ホンダN-BOXの独走が続く軽自動車の人気カテゴリー・スーパーハイトワゴン。そのマーケットに2代目スズキスペーシアは道具感のある内外装デザインで乗り込んできた。もちろん独自のマイルドハイブリッドによる好燃費と先進の安全装備も注目だ。そのスペーシアの実力を探るべく、さっそく試乗テストを実施した。
気づけば軽自動車の主流はスーパーハイトワゴンに
全長や全幅のボディサイズや排気量などに制約がある一方、税金などランニングコストが安く抑えられるということで人気を集める軽自動車。多種多様な車種がある軽自動車の中で、現在人気なのがスーパーハイトワゴンと呼ばれるクルマたちです。このスーパーハイトワゴンは全高を上げることで軽自動車として最大級の室内空間を確保しており、そのパイオニアは2003年に登場したダイハツタントです。
停車中に子供が立ったまま着替えることができることや、チャイルドシートに子供を載せやすいといった理由で、別名“ママワゴン”と呼ばれるほど子育て世代を中心に支持されてきました。そして全国軽自動車連合会が発表した2017年1月〜12月の軽乗用車販売台数ランキングでは1位ホンダN-BOX、2位ダイハツムーヴ、3位ダイハツタント、4位日産デイズ、5位スズキワゴンRとなっていますが、ベスト5のうちワゴンR以外の4車種はスーパーハイトワゴンの設定があります。
脱“ママワゴン”で若者を狙う
今回はそんな圧倒的な人気を誇る軽スーパーハイトワゴンの中でも、2017年12月に登場したばかりの最も新しいモデル・2代目スズキスペーシアの試乗レポートをお届けしましょう。
軽自動車全体では大きなシェアを誇るスズキですが、このスーパーハイトワゴンのカテゴリーにおいてはホンダN-BOXやダイハツタントに後塵を拝する結果となっていました。しかし、新型となったスペーシアはヒットモデルであるN-BOXとは異なる魅力で新しい提案を行っているのが特徴です。
これまで軽スーパーハイトワゴンは“ママワゴン”と呼ばれていたように、子育て世代のファミリーをメインターゲットとしていました。しかしワゴンRやムーヴなどのハイトワゴンに代わって、スペーシアやN-BOXといったスーパーハイトワゴンが主力車種となった現在では、ママワゴンだけでは多様化したニーズに応えることができなくなってきています。そこで新型スペーシアは外観にルーフレールなどを装着することなどで、よりアクティブなテイストを強め、若者にもアピールを強めています。
スーツケースをモチーフとしたデザインで、品の良い「道具感」を狙う
またスーツケースをモチーフとしたデザインは、ジッパーをイメージさせるフロントグリルや取手のようなボディサイドなどの外観だけではなく、インテリアのアッパーボックスにも取り入れられています。品の良さと道具感のある雰囲気で、たしかにタントやN-BOXとは違いを感じさせます。また運転席前方のAピラーを立てることで、スーパーハイトワゴンらしいパッと見の大きさを感じさせることにも成功しています。
広くて工夫がいっぱいの室内空間
大きめの窓が採用され明るい室内、気になる広さはライバルたちといい勝負です。
コンパクトカーをしのぐリアシートの足元の広さもライバル同様、もちろんリアシートのアレンジの豊富さも十分です。
ラゲッジルームもリアシートをスライドさせればそれなりのスペースが出現します。自転車をカーゴルームに乗せやすくするためのステップはユニークです。
前席と後席の間の天井にルーバー式の空調吹き出し口があったり、かっこいいグローブボックスにも開くと仕掛けがあったり、軽自動車ならではの工夫合戦を勝ち抜く努力を、スペーシアも怠っていません。
男性から人気のエアログレード「カスタム」も用意
一方、男性から人気のダイハツタントカスタムやN-BOXカスタムに対抗するべく、スペーシアにもエアログレードのカスタムがラインナップされています。存在感を強調する大型メッキフロントグリルで、ライバルたちに負けない上質感と圧倒的な迫力を実現しています。
N-BOXカスタムがやや上品な方向のデザインになったのとは対照的に、スペーシアカスタムは威圧的なルックスです。
黒を基調としたインテリアも男らしさをアピールしていますね。
全車マイルドハイブリッド採用でクラストップの好燃費
新型スペーシアに搭載されるエンジンは最高出力52psを発生する660cc直列3気筒DOHCと
最高出力64psを発生する直列3気筒DOHCターボのライバル同様の二本立て。しかし注目はそれぞれに最高出力3.1psを発生するISGと呼ばれるモーター機能付発電機と専用リチウムイオンバッテリーを組み合わせたマイルドハイブリッドシステムを搭載していることです。その結果、JC08モード燃費は24.0〜30.0km/Lと軽スーパーハイトワゴンの中でトップの燃費性能を誇っています。これはスペーシアの大きなアドバンテージですね。
