以前からSUVのラインナップが充実していた三菱の中で、コンパクトクラスのSUVとしてロングセラーを誇るのが3代目となる現行型RVRです。2019年に大幅なマイナーチェンジを行うなどアップデートが繰り返されているRVRを徹底レビューしてみましょう。
スライドドアを捨てた現行型
1980年代に、現在のSUVのルーツ、クロスカントリー4WDブームを作った三菱パジェロは2019年8月をもって日本国内での販売が終了しています。しかしSUVのパイオニアともいえる三菱は、他のメーカーに先駆けてプラグインハイブリッドを搭載したアウトランダーをはじめ、クーペスタイルを採用したエクリプスクロス、そしてコンパクトSUVのRVRと3モデルを用意しています。その中から、今回は三菱のSUVラインナップの中で、最もモデルライフが長いRVRを徹底レビューしたいと思います。
現行モデルで3代目となるコンパクトSUVのRVRは2010年2月に登場し、すでに約11年半というロングセラーモデルとなっています。2003年まで販売されていた2代目RVRはリアにスライドドアを採用したハイトワゴンの個性派モデルでした。しかし、現行型RVRは全長約4.3mの塊感のあるSUVらしいボディデザインとなり、ドライバーのシートポジションを高くしたことで、見晴らしの良いアイポイントを実現。またコンパクトなボディにより街中などの取り回しの良さが特徴の優れたパッケージングを兼ね備えています。
ロックモードを採用した4WDシステムに三菱らしさ
デビュー当初は最高出力139ps、最大トルク172Nmを発生する1.8L直列4気筒MIVEC DOHCエンジンを搭載し、組み合わされるトランスミッションは、パドルシフトにより変速可能なINVECS-IIIと呼ばれる6速スポーツモード付CVTでした。さらに減速エネルギー回生システムを搭載し、燃費性能は10・15モードで、15.0〜15.2km/Lを実現していました。
駆動方式は2WD(FF)と4WDを用意。4WD車には上級モデルのアウトランダーでも採用されている、スイッチ操作で2WD、4WDオート、そして4WDロックの3つの走行モードが切り替えできて、走行状況に応じて、前後輪へのトルク配分を最適にコントロールする電子制御4WDを搭載しています。SUVのほとんどの車種で4WD車を設定していますが、4WDロックモードを採用しているモデルは少なく、こういったこだわりはさすが三菱といえる部分でしょう。
燃費の改善を図った前半戦
RVRは約11年半というモデルライフの中でマイナーチェンジや一部改良を重ねて進化しています。その中から注目の高いものを紹介します。
2011年10月には、MとGグレードに搭載するエンジンがアイドリングストップ機構「オートストップ&ゴー(AS&G)」を搭載した1.8L直列4気筒MIVEC SOHCエンジンへと変更されました。このエンジンの燃費性能は10・15モード燃費で16.8〜17.0km/Lに向上しています。さらに、4WD車だけでなく、2WD車にもタイヤのスリップを防ぎ安定した走行をサポートする「アクティブスタビリティコントロール(ASC)」を標準装備として安全性を向上しています。
2012年10月にはマイナーチェンジを行い、全グレードで1.8L直列4気筒MIVEC SOHCエンジンを搭載しました。さらに、内外装の変更を行い、フロントグリルを立体感のある造形とすることで、力強さに上質さを融合させています。さらにCVT特有の滑り感を減少させる新しい変速制御を採用し、気持ち良い加速性能を実現。リアサスペンションの形状を見直し、レイアウトの最適化に加えて、ショックアブソーバー、スタビライザーのチューニングを行い、操縦安定性と乗り心地を向上させています。
2014年4月の一部改良では、CVTのギア比幅を拡大したことで、加速&燃費性能を向上。同時にサスペンションの設定を最適化したことで、操舵安定性と乗り心地が向上しています。
2度目のマイナーチェンジ以降は安全装備の充実を図る
2017年10月には2度目のマイナーチェンジを行います。内外装の変更に加えて、予防安全技術「e-アシスト」を採用しました。衝突被害軽減ブレーキシステム(FCM)をはじめ、車線逸脱警報(LDW)、オートハイビーム(AHB)の3つの機能がパッケージとなっています。さらに搭載しているディスプレイオーディオにスマートフォンとの連携機能を追加するなど、安全性能、利便性が大幅にアップデートしました。また、ダッシュパネルやヘッドライニング、テールゲートトリムなどの吸遮音材を追加し、静粛性も向上させています。
2018年9月には予防安全技術「e-アシスト」を全グレードに標準装備としたのをはじめ、後側方車両検知警報システム(BSW/LCA)、後退時車両検知警報システム(RCTA)を設定するなど運転支援装備を拡充しています。
最近の三菱らしいデザインを獲得した3度目のマイナーチェンジ
そして、2019年8月に3度目のマイナーチェンジを行い、内外装の変更を行いました。フロントのデザインは「ダイナミックシールド」を進化させ、左右から中央に向かって包み込むバンパーのプロテクト形状とフロントグリル部を水平・垂直基調のスクエアなラインで構成することで、力強さを表現しています。
一方のリアデザインは車幅いっぱいにまで広がる水平基調のテールランプデザインとバンパーサイドにブラックガーニッシュを採用することで、ワイド感と安定感を演出しています。
スマホ連動ナビも用意
インテリアでは室内の天井をブラックとすることで室内空間にスポーティーさを漂わせています。メーカーオプションで新設定したスマートフォン連携ナビゲーションは8インチのディスプレイを採用。内蔵地図によるルート案内やVICS交通情報対応といった便利な機能に加えて、iPhoneをはじめとしたスマートフォンをUSBにつなぐだけで、対応するアプリケーションを満喫することが可能となっています。
パワーユニットなどには古さも目立つが4WD性能は色あせず!
搭載するパワートレインは、1.8Lエンジンのみ。そして運転支援システムも最新のモデルと比べると、いささか物足りなさはあります。しかし、コンパクトSUVの中でも卓越した悪路走破性を備えているのがRVRです。4WDロック機構をもつ4WDシステムによるダイナミックな走行性能は、ほかのコンパクトSUVではまったく歯が立ちません。国産メーカーからコンパクトSUVが発売されている中、ニッチとはいえ高い悪路走破性を実現した4WDがRVRの魅力といえるでしょう。
■RVR価格表
グレード | 駆動方式 | WLTCモード燃費(km/L) | 車両本体価格 |
---|---|---|---|
M | 2WD | 13.8 | 214万3900円 |
4WD | 12.8 | 238万4800円 | |
G | 2WD | 13.8 | 231万4400円 |
4WD | 12.8 | 255万5300円 | |
ブラックエディション | 2WD | 13.8 | 244万8600円 |
4WD | 12.8 | 268万9500円 |
※記事の内容は2021年7月時点の情報で制作しています。