世界中でエコカーの代名詞となったトヨタ・プリウスにPHV(プラグインハイブリッド)モデルが加わった。前モデルの反省を活かして見た目も中身も大きく変化した新型プリウスPHVだが、最大のライバルはノーマルのプリウスであることには変わらない。果たしてプリウスのベストバイはどちらなのか?
日本のみならず世界のエコカーの代名詞
2016年の1年間で約25万台という販売台数を記録しNO.1に輝いたのがトヨタ・プリウスです。2015年12月に現行型となる4代目プリウスが登場。そして2017年2月にはプラグインハイブリッド(外部から充電可能なハイブリッドカー)のプリウスPHVが追加されました。プリウスをはじめとしたトヨタのハイブリッド車は約90以上の国と地域で販売され、グローバルの累計販売台数が1000万台(2017年1月現在)を突破。
エコカーの代名詞となっているプリウスですが、現行型はハイブリッドとプラグインハイブリッドの2種類が選択できます。それぞれのモデルの特徴と狙い目のグレードを紹介しましょう。
クルマの土台から一新した現行プリウス
4代目となる現行型プリウスは2015年12月に登場。高速走行時の空気抵抗を減らし燃費アップを図るため、プリウスらしい「トライアングルシルエット」は継承していますが、中身は「トヨタのもっとイイ車づくり」の実現に向けた構造改革であるトヨタグローバルアーキテクチャ(TNGA)を採用し大幅な進化を遂げました。クルマの骨格であるシャーシから一新し、低燃費性能に加えて、走る楽しさ、乗り心地の良さ、そして静粛性も加わり魅力がアップ。従来はFF車しかありませんでしたが、プリウス初の4WD車が設定されたことも特徴です。JC08モード燃費は40.8km/Lまで向上しています。
PHVモデルが本命と言われる理由
一方、2017年2月に登場したPHVモデルは、大容量リチウムイオン電池の搭載、そしてプラグインハイハイブリッドシステムの効率化により、EV走行距離をPHVの先駆者・三菱アウトランダーPHEV並みの68.2kmに拡大し、同時にEV走行最高速度も135km/hまで高めています。
実は前モデルの3代目プリウスにもモデル途中からプラグイン(充電式)ハイブリッドカーであるプリウスPHVが存在していました。こちらはEVモードで最高速度100km/h、最大航続走行距離23.4kmを実現していましたが、価格の高さ、EV走行距離の短さ、見た目でハイブリッド車との判別できないことなどで、いまひとつセールス的には伸び悩みました。
今回はそんな前モデルの反省を活かして、EV走行距離を大幅に伸ばしたうえにヘッドライトやリアランプ周りを専用デザインとしています。三菱アウトランダーPHEVが全世界でスマッシュヒットとなり、欧米メーカーも軒並みプラグインハイブリッド車を発売する中で、今回のプリウスPHVはオリジナルのプリウスとは別のクルマと呼べるくらいにトヨタも力を入れてきたのです。
4WDはハイブリッド車のみ、PHVは最低価格320万円オーバー
ハイブリッド車のプリウスの新車価格はEグレードFF車の242万9018円からAプレミアム“ツーリングセレクション”4WD車の341万2505円。グレードは上からAプレミアム、A、S、Eの4種類で、Eを除く3グレードには17インチアルミホイールと専用のリアバンパーを装着したツーリングセレクションが用意されています。また、Eを除いたグレードに4WD車を設定しています。
プリウスPHVの車両価格はSグレードの326万1600円からAプレミアムの422万800円。グレードは同じく上からAプレミアム、A“レザーパッケージ”、A、S“ナビパッケージ”、Sの5種類で、全車駆動方式はFFのみとなっています。
PHVはほとんどのグレードで安全装備や豪華装備が標準、ただし4人乗り。
それでは各モデルのグレードによる装備差を見てみましょう。ハイブリッド車のプリウスでは先進安全運転支援装備のトヨタセーフティセンスPが AプレミアムとAグレードに標準装備となりますが、SやEではオプション設定となっています。シート表皮はAプレミアムが本革の電動シートを標準装備し、ツーリングセレクションは合成皮革、それ以外はファブリックとなります。ハイブリッド車特有のアクセサリーコンセントはプレミアムのみ一つ標準装備でそのほかはオプションです。
