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トヨタ、いや日本を代表するクルマがカローラだ。世界各国で販売されるベストセラーは、2018年6月、まずハッチバックタイプが「カローラ・スポーツ」としてフルモデルチェンジを受けた。先代カローラ&オーリスに批判的だった岡崎五朗さんの試乗レポートをさっそくお届けしよう。
大きくなったし、高くなったけれど
新型カローラ=カローラ・スポーツに批判的な人は少なくない。3ナンバーサイズになったことを嘆く人もいれば、価格が跳ね上がったことを批判する人もいる。ちょっとクルマに詳しい人なら「カローラ・スポーツとか言ってるけど、要するに新型オーリスってことでしょ」と言うだろう。要するに「こんなデカくて高いクルマはもはやカローラじゃない」ということだ。たしかに間違いではない。全長こそ4375㎜に抑えているものの、全幅は5ナンバーサイズの要件である1.7mを一気に超える1790㎜まで拡大したし、エントリーグレードの価格もざっと60万円上がって210.6万円〜となった。欧州でオーリスというネーミングで販売されるのも事実だ。
身銭を切って先代カローラを買った人はいますか?
しかし僕は、詳しくは後述するがカローラ・スポーツをかなり気に入っている。なにもトヨタに媚を売っているわけじゃない。その証拠に、先代カローラにはかなりの辛口評価を下していた。「こんな安普請で真っ直ぐ走らないようなクルマはあり得ない。この路線を続けたら次でカローラは終わりますよ」ということを原稿にも書いたし、テレビでも喋った。事実、先代カローラの主な購入層は営業車かレンタカーであり、個人で買うような人はほとんどいなかった。周りを見渡してみて、身銭を切ってカローラを買った人なんていますか? いないですよね?
1966年に登場した初代カローラは日本のモータリゼーションそのものだった。初めてのマイカーがカローラだった家庭は多かったし、その家庭にはカローラがもたらした笑顔があった。そんなカローラがいつしか安普請の営業車に成り果ててしまったことに僕は大いに失望していた。GDP世界3位の日本。そのベーシックカーがこれかよ? 情けない、と。
トヨタはカローラを諦めていなかった
だからこそ、トヨタが新型カローラをどの程度まで磨き上げてくるかに興味津々だったのだが、乗ってみて本当にホッとした。トヨタはカローラをまだまだ諦めていないんだなと。それがもっとも如実に表れているのが上質な乗り味、走り味だ。ドアを閉めた瞬間、車内はしんと静まりかえる。これは遮音性が高い証拠。
これほど運転が楽しいカローラは初めて
走り出すと、まさにタイヤのひと転がりからサスペンションがスムースに動いている様子が伝わってくる。単に柔らかいのではなく、車体の揺れをきちんと抑制しながら足だけがスムースに動いてくれる感じ。関節が絶望的に固かった旧型とはまるで別モノの仕上がりだ。さらにガッチリしたボディは荒れた路面を走ってもミシリともいわないし、カーブでの安定感も高い。正直、これほど運転が楽しいと思ったカローラは初めてだ。インテリアの質感も先代カローラはもちろん、オーリスと比べてもグンと向上した。
日本のベーシックカーに新たな1ページを刻んだ
クルマとしての質がこれほど向上し、先進的な安全装備を全車標準装着していることを考えれば、価格も決して高くない。ハイブリッドもいいが、1.2Lターボなどはむしろお買い得と思えるほどだ。もし僕がカローラ・スポーツを買うなら1.2Lの6速MTを選ぶ。いずれにしても、高い実用性と質の高い乗り味、運転の楽しさをリーズナブルな価格で提供してくれるクルマとしてカローラ・スポーツの実力は高い。日本のベーシックカーの新たな1ページを刻むクルマの登場だ。
※記事の内容は2018年8月時点の情報で執筆しています。