今や絶滅種となった5ナンバー(*)・ミドルクラスセダンの「アリオン」。自動車学校の教習車や警察の捜査車両にも採用されたモデルです。アリオンの中古車を探される方への注意点と、比較検討したいライバル車種をあわせてお伝えします。
*)「5ナンバー」は、ナンバープレート上段3桁の数字が5から始まり、排気量2.0L以下、全幅1,700mm以下、全長4,700mm以下の比較的コンパクトなボディサイズの車のこと。これより大きいと「3ナンバー」となる。近年のコンパクトカー以外の新車はほとんど3ナンバーだ。
この記事のPOINT
- 一番推したい中古車のトヨタ「アリオン」は走行距離3〜6万キロ以下、2代目以降の1.5Lモデル
- モデル、グレード構成が少ないため選択肢が少なく選び安いが流通台数が少ない。ほかの車種も選択肢に入る
中古車アリオン、おすすめモデルはズバリこれ。走行距離3〜6万キロ以下、2代目の1.5Lモデル
初代(2001〜2007年式)と、2代目(2007〜2021年式)の2世代にわたるアリオン。日常の足で乗るなら、初代は基本設計が古いため2代目から選びたい。ただ、アリオン2代目はモデルライフが長く、中古車価格帯は15〜228万円と幅が広くなっています。
アリオンの中古車を探すなら、2代目2007年式以降の1.5Lモデルがおすすめ。走行距離3〜6万キロで車両本体価格50〜60万円台が狙い目。アリオンのエンジンラインナップは、1.5L、1.8L、2.0Lの3種類がありますが、元々走りを重視したスポーツセダンではないため、走りの面は割り切って価格重視、1.5Lでいいでしょう。1.8L、2.0Lはエンジンパワーに余裕がありますが、車両価格が高くなります。
2代目アリオンは、排気量別にグレードを設定していますが、実質的にはシンプルな1グレード構成。快適装備を複数追加した「Gパッケージ」「Gプラスパッケージ」などがラインナップしていますが、『このグレードがおすすめ』といえるようなグレードは特にありません。ベースグレードでも大きな不満はないでしょう。
また、アリオンは流通台数が少ないため、グレードにこだわらず排気量で絞り込んで探すほうが良い車を見つけやすいでしょう。なお、おすすめの1.5Lモデルはその中でも少ない部類となります。探すタイミングによっては、流通台数がほとんどないことがあるかもしれません。
中古車価格帯は、2代目が40〜230万円、初代が10〜50万円台(2021年5月21日時点)となっています。なお、初代は基本設計が古いため筆者としてはおすすめしません。探すなら、2代目を。詳しくは「アリオンならではのチェックポイント」の項をご覧ください。
アリオンの先進安全装備「トヨタ セーフティ センス」は2016年6月の一部改良で搭載され、自動ブレーキなどが全車に標準装備されましたが、基本設計が古いため充実しているとはいえず、安全性能を重視する方にはおすすめできません。アリオンにトヨタ セーフティ センスはあったに越したことはありませんが、これが装備されると車両価格は100万円台後半が相場となり、安全装備を重視するのならほかのモデルを選びたいところ。
アリオンの安全装備について詳しくはこちら
★ほかにも!おすすめの中古車アリオン
モデルチェンジサイクルが長く、グレード構成がシンプルなアリオン。特筆すべきおすすめグレード、モデルとしては限られますが、4WDは雪国にお住まいの方やウィンタースポーツを趣味とされる方におすすめです。アリオンの歴史とあわせて、おすすめの4WDモデルを紹介します。
アリオンの歴史
トヨタ「アリオン」は、5ナンバーサイズ(*)のミドルクラスセダン。自動車教習所の教習車で運転したことがある方もいらっしゃることでしょう。初代は2001年のデビュー、2代目へのフルモデルチェンジは2007年で、2021年3月に生産終了しています。
アリオンの姉妹車に「プレミオ」があります。2020年からのトヨタディーラー全車種併売化の前(東京地区は2019年から)は、販売ディーラーチャネル別のラインナップでひとつのモデルをアリオンとプレミオに分けて販売していた背景があります。アリオンのスポーティー路線に対して、プレミオは高級感と格式の高さを強調するという差別化が図られています。
▼初代(2001〜2007年)
2001年12月に、カリーナの後継車種としてデビュー。同時期に基本部分は同じである姉妹車「プレミオ」がコロナの後継車としてデビューしています。排気量1.5L、1.8L、2.0Lのガソリンエンジンで全車ATの設定、駆動方式は前輪駆動と四輪駆動(1.8Lのみ)の組み合わせというラインナップでした。
マイナーチェンジは2004年12月に実施、外装デザインの一部変更と装備の一部追加、新しい排ガス規制への対応といった小規模変更となっています。