一方のプリウスPHVは先進安全運転支援装備のトヨタセーフティセンスPは全車標準装備で、Sのみ非装着が選べます。そしてA以上のグレードに側後方のクルマの接近を知らせるブラインドスポットモニター、壁などの接近を知らせるインテリジェントクリアランスソナー、そしてシンプルインテリジェントパーキングアシストを標準装備しています。充電装置はS以外が普通+急速充電を搭載。かっこいい11.6インチのナビゲーションシステムはSグレード以外には標準装備となっています。
全車電動シートを装備しているのもPHVの特徴。シート表皮はAレザーパッケージとAプレミアムが本革で、これはハイブリッドモデルと同じシート、それ以外はファブリックとなりますが、ファブリックのシートは専用デザインでスポーティなものに変更されています。ただしPHVのリアシートは全グレード2人乗りですので、この点は注意する必要があります。またトランク下に大きな電池を積むPHVはラゲッジスペースもハイブリッドと比べると狭くなっています。
実を取るならハイブリッドはツーリングセレクションではない
ハイブリッドのプリウスに試乗してみると、17インチホイールを装着したツーリングセレクションはスポーティな走りは楽しめる反面、路面からの衝撃は大きめです。タイヤサイズが大きくなると、燃費面にも影響ありハイブリッドのプリウスでは15インチが37.2km/Lに対して、17インチ装着車は34.0km/Lまで悪化します。
高速道路をメインに走行するのであれば、安定性が向上しバンパーデザインもかっこいい17インチのツーリングセレクションという選択もありますが、おすすめは走行性能、燃費性能のバランスに優れた15インチ装着車です。そして、装備面では、トヨタセーフティセンスPをはじめとした先進安全運転支援装備を標準装備し、カラーヘッドアップディスプレイ、スーパーUVカット機能&遮音性ガラスをフロントドアに採用しているAもしくはAプレミアムがおすすめです。
PHVであれば安全装備がさらに充実する「A」以上を
プリウスPHVの最大の特徴は60km程度までEV走行が可能なこと。自宅の充電装置で毎晩充電すれば、駅の送り迎えや買い物程度の距離ならガソリンをほとんど使うことはないでしょう。EV走行時も今回から発電用モーターも駆動用に使用するので、力不足は感じません。もし、EV走行をしていて、駆動用のバッテリーが減少した場合はハイブリッドモードに切り替えれば、通常のハイリッド車と同じようにモーターとエンジンが作動します。
車両重量がやや重いPHVですが、ハイブリッドモードの時もハイブリッドモデルとほぼ同じ感覚で運転できます。しかしこのクルマを持って満足するとしたら、やはりEV走行の静かさと力強さ、そしてエコな感覚を長い距離、味わうことができる点でしょう。ちなみに足回りも重いPHVのほうがしっとりとした乗り心地で好印象です。
プリウスPHVのおすすめグレードは、11.6インチのナビゲーションシステムと旅先で重宝する急速充電が標準装備となるSナビパッケージ以上を狙いたいところ(急速充電のコストは実はけっこう割高ですが)。先進安全運転支援システムのトヨタセーフティセンスPは全車標準装備となっていますが、ブラインドスポットモニター(BSM)やインテリジェントクリアランスソナーはA以上にしか装備されないので、おすすめはAもしくはAレザーパッケージと言えます。
とはいえ100万円の差は先進性と見た目だけでは埋めがたい
ハイブリッドとPHV、それぞれのおすすめグレードは紹介しましたが、ハイブリッドとPHVの比較ではどちらが買いなのでしょう。同じタイヤサイズを装着するAプレミアム同士で価格を比較してみると、ハイブリッド車のプリウスが310万7455円に対して、プリウスPHVは422万2800円と111万5345円差となります。
燃料電池車ミライに似たフロントマスクや11.6インチの大型ディスプレイ、そしてEV走行感覚は非常に魅力ですが、先進性と見た目だけでこの100万円差はなかなか埋まらないのではないでしょうか。なにしろハイブリッド車のプリウスは現在でもトップクラスの燃費性能を誇っているのです。価格的にもパフォーマンス的にもハイブリッドのプリウスがおすすめです。
※記事の内容は2017年8月時点の情報で執筆しています。