日本を代表するスーパースポーツといえば、やはり日産GT-Rがその筆頭でしょう。スカイラインGT-Rの時代から続く栄光の歴史を受け継いだ現行型GT-Rも、登場から約14年が経過し、次期モデルの噂も聞こえてきました。今回はそんな日産GT-Rを徹底レビューしましょう。
現行型は2022年モデルで終了か
2021年4月に2022年モデルのGT-R NISMOと特別仕様車のGT-R NISMO スペシャルエディションが、正式発表に先駆けて公開されました。まだ価格は発表されていませんが、特別仕様車のGT-R NISMO スペシャルエディションは、クリア塗装を施したNISMO専用カーボン製エンジンフード(NACAダクト付き)をはじめ、レッドリム加飾を施した20インチの専用レイズ製鍛造アルミホイール、そしてピストンリング、コンロッド、クランクシャフトなどに高精度重量バランス部品を採用したエンジンなどと、実にスペシャルな仕様となっています。
それもそのはず、現行型日産GT-Rは2022年の騒音規制をクリアできないため、いったん生産終了となるといわれています。つまり、この2022年モデルがファイナルモデルとなる可能性が高いのです。今回は2007年に登場し、すでに約14年が経過した日本が誇るスーパースポーツカー、日産GT-Rを徹底レビューします。
誰でも、どこでも、どんなときでも楽しめるスーパーカー
日産GT-Rは2007年、「誰でも、どこでも、どんなときでも最高のスーパーカーを楽しめる」というコンセプトを具現化した新次元のマルチ・パフォーマンス・スーパーカーとして登場しました。
そのボディはカーボンやアルミ、スチールを最適配置し、高精度に作り上げられています。搭載されるエンジンは最高出力480ps、最大トルク588Nmを発生する3.8L V型6気筒ツインターボ、「匠」と呼ばれる職人によって手組みされています。組み合わされるのは、6速のデュアルクラッチトランスミッションで、世界で初めてクラッチ、ミッション、トランスファーをリアに移動させ独立型トランスアクスル4WDを採用したのが特徴です。
毎年のように行われた改良、3度のマイナーチェンジ
2008年の一部改良でエンジンの最高出力は485psに向上。さらに新構造のショックアブソーバーの採用や、フロントバネレートのアップを含むサスペンションセッティングの変更により、回頭性の良いハンドリングと、よりフラットな乗り心地を両立する性能向上を図りました。
続く2009年の一部改良で、フロントサスペンションのショックアブソーバーとスプリングの精度を向上させることにより、さらに上質な乗り心地を実現。リアサスペンションはラジアスロッドブッシュの剛性を高めることで、路面との接地感がよりダイレクトになっています。
GT-Rは2010年に初のマイナーチェンジを行い、外観の独創的なGT-Rデザインに空力性能向上アイテムを織り込み安定感と迫力を向上させています。インテリアには新形状のナビモニター周りのパッドとフィニッシャー、カーボン製センタークラスターフィニッシャーなどを採用し、よりスポーティーな印象を強めました。パワートレインは、ターボチャージャーのブースト圧やバルブタイミング、空燃比を変更するとともに、吸排気系のチューンを行い、JC08モード燃費を8.6km/Lに向上させながら、最高出力を530ps、最大トルクを612Nmへと大幅に向上させています。
2011年の一部改良ではエンジンの最高出力が550ps、最大トルクは632Nmまで向上。
2012年はエンジンの中回転域のレスポンスや高回転域の伸びを向上させたほか、ボディ剛性を高め、ショックアブソーバーやスプリング、フロントスタビライザーの仕様変更を行いました。
GT-Rは2013年に2度目のマイナーチェンジを行います。シャシーやサスペンションのセッティングを見直し、ステアリング修正の少ない高水準の走行安定性と優れた路面追従性がもたらす上質な乗り心地を実現させました。外観は「稲妻の閃光」をイメージした新デザインの高効率LEDポジションランプによるランプシグネチャーを採用したほか、LEDのヘッドランプやリアコンビランプを採用しました。