▼2代目(2007〜2021年)
2007年6月に「5ナンバーセダンの完成形」をうたって2代目へフルモデルチェンジ。2代目も初代同様に全車ガソリンエンジンにATの組み合わせですが、デビュー時は1.5Lと1.8Lのみの設定で、1年遅れた2008年に2.0Lが追加されました。
マイナーチェンジは2010年と2016年の2度実施され、2014年の一部改良では、4WD車が前輪と後輪に回転差が発生したときのみ四輪駆動へ切り替えられる方式に変更されました。
2021年3月に生産終了。これに伴ってトヨタからミドルクラスセダンが消滅、1970年から続いたトヨタ カリーナの歴史に幕を下ろします。実質的な後継車は、カローラセダン、プリウスとなります。
なお、2代目は、2007〜2010年式の前期型、2010〜2016年式の中期型、2016〜2021年式の後期型の3つに分かれ、それぞれフロントのデザインが異なるなどの外観上の違いがありますが、エンジン、トランスミッションなどのパワートレインは変えずに、燃費向上などのチューニングの変更程度となっています。
こちらもおすすめ! 四輪駆動の中古車アリオン
●雪道走行が多いなら 2014年一部改良モデル以降の1.8L 4WD 中古市場の相場160〜180万円
アリオンは初代から4WDモデルを設定していますが、2代目になって2014年に実施された一部改良では、前輪と後輪に回転差が発生したときのみ四輪駆動へ自動的に切り替えられる方式に変更されました。この方式で、雪道など滑りやすい路面での走行安定性を高めつつ、必要がないときは2WD(前輪駆動)で走行して燃費を向上させる効果があります。4WDを選択するなら、2014年式以降から選ぶことをおすすめします。なお、2014年式は改良前のモデルも混在していますので注意してください。
アリオンならではのチェックポイント
アリオンには、初代と2代目の2世代がありますが、初代は2001〜2007年に販売された世代となり、基本設計は今から20年前の古いモデルとなります。このため中古車相場価格が安くなりますが、筆者としては積極的におすすめしません。日常の下駄代わりとしてや、運転初心者の練習用として乗ると割り切るなら、中古市場では不人気の低年式セダンを狙うのはアリですが。
2代目アリオンは、2007年から2021年の約14年という長い期間販売され、2010年と2016年にマイナーチェンジが実施されています。この2回のマイナーチェンジで変わったところは、前述した2回目のマイナーチェンジで「トヨタ セーフティ センス」が全車標準装備となる以外は、小さな変更にとどめられています。また、一部改良も頻繁に行われていますが、中古車選びに際してのトピックとなるような変更はありません。
グレード構成
グレード構成はシンプルです。グレード別に主要装備の隔たりは顕著ではないため、中古車のアリオンを選ぶときは、グレードを絞って選ぶより、中古車検索サイトにある詳細検索条件機能を使って、欲しい機能を選ぶほうがわかりやすいでしょう。付いていたほうがいい装備は特にありませんが、強いていうなら、後退時にリアカメラの映像をカーナビ画面に映すバックモニターなどを装備した「Gパッケージ」「Gプラスパッケージ」が狙い目。ただ、バックカメラの基本設計が古いため、画質はあまり良くなく、画角も広くないのであまり期待しないほうがいいでしょう。
なお、アリオンは流通台数が少ないため、グレードを絞り込んで探すと在庫がない可能性が高くなります。設定グレード数が少なく、グレード間の装備差にも開きがないので、探すときにはグレードにこだわらないほうがよいかもしれません。
2代目なら走行距離重視で選んで良し
アリオンの中古車での傾向は、新車で買ったオーナーは高年齢者が多く、大切に乗られているというところ。選ぶときは、年式よりも走行距離を重視したほうがいいでしょう。マイナーチェンジや一部改良が幾度となく実施されていますが、飛躍的に機能や装備が充実したとはいえない小さな変更ばかりですので、2代目の2007年式以降(2007年式で検索すると、初代モデルが出てくるので注意)で、年式はあまり気にせず走行距離が4万キロ以下の中古車を探すといいでしょう。
先進安全装備はあきらめる
前述しましたが、アリオンの先進安全装備「トヨタ セーフティ センス」は2016年のマイナーチェンジで装備されましたが、充実した機能ではありません。2016年式以降になると、中古車相場価格がセダンにしては高い印象を受けます。2代目へのモデルチェンジが2007年と基本設計の古さも気になるところです。やはり、基本設計は新しいほうが安全性能も高いものです。同じ価格帯で安全性能を重視するなら、基本設計が新しく最新の先進安全装備を搭載したモデルを選ぶことをおすすめします。アリオンと同じミドルクラスセダンのおすすめは、別項で記載の「マツダ3」。
