セダン譲りの走行性能の良さと広いラゲッジルームで、一時は高い人気を誇ったステーションワゴン。しかしSUVやミニバンに押されて、最近はめっきり存在感が薄まっています。そんな状況の中ですが、今回は取り回しの良い5ナンバーサイズの貴重な国産ステーションワゴン、ホンダシャトルを徹底レビューしましょう。
輸入車のステーションワゴン人気は安定しているのに
現在はSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)と呼ばれるクルマが人気です。ユーザーの嗜好は移ろいがちで、SUV人気が隆盛の中、人気が下降しているボディタイプがあります。それがステーションワゴンです。
しかしステーションワゴンの人気が下火となっているのは国産車だけで、輸入車のステーションワゴンはSUV隆盛の現在でも安定した人気を誇っています。一方で国産ステーションワゴンは、3ナンバーサイズではスバルレヴォーグ、トヨタカローラツーリング、そしてマツダ6ワゴン。そして5ナンバーサイズではトヨタカローラフィールダーとホンダシャトルぐらいしか選択肢がない状況です。今回は取り回しに優れた5ナンバーサイズのステーションワゴンとして貴重な存在のホンダシャトルを徹底レビューします。
走ってよし、載せてよし、しかも5ナンバーサイズ
ステーションワゴンの魅力はセダン同様に低重心が生み出す快適な乗り心地と、積載する荷物の量や大きさによってフレキシブルに変化する使い勝手の良いラゲッジスペースです。SUVやミニバンのように車高が高くなるとクルマの重心は高くなり、カーブを曲がる際や発進や停車時の前後左右の揺れが大きくなる傾向があります。しかし重心が低いとそういった無駄な揺れが少ないだけでなく、高速などで横風の影響も少ないというメリットがあります。シャトルの場合、そういった高い走行安定性と5ナンバーサイズという日本の道路事情にマッチしたサイズのボディにより、高い利便性を実現しているモデルなのです。
先代フィットがベース、2WD車なら立体駐車場もOK
現行型のシャトルは、フィットシャトルの後継車として2015年5月に販売が開始されました。コンパクトカーの人気モデルである先代フィットをベースとしたシャトルのボディサイズは、全長4400mm×全幅1695mm×全高1545mm(4WD車は1570mm)の5ナンバーサイズ。2WD車は全高を1550mm以下としているため、都市部に多い立体駐車場に対応しています。
全長4400mmというコンパクトなボディながら荷室容量は5名乗車で570L、リアシートを倒した2名乗車時では最大1141Lとトップクラスのラゲッジスペースを確保しています。さらに後席のシートバックには小物を入れられるスペースとしてマルチユースバスケットを装備するなどユーティリティの高さが特徴です。
お手頃値段のガソリン車、好燃費のハイブリッドの2本立て
搭載するパワートレインは、最高出力132ps、最大トルク155Nmを発生する1.5L直列4気筒ガソリンエンジン+CVT。そして最高出力110ps、最大トルク134Nmを発生する1.5Lガソリンエンジンと最高出力29.5ps、最大トルク160Nmを発生するモーターに7速DCTを組み合わせたスポーツハイブリッドi-MMDの2種類です。駆動方式は1.5Lガソリン、ハイブリッドともに2WD(FF)と4WDを設定。燃費性能はデビュー当初、JC08モード燃費でガソリン車が19.4〜21.8km/L、ハイブリッドが25.8〜34.0km/Lを実現していました。
2017年の一部改良で安全性能が大幅アップ
2016年8月にシャトルは一部改良を実施、インテリアライトのLED化や一部グレードで装備の拡充が行われています。2017年の一部改良では、フォグランプへのLED採用や搭載するオーディオのスマートフォン連携強化が図られました。さらに、ホンダの先進運転支援システム「ホンダセンシング」を全モデルに標準装備し安全性を向上。
このシステムは、ミリ波レーダーと単眼カメラによる車両前方の状況認識と、ブレーキ、ステアリングの制御技術が協調し、安心・快適な運転や事故回避を支援するというものです。自動ブレーキ、誤発進抑制機能などの衝突回避支援機能に加え、車線の中央に沿った走行をアシストするステアリング制御「LKAS(車線維持支援システム)」や、アクセルペダルから足を離しても前走車との車間距離を適切に保つ「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」など、ドライバーの負担を軽減し快適な運転をサポートする機能も充実しているのが特徴です。最新モデルの燃費性能は実燃費に近いWLTCモードとなり、ガソリン車が17.2〜19.4km/L。ハイブリッドが20.4〜22.8km/Lと優れた燃費性能を発揮しています。
フットワークの軽さとクラストップの大きなラゲッジスペースが最大の美点
モデルライフの長いシャトルには何度となく試乗していますが、最大の美点はフットワークの軽さとクラストップの大きなラゲッジスペースでしょう。今回試乗したのはハイブリッドですが、加速のスムーズさと優れた燃費性能はやはり圧巻です。高速道路でACCを作動させると、何もしなくても20km/Lを超える燃費性能を発揮します。また低重心なステーションワゴンらしく、カーブが多いワインディングを走行しても、ハンドル操作に合わせてスムーズに駆け抜けていきました。
ステーションワゴンの利便性の高さに気づいて欲しい
欧州の人が夏休みに荷物をたくさん積んでバカンスに出掛ける時に利用するのがステーションワゴンだと言われています。欧州は北から南へと走り抜けるためには、アルプスなどの山脈を越えないと行けません。そのようなタフな場所を走るためには、セダンのような走行性能と高い積載性能を備えたステーションワゴンがベストということなのでしょう。国産車ではセダンの衰退と歩調を合わせ風前の灯火となりつつあるステーションワゴンですが、輸入車に負けない実力のクルマを作れば、人気復活という可能性はまだあるのかもしれません。
■シャトル価格表
グレード | 駆動方式 | WLTCモード燃費(km/L) | 車両本体価格 |
---|---|---|---|
G・ホンダセンシング | 2WD | 19.4 | 180万8400円 |
4WD | 17.2 | 200万6400円 | |
ハイブリッド・ホンダセンシング | 2WD | 25.2 | 215万8200円 |
4WD | 22 | 235万6200円 | |
ハイブリッドX・ホンダセンシング | 2WD | 24.8 | 241万8900円 |
4WD | 22 | 261万6900円 | |
ハイブリッドZ・ホンダセンシング | 2WD | 22.8 | 260万7000円 |
4WD | 20.4 | 277万2000円 |
※記事の内容は2021年6月時点の情報で制作しています。