さらに研ぎ澄まされたGT-R NISMOがGT-Rの進化を加速させた
そして2013年11月にサーキットで培ったノウハウを投入したGT-R NISMOを発表。最高出力600ps、最大トルク652Nmというハイスペックな仕様となっています。
2014年は、パワートレインの制御の最適化をはじめ、ショックアブソーバーの減衰力特性の変更やECUのチューニングを実施。さらにブレーキやタイヤも見直され、乗り心地の向上やノイズの低減を図る一部改良を行いました。
2016年にGT-Rは3度目のマイナーチェンジを実施。内外装の変更をはじめ、標準モデルのエンジンにもGT-R NISMOの技術を採用した気筒別点火時期制御を採用し、燃費を損なうことなく最高出力570ps、最大トルク637Nmまで性能を高めています。またナビゲーションのディスプレイを7インチから8インチに拡大、パドルシフトはステアリングホイール固定タイプに変更され、操作性が高まっているのも特徴です。
2017年の一部改良では「国土交通省認可 サッチャム欧州カテゴリーⅡ準拠 車両防盗システム」を全グレードに標準設定したほか、全グレードでアップルカープレイに対応しました。
2019年の一部改良では、GT-R NISMOに採用してきたレスポンスに貢献するターボ効率化技術「アブレダブルシール」を採用し、高レスポンスを実現。また外観は一つひとつ手作りで加工するチタン製のエキゾーストフィニッシャーが採用され、新デザインのホイールと合わせて存在感をいっそう高めています。
初期モデルはサーキットでは速かったが…
こうして見ると、2007年に登場して以降、GT-Rは毎年のようにアップデートを重ねて進化しています。この結果は乗り味にも表れています。デビューイヤーの2007年モデルは、サスペンションは硬く引き締められていて、サーキットのようなキレイな路面では抜群のパフォーマンスを発揮しましたが、路面の荒れた一般道を走行すると、まっすぐ走らせるのも難しいくらいナーバスな一面を持っていました。その後、リアサスペンションのチューニングを重ねることで、徐々に接地感が向上し、GT-Rは誰でもドライブしやすい車へと変化していきます。
2016年にマイナーチェンジで大きく方向転換
特に乗り味が大きく変わったのは、2016年の3度目のマイナーチェンジです。開発担当者が変わったこともありますが、これまでのサーキットでの速さを重視したモデルから、ストリートでの楽しさを重視するモデルへとキャラクターを変更。これにより、一般道での安定感が抜群に高まり、初期モデルのナーバスな面はすっかり影を潜めました。
さらに2019年モデルは、街乗りで多用する低〜中回転域のエンジンのレスポンスが向上し、アクセルを軽く踏むだけで、GT-Rらしい異次元の加速性能を味わえるようになりました。
熟成の域に入って、楽しめる最高のスーパーカーに
スポーツカーというのは登場して終わりではなく、販売開始してから熟成を重ねることで、よりパフォーマンスが向上します。まさにGT-Rも2016年モデル以降はこの熟成の域に入り、デビュー時のキャッチフレーズ「誰でも、どこでも、どんなときでも最高のスーパーカーを楽しめる」を、ついに実現したと思います。
こうした改良の積み重ねで日本らしい「おもてなし」を表現した日産GT-R。もしかすると、新車で手に入れられる時間はもう残り少ないかもしれません。
■GT-R価格表
グレード | 駆動方式 | WLTCモード燃費(km/L) | 車両本体価格 |
---|---|---|---|
ピュアエディション | 2WD | 7.8 | 1063万1520円 |
ブラックエディション | 4WD | 1253万9880円 | |
プレミアムエディション | 2WD | 1210万5720円 | |
トラックエディションエンジニアードバイ NISMO | 4WD | 1463万6600円 | |
NISMO | 2WD | −− | 2420万円 |
※2020年モデルの価格
※記事の内容は2021年7月時点の情報で制作しています。