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【スズキフロンクス】「騙しやがって!」4mを切る寸法とは信じられなかった(開発責任者に聞く編)〜開発者インタビュー

【スズキフロンクス】「騙しやがって!」4mを切る寸法とは信じられなかった(開発責任者に聞く編)〜開発者インタビュー
【スズキフロンクス】「騙しやがって!」4mを切る寸法とは信じられなかった(開発責任者に聞く編)〜開発者インタビュー

その細やかな観察眼では業界一、二を争うモータージャーナリストの島崎 七生人さんが、話題のニューモデルの気になるポイントについて、深く、細かくインタビューする連載企画。第80回は2024年秋に発売予定のスズキ「フロンクス」です。クーペスタイルが印象的な新型コンパクトSUVについて、開発責任者であるスズキ株式会社 商品企画部 四輪B・C商品統括部 チーフエンジニア 森田 祐司(もりた・ゆうじ)さんにお話を伺いました。

ちょうどいいサイズ、価格帯のクルマ

ちょうどいいサイズ、価格帯のクルマ

チーフエンジニアの森田さん(左)と島崎さん(右)

島崎:取材のご案内には“新型SUV”とだけ書かれていたのですが、思いがけずフロンクスの実車と対面できるとは!と、小躍りした次第です。実車、かっこいいですね。

森田さん:ありがとうございます。実は私も最初にデザインを見せられたときに、かっこいいと思ったのですが、まさか4mを切る寸法で仕上がっているとは信じられず「騙しやがって!」と思ったほどでした(笑)。

島崎:グローバルでみるとSUVカテゴリーではブレッツァ、ビターラを始め、いろいろお持ちですが、このフロンクスはどういう位置づけ、どういう経緯で日本市場に導入されることになったのですか?

森田さん:SUVでいうと日本ではエスクードがありますが、ハイブリッドと電制4駆を載せて、なかなか高い価格帯にあります。私どもでいうと、軽自動車にお乗りで、少し大きなクルマが欲しいなというお客様にその受け皿がなく、他社に出ていかれてしまう。コンパクトなSUVは注目されていますので、ちょうどいいサイズ、価格帯で出せるクルマとして、このフロンクスをご用意しようということになりました。

島崎:わかりやすいお話ですね。

全長4.0mのクーペタイプSUVはなかなかない

全長4.0mのクーペタイプSUVはなかなかない

森田さん:それともう1つは、クーペタイプのSUVというと人気があり、かっこいいねというお声を良くお聞きします。ですがクーペタイプというと4.5mを超えるクルマならありますが、普段使いにはちょっと大きいよね、と。そこで、そういう雰囲気を持たせながら普段使いでも扱いやすく、上質感を持ちながらコンパクトなクルマとなると、今はなかなかないところなのかなと思います。

島崎:実車を拝見すると、なるほどそういうクルマなのか、と納得できますね。

森田さん:小さくてかっこよくて扱いやすくてと、口でいうのは簡単ですが、そんなの難しいだろと思いながら、デザイナーには「大きく見せてくれ」とお願いをしました。で、実際には思ったよりも大きく立派に見えるデザインになったなというのが私の個人的な感想です。

全長4.0mのクーペタイプSUVはなかなかない

島崎:最初は騙しただろう、全長4mは超えているだろうと思われて(笑)。ところでフロンクスはそもそもどこの市場向けに企画されたのですか?

森田さん:最初はインドで生産してインドに出そうと。インドも今はSUV市場が大きくなってきて、韓国勢などもいますから、まずインド向けを作り、そこから世界的にもSUVが流行っていますので、なかなかないサイズということで輸出をしていきまして、輸出先でも好評をいただいているところです。

全長4.0mのクーペタイプSUVはなかなかない

島崎:日本市場の目下のSUVといいますと?

森田さん:小型車でいうと今はクロスビーとエスクード、それぐらいです。以前にはSX4、イグニスといったちょっと小さいクルマはありましたが……。

島崎:ということは、フロンクスは何かの後継ということでもないですね。

森田さん:プラットフォームでいうとスイフト、バレーノで、中身を使い、血筋を保ちながら新しいSUVの形に仕上げました。

島崎:バレーノもさっぱりとしたいいクルマでしたね。ビターラとはプラットフォームは違うのですね?

森田さん:フロンクスは一つ世代が新しく、先代スイフトからの軽量プラットフォームということになります。

インド人も日本人も家族が嬉しいことが幸せ

インド人も日本人も家族が嬉しいことが幸せ

島崎:それにしてもコンパクトSUVが最近増えていますが、森田さんにお聞きした場合、フロンクスの1番の売りというと、やはりスタイルですか?

森田さん:スタイルもそうですが、やはり運転して楽しいというところと、快適な空間と乗り心地の両立というところはしっかりやったと思っています。

島崎:走りか快適性かのどちらかではなく?

森田さん:クルマの機能で何が欲しいか?と聞くとあれもこれもとなる。じゃあ、運転される方がどういうことに嬉しさを感じますか?と会話をしてくると、スタイリングもありますが、運転していて自分が楽しいことが嬉しいですという方が多くいらっしゃる。さらにその次に、乗せた家族や友人が「この車いいね、快適だね」と笑顔になって会話が楽しめるのが嬉しいです……そんな言葉が出てきました。自分も楽しい、乗っている人も楽しい、これがみんなの幸せ、クルマを所有することの幸せだなぁということで、じゃあそれをどういう風に形にしていこうかと考えたわけです。

インド人も日本人も家族が嬉しいことが幸せ

インド人も日本人も家族が嬉しいことが幸せ

島崎:具体的な“形”としては?

