トヨタヴォクシー・ノアが独占していた2Lクラスミニバンのハイブリッド車。しかしライバルのホンダステップワゴンと日産セレナにも本格的なハイブリッド車が追加され、その争いは激化の一方だ。それぞれ異なる方式のハイブリッドを持つこの3車種のベストバイはどれなのだろうか。
販売台数絶好調の2Lクラスミニバン
3列シートをもち6人以上の多人数乗車ができるミニバンは、現代のファミリーカーとして定着し安定した人気を誇っています。その人気のミニバンの中で特にユーザーから高い支持を得ているのが2Lクラスミニバンと呼ばれるカテゴリー。代表的な車種としてトヨタヴォクシー・ノア、日産セレナ、ホンダステップワゴンが挙げられます。
その人気の高さは新車の販売台数を見れば一目瞭然。2018年1月〜6月の新車登録台数を見ると3モデルともにベスト20にランクイン。セレナが5万6095台で堂々の第3位。ヴォクシーが4万7702台で第6位。ステップワゴンが3万1436台で第15位。そしてヴォクシーの兄弟車ノアが2万9772台で17位となっています。しかもステップワゴンの144.5%を筆頭に全車対前年比プラスという好結果。
ステップワゴンとセレナにもハイブリッドが加わって競争激化!
どうして、このクラスのミニバンがいま好調なのでしょうか。その理由は昨年ステップワゴン、そして今年セレナにハイブリッド車が登場したことにあります。
また昨年は元々ハイブリッド車をラインナップしていたヴォクシー・ノアの内外装変更という大きなマイナーチェンジもありました。人気3車種のハイブリッド車が出揃った2Lクラスミニバン、果たして一体どのモデルが買いなのかを検証しましょう。
一番古いのはヴォクシー・ノアもマイナーチェンジで戦力アップ
まずは各モデルの登場年です。3車種の中で最初に登場したはヴォクシー・ノア。現行型のヴォクシー・ノアは2014年1月にまずガソリン車が登場し、翌2月にハイブリッド車が追加されました。当初ハイブリッド車にはエアロ系グレードの設定がありませんでしたが、2016年1月の一部改良時に設定。そして2017年7月に内外装を変更するマイナーチェンジを行っています。
続いて2015年4月にステップワゴンが登場。標準車のステップワゴンと、エアロパーツを装着し押し出し感を強めたステップワゴンスパーダという2つのモデルが用意されました。2017年9月にマイナーチェンジを行い、従来の1.5Lターボエンジンに加えて、スパーダのみにハイブリッド車を追加しています。
そして3車種の中で一番フレッシュなのが2016年8月に登場したセレナです。セレナは2Lガソリンエンジンに出力が小さいモーターを組み合わせた「シンプルハイブリッド」を設定していました。しかし、ヴォクシー・ノアのようにモーターのみでの走行ができず、燃費性能面でも一歩譲っていました。
2018年3月、1.2Lのガソリンエンジンで発電し、モーターを駆動させて走行する「シリーズハイブリッド」の「e-POWER」を追加。このe-POWERの登場がセレナの販売台数を躍進させました。 3車種それぞれ搭載するハイブリッドシステムが異なっている一方で、共通点は駆動方式がFF(前輪駆動)しかないことです。
燃費はセレナe-POWERが一歩リード
まずは、最も気になる燃費性能を比べてみましょう。JC08モード燃費はヴォクシー・ノアのハイブリッド車が23.8km/L、セレナe-POWERが26.2km/L、そしてステップワゴンスパーダ ハイブリッドが25.0km/Lとエンジンの排気量が最も小さいセレナが一歩リードしています。最後発だけに最もカタログ燃費の数値が良いセレナe-POWERはモーターだけで走るのですが、発電用のエンジンが掛かったときの音がかなり室内に侵入してくるのは気になります。
燃費の数値では一歩譲るステップワゴンですが、走行時の静粛性は非常に高いのが特徴です。ステップワゴンに搭載されている「i-MMD」と呼ぶハイブリッドシステムは駆動用と発電用の2つのモーターを搭載し、走行状況に応じて、モーターによる走行を優先するシステム。モーターを積極的に使用することで、スムーズな加速そして高い静粛性を実現しています。
ヴォクシー・ノアのハイブリッドシステムは先代プリウスに搭載されていたシステムをミニバン用に改良を加えたもの。燃費性能はいまでも十分高いのですが、セレナやステップワゴンと比べるとアクセルを踏んでからの反応など走りの制御系の古さを感じます。
サイズはほぼ同じ、インテリアの使い勝手は結構違いあり
日産セレナのインテリア
ホンダステップワゴンのインテリア
トヨタヴォクシーのインテリア
ボディサイズはどうでしょう。3車種ともにほぼ同じサイズですが、最も大きいのがセレナです。続いて、ステップワゴン、ヴォクシー・ノアとなります。室内の広さもボディサイズの大きさの順番と同じです。今回比較したエアロ系ハイブリッド車はヴォクシーとセレナが全幅1700mm以上で3ナンバーとなり、ステップワゴンだけが5ナンバーとなります。全幅は異なりますが、取り回しの良さを示す指標となる最小回転半径は5.4〜5.5mと互角の数字になっています。
インテリアの使い勝手は各車違いがあります、ヴォクシー・ノア、そしてセレナは跳ね上げ式の3列目シートを採用しているに対して、ステップワゴンは回転格納式の3列目シートを採用。
高額な格納式の3列目シートをステップワゴンが採用している理由は、リアハッチに採用した「ワクワクゲート」の採用にあります。このワクワクゲートは縦方向だけでなく、横方向にも開閉が可能で、狭い場所でのモノの出し入れだけでなく、サードシートへのアクセスがラクにできるという優れものです。
