三菱のミドルコンパクトSUVであるエクリプスクロス。クーペのような流麗なスタイルには長年にわたってラリー活動を行ってきた三菱らしく、凝った4WD制御技術が盛り込まれています。さらに最近のマイナーチェンジでパワートレインをクリーンディーゼルからPHEV(プラグイン・ハイブリッド)に変更するなどニュースが盛りだくさん。そんな三菱エクリプスクロスを徹底レビューしてみましょう。
三菱としては最もフレッシュなSUV
高い悪路走破性を実現した本格オフローダー4WD、パジェロの国内販売は終了してしまいましたが、長年にわたるラリー活動で培った技術力を反映させた高い走行性能を誇るSUVをラインナップしているのが三菱自動車です。
現在、三菱はSUVをフラッグシップモデルのアウトランダー/アウトランダーPHEVをはじめ、エクリプスクロス、RVRと3モデル用意しています。その三菱SUVの中で2018年3月に登場した最もフレッシュなモデルがエクリプスクロスです。ここでは、登場して3年が経過したエクリプスクロスについて、徹底解説しましょう。
SUVの機能性を犠牲にしないクーペスタイル
エクリプスクロスは、SUVとしての機能性を犠牲にすることなく、存在感のあるクーペスタイルを採用しているのが特長です。強いパフォーマンスと、人とクルマを守る安心感を表現した「ダイナミックシールド」フロントデザインコンセプトをさらに進化させたフロントマスクを採用。
リアも高い位置に配したワイドなリアランプと前傾したリアウィンドウを上下に二分することによって、立体的で個性的なスタイルに。さらにチューブ式LED テールランプと中央のハイマウントストップランプが同一直線上で発光することによって、幅広さと安定感を表現しています。
ラリーで培った車両制御技術が盛りだくさん
デビュー当初、搭載していたエンジンは、最高出力150ps、最大トルク240Nmを発生し、2.4L自然吸気エンジンを凌ぐ低中速トルクを発揮する1.5L直列4気筒直噴ガソリンターボの1種類。トランスミッションは8速スポーツモード付きCVTが組み合わされました。このCVTはステップアップシフト制御を採用することで、CVT 特有の回転が先行するような吹け上がり感を低減し、ダイレクトで力強い加速感を感じられるのが特徴です。
駆動方式は2WD(FF)と4WDを設定。4WD車にはアクセル開度や車速、車両の走行条件などから、後輪へ伝達するトルクを常に適切に配分する電子制御4WD システムを搭載。これにAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)ブレーキ制御を追加した車両運動統合制御システム「S-AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロール)」を採用しています。ラリー活動からフィードバックされた三菱ご自慢のこれらの機構で、ドライバーの操作に忠実な車両挙動を実現しています。さらに「AUTO」「SNOW」「GRAVEL」の3つの走行モードを設定し、センターコンソールに配置したドライブモードセレクターで路面状況に応じたセッティングも選択できます。
8ATを搭載したクリーンディーゼルを追加したものの
2018年12月に一部改良を行い、2WD車にもアクティブ・ヨー・コントロールを採用し、ハンドリングの軽快感や回頭性、旋回時のライントレース性の向上を図っています。また、フロントガラスに遮音性の高いガラスを採用することで、風切り音を低減し、走行時の静粛性を向上させました。
そして、2019年6月の一部改良で、クリーンディーゼルエンジン搭載車を追加しました。コモンレール式燃料噴射装置と尿素SCRシステムを採用した2.2L直列4気筒ディーゼルターボエンジンは、最高出力145ps、最大トルク380Nmを発生しつつ、優れた燃費性能も両立しています。ディーゼルモデルはトランスミッションに8速ATを採用、駆動方式は全車4WDのみとなっています。
初のマイナーチェンジでついにPHEVモデルを投入
2020年12月にエクリプスクロスは初のマイナーチェンジを行います。内外装の変更と同時にディーゼルターボエンジンを廃止して、新たにPHEV(プラグイン・ハイブリッド)を設定しました。
外観デザインは、三菱のデザインアイコンである、SUVの力強いパフォーマンスと人とクルマを守る安心感を表現する「ダイナミックシールド」を進化させ、各種ランプレイアウトの変更により、いっそう精悍でスポーティーな表情になりました。また、延長されたリア部分は従来のダブルガラスから流れるようなシルエットとなるシングルガラスに変更されました。
スマホ連携の8インチディスプレイオーディオも新設定
インテリアでは、ブラックを基調として、エンボス加工のスエード調素材と合成皮革のコンビネーションシートを上級グレードに設定。さらにドアトリムも同色のコーディネートを行い上質でスポーティーな空間に仕立てています。新設定された「スマートフォン連携ナビゲーション」はディスプレイ画面が8インチに拡大され、見やすさや操作性が向上しているのが特長です。
近所への買い物ならEVモードでOK!
エクリプスクロスに新搭載されたPHEVシステムは、前後1基ずつの高出力モーター、大容量バッテリー、2.4L直列4気筒MIVECエンジンで構成されるツインモーター4WD方式を採用。EV走行での航続走行距離はWLTCモード57.3km/Lと近所への買い物などであればEV走行だけで事足ります。
災害時に心強いPHEVのバッテリーと発電システム
また、車内に設置した100V AC電源(最大1,500W)により家庭用電化製品に電力供給が可能なのもPHEVのアピールポイント。さらに急速充電器を使いV2H機器を接続すると、クルマに蓄えた電力を家で使うことができる家庭用蓄電池となります。PHEVシステムによりみずから発電できるため、満タン・満充電状態からは一般家庭の最大約10日分に相当する電力を供給することが可能です。
エクリプスクロスは販売開始から3年が経過したばかりですが、搭載するパワートレインは1.5L直4ガソリンターボを中心に2.2L直4ディーゼルターボが追加され、現在はそのディーゼルターボの代わりに2.4Lエンジンを搭載したPHEVを設定するなど目まぐるしく変わっています。
未来的なPHEV、車両統合制御による優れた走り
国産車で最も販売されているプラグイン・ハイブリッド車、アウトランダーPHEV譲りのPHEVシステムを搭載し、モーターによるパワフルな走りを楽しめるのがエクリプスクロスPHEVの特長です。さらに強調したいのは、搭載している車両運動統合制御システム、S-AWCがもたらす高い走行性能は、国産ミドルサイズSUVの中でトップレベルの実力を備えているという点です。特にカーブを曲がる際の旋回性能はSUVというよりはスポーツカーに匹敵する俊敏さを実現しています。もちろん、この乗り味は1.5Lターボ車でも味わえますが、電子制御でより細かい制御が行えるPHEVのほうが、これまでに体験したことのない操縦安定性と乗り心地を味わうことができます。
先進安全装備システムは、衝突被害軽減ブレーキシステム(FCM)やレーダークルーズコントロール(ACC)などひととおり揃っていますが、最新モデルとしては運転支援の部分でやや物足りない内容となっているのが残念な部分です。
■エクリプスクロス価格表
グレード | 駆動方式 | WLTCモード燃費(km/L) | 車両本体価格 |
---|---|---|---|
1.5M | 2WD | 13.4 | 253万1100円 |
4WD | 12.4 | 275万1100円 | |
1.5G | 2WD | 13.4 | 286万7700円 |
4WD | 12.4 | 308万7700円 | |
1.5G プラスパッケージ | 2WD | 13.4 | 312万6200円 |
4WD | 12.4 | 334万6200円 | |
PHEV M | 16.4 | 384万8900円 | |
PHEV G | 415万2500円 | ||
PHEV P | 447万7000円 |
※記事の内容は2021年8月時点の情報で制作しています。