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【新型ホンダCR-V】「カッコいい、広い、乗りやすい」開発責任者編〜開発者インタビュー(島﨑七生人)

ホンダCR-V 6th 2025年12月
ホンダCR-V 6th 2025年12月

その細やかな観察眼では業界一、二を争うモータージャーナリストの島﨑七生人さんが、話題のニューモデルの気になるポイントについて、深く、細かくインタビューする連載企画。第94回は前回に続いて20262月に発売予定のホンダ「CR-V」です。ホンダの屋台骨を支えるグローバルモデルとなったCR-Vの日本仕様について、開発責任者であるホンダ技研工業株式会社 四輪開発本部 完成車開発統括部 LPL室 チーフエンジニア LPLの佐藤 英資(さとう・えいすけ)さんに話を伺いました。

新型CR-Vの“本陣”はこのモデル

ホンダCR-V 6th 2025年12月

島﨑:何媒体もたて続けのインタビューでしょうが、お時間をくださってありがとうございます。

佐藤さん:いえいえ、CR-V開発責任者の佐藤です。よろしくお願いいたします。

島﨑:先ほどデザイナーの佐藤さんにもお話を伺いました。CR-Vでは佐藤さんが複数名いらっしゃるのですね。プレリュードの時は齋藤さんが何人かいらっしゃって、お二人同時にお話をうかがったりしました。

佐藤さん:ああ、あそこはそうですね。では今度は違うチームで鈴木を複数名で(笑)。

島﨑:あはは。早速なのですが、今これだけSUVが増えた中で、新型CR-Vを投入するということは、やはり大変だったのではないですか?


ホンダCR-V 6th 2025年12月

佐藤さん:グローバルで言うと北米、中国ではホンダの基幹機種なので、開発で背負うものは多かったと思います。一方で日本で言うと、228月で5代目が生産中止になり、間が開いていたので、とくに出すタイミングや出す仕様については悩みました。

島﨑:昨年登場したe:FCEVは、カタログの表紙の車名ロゴの書体も今回のモデルと同じところからも、同じ6代目ということですよね?

佐藤さん:ええ、一緒になります。ただe:FCEVは日本ではリースのみの形態で出していますので、一般のお客様に販売するという意味では、今回のクルマが本陣だ……と私は思っています。

e:FCEVの開発者インタビューはこちらから

https://autonavi.car-mo.jp/mag/category/catalog/developers/cr-v-fcev/

島﨑:クルマとしては基本的には共通ですよね?

佐藤さん:ええ、フロント部分が105mmぐらいe:FCEVが長いだけで、あとはプラットフォームなど基本のところは一緒になり、同じ第6代目のCR-Vと言って間違いないです。

ホンダCR-V 6th 2025年12月

ホンダCR-V 6th 2025年12月

こちらが2024年に発表されたe:FCEVモデル。フロント部分が僅かに長い

島﨑:キッパリと佐藤さんに宣言していただいて、やっと落ち着きました。’22年に北米で発売されてから、’23年に中国で発売されたブリーズとも違うようだし、きょうも「また新型CR-Vの取材??」と思っていました。インパネを始め、e:FCEVとは共通なんですね。

佐藤さん:そこそこ全部一緒です。e:FCEVはリース販売なので、なるべく量産型の部品を使って作りました。どのタイミングが日本でのフルモデルチェンジか?というと、けっこう難しいのですが、一般のお客様を対象とした量産モデルということでいうと、発売が来年2月からの今回のモデルが6代目になります。

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多くの二律背反を両立させた

ホンダCR-V 6th 2025年12月

島﨑:佐藤さんのお立場から、この新型CR-V1番の自信のポイントというとどこになりますか?