ちなみに同じ跳ね上げ式でもセレナは低い位置に収納できるため、視界を妨げない工夫が施されています。インテリアの収納スペースなどは細かい工夫をたくさん盛り込んだステップワゴンとセレナが優れています。
ステップワゴンの走りの良さが光る
走りにも違いがあるのでしょうか。ステップワゴンはリアに重量の重いワクワクゲートを装着するためにリアの開口部の剛性を高めています。それが走行性能にも良い効果を生んでおり、安定感の高さが特徴です。
セレナはモーターの特徴を活かしたスムーズな加速が特徴です。その一方で、コーナリング時の左右の揺れが大きいことと、先に書いたようにエンジン音が気になります。
ヴォクシー・ノアは可もなく不可もなしという平均点的な走りですが、アクセルの反応の悪さと走行中の路面から伝わってくる微振動が個人的には気になりました。
一見、お安く見えるのは安全装備の差
車両本体価格はヴォクシー/ノアが301万4280円〜326万9160円、セレナe-POWER(カスタムモデルを除く)は296万8920円〜340万4160円、そしてステップワゴンスパーダが330万480円〜355万9680円。最も高いのはステップワゴンです。しかし、この価格差は安全装備の違いです。
ステップワゴンは、渋滞時追従機能付きACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)をはじめ、衝突軽減ブレーキなど8つの機能がパッケージとなった「ホンダセンシング」を標準装備しています。ヴォクシー・ノアは「トヨタセーフティセンス」がハイブリッド車には標準装備されていますが、ホンダセンシングと比べると機能は物足りません。一方のセレナは「プロパイロット」という先進運転支援技術を設定していますが、XV、ハイウェイスターVにオプション設定という状況。
このオプションを装着するとステップワゴンと変わらないレベルにまで高くなるので、これはかなりのマイナスポイントです。
2Lクラスハイブリッドミニバン価格表(2018年8月現在)
グレード | 駆動方式 | JC08モード燃費(km/L) | 車両本体価格 |
---|---|---|---|
■トヨタヴォクシー | |||
ハイブリッドX | FF | 23.8 | 301万4280円 |
ハイブリッドV | 314万2800円 | ||
ハイブリッドZS | 326万9160円 | ||
■日産セレナ | |||
e-POWER X | FF | 26.2 | 296万8920円 |
e-POWER XV | 312万8760円 | ||
e-POWER ハイウェイスター | 317万8440円 | ||
e-POWER ハイウェイスター V | 340万4160円 | ||
e-POWER オーテック | ー | 382万1040円 | |
■ホンダステップワゴン | |||
スパーダ ハイブリッドB ホンダセンシング | FF | 25 | 330万480円 |
スパーダ ハイブリッドG ホンダセンシング | 335万160円 | ||
スパーダ ハイブリッドG・EX ホンダセンシング | 355万9680円 |
走りよし、安全装備よしのステップワゴンに軍配!
結論として、2Lクラスハイブリッドミニバンでオススメは一見、価格は高いものの、走行性能そして安全性能の高さが魅力のホンダステップワゴンスパーダです。続いてはハイブリッドシステムの古さや安全装備に物足りなさはありますが、価格と装備のバランスの良いヴォクシー・ノア。そしてプロパイロットを前面に出していて先進性をアピールしているにも関わらず、それはオプションというマイナスが響いたセレナです。しかしプロパイロットが標準装備され、価格の上昇が抑えられれば、ステップワゴンと際どい戦いとなるでしょう。
2Lクラスハイブリッドミニバン主要諸元一覧(2018年8月現在)
車名 | トヨタ ヴォクシーハイブリッド ZS | 日産 セレナe-POWER ハイウェイスターV | ホンダ ステップワゴンスパーダハイブリッドG・EX |
---|---|---|---|
車両本体価格 | 326万9160円 | 340万4160円 | 355万9680円 |
JC08モード燃費(km/L) | 23.8 | 26.2 | 25 |
乗車定員(名) | 7 | 7 | 7 |
全長×全幅×全高(mm) | 4710×1735×1825 | 4770×1740×1865 | 4760×1695×1840 |
ホイールベース(mm) | 2850 | 2860 | 2890 |
車両重量(kg) | 1620 | 1760 | 1820 |
エンジン種類 | 直列4気筒DOHC | 直列3気筒DOHC | 直列4気筒DOHC |
総排気量(cc) | 1797 | 1198 | 1993 |
エンジン最高出力(kW/rpm) | 73/5200 | 62/6000 | 107/6200 |
エンジン最大トルク(Nm/rpm) | 142/4000 | 103/3200〜5200 | 175/4000 |
使用燃料/タンク容量(L) | レギュラー/50 | レギュラー/55 | レギュラー/52 |
駆動方式 | FF | FF | FF |
最小回転半径(m) | 5.5 | 5.5 | 5.4 |
サスペンション形式(前/後) | ストラット式/トーションビーム式 | ストラット式/トーションビーム式 | ストラット式/車軸式 |
ブレーキ(前/後) | ベンチレーテッドディスク/ディスク | ベンチレーテッドディスク/ディスク | ベンチレーテッドディスク/ディスク |
タイヤサイズ | 205/55R16(BBS社製) | 195/65R15 | 205/60R16 |
※記事の内容は2018年8月時点の情報で執筆しています。