ハイブリッドを始めとしたエコカーやコンパクトなクルマばかりが人気を集める日本マーケットのおける唯一の例外がスバルインプレッサスポーツワゴンだ。次世代プラットフォームの採用で大きく進化した走りと「アイサイト」などの先進安全装備、そして余裕のある室内空間で王者プリウスに挑む。
ハイブリッドでもコンパクトでもないのに売れている
低燃費が自慢のハイブリッド車は国内市場において安定した人気を誇っています。日本自動車販売協会連合会が発表した2017年11月新車登録台数を見ると、ベスト30にランクインしている車種のうち、実に23車種がハイブリッド専用車、もしくはハイブリッド車をラインナップしたクルマたちです。そのほかの7車種のうちトヨタ・パッソ、トヨタルーミー/タンク、ダイハツトールは燃費の良い小さなサイズのクルマたち、トヨタランドクルーザーワゴンとマツダCX-5はSUVですがクリーンディーゼルエンジンを搭載しています。
そしてハイブリッドやクリーンディーゼルといった低燃費エンジン車ではなく、コンパクトカーでもないのに唯一ランクインしているのが、今回紹介するスバル・インプレッサシリーズ。5ドアハッチバックのスポーツ、4ドアセダンのG4そしてコンパクトSUVのXVの3モデルを合計したインプレッサシリーズは4294台を販売し、16位に堂々ランクインしています。ここではインプレッサシリーズの中心モデルである5ドアハッチバックのインプレッサスポーツにスポットを当てて、その人気の秘密を解き明かしていきましょう。
安全と走りを両立した次世代プラットフォームを採用
スバル・インプレッサは1992年に登場した初代から2007年に登場した3代目までは、実用車である一方でWRC(世界ラリー選手権)に参戦車のベース車としての役割も担っていました。特に初代や2代目はマニュファクチャラーズチャンピオンやドライバーズチャンピオンを獲得するなど、輝かしい歴史を誇っています。2011年に登場した4代目インプレッサからモデルが細分化され、かつてラリー車のベースとなっていたモデルはWRXとして独立したため、5ドアハッチバック、4ドアセダン、クロスオーバーSUVの3タイプとなっています。
5代目となる現行型インプレッサは2016年10月より販売され、その最大の特徴はスバルが開発した次世代プラットフォーム「スバルグローバルプラットフォーム」を採用した第1号車ということです。このスバルグローバルプラットフォームは、ボディ剛性の向上によってハンドル操作の応答性や操縦安定性が飛躍的に向上しています。特に高速道路などでのレーンチェンジなどでは、ドライバーのハンドル操作に対してクルマが間髪なく反応するので、よりスムーズで安全に行えるようになっています。加えて、衝撃エネルギー吸収量を先代モデルより1.4倍となり、衝突安全性能を向上。乗員だけでなく、歩行者など周囲の人々も含めた安全性能を強化しています。
自慢の「アイサイト」もさらに進化
安全性能の点では「ぶつからないクルマ」で一躍名を広めたスバルの先進安全装備「アイサイト」にも触れなければなりません。フロントウインドウに設置されたステレオカメラによって前方の危険を検知するアイサイトは、現行型インプレッサスポーツでは最新のアイサイトver.3を搭載。従来は4WD車のみにしか設定されていませんでしたが、FF車にも拡大されました。さらに車線中央維持機能の新採用や全車速追従機能付クルーズコントロール(ACC)を進化させることで、安全運転をサポートしてくれます。
また、自車の後側方から接近する車両を検知し、ドライバーに注意を促す「スバルリアビークルディテクション」、そして国産車初となる歩行者保護エアバッグを標準装備するなど高い安全性能を誇ります。
伝統の水平対向エンジンは1.6Lと2L。ハイブリッドは未設定