森田さん:まず後席に座って、しっかりとした足元空間の余裕があってシートもしっかり座れるようにしました。あと、乗り心地も運転手が運転するんだから我慢しておけではなく、運転手が走りを楽しんでも安心して乗れる。それと会話ができるように静粛性も高めて……わがままなのですが、そのようにバランスを取ったクルマなんです。

島崎:少しだけ突っ込ませていただくと、そういうコンセプトは他社にも例がなくはないと思いますが、やはり時代性ということですか?

森田さん:時代というより、後席、家族を1番にイメージしたきっかけは、インドの方が家族を物凄く大事にするということでした。それを隠さず表現される。割と何でも話をしてくれて「家族が大事です」と言葉でも言う。一方で日本人もだんだん掘り込んでいくと実は家族のことを考えている。クルマのインタビューも最初は真面目なんですが、さらに聞き込んで話が広がると、1番深いところで、家族が嬉しいことが幸せだと日本の方も思っています。

島崎:インド人も日本人も共通するということなんですね。

インド人も日本人も家族が嬉しいことが幸せ

インド人も日本人も家族が嬉しいことが幸せ

森田さん:考え方として共通の部分を大事にすればいいんじゃないかと思ったわけです。モノが溢れてくると、モノに考え方が行くのですが、これからはモノからではなく自分の嬉しさから受け入れる、そんな体感からきている思いです。

島崎:僕自身はモノやカタチから入るところがあるのですが……。

森田さん:ライフスタイルや思いから組み立てていったクルマなので、その結果が、先ほどご説明したバランスで作るといいんじゃないか、そんな思いです。

島崎:デザインも単なるカタチではなく、気持ちに響くものとして?

森田さん:そうですね。

島崎:後席も大事にしていることを試乗でも確かめたいと思いますが。

森田さん:ぜひ。後席も大事にというのも、快適性に特化した偉い人を乗せるクルマというよりも、家族が笑顔で会話が楽しめるよう、お客様をイメージしながら開発しました。

物凄い飛び道具は使っていないが

物凄い飛び道具は使っていないが

島崎:運転していると、走行中のNVH(編集部注:ノイズ=騒音、バイブレーション=細かい振動、ハーシュネス=突き上げ)も全体にさり気なくレベルが抑えられている……そんな印象がしました。

森田さん:使っているアイテムは、物凄い飛び道具であったり、このクルマ初というものではなく、いろいろなクルマで試したものの熟成をしながらフロンクスのバランス点を観ながら、今まで突き詰めてきたものを少しずつ、本当に細かなところで開発してきた、そんな感じです。

島崎:資料のなかに足回りは専用チューニングとありましたが、これはどのようなことですか?

森田さん:インドでは路面が厳しいので耐久性を持たせたタイヤにしていますが、日本では低ころがりで燃費にも効くようなタイヤの設定にしています。だたし低燃費だけのタイヤではなく、しっかり路面を捉えて感じられるようにし、乗り心地とのバランスもとったタイヤを選定しました。スプリング、ショックの設定についても、ドライビングフィールをしっかり伝えながら、乗っている人が我慢しないで快適に乗れるところを目指して専用のチューニングをしています。

物凄い飛び道具は使っていないが

島崎:インドのスピードレンジは?

森田さん:日本よりちょっと低いのですが、高速道路が発展してきまして、今までは80km/h程度でしたが、速度取り締まりが厳しい中でも100km/h〜120km/hと、割と日本に近いくらいになってきているのがごく最近です。

島崎:想定としては?

森田さん:日本とインドではそれほど大きな差はつけていないです。もちろん欧州ではまた違いますが。インドでは荒れた路面や街中にあるスピードブレーカーと呼ばれる、スピードを落とさないと通れない大きなギャップを乗り越えた時に衝撃を受けない設定にはなっています。日本ではそれはないので、橋の段差の1、2cmを乗り越えた時のショックをどう丸めるか、速度域の違いというより対象物の違いで狙いが違っているので、それぞれ適した設定になっています。

物凄い飛び道具は使っていないが

島崎:ステアリングフィール、操舵感は?

森田さん:そこは少し変えており、日本のほうがしっかり感を出しており、操舵した時に軽過ぎず、大きな違いというほどではありませんが、ちゃんと手応えがあるようにしています。

島崎:センターをしっかり出すというご説明がありましたが。

森田さん:直進安定性を出そうということで、センター感をしっかり出すようにパワステのコントロールなどを使いながらやっています。

島崎:今回のご案内はクローズドコースでの試乗でしたが、直進感がしっかりあって、そこから切る、戻すのあたりのフィーリングも好みだなぁと思いました。

森田さん:ありがとうございます。

島崎:一般公道での試乗の機会も楽しみにしていたいと思います。ありがとうございました。

(写真:編集部)

※記事の内容は2024年7月時点の情報で制作しています。

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