かわいいコンパクトカーとして一世を風靡した日産マーチ。現在でもタイで生産され全世界で販売されるグローバルコンパクトカーとして、その知名度は抜群だ。しかし登場からすでに8年以上が経過し、その実力は褪せていないのだろうか?ホットモデル・マーチNISMOも合わせてレビューしよう。
タイで生産されるベストセラーモデル
日産車の小型車のエントリーモデルとなるのが、日産マーチです。マーチは1982年に登場した初代モデル以来、かわいいデザインと運転しやすさや信頼性の高さ、使い勝手の良さでユーザーに支持され、国内外で累計600万台以上販売されているコンパクトカーです。
4代目となる現行型マーチは2010年7月に登場。グローバルコンパクトカーとして、ビッグマーケットである東南アジアに近いタイの工場で生産され日本に輸出されているのです。
それではコンパクトカーのベーシックモデルとして長く支持されているマーチの魅力について紹介しましょう。
かわいいから路線変更した外観デザイン
以前のモデルはかわいさをアピールしたものでしたが、現行型マーチの外観デザインはキビキビとした走りとしっかりとした信頼を感じさせることを追求しています。重心を低くし、タイヤをボディの四隅に寄せたデザインによって、リアのトレッド(タイヤとタイヤの距離)を拡大。
さらにシル部も外側に張り出したことにより、コンパクトでありながら、踏ん張り感を表現したプロポーションを実現しています。ボディ後端でわずかに跳ね上がるような流線型のルーフラインには、後方に流れる空気を最適に整流することで、高い空力性能を発揮する狙いもあります。
一方で盛り上がったフロントフェンダーはドライバーが車両感覚を掴みやすく、高さを抑えたウエストラインによる視界の良さもあって、どんな人でも運転しやすく仕立てられています。
そしてマーチらしい丸いヘッドライトとアーチを描くサイドウィンドウにより、マーチのDNAである「フレンドリー」も継承しているのです。
優しさを感じさせるインテリア
マーチのインテリアはユニークなツインバブル形状による守られ感のあるコクピットとなっています。緩やかな曲線と温かみのある曲面がインストルメントパネルの左右にユニークなバブル形状を作り出し、優しく守られているような感覚と運転の愉しさを提供します。
マーチに搭載されているエンジンで、主力となるのは軽量コンパクトな1.2L直列3気筒エンジン。組み合わされるミッションは無段階変速機(CVT)に副変速機(2段変速)を組み合わせた構造のもの。
従来のCVTと比べるとレスポンスのよい発進加速と高速走行時の静粛性向上を実現しています。JC08モード燃費は18.4〜23.0km/Lです。
2013年に追加されたマーチNISMOは別物のホットコンパクト
2010年に現行型マーチは発売されてから、2013年6月にマイナーチェンジを行いました。フロントグリルのVシェイプのメッキ加飾やヘッドランプのクロームアクセントを追加し、より個性的かつ存在感と上質感のある外観デザインとしました。
そしてインテリアは、シルバーステッチを配したシートとスエード調クロスに、上質な柔らかな手触りとモダンなエンボスパターンを採用した内装色「プラム」を追加、プレミアム感を際立たせています。
同時にセンタークラスターを洗練されたデザインに変更するとともに、随所にシルバーフィニッシャーやメッキ加飾を配し、ピアノ調センタークラスターフィニッシャーを採用することで、質感の高いインテリアを実現しています。
マイナーチェンジと同時に、日産のファクトリーブランドであるNISMOがモータースポーツで培った技術を惜しみなく投入し、ボディ、足回り、パワートレインなどトータスバランスに優れた運動性能を実現させたマーチNISMOを発売しました。
マーチにはこれまでも、初代にスーパーターボ、3代目に12SRといったスポーツモデルが設定されていました。その流れを汲んで4代目にもマーチNIISMOが設定されたのです。
マーチNISMOは空力性能に優れたボディデザインと専用のインテリア、サスペンションを搭載しています。グレードはアイドリングストップ機構の付いた1.2L直3エンジン+CVTのNISMOと専用開発された1.5L直4エンジン+5速MTを搭載したNISMO Sの2グレードを設定。
特にNISMO Sは最高出力の116psを誰もが使い切れる楽しさを味合わせてくれるホットモデルです。
2017年にはプチカスタマイズ仕様を追加
そして、2017 年7月にはホワイトカラーのドアミラー、アウトサイドハンドル、フルホイールカバーを装備した「パーソナライゼーション」を設定。街でよく見かけるマーチなので、ほかの人との差別化を図るライトなカスタマイズと言えます。
今となってはいろいろ古い
現行型マーチの走行性能はかなりグレードによって差があります。ホットモデルのNISMO Sはよく回るエンジン。カチカチっと入るマニュアルシフトなど、現在では数少なくなった走りを楽しめるホットなコンパクトカー。ニスモによって味付けされた乗り味は街乗りからワインディングまでどんなシーンでも高い安定感を発揮します。
一方スタンダードモデルは、同じクラスの国産コンパクトカーの中では今では古さが目立ちます。振動や騒音などは国産コンパクトカーの中では下位の方でしょう。そして現行型マーチには、先進安全運転支援システムが装着されていません。これは国産コンパクトカーだけでなく、軽自動車にも完全に後れを取っています。
元々新興国向けのベーシックカーとして開発され、タイで生産されているマーチ。現在の国産コンパクトカーの中では競争力はかなり厳しいですし、なかなかおすすめしにくいモデルです。
強いていえば、ホットモデルのNISMO Sは自分の運転スキルを磨きたいと思う若者におすすめしたいクルマです。ただし、MTしかないのでご注意を。
■日産マーチ価格表(2018年12月現在)
グレード | 駆動方式 | JC08モード燃費(km/L) | 車両本体価格 |
---|---|---|---|
S | 2WD(FF) | 21.4 | 115万1280円 |
S プラムインテリア | 128万7360円 | ||
X Vセレクション | 23 | 137万5920円 | |
X Vセレクション パーソナライゼーション | 140万8320円 | ||
G | 155万7360円 | ||
G パーソナライゼーション | 158万9760円 | ||
X FOUR Vセレクション | 4WD(モーターアシスト式) | 18.4 | 155万880円 |
X FOUR Vセレクション パーソナライゼーション | 158万3280円 | ||
G FOUR | 172万1520円 | ||
G FOUR パーソナライゼーション | 175万3920円 |
※記事の内容は2018年12月時点の情報で執筆しています。