佐藤さん:多くのところで二律背反を両立させているところです。私の立場上「ここがいい!」というと、そこ以外の担当者に文句を言われる可能性がありますが(笑)、まあご質問があったのであえて言うと、エクステリアデザインはグローバルで好評をいただいています。ホンダに限らず一般的にどのクルマもLove and Hateが必ずあり、一定数の人がすごくいいねと言ってくださり、あれはダメだと言う人も一定数いる。その中でこのCR-Vのエクステリアは本当に評判がいいんです。その上でカッコいいデザインでありながら荷室内空間は他車にぜんぜん負けないレベルであるところは秀でているとことかな、と思います。

島﨑:スーツケースが載せられて自転車も載せられてと、使い勝手はかなりよさそうですよね。

ホンダCR-V 6th 2025年12月

ホンダCR-V 6th 2025年12月

佐藤さん:それと今回の静的確認ではご体感いただけませんが、ダイナミック性能についても、クルマの動きがよくできています。サスペンションまわり、ステアリングだけではなく、パワートレインを含めて非常によく出来ており、そこに機能的なデザインということで、大きくはなっているのですが、運転のしづらさがまったくない。私はナンバーを付けた北米のハイブリッドをよく乗りまわしているのですが、本当に乗りやすいクルマに仕上がっていると自負しています。デザイン、パッケージング、乗り味の3つが高い次元で出来ているのかなと思っています。

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“ロックアップ・ローモードは牽引だけでなく燃費にも効く

ホンダCR-V 6th 2025年12月

島﨑:パワートレインについての“とくにここは!”と言いますと?

佐藤さん:基本は日本でも発売しているアコードと同じなんです。ただアコードはセダンでコチラはSUVなので、SUVに合ったギア比を設定しているのと、ロックアップ・ローモードを新たに加えています。これはもともとヨーロッパや北米のユーザーは牽引したがるのですが、この時にモーターでやるとモーターが高温になり非効率で、なおかつ引っ張れる重量も限られてくる。そこで低速側でもエンジンに直結してモーター負荷を減らすことを、牽引目線でニーズが高いSUVということで加えました。いっぽうで軽快な走りというところはアコードと同じです。

島﨑:牽引対応、実用SUVならではの配慮ですね。

佐藤さん:日本では牽引はあまり推奨はしていませんし、ニーズがなかったとしても、高速では今までどおりのエンジンドライブ、低速でも燃費のいいシチュエーションではエンジンを直結にするという考え方を、このCR-Vで初めて入れています。

ホンダCR-V 6th 2025年12月

島﨑:先日新型プレリュードをお借りしていて、パワーコントロールのしやすさを実感していたところですが、今度のCR-Vは、そういう実用前提の専用設定になっているのですね。

佐藤さん:我々は2Lエンジンを積んでいるのですが、他社さんでは2.5Lを積んでいます。なのでゼロヨンなど、ドカーン!と加速させるような時は2L並みではあるのですが、アクセルを踏んだ時にリニアに加速する軽快なレスポンスは扱いやすいですし、なおかつ燃費もいいので、扱いやすいパワートレインになっているかなと思っています。

ライバルはハリアーか、RAV4か?

ホンダCR-V 6th 2025年12月

島﨑:このクルマの工場はどちらですか?

佐藤さん:タイで作って日本に持ってきます。

島﨑:工場視察もされたのですか?

佐藤さん:我々は開発側なので、どちらかというと開発目線で、企画、設計を含めていろいろな市場を見に行ったりします。工場は工場で生産領域の責任者と連携しながら、量産が近くなれば、北米、中国などへ確認に行き品熟(=品質熟成)をしたりします。

島﨑:日本に来るCR-Vはタイ製で……

ホンダCR-V 6th 2025年12月

佐藤さん:北米でも何拠点かで作っており、中国も兄弟車のブリーズもあり2拠点。あとタイ、台湾、ベトナムなど、いろいろなところで生産しています。

島﨑:今や世界中にありとあらゆるSUVがありますから、その中で存在感を示さなければということですね。

佐藤さん:そうですね。北米ではRAV4と一騎打ちの状態ですね。CR-VRAV4より全長も100mmくらい長く、横に並べるとCR-Vのほうが大きいんです。日本でいうとハリアーに近いところを競合としていますが、ラギッドな感じでお客様はRAV4と比較したがるのかなと。

日本向けは“1番いいもの”を持ってきた

ホンダCR-V 6th 2025年12月

島﨑:改めて実車を拝見すると、パッケージングが非常にいい印象ですね。シートをもう1列増やしてもいいくらいで。

佐藤さん:実際に中国、タイではCR-Vでも3列シートがあって、やはり一定数のニーズがあるために設定しています。日本では発売の予定はありませんが……

島﨑:日本での展開はRS1タイプですか?

佐藤さん:基本RSで、黒い艶のあるパーツを使ったブラックエディションを設定しています。今後の検討が入るかもしれませんが。

島﨑RS以外の導入の検討はこれまでには?

