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「スズキアルト」いまこそ世界に向け、日本ならではのエコカーとして提案するべきだ(岡崎五朗レポート)

「スズキアルト」いまこそ世界に向け、日本ならではのエコカーとして提案するべきだ(岡崎五朗レポート)
「スズキアルト」いまこそ世界に向け、日本ならではのエコカーとして提案するべきだ(岡崎五朗レポート)

軽自動車の中でも最もベーシックな存在のスズキアルト。ハイブリッド車でも109万円、ガソリン車であれば94万円という低価格を実現しながら、優れた燃費性能や充実した先進安全性能を備えています。下手なEVよりも遥かにエコ度は高いという岡崎五朗さんのレポートをお届けしましょう。

クルマ感度の高い人たちから注目を集めている理由

クルマ感度の高い人たちから注目を集めている理由

今回はちょっと前置きが長くなる。長い前置きから始めなければ、新型アルトの本当のスゴさをお伝えできないからだ。

「これぞエコカーの本質ですね」「どう言ったらこの凄さが伝わるんでしょう?」「オートバイより燃費がいい!」「海外輸出したら面白いことになると思う」。

これらは、僕が新型アルトの超ショートインプレッションをFacebookに書いたとき、付いたコメントだ。アルトといえばスズキの軽自動車のエントリーモデル。安くて燃費がいいクルマの代表格である。とはいえ、室内が驚くほど広いわけでもなく、さりとて走りが素晴らしいわけでもない。つまり、かなり地味な存在である。ということで、ワゴンRのようなハイト系やN-BOXのようなスーパーハイト系に押され、2021年の軽自動車販売台数ランキングでは10位に甘んじている。

けれど、Facebookフレンドからの注目度は驚くほど高かった。僕とつながっている人は当然だがクルマ好きが多い。そんなクルマ感度の高い人たちから新型アルトが俄然注目を集めていることを意外に思う人も多いだろう。

EVは必ずしもエコではない

EVは必ずしもエコではない

実は、この背景には昨今のEVブームが大いに関係している。カーボンニュートラルを目指すべく、いま各国が力を入れているのが、走行段階でまったくCO2を出さないEVだ。しかしEVがCO2を出さないのは走行段階に限っての話であり、発電するときや、それを溜めるバッテリーを生産する段階で実は大量のCO2を発生する。各国の発電構成にもよるが、火力発電がメインである日本の場合、「生産、使用、廃棄の各段階におけるトータルCO2発生量を評価する指標「LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)」で眺めると、EVは必ずしもエコではない。控えめに見ても10万km走ってようやくハイブリッド車と同等になる程度なのだ。

そんじょそこらのEVを遥かに上回るアルトのエコ度

そんじょそこらのEVを遥かに上回るアルトのエコ度

その点、軽自動車のLCAは素晴らしく優秀だ。新型アルトの重量は約700㎏しかないから、鉄やプラスティックといったパーツをつくる段階でのCO2発生量が少ない。では燃費はどうか。ハイブリッドモデル(WLTCモード燃費27.7km)を借り出し、千葉県の一般道を流れに沿って走ったのだが、結果はなんとカタログ数値を遥かに超える33.5km/L! 製造段階でも使用段階でもここまで省エネなのだから、LCA評価でのエコ度は間違いなくそんじょそこらのEVを遥かに上回る。おそらく、ダイハツミライースと並んで世界でもっともエコなクルマだろう。そう、109.8万円〜という圧倒的買いやすさを実現すると同時に、最新のEVが逆立ちしてもかなわないエコ性能を実現しているのが新型アルトだということに僕のFacebookフレンド達は気付き、冒頭のようなコメントを付けたというわけだ。

街乗り中心の移動体としての質は明らかにレベルアップ

街乗り中心の移動体としての質は明らかにレベルアップ

街乗り中心の移動体としての質は明らかにレベルアップ2

一見平凡でありながら、実は世界最高レベルのエコカーである新型アルト。クルマとしての出来映えはどうかというと、いいところと悪いところが混在している。いいところは、先代から明らかに進化した乗り心地と静粛性だ。荒れた路面も走ったが、先代で気になっていたリアの突き上げやタイヤのバタ付きがきれいに抑え込まれ、実に快適に走ってくれる。エンジン音や、ゴーッというタイヤノイズも小さくなった。街乗り中心の移動体としての質は明らかにレベルアップしている。

豊富な先進安全装備を標準で備えつつ低価格を実現

豊富な先進安全装備を標準で備えつつ低価格を実現

デュアルカメラブレーキサポート、誤発進抑制機能、後退時ブレーキサポート、後方誤発進抑制機能、リヤパーキングセンサー、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能、ハイビームアシスト、6エアバッグといった豊富な先進安全装備を標準で備えつつ、ハイブリッドで109.8万円〜、エンジン車なら94.4万円〜という価格を実現しているのもスゴい。もちろん、中国製の超低価格EVと比べたら信頼性や耐久性もケタ違いに優れている。現在、軽自動車はほぼ100%日本で販売されているガラパゴスカーだが、いまこそ世界に向け、日本ならではのエコカーとして提案するべきだと思う。

無難なキャラになってしまったデザインにはちょっと不満

無難なキャラになってしまったデザインにはちょっと不満

一方、ちょっと不満なのがデザインだ。筋肉質で研ぎ澄まされ個性的だった先代と比べると、新型は無難なキャラに収まってしまった。50㎜高めた全高は居住性や乗降性を間違いなく高めているが、それと引き換えにスポーティーな印象も薄まった。要するに、ノンポリな女性が好みそうな、ちょっぴり可愛らしい無難なキャラになってしまったということだ。クルマ好きが大注目する世界一のエコ性能の持ち主でありながら、それがデザインでまったく表現できていないのはもったいないなと思う。

※記事の内容は2022年1月時点の情報で制作しています。

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