搭載されているエンジンはスバル独自の1.6L水平対向4気筒DOHCと2L水平対向4気筒DOHC直噴の2種類。4輪の量産車ではスバルとポルシェだけが作りづけている水平対向エンジンは低重心なためコーナリング性能に寄与します。先代にはハイブリッドモデルも用意されていましたが、現行型ではガソリン車のみとなっています。トランスミッションはリニアトロニックと呼ばれるCVTが全車に組み合わされ、駆動方式はFFと4WDが設定されています。JC08モード燃費は16.8〜18.2km/Lでエンジン排気量による燃費差は小さくなっています。それにしてもスバルの水平対向エンジンもずいぶん燃費が良くなったものだと昔を知る人間からすると感慨深いものがあります。
余裕ある室内空間が隠れた人気の秘密
スバル車らしく走りの話題が多いのですが、そもそもインプレッサはコンパクトカーと比べて広い室内空間もユーザーからの支持を集めているポイントでしょう。2泊程度の大人4人の旅行であれば荷物も含めて余裕を持ってこなす室内の広さはプリウスに十分対抗できます。
高速燃費を意識したプリウスの後席は頭上空間が広いとは言えないのですが、インプレッサは頭上空間はもちろんリアシートの角度なども適切で、プリウスより後席の居心地は良好です。
付け加えると乗り心地もインプレッサの方が優れているので、旅行に出かけることの多い方は燃費はともかくとしてインプレッサの満足度の方が高くなると思います。
遠出の多い人なら2Lエンジン車がおすすめ
今回、試乗は1.6L車、2L車のどちらも4WD車で行いました。1.6Lエンジンは最高出力115ps、最大トルク148Nmを発生します。街乗りでの発進加速などでは全く不満はありません。ただし、スピードレンジの高い高速道路ではやや物足りなさを感じます。合流時の加速や追い越しをかけるために加速はアクセルに対して反応が鈍いため、ストレスを感じることがあります。加えて、高速走行時はエンジンの回転数も高くなるため、静粛性もやや不満でした。しかし新しいプラットフォームの効果は絶大で、操縦安定性や直進安定性は抜群です。アイサイトを使用した高速走行はラクチンで、ドライバーの疲労も軽減されます。一方の2Lエンジンは最高出力154ps、最大トルク196Nmを発生するため、街乗りはもちろん高速道路でも力強い加速性能をでストレスとは無縁です。
パワフルな2Lエンジンであっても新プラットフォームは優れた操縦安定性を発揮します。加えて今回のインプレッサは高い静粛性も実現しています。18インチ装着車はやや足回りが硬い印象を受けましたので、お子さんを乗せることが多いという人なら17インチタイヤ装着車がオススメです。
■インプレッサスポーツワゴン価格表
グレード | 駆動方式 | JC08モード燃費(km/L) | 車両本体価格(東京) |
---|---|---|---|
1.6i-L アイサイト | FF | 18.2 | 194万4000円 |
4WD | 17 | 216万円 | |
2.0i-L アイサイト | FF | 17 | 218万1600円 |
4WD | 16.8 | 239万7600円 | |
2.0i-S アイサイト | FF | 16 | 239万7600円 |
4WD | 15.8 | 261万3600円 |
オススメのグレードは街乗り中心という人ならば1.6L車で十分満足できると思いますが、高速道路を使ってアクティブに動くという人にはやはり2.0i-Lアイサイト4WDが良いでしょう。
運転する楽しさを持った実用車
インプレッサスポーツは優れた燃費性能を発揮するハイブリッド車をラインナップしていませんが、新開発されたプラットフォームによるクルマ本来の運転する楽しさ、そしてアイサイトをはじめとした先進の運転支援システムによる高い安全性能などが多くの人に支持されているポイントだと思います。もちろん室内空間の広さや乗り心地の良さも購入後の満足度を上げてくれるでしょう。プリウスやVWゴルフなどを検討中の方にはぜひ乗り比べてほしい一台です。
※記事の内容は2018年1月時点の情報で執筆しています。