軽自動車初の後退時ブレーキサポートも
また安全装備では単眼カメラ+レーザーレーダーによる衝突軽減ブレーキをはじめとするスズキセーフティサポートを搭載。なかでもリアバンパーに4つの超音波センサーを内蔵し、車両後方の障害物を検知する後退時ブレーキサポートは軽自動車初の機能です。それを全車に標準装備するなど高い安全性能を実現しています。これもスペーシアのアピールポイントです。ただし先にフルモデルチェンジしたホンダN-BOXが搭載している高速道路などで先行車追従機能の付いたアダプティブクルーズコントロール(ACC)はスペーシアには付いていません。
軽さが生み出す走りと燃費の良さ
それでは、実際に新型スペーシアをテストしてみましょう。今回試乗したのは、スペーシアハイブリッドXとスペーシアカスタムハイブリッドXSターボの2台です。まずはスペーシアハイブリッドXから。
軽スーパーハイトワゴンは特徴である広い室内空間を実現させる一方で車両重量も重くなり、スムーズな走りを求めるにはパワフルなターボエンジンが必要とされてきました。しかし、新型スペーシアはクルマの基礎となる骨格から見直し、軽量・高剛性のボディを採用することで、車両重量を抑えるダイエットに成功しました。
このダイエットは走行性能と燃費性能に効果絶大です。従来の自然吸気エンジンを搭載したスペーシアだと信号待ちなどの発進加速などでアクセルペダルの操作に対して、反応が鈍いというシーンもありました。しかし、新型スペーシアでは自然吸気エンジンも電動化されたマイルドハイブリッドを搭載、発進時はエンジンの出力に加えて、モーターのアシストが加わることで、よりスムーズな加速を味わうことができます。
一方のターボ車の加速性能は文句なしです。さらに従来モデルに比べて静粛性が向上したことで小型車のコンパクトカーを超える上質な室内環境を実現しています。
またスペーシアには新機能としてパワーモードを装備。坂道や高速道路の合流など、より力強い加速が必要なシーンでこのボタンを押すと、よりパワフルな走行が可能となります。
スペーシアはモーターを搭載したマイルドハイブリッドを採用したことで、軽快な走りと低燃費を両立させています。子供の保育園・幼稚園の送り迎えや旦那さんの駅までの送迎といった街乗り中心ならば、自然吸気エンジンで不足は全くありません。もし高速道路などを使用するというのであれば、ターボエンジン搭載車のほうがパワフルなエンジンと高い静粛性能によって快適に移動できるはずです。
■スペーシア価格表
グレード | 駆動方式 | JC08モード燃費(km/L) | 車両本体価格 |
---|---|---|---|
ハイブリッドG | 2WD | 30 | 133万3800円 |
4WD | 26.4 | 145万4760円 | |
ハイブリッドX | 2WD | 28.2 | 146万8800円 |
4WD | 26.4 | 158万9760円 |
■スペーシアカスタム価格表
グレード | 駆動方式 | JC08モード燃費(km/L) | 車両本体価格 |
---|---|---|---|
ハイブリッドGS | 2WD | 28.2 | 157万6800円 |
4WD | 26.4 | 169万7760円 | |
ハイブリッドXS | 2WD | 28.2 | 169万200円 |
4WD | 26.4 | 181万1160円 | |
ハイブリッドXSターボ | 2WD | 25.6 | 178万7400円 |
4WD | 24 | 190万8360円 |
オススメのグレードは老若男女問わずフィットするプレーンなデザインのスペーシアハイブリッドX。これにオプションのルーフレール、そしてヘッドアップディスプレイと全方位モニターを装着すれば、アクティブなイメージを強調できるともに、高い利便性を確保できます。
割安感のあるスペーシア
スペーシアの価格は133万3800円〜190万8360円。ACC機能もあるホンダセンシングを標準装備したN-BOXは138万5640〜202万6080円ですから、スペーシアのほうがやや割安になっています。マイルドハイブリッドによる高い燃費性能と走行性能を実現し割安なスペーシアと、上級車に匹敵するACCを装備しやや割高なN-BOX。アナタのカーライフにピッタリあうのはどちらでしょうか。
※記事の内容は2018年2月時点の情報で執筆しています。