比べて検討!アリオンのライバル車種
トヨタ「プレミオ」
前述したアリオンの姉妹車。中身は同じで見た目の印象が異なるモデル。こちらはラグジュアリー路線です。
中古車価格帯は20〜270万円、平均価格は約110万円となっています。(2021年5月21日時点)
マツダ「Mazda3」
マツダ「Mazda3 セダン」は、2019年5月にデビューしたミドルクラスセダン。先代となるモデルは「アクセラ」です。マツダの新世代プラットフォームを採用し、最新の先進安全装備「MAZDA PROACTIVE SAFETY(マツダ・プロアクティブ・セーフティ)」を搭載しています。新しいモデルのため中古車相場価格は高めの200万円台が主流となりますが、200万円以下の中古車もあり、それならばアリオンで先進安全装備「トヨタ セーフティ センス」を搭載した(前述したとおり基本設計が古くあまりおすすめしない)中古車相場価格とほぼ同じくらいになります。先進安全装備が充実したミドルクラスセダンですが、2020年の一部改良モデルまでは、リアサスペンションが固めで好みが分かれます。
中古車価格帯は150〜320万円、平均価格は約260万円となっています。(2021年5月21日時点)
日産「シルフィ」
日産「シルフィ」もアリオンと同じミドルクラスセダン。中古車相場価格は、同等の年式、走行距離ならシルフィのほうが安いお買い得モデル。装備もほぼ同等レベルですので、トヨタブランドへのこだわりがなく、ミドルクラスセダンを探している方なら、シルフィがおすすめです。
シルフィは日産の歴史を飾ったセダン「ブルーバード」の後継車で、アリオン、プレミオのライバル車。ブルーバードはアリオンの先祖「カリーナ」、プレミオの先祖「コロナ」の最大のライバルでしたが、近年のセダンの圧倒的不人気に押され、シルフィは2020年9月に生産終了、以降は在庫販売のみとなり、1959年から続いたブルーバードの歴史に幕を下ろしました。アリオンの歴史とよく似ています。
中古車価格帯は20〜190万円、平均価格は約90万円となっています。(2021年5月21日時点)
トヨタ「ルーミー」
ミドルクラスセダンへのこだわりがなければ、基本設計が新しいコンパクト・トールワゴンがおすすめです。その代表車がトヨタ「ルーミー」。室内はアリオンより広く、大人5人が乗るのなら、アリオンよりルーミーのほうが空間に余裕があります。ただ、乗り心地を重視するなら、アリオンに軍配が上がります。
中古車価格帯は40〜260万円、平均価格は約140万円となっています。(2021年5月21日時点)
中古車アリオンはここで探せ!
では、中古車アリオンをどこでどのように探したらよいでしょうか。カーライフを賢くスムーズに始めるのに、おすすめのサービスや販売店をご紹介します。
グーネット
2大中古車検索サイトの1つ、グーネット。1977年に「中古車情報通信」の名称で創刊された中古車検索雑誌から歴史が始まった老舗です。
グーネットは「グー鑑定」と呼ばれる、中古車を探している人に代わって、プロの鑑定士が中古車の車両状態を鑑定するサービスを提供。この鑑定士は第三者機関の「日本自動車鑑定協会(JAAA)」に所属。公正な鑑定が行われています。これで鑑定された中古車は、内外装、エンジンやトランスミッションといった機関、修復歴などの評価をまとめた「グー鑑定証」が与えられ、中古車情報ページの「グー鑑定」のアイコンから、その鑑定証を確認することができます。
また「ID車両」と呼ばれる中古車の品質を公正に証明するサービスも提供しています。「グー鑑定」と似ていますが、こちらはディーラー独自の基準で厳しいチェックを行った中古車の鑑定結果を「車両状態評価書」にまとめたものとなります。これは中古車情報ページの「ID車両」のアイコンから、その評価書を確認することができます。
「グー鑑定」や「ID車両」対象車は、全体の2割程度となっています。なお、非対象車は品質が良くないという意味ではありません。
さらに「グー保証」と呼ばれる、グーネット独自の中古車保証制度も提供しています。保証期間は国産車が最長3年で部品交換や修理から、移動中のキー閉じ込めなどのトラブル対応やレッカー移動などのロードサービスも全国24時間365日対応で付属(ロードサービスは自動車保険にも付いていることが多いですが)。なお、グー保証対象車は全体の1割程度となっていますが、これが付いていなくても、トヨタ保証やディーラー保証、中古車販売店保証が付いている中古車は多くあります。
