中古車の価格差はほぼなくなっています。流通量は2010年式までが多くなりますが、2008年式は税金が重課対象になるので、そこだけ頭に入れた上で購入を検討してください。
●小さくても独特のプレミアム性を味わえる「100Gレザーパッケージ」 中古車の相場20万〜90万円
iQデビュー時から設定された100Gレザーパッケージは、プラムレザーとグレージュファブリックを組み合わせたシートがおごられたモデル。オプションでプラムレザー×ブラックファブリックの組み合わせを選ぶこともできました。1.3Lエンジンが追加された2009年8月には、プラムレザー×レッドファブリックのオプションも設定されています。
小さな車をレザーシートで上品に楽しむ。こんなことができるのもiQならでは。100Gレザーセレクションも年式による価格差は少なくなっていて、価格帯は100Gとほとんど変わりません。
●キビキビした走りをとことん楽しめる「iQのMTモデル」 中古車の相場70万〜200万円
130G MT、130G MT レザーパッケージ、130 MT→(ゴー)、130 MT→(ゴー)レザーパッケージなど6速MTを搭載したグレードは、iQの中でもカルトな存在。それだけに相場は高めで推移しています。しかし、他のモデルでは絶対に味わえないゴーカートのような走りは、MT好きなら一度は体感しておきたいもの。
さらに上を望むなら、GAZOO Racingのチューニングモデルを。2012年7月に登場したiQ GRMNスーパーチャージャーは690万円という超プレミア価格ですが、iQ GAZOO Racing tuned by MNなら価格帯は150万〜200万円。手が届かないものではありませんね。
中古車のiQならではのチェックポイントはココ
内装の汚れ具合をチェック
レザーパッケージのプラムレザー×グレージュファブリックは明るめの色合いで限られた室内空間を広く見せてくれる効果があります。ただ、明るい色の部分は汚れやすくもあるので、店頭では状態をしっかりチェック。汚れが気になったら納車までにクリーニング可能か、費用はどのくらいかかるかを確認してください。
プラスチック&ゴムパーツのヤレ具合をチェック
iQはデビュー時のものは初度登録から13年経過する低年式車になっています。例えばフロントライトのカバーやドア周りのゴム類などが経年劣化している可能性も。ライトは性能に支障はないものの黄色く変色していると古臭く見えるもの。気になるようなら交換が可能か確認してみましょう。
そもそもiQを選んでいいか、購入前にじっくり検討を
これは中古車を買う前の確認事項になりますが、このスタイルからもわかるようにiQは非常に特殊な車です。大人3人で乗ることができるとはいえ、毎日長距離を走るのは大変。そもそも荷物を積むために後ろの席を格納したら2名しか乗車できません。
買い物用や通勤用のセカンドカーなので一人で乗るという人は問題ありませんが、もし複数人で乗る機会もありそうなら、iQを選んで購入後に支障が出ないかどうかをよく考えてから選びましょう。
iQの中古車と比べたいライバル車種はコレだ!
iQより全長が短い2人乗りシティコミューター「2代目スマートフォーツークーペ」
初代スマートが世に送り出されなければiQも登場しなかったのではないかと感じるほど、世の中に大きな影響を与えたスマートフォーツー。
2代目フォーツーは2007年10月に日本へと導入、2015年9月まで販売されました。2012年5月には最高出力62kW(84ps)/最大トルク120Nmを発生する1L直列3気筒DOHCターボエンジン搭載モデル、電気自動車のエレクトリックドライブなどが導入されました。
また、スマートフォーツーはクーペ以外にカブリオも用意されます。2代目フォーツークーペの価格帯は30万〜190万円。高価格帯は人気のブラバスエクスクルーシブになります。
全長2735mmの2人乗りマイクロ軽自動車「スズキツイン」
軽自動車の全長を切り詰めてホイールベースはわずか1800mm。3.6mという最小回転半径を実現した2人乗りのツイン。とことん“丸”にこだわったデザインもキュート!
ラインナップはガソリンモデルのほか、軽自動車初のハイブリッドも用意されました。
生産期間は2003年1月から2005年12月と短かったものの、現在でも100台ほどの中古車が流通しています。価格帯は20万〜110万円となっています。
全長を短く設計した軽のスペシャリティモデル「スバルR1」
軽2ドアクーペというイメージでデザインされたR1の全長は3285mm。iQと今回紹介したライバルモデルの中では最も全長が長いモデルになります。このスタイルは1958年に発売されたスバル360(愛称:てんとう虫)をイメージしたもの。
シートは前席の後ろに補助席的な後部座席を設置。インテリアはプレミアムな雰囲気を感じるデザインで、本革とアルカンターラを組み合わせた“レザー&アルカンターラセレクション”も設定されました。
中古車は100台ほど流通していて、価格帯は10万〜120万円となっています。
中古車のiQはここで探せ!
では、中古車iQをどこでどのように探したらよいでしょうか。カーライフを賢くスムーズに始めるのに、おすすめのサービスや販売店をご紹介します。
カーセンサーnet
カーセンサーnetは中古車情報誌時代から数えて40年近い歴史と実績を誇る検索サイトで、サイト上には約50万台の情報が掲載されています(※)。車の状態を示す評価について独自の認定システムを導入しているので、こうした評価を目安にすれば、車に詳しくない方でも安心して車選びができるでしょう。
また、「カーセンサーアフター保証」に加入すれば、業界最多水準の350項目の部品について修理が保証されます。保証料金は車に合わせて細かく設定できるので、無駄なく予算に合わせた保証を付けることができます。
カーセンサーnetのiQの掲載件数は315件、価格帯は10万~690万円(最高値は限定モデルのGRMNスーパーチャージャー)となっています(※)。
※いずれも2021年7月27日時点の情報です。
グーネット中古車
先述のカーセンサーnetと同じような中古車情報サイトで、こちらも約50万台が登録されています(※)。グーネット中古車にも、検査協会などが車の状態を評価する「ID車両」という制度や、最長3年まで走行距離無制限でさまざまな保証が付く「Goo保証」などの制度があります。
グーネット中古車のiQ掲載台数は342件、価格帯は10万~690万円(最高値は限定モデルのGRMNスーパーチャージャー)となっています(※)。※いずれも2021年7月27日時点の情報です。
サイズという障壁さえ乗り越えれば、異次元の世界が待っている!
マイクロコンパクトなシティコミューターであるiQは特殊なモデル。セカンドカーとして導入するなら問題ありませんが、これ1台ですべてを済ますつもりなら、まずはこの車で買った後のカーライフをきちんと送れるかどうかを考える必要があります。
そこを乗り越えれば、ある意味これほど面白い車はないかもしれません。街乗りで便利に使いたい人はもちろん、走りを楽しみたい人にもおすすめのモデルです!
よくある質問
Q1:中古車のiQ、どれを買うべき?
A:シーケンシャルシフトマチックが採用された後の130G
Q2:中古車のiQを買うときに気を付けたいポイントは?
A:デビューから時間が経っているので、内外装の経年劣化の具合を確認しましょう。
Q3:中古車のiQはどこで手に入れればいい?
A:購入するなら全国の販売店の窓口となっているカーセンサーnet、グーネット中古車などの中古車情報検索サイトを活用するとよいでしょう。頭金や初期費用の一括払いが必要ない方法を探しているなら、定額カルモくんがおすすめです。支払いは毎月定額の利用料金だけなので、すぐにお好みの中古車のiQに乗ることができます。
※記事の内容は2021年7月時点の情報で制作しています。