佐藤さん:初期の頃にありました。ただ日本で作るのではなくタイからの輸出になるので、どうしてもグレード展開が限られます。日本仕向けはホンダのロイヤリストや年齢の高い方々向けということで、1番いいものを持ってくることにしました。アジア、タイではRSはトップグレードで、しっかりいいものを持ってこよう、ブラックエディションなどはグローバルであるほぼすべての装備を入れている仕様になります。輸送する、輸入する、船に乗せると考えると、なかなか多くのグレードを持ってこれません。台数よりもロイヤリストの方々に向けてという意味も含めて、いいものをしっかりとお届けする考え方です。

ホンダCR-V 6th 2025年12月

ホンダCR-V 6th 2025年12月

島﨑:グローバルで言うと、昔は同じクルマでも仕向け地ごとにかなり違った仕様、スペックがありましたが、ザックリと見ると、今はかなりシンプルになってきた気がしますが。

佐藤さん:なるべくひとつのスペックにするように……します。タイヤで言いますと、今、171819インチと設定を持っていて、RSは走りを売りにしているので、1番上の23555 R19のミシュランタイヤを履いています。一方18インチになると世界で多く設定されていて、それだけ数も必要になるので、複数のタイヤメーカーを使っています。ただ特定のメーカーのタイヤごとにサスペンションを見直す開発はしないので、タイヤはメーカーが違ってもほぼ同じ性能になるように開発します。

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今のホンダの乗り味がすごく良い理由

ホンダCR-V 6th 2025年12月

島﨑:今回のCR-Vのサスペンションの設定はどういう方向性ですか?

佐藤さん:基本、タイの仕向けは1仕様です。欧州ではプラグインハイブリッドもあるのですが、そこには電子制御のダンパーが入っています。タイのものは電子制御はしていない物理的なダンパーにアイデアを加えたものを入れています。FF4WDがありますが、減衰力等の設定は共通です。

島﨑:ここ最近のホンダ車の“1G組み付けはこのCR-Vでもやっているのですか?

佐藤さん:はい、よくご存知ですね。実際には“仮想1G”といって、工場内でボディとサスペンションの相対的な位置決めをして接地させない状態で締結するということは、CR-Vに限らずほぼ全車でやっています。

島﨑:今度のCR-Vの乗り心地も楽しみです。

佐藤さん:それとホンダは“低フリクション化”も進めていまして、ボールジョイントやダンパーのロッドとチューブの動きなどのフリクションを徹底的に減らしています。これも乗り味に相当影響するので、ライバル車と乗り較べても目をつむっていてもわかる圧倒的な乗り味のよさになっています。あとはボディ剛性も、かつては硬ければ硬いほどいいという時代でしたが、実は捩じられた時の前後バランスが重要だったりします。今はそういうノウハウがわかってきて、目標値ができたらそれを達成する技術も兼ね備わってきた。足回りだけじゃなく、ボディ剛性の考え方も含めて、今のホンダの乗り味はすごくよくできている、と思っています。

ホンダCR-V 6th 2025年12月

島﨑:最近試乗したいくつかのホンダ車を思い浮かべると、そのお話の成果に納得できます。

佐藤さん:機種を通して乗り味を見ているメンバーがいまして、横通しでホンダの乗り味ができているかチェックしています。ホンダ車のどれを乗ってもいいよね、と言っていただけるのはそういうところかなと思います。

島﨑:ステアリングの操舵感も統一性がありますよね。

佐藤さん:もともとステアリングのセッティングをやっていたメンバーがウチのチームでLPL代行をやっていて、今回のCR-Vも、可変レシオを入れるなどしてこだわった彼の自信作です。

島﨑EVが増えて、ともすれば今どきクルマは走ればいいでしょと思われがちですけれど、そういうこだわり、ブランドごとの味を大事にされているお話を伺うことができて嬉しく思いました。どうもありがとうございました。

ホンダCR-V 6th 2025年12月

 (写真:編集部)

※記事の内容は2025年12月時点の情報で制作しています。

*新型ホンダCR-V開発者インタビューのデザイン&パーケージング編はこちら

https://autonavi.car-mo.jp/mag/category/catalog/developers/honda/cr-v_6th_design_2512/

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