カーセンサーのアリオンの掲載件数は292件、価格帯は12.9~222.8万円となっています(※)。
※いずれも2021年5月21日時点の情報です。
カーセンサー
2大中古車検索サイトのもう1つ、カーセンサー。1984年に中古車情報雑誌「カーセンサー」が創刊、今はグーネットと肩を並べる老舗中古車検索サイトとなっています。中古車掲載台数は、時期によって変動しますが約50万台。この台数はグーネットとほぼ同じで、掲載される中古車物件もほぼ同じとなります。これはほとんどの中古車販売店が、カーセンサーとグーネットの両方に掲載登録している背景があるためです。
カーセンサーは「カーセンサー認定」と呼ばれる中古車の品質鑑定情報を提供しています。鑑定は、第三者機関の「AIS」が行い、内外装の状態から目立たない小さなキズまで厳しくチェックし10段階評価しています。鑑定結果は、中古車情報ページから「車両品質評価書」で確認することができます。カーセンサー認定中古車は、全体の1割程度となりますが、この認定中古車でなくても、一般財団法人日本自動車査定協会の「V-CON」や、トヨタ、ディーラーの品質評価制度に基づく検査結果が掲載された中古車が無数にあります。
また「カーセンサーアフター保証」と呼ばれるカーセンサー独自の有償保証制度を提供。これは、エンジン、トランスミッションといった機関から細かい電装装備品まで全350項目を保証、走行距離無制限で最長3年まで加入できる手厚いものとなっています。カーセンサーもグーネット同様に、カーセンサー保証対象車でなくても、トヨタ保証、ディーラー保証、中古車販売店保証が付いている中古車は無数にあります。
カーセンサーのスマホアプリでは、写真からアリオンが検索できる機能を備えています。街で見かけて気になった車を撮影して、アプリからアップロードするとアリオンを特定、そのまま中古車情報を調べることができる便利な機能。中古車探しのライフハックツールとしてもおすすめです。
カーセンサーのアリオンの掲載件数は239件、価格帯は15~228万円となっています(※)。
※いずれも2021年5月21日時点の情報です。
トヨタの5ナンバー・ミドルクラスセダンが欲しいなら買い。
すでに販売終了となったアリオン。姉妹車のプレミオも販売終了、ライバル車の日産シルフィも販売終了となり、国産5ナンバー・ミドルクラスセダンは絶滅してしまいました。現在、新車で買えるミドルクラスセダンは、3ナンバー車のマツダ「Mazda3 セダン」のみとなります。ミドルクラスに限らず国産車のセダンは圧倒的不人気ですが、根強いファンはいます。
なお、トヨタのミドルクラスセダンは中古車相場価格ではライバルに比べると高めです。また、基本設計が古く、安全装備は同価格帯の他モデルと比べると引けを取ってしまっています。
こういった背景から、トヨタの5ナンバー・ミドルクラスセダンが欲しいなら、乗り心地が良いアリオンは買い、となりますが、こだわりがないのなら、同じ予算で先進安全装備が充実した車や、室内が広いトールワゴン、使い勝手が良いコンパクトSUVも選択の視野に入れたほうがいいでしょう。また、セダン特有の乗り心地の良さを求めるのなら、ライバル車の日産シルフィも検討に入れてみてください。
よくある質問
Q1:中古車のアリオン、どれを買うべき?
A:アリオンのグレード構成はシンプルかつモデル数が少ないので、特に「これを買うべき!」と強くおすすめするグレード、モデルをピックアップしづらい状況です。そんなアリオンですが、筆者がおすすめするのは車両価格が安い1.5Lモデル。年式は2代目の2004年式以降で、走行距離3〜6万キロ以下で車両価格が50〜60万円台ならコスパが良く狙い目です。ただ、流通台数が少ないので、探したときに在庫がない可能性があります。
Q2:中古車アリオンを買うときに気を付けたいポイントは?
A:アリオンの中古車を選ぶなら、2代目の2007〜2021年式の2代目にするのが良いでしょう。なお、2007年式には初代が混在するので注意してください。初代は中古車価格が2代目に比べてガクッと安くなっていますが、基本設計は20年前となる古いモデルですのであまりおすすめしません。こだわりがあって初代アリオンを選ぶ以外、ほかの同価格帯の新しいモデルの中古車を選ぶことをおすすめします。
Q3:中古車アリオンはどこで手に入れればいい?
A:購入するなら全国の販売店の窓口となっているカーセンサー、グーネットなどの中古車情報検索サイトを活用するとよいでしょう。頭金や初期費用の一括払いが必要ない方法を探しているなら、定額カルモくんがおすすめです。支払いは毎月定額の利用料金だけなので、すぐにお好みの中古車アリオンに乗ることができます。
※記事の内容は2021年5月時点の情